ストIIに対抗できた最初の作品
餓狼伝説2 新たなる闘い 
『ストリートファイターII』全盛時に、新たな対戦格闘の魅力を提示。SNKの対戦格闘の名作の数々の起点となった、まさに伝説となった作品である。 

 OLD GAME LINK  
■お薦め攻略サイトへ
■支援サイトへ
タイトル紹介ヘ
■メーカーHPへ  
トップページへ  
  
 TEXT:石井ぜんじ   

01.03.05up 

 

SNK対戦格闘の歴史はここから始まる

 
●ストリートファイターII全盛だった当時の状況
 『ストリートファイターII』(1991年:カプコン 以下、ストII)の発売当時の人気の過熱ぶりはすさまじいものであった。対戦格闘ゲームとして遊べるものはストIIであり、カプコンの作品しかないという強烈な思い込みが世の中には当然になっていた。そんな中で発売されたのがSNKの『餓狼伝説2』である。対戦格闘メーカーとしてのSNKは、まさにここから始まったと言えるだろう。

●ストIIシステムを踏まえながら新たな方向を模索
 餓狼伝説2は、本格的に“対戦する”というテーマでSNKが取り組んだ最初の作品であった。ストIIと同じく、上下ガードシステムとコマンド必殺技を採用している。現在の格闘ゲームでは、まねをするのが当たり前になっているので誰も違和感を感じないが、当時この“上下ガードシステム”“必殺技コマンド”こそがストIIのオリジナルシステムだったのである。それだけに、当時ストIIに似たシステムを採用したのは冒険でもあった。リュウ・ケンに似た、アンディの昇竜弾のコマンドが逆波動コマンドだったのは、開発陣のプライドのささやかな表れであったと思われる。

●コマンドシステムの起源〜その複雑な経緯
 しかし、餓狼伝説2は完全にストIIのまねをした、というわけではなかった。振り返れば、現在の2D対戦格闘ゲームに近い形で必殺技コマンドを最初に採用したのは、カプコンの『ストリートファイター』(1987年:カプコン)である。
 ストリートファイターを製作したのは、当時カプコンの開発にいた西山氏と松本氏である。その後、彼らはカプコンを退社し、SNKにその活躍の舞台を求めた。必殺技コマンドを最初に開発したのは、餓狼伝説開発サイドであったと言えないこともない。
 いっぽう、当時のカプコンの西谷氏を中心とした開発スタッフは必殺技コマンドのシステムを改良し、さまざまな必殺技を考案。上下ガードシステムを加えて対戦格闘ゲームを確立した。これもまぎれもなく偉大な功績である。
 メーカーか、開発チームか、個人の力か。最初に考案した人間の功績か、それを発展させた人間の力を評価すべきなのだろうか。ゲーム単体では評価できても、その製作サイドを同時に評価するのは難しいことである。

●隠し超必殺技の存在
 餓狼伝説2では、超必殺技がコマンドリストに載っていなかった。しかしCPUは時折超必殺技を使い、プレイヤーを驚かせたものだ。当時超必殺技という概念はストリートファイターIIには存在しておらず、その条件などは『龍虎の拳』の龍虎乱舞から想像するしかなかった。まさに超必殺技が、本当に名前のとおりの驚きをもって受け入れられた、幸せな時代であった。

●キャラクターへのこだわり
 餓狼伝説2の優れたところは、ストIIに迫る美しいキャラクターグラフィックを可能にしたことにある。当時のストIIのキャラ造型は、他社をはるかに引き離していた。グラフィックのデザイン、モーションの形、グラフィック枚数など、さまざまな点で傑出していたのだ。しかし、餓狼伝説2が、この短期間でそれにほぼ匹敵するキャラを作り上げたのは驚きであった。

 また、そのキャラクター作りはカプコンの単純な模倣ではなかった。それぞれの個性を強烈に打ち出したストIIのキャラ作りと違い、SNKはシンプルにカッコよいと思えるキャラを追求していく。等身の比率、それぞれの各体のパーツのサイズなど、その違いは細かく比較するほど対照的に感じられる。
 この、独自のキャラクターセンスがカプコンとはまた違ったファンを獲得していくことになるのである。

●東西対戦事情
 対戦格闘ゲームとして製作された『餓狼伝説2』であったが、対戦ゲームとして定着するには時間がかかった。対戦格闘としてのクオリティは高かったにもかかわらず、“対戦はストII”という先入観がなかなかプレイヤーからは抜けなかったからだ。最初から見下して見られていたのも、当時としては致し方ないところだろう。連続技が存在しないことや、ライン移動のシステムがプレイヤーを戸惑わせたこともあったかもしれない。
 この当時、東京では新宿などの一部の地域以外ではあまり対戦は盛り上がっていなかった。しかし、ストIIイベント関係で大阪に訪れ各地を見て回ったが、東京よりはるかに多くのプレイヤーによって楽しまれていた。この空気の違いは、いまでも印象強く心に残っている。

●猛威を振るった避け攻撃
 連続技が存在しない餓狼伝説2であるが、そのぶんキャンセル必殺技で固め続ける激しさはストIIとは比べ物にならなかった。ストIIがハメゲーであったとすれば、こちらは削りゲーである。だが、それに対抗する手段もあった。それが避け攻撃である。避け攻撃は下段に判定があるものの、体の上部を無敵にする強力な攻撃。とくにその性能がよい東丈は、返し技キャラとして恐れられた。避け攻撃をはじめとした返し技で、テリーのキャンセルクラックシュートなどの連携はことごとく封じられたものであった。

●強力な技と連携の数々
 餓狼伝説2は、体力が少なくなってから超必殺技が出せるシステムで、簡単なコマンドで、なおかつ性能のよい無敵の超必殺技が連発できる不知火舞の“超必殺忍蜂”はほかのキャラクターの超必殺技より驚異とされていた。
 必殺技で強力だったのは、アンディの斬影拳とチンの氣雷砲があげられる。氣雷砲は、単純に連打するだけで一定間合いに離れるまで削り続けられるという高性能ぶりであった。いっぽうの斬影拳は、しゃがみ弱パンチからキャンセルして固め続けるパターンがハメとして恐れられた。斬影拳ハメは回避不能のものと思われていたが、その後、斬影拳をガードしてから投げる戦法が生み出された。これはガード直後に無敵時間があることを利用した返し技で、餓狼伝説2ならではの回避法だったと言える。
 
●熱く盛り上がった全国大会
 餓狼伝説2は、ストIIに続き全国大会が行われたのが印象深い。山田十平衛、東丈、不知火舞なども活躍したが、結局決勝戦はチンとアンディの対決となる。
 アンディは、斬影ハメを使わず、斬影拳を移動に使うというハイテクニックを見せた。相手に触れる直前で止まって投げたり、下段技につないだりと連携が冴えいた。いっぽう、チンはこれ以上ないという正確なプレイで氣雷砲の連発で削り続ける。その悪役としてのパフォーマンスは場内を盛り上げた。
 勝負を決めたのは、アンディのライン攻撃を返す立ち弱キックだった。早いスピードのライン攻撃はなかなか返せないが、あまり角度がない場合は返せる通常技がわずかに存在する。当時はあまり知られていなかったが、アンディの立ち弱キックがまさにそれだった。要所で立ち弱キックで反撃し、アンディが華麗な勝利をおさめたのであった。

●そして餓狼伝説シリーズの確立へ
 餓狼伝説2は発売当初こそそれほどでもなかったが、徐々に認知され評価が高まっていった。そしてその後、連続技ができるように改良された『餓狼伝説スペシャル』が発売される。
 餓狼伝説スペシャルは発売前から期待が高まり、予想されていたとおりの大ヒットした。そして、後に名作と呼ばれるようになったタイトルである。しかし、その原形はほぼ餓狼伝説2で完成されていた。独創性の点から考えれば、むしろ餓狼伝説2のほうを評価すべきだろう。間違いなく、時代を変えた名作の一つである。


 

>>>2へ

1992年/SNK
  

 

■操作方法

8方向レバー4ボタン

Aボタン 弱パンチ
Bボタン 弱キック
Cボタン 強パンチ
Dボタン 強キック

 
■特殊操作

ライン移動 A+B 
ラインとばし攻撃 B+D
避け攻撃 (相手の攻撃中に)レバー前+A
跳び退き
レバーを後方に2回素早く入れる  

■登場キャラクター
(コマンドは右向きのとき)
 
テリー・ボガード
バーンナックル 
       214+パンチ
パワーウェーブ 
       236+パンチ
クラックシュート 
      2147+キック
ライジングタックル 
  下方向溜め、上+パンチ
パワーゲイザー(超)    
       21416+BC

アンディ・ボガード
斬影拳    16+パンチ
飛翔拳   214+パンチ
昇龍弾   236+パンチ
空破弾   19+キック
超裂破弾(超)
    下溜め、+36BD
 
東 丈
タイガーキック 
      2369+キック
ハリケーンアッパー 
     41236+パンチ
スラッシュキック 
       19+キック
爆裂拳  パンチボタン連打
スクリューアッパー(超) 
      64123+BC
 
不知火 舞
花蝶扇   236+パンチ
龍炎舞   214+パンチ
必殺忍蜂 41236+キック
ムササビの舞
(青木ヶ原ステージで)
   下方向溜め、上+C
超必殺忍蜂(超) 616+BC
 
山田 十平衛
センベイ手裏剣 
 後ろ方向溜め、前+パンチ
ダッシュ二本背負い
 後ろ方向溜め、前+キック
大いづな落とし
 下方向溜め、上+パンチ
ダイナマイトいづな落とし(超)
 後ろ斜め下溜め、23+BC

キム・カッファン
半月斬  214+キック
飛燕斬 
  下方向溜め、上+キック
飛翔脚 
  (空中の一定の高さで)
      下方向+キック
鳳凰脚(超)  21416+BD
 
ビッグベア 
ジャイアントボム 
後ろ斜め下溜め、前+パンチ
スーパードロップキック
Dボタンを一定時間押しっぱなし後放す(8/15/30/50秒)
ファイヤーブレス(超)
      63216+BC
 
チン・シンザン
氣雷砲    236+パンチ
大太鼓腹打ち
  下方向溜め、上+パンチ
破岩激 
 後ろ方向溜め、前+キック
爆雷砲(超) 
  後斜め下溜め、26+BC