『ペンゴ』は1982年に発売され、非常に長い期間ゲームセンターで愛された固定画面アクションの名作である。発売時期がナムコ全盛期に当たるだけに目立たないところもあるが、その一般人気の高さとパズル要素の加わった深いゲーム性は、高く評価されてしかるべきであろう。
●ペンギンキャラの元祖
人気の大きな要因は、なんといってもペンギンというマイキャラクターだろう。かわいい系の代表であるペンゴは、少ないパターン数でよたよた歩くペンギンというキャラをうまく表現している。ナムコのマッピーなどでもそうだが、この時代の名作は少ないパターン数、色数でうまくキャラクターを表現している。現在はハードの進化によって、はるかに多くの色数とパターン数(ポリゴンの時代、もう死語だが)を使うことができる。しかしこの造形のうまさは現代でも注目に値すると思う。当時としては珍しく女性プレイヤーも見られたが、それもこのキャラなくしてはあり得なかったであろう。
●見逃せないデモシーンの魅力
そしてそのかわいらしさが存分に現れているのがステージ間のデモシーンだ。2面ごとに出現するデモシーンでは、お尻を振ってダンスしたり、インベーダーのような格好をして歩いてきたりする。これを目当てにプレイした人も多かったのではないだろうか。こういった息抜きや緩急の付け方に、製作者の高いセンスがうかがえる。ちなみにステージ10では、テーブル筐体でペンゴが遊んでいる。このシーンは当時なにをしているかわからず、ペンギンがエサを食べているんだとかバカなことを言っていたのが懐かしい。なんとそれがわかるまでに20年近くを要してしまった(笑)。
●壁でもあり、武器でもあるアイスブロックがゲーム性の根幹
『ペンゴ』のルールはシンプルだ。アイスブロックを押し、敵であるスノービーをつぎつぎと倒していけばよい。待ちかまえてブロックを飛ばし、スノービーを潰す、というアクションが感覚的でわかりやすく、魅力的だ。
アイスブロックはペンゴの武器でもあり、ペンゴを守ったり邪魔したりする通路の壁でもある。ゲーム的には、アイスブロックがこのふたつの意味を共有しているのがポイントであり、奥の深さを生み出しているのだ。さらに、スノービーを倒すのに手間取っていると、スノービーはどんどんブロックを壊してしまう。ブロックが壊されれば倒す武器が減っていくことになり、必然的に追い込まれることになる。刻々とマップ状況が変化し、それに対応して瞬時の判断を下さねばならない。パターン化できない複雑なアクション性こそが、『ペンゴ』の魅力を支えているのである。
●ペンゴの系譜を継ぐ者たち
『ペンゴ』のブロックを飛ばして潰すというアイデアは、『にゃんにゃんパニック』(コナミ・1988)、迷宮島(アイレム・1988)、ドンプル(カプコン・1991)などのアーケードゲームに大きな影響を与えた。家庭用にもさまざまな同タイプのゲームが存在する。そして21世紀に入ってから、『ペンゴ』は携帯電話のゲームに移植され、再び人気となっている。シンプルながら、キャラクター性とゲーム性が融合した本作は、時代を超えた魅力を生み出しているといえるだろう。
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●65万点への道
筆者にとって『ペンゴ』は非常に思い出深い作品である。それは、最初に極めることのできたビデオゲームだったからだ。食費を削りつつ、1日2〜3回のプレイを1年間続けることによって、ついにカウンターストップまで達することができた。
ペンゴにはカウンターストップが存在する。それも999990点ではなく、65万点を少し超えたところで点数が止まる。これは多分CPUの演算の関係で、655360点を超えた時点でカウントしなくなるせいだろう。そこまでたどりつくには、多くて6周、短くて4周+αのステージをクリアする必要がある。
●卵割り厳禁、飛ばして速攻で倒す
いちばん楽なスノービーの倒し方は、ブロックを壊しているところを正面からブロックで押す方法だ。基本的にスノービーはプレイヤーに向かってくるから、壊しながら近づいてきたところを倒すとよい。この方法で、前半のステージは確実にクリアしていくことができる。しかし、後半ステージになるとこれでは間に合わない。
12ステージ以降は、卵を壊すのも時間のロス。卵を壊すと一定時間動けないのが問題だ。なにより今動いているスノービーをすぐに倒していかないとどんどんブロックを壊されてしまう。壁を揺らすのもさえ、状況によってタイムのロスになることが多い。また、長い距離ブロックを飛ばすと、ブロックが止まるまで動けないのも微妙。とにかく積極的に動き回り、ブロックをどんどん飛ばして倒していくしかない。ステージ開始10秒くらいまでが勝負で、そのあいだにいくつ倒せるかで生き残る確率が変わってくる。少しでも逃げに回るとどんどん状況が悪化するので、攻めていくしかないのである。これが熱いのだ。
●ダイヤモンドブロックをそろえる秘訣
ダイヤモンドブロックをそろえる基本は、とにかく一直線上に並べてしまう、ということだ。そうすればスノービーが勝手に間のブロックを壊してくれるため、1万点を取れる可能性が高くなる。
また、スノービーは残り1〜2匹になると画面の隅に逃げていく性質がある。このとき壁を走るので、揺らせば気絶させて粘ることが可能だ。逃げようとするスノービーを気絶させたまま生かしておき、その間に少しずつダイヤモンドブロックをそろえていくというテクニックもある。これを応用すれば、スノービー一匹を半殺しにしたまま1ステージ3分以上、といった長丁場でダイヤモンドブロックをそろえるという荒技もできるのであった。
●恐るべきバグの数々
当時のゲームはバグ、というか驚異現象が多かったのがおもしろかったポイントである。筆者も『ペンゴ』では数々の怪奇現象に遭遇した。よくあるのは、ダイヤモンドブロックが消えてしまうこと。これは狙って起こすことも可能だ。また怖いのは、孵化しない卵が出現すること。これが起こると、予期せぬ現象が起こる。たとえば画面外からスノービーが無限に湧いてくるなどだ。そのなかでもきわめつけなのなのが、フィールドにもう1匹のペンゴが生まれ、画面をスタスタと横切っていってしまったこと。一度だけあったが、ここまでくるとオカルトの世界といえよう。近年のゲームは不可思議なバグが少なくなった。これは喜ぶべきことなのだろうが、ゲームから驚きと話のネタが少し減ってしまったのはちょっと寂しい感じもするのである。
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