CREDENZA

                           SP盤所蔵リストのお部屋へ

 池田圭先生と過ごした楽しかった日々を偲んでこの「CREDENZA」コーナーを設けました。

皆様「CREDENZA」という蓄音機をご存知ですか。1920年代にアメリカのベル研究所が設計し、ビクト

ローラ社が製作致しました78回転盤レコード専用の蓄音機です。この蓄音機は世界で最も再生音の美

しい蓄音機と言われており、世界ではじめて逆三角関数の数式に基づいた理論によるホーンの設計が

なされた蓄音機、と言われております。その図体は蓋をあけると背丈よりも大きなものでかの有名な

ウェスタンエレクトリック社のホーンの設計の原型となったモデルとも言われております。

JBL社、ALTEC社などのホーンもこの蓄音機のホーンが原型となっているそうです。またサウンド・ボ

ックス内のアルミ製の振動板についてもすべての高級ドライバーと言われるものはこの形状を踏襲致

しております。気品のある音色はこの振動板から出てくるのです。

  オーディオ界の最長老に君臨しておられました今は亡き「池田 圭」先生のスタジオにWestern 

Electric社製の巨大ホーンが左右に鎮座しており、その中央に「CREDENZA」が設置してありました。

私がたまたま先生とお会いし、お話をしていたところ、私が「CREDENZA」でSP盤を聴くのが趣味です、

と申し上げたところ、先生は目を輝かせて君の「CREDENZA」はどんな音がするのかい、何年製のもの

かね、聴かせてもらえないだろうか、と言われました。そんな訳で池田先生とのお付き合いが始まり、

何年もの間亡くなられるまで本当に親しいお付き合いをさせて頂きました。先生と私の家は車で十分

程度の距離ですので私と先生は行ったり来たりの間柄になりました。先生とはSP時代の演奏家の話を

沢山しました。そして声楽家の奥田良三先生、チェリストのパブロ・カザルスをはじめ色々なジャン

ルの巨匠達との交友談、体験談などをお聞かせ下さいました。

生涯忘れられないことは奥田良三先生の歌声です。池田先生が直にお採りになったもので門外不出、

といっておられました。その「城ヶ島の雨」を歌われた歌声は奥田良三先生の喋り声まで入っており、

私は先生のお宅を訪問するたびにせがんで毎回聴かせて頂きました。先生は私の工房でも世界的名器

の音色を楽しんでおられました。MJ誌にも私のクレデンザのこと、またピアノの名器の録音が私の家

で生涯初めて採れて感激した事なども書いてくださいました。

               在りし日の池田先生(拙宅にて)

私が「クレデンザ」を修理、調整するに当たりましては、私が持っております音色を改善するための

ピアノのボディーの木工修復技術の手法を用いました。私の所有致しておりますクレデンザは他のク

レデンザに比べ、「周波数特性」「音色のまろやかさ」「音量」「楽器が持っている旨みと香り」ど

れをとっても驚くほど秀でております。マルセル・モイーズの演奏するフルートなどは息遣いまで聞

こえてまいります。ヴァイオリン、声楽に至ってはまるでそこで演奏しているかの錯覚にとらわれる

ほどです。池田先生も私のクレデンザの音色には舌を巻いておられました。

長野県伊那市に於ける「クレデンザ」蓄音機によるSPレコード鑑賞会風景

旧型 前面すべての開閉型 1925年製 所蔵品

上記写真の鑑賞会を予告する記事が政治欄を押しのけ、第一面トップに

掲載されました。「幻の名器」とは驚きました。

「想像を絶する音」は事実です。

 クレデンザ正面写真「新型 ホーン部分のみの開閉型」

         演奏中のクレデンザ

       サウンド・ボックスの詳細図

             ホーンの内部構造

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