「整音の理論とその実際」

                     序

 この「整音の理論と実際」の小論文は平成7年8月20日に長野県原村ペンションバロックで行わ

れた ピアノチューナーズフォーラム (P.T.F) における講演会の教材として使用したものであり、平

成7年5月号より6回にわたってミュージック・トレード誌「私の調律」欄に掲載された論文を纒め

たものである。この論文は整音作業を行う上での基本的な音の捕らえ方について、一つの考え方を提

示したものであり、全世界の人が共通認識を持つ事が出来る自然科学の分野に於ける理論とは性格を

全く異にする。あくまでも私なりの「一つの思考モデル」であって決して絶対的な理論ではない。し

かし基本的な考え方に於いてはある程度の共通認識を持つ事が出来るのではないかと思う。

 この論文はこれから本格的な整音の勉強をしようと思っておられる相当経験を積んだピアノ技術者

の為に書かれたものである。初歩の技術者にとっては抽象的な表現が多く、なかなか理解出来ないかも

しれないが何れピアノの音色に対し深く考察しなくてはならない時が来た時にこの論文は必ず役立つ

であろう事を確信している。

 ピアノを弾くのが大好きで音色に興味のあるアマチュアの方々、また音楽大学を卒業されたピアノ

の先生方、ピアニストの方々に対しましては「演奏による音楽表現の奥深さ」とはまた一味違う、調

律師の立場からみたピアノの「音色、音の響き、調律法などによる音楽表現の奥深さ」をご理解頂け

れば誠に嬉しく思う。

 この論文はコンピューターソフトで言うところの所謂 Version1.00 であってつきつめて「経験式」

を考えてみるとまだまだ矛盾点(バグ)が存在する。それに各音色要素のまとめ方、分類の仕方にまだ

多少の問題点が存在する。この小論文に対し読者諸氏から色々と御批判、疑問なり間違いを指摘され

るかも知れないが、それは当然の事として受け止めている。ほんとうは整音理論をもっと音響学的な

見地からも解析を進めて行かなくてはならない所ではあるがなかなか一個人の力では自由にならない

のが現実である。もしこの小論文の詳細にわたる音響学的解析が出来ればピアノを設計する上での貴

重な資料になるのではないかと思っている。

 「難解」と言う意見が多数あるが今のところ内容を変えずにこれ以上平易な説明が私には出来ない。

何れより厳密かつ洗練された思考モデルを構築しなくてはならないと思っている。しかしながらこの

思考モデルを少し変形すればあらゆる楽器の製造、他の分野ではアンプ、スピーカー、カートリッジ

等の音響再生部品、機器に当て嵌めることが出来るので楽器および音響機器製作者にとっては貴重な

資料になると思う。この論文はハンマーヘッドの形状と音色の関係についての考察が欠落しているが

新品時の理想的な形を前提に論じているので敢えて触れる事はしなかった。

                  調律技術者の方へ

(注) 整音作業を行うための必要工具一覧表をご希望であればメールにて添付致します。

(注) メールでの添付希望者多数の為《整音の実際》を当ホームページに追加しました。

    目  次

    はじめに

》 音の立体図形

》 整音作業によって変化する音色要素の説明

    静体要素の係数(θ、r、s、d、ε、f、Γ)について

    動体要素の係数(t、v、Δ)について

》 整音作業を施しても変化しない音色要素の説明

    静体要素(F、R、e、Π)について

    動体要素Σについて

》 負に働く音色要素(N、C、Ω、δ、e´)の説明

》 音色に作用する要因要素群の説明

》 負に働く音色要因要素群

》 整音作業から見たピアノの「音色要素、および音色に作用する要因要素一覧表」

》 要素間の関係式、および関係式から導かれる導入式

》 ハンマーヘッドのブロードマン地図

10》 整音の実際(実技)

11》 整音の理念

                                      戻る  次へ

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