秋の星座

みずがめ座/アンドロメダ座/ペルセウス座

みずがめ(水瓶)座

学名:Aquarius (符号:aqr)
 右の図はボーデ星図のみずがめ座です。水瓶を逆さに持ち、水を流している少年の姿が描かれ、水瓶から流れ出した水は、足元の南のうお座の口に注がれる形になっています。水瓶の左にはうお座、少年の右下にはやぎ座が描かれています。

みずがめ座は比較的大きな星座ですが、1等星や2等星など明るい星はなく、3等級が3個と4等級が10個ほどの目立たない星座です。しかし、黄道上にあり、黄道12星座の一つとして古くから知られている星座です。
 星座の名前はラテン語でAquarius アクエリアスですが、Aquaはラテン語の「水」の意味で、アクエリアスは「水男」の意味になります。Aqua(アクア)という言葉は飲み物や水彩絵具の名前にも使われています。


ギリシャ神話

 ギリシャ神話によるとガニュメーデースはトロイアの王家の祖トロースの子で、人間の中で最も美しい少年ということになっていました。
 オリンポスの神々は、美少年が好きなゼウスのために、酒宴のときにお酌をする人として彼をさらって行ったということです。しかし、のちの神話では、ゼウス自身が、酒席にはべらしてお酌をさせるために、自ら巨大な鷲に変身して、地上に舞いおり、ガニュメーデースを天上に連れ去ったということになっています。ゼウスの化身の鷲はわし座となって夏の星空にあります。ガニュメーデースがさらわれるとき、彼は水瓶をもっていたので、それがこの星座の由来となっています。


みずがめ座の天体

●連星 ゼーター星(ζ Aqr
 103光年の彼方にある連星。4.3等と4.5等の二つの星が760年の周期で公転しています。地球から見た距離は離れつつあり、現在二つの星の角距離は焼く1.9秒。小望遠鏡の性能を試す絶好の連星。

●球状星団M2(NGC7089)
 3万7千光年の彼方にある球状星団。6.5等級で小望遠鏡でも確認することが出来ますが、星を分解するためには口径10cm以上が必要。

●惑星状星雲 NGC7009
 距離3000光年で、その形から土星状星雲と呼ばれています。中心星は11.5等。惑星状星雲は太陽程度の質量を持つ星が進化の最終段階にガスを放出して作られます。中心にはその星が見られますが、間もなくエネルギーが枯渇して白色矮星になり、光を失っていきます。

●惑星状星雲 NGC7293
 太陽に最も近い惑星状星雲で、その距離は300光年。らせん状星雲(Helix Nebula)と呼ばれています。距離が近いので非常に大きく見え、その見かけの大きさは(視直径)は約4分1度、月の半分もあります。しかし、大変淡いので、双眼鏡や低倍率の望遠鏡の視野にかすかに輝く霧の円盤のように見えるに過ぎません。観測には出来るだけ空の暗い場所を選ぶ必要がありますが、ネビュラーフィルターが効果的です。

星の進化と惑星状星雲

 星はその進化の最終段階を迎えると不安定になって振動を初め、ガスを激しく放出するようになります。そのような星の一つに、有名なくじら座のミラがあります。ミラは約1年の周期で約2等星から10等星の間を変更します。この変光は星の震動によるもので、震動しながら激しくガスを放出しています。ミラの周囲には放出されたガスや塵がたまっていき、やがてこれらのガスや塵に隠されて、ミラ本体は一時的に見えなくなってしまうと考えられます。一方、ミラはガスの放出によって外層を失い、高温の中心部が露出してきます。中心部は非常に高温なので、強い放射線が放射され、周囲のガスは紫外線によって電離・過熱されて高温になり、ガスが自ら輝き出します。これが惑星状星雲。
 惑星状星雲のガスは毎秒10kmの速度で膨張し、やがて星間空間に飛散して、星雲は消えてしまいます。中心の星は核燃料が枯渇し、白色矮星となります。惑星状星雲の中心の星はこのような星の進化の最後の姿です。

 星の一生は質量によって決まりますが、太陽程度の質量の星は惑星状星雲を形成し、白色矮星になります。だから、惑星状星雲は太陽の最後の姿を見ていることになります。

アンドロメダ座とペルセウス座

ボーデ星図:1782年発行のボーデの星図で、左にメドゥーサの首を下げ、剣を振りかざしているペルセウス、右に鎖につながれたアンドロメダ、その間にさんかく座(三角定規)が描かれています。ボーデの星図はフラムスティード星図に彩色を施したものです
 
 
アンドロメダとペルセウスの物語秋の深まりとともに日没が早くなり、空気も澄んでくるので、夕暮れとともに早くから星が美しく見えます。
 アンドロメダ座とペルセウス座は秋から初冬の星空を代表する星座ですが、明るい星が少ないのであまり目だちません。けれども、星座にまつわる物語は華やかで、星座神話の中でも最も広く親しまれているものです。今回は、アポロドーロス『ギリシア神話』(岩波文庫)を参考にしてこの物語を少し詳しく紹介しましょう。


勇者ペルセウスの生い立ち

 ギリシア、ペロポネソス半島のアルゴスの王アクリシオスは、ひとり娘ダナエーがいましたが、男子の世継にはめぐまれませんでした。男の子を望んだ王は神にうかがいをたてますが、「おまえの娘から子供が生まれ、その子はお前を殺すだろう」という神託を受けます。この神託を恐れたアクリシオスは,青銅の部屋を作って娘ダナエーを閉じ込めてしまいます。
 しかし、大神ゼウスは黄金の雨に姿を変え、屋根の隙間からダナエーの部屋へ侵入してしまいます。やがてダナエーはゼウスの子を生みますが、この子が後の勇者ペルセウスです。
 娘に子供が生まれたことを知ったアクリシオスは、ゼウスの子とは知らず、神託の実現を恐れ娘と孫を箱に入れて海に流してしまいます。箱はエーゲ海のセリーポス島に漂着し、母子二人は島の王ディクテュースに保護されます。

ペルセウスのメドゥーサ退治

 やがてペルセウスは成長し母親と平和に暮らしますが、デキュテュースの兄弟ポリュデクテースはダナエーを恋するようになり、彼女に近づこうとします。しかし、成人したペルセウスがいつも母を守っているので、近づくことができません。
 そこで、邪魔になったペルセウスを遠ざけるために、ポリュデクテースは策略をめぐらせます。この策略にかかったペルセウスは、怪獣ゴルゴーンのメドゥーサの首を取ってくることを約束してしまいます。
 メドゥーサは見る者を全て石に変えてしまう恐ろしい怪獣で、その首を取ることはペルセウスといえどもとても不可能なことです。
 しかし、ペルセウスは知恵の女神アテーナーと伝令の神ヘルメースの二人の神の助けを得ることができました。アテーナーは、鏡のように磨いた盾を与え、メドゥーサをじかに見ないように、見るときは鏡に映った影だけを見るように助言します。ヘルメースはメドゥーサの首を切り落とす鎌を与えました。
 ペルセウスにはさらに必要なものがありました。翼のついたサンダル、切り取った首をおさめる魔法の袋「キビシス」、そして、地獄王ハ―ディスの持つかくれ帽子です。この帽子は、かぶっていると姿が見えないという魔法の帽子です。これらはいずれもステュクス河のニンフたちのところにあるというのですが、その居場所を知っているのは、ゴルゴーンの姉妹のグライアイだけでした。


 ペルセウスは、ヘルメースとアテーナーに導かれてグライアイのところに行きます。
 彼女たちは、生れた時から老婆で、三人で一つの眼と一つの歯を持ち、これを互いに順に廻して使っていました。ペルセウスはこれらを奪い取り、それを返すかわりに、ニムフたちの所へ通ずる道を聞き出します。ニムフの所に行って必要なものを手に入れたペルセウスは、翼のついたサンダルを履き、袋キビシスを担ぎ、魔法の帽子をかぶり、ゴルゴーンの住むオーケアノスに行きます。
 ゴルゴーンは三人姉妹で、竜の鱗でとり巻かれた頭を持ち、歯は猪のごとく大きく、手は青銅、翼は黄金で、その翼で飛ぶことができました。そして彼女たちを見た者を石に変えてしまう恐るべき不死身の怪物でした。ただ、三人のうち、メドゥーサだけが不死身ではありませんでした。ペルセウスは、ゴルゴーンが眠っているところを、アテーナーに導かれ青銅の楯に映った影を見ながらメドゥーサの首を切り取ってしまいます。
 メドゥーサの首が切り落とされると、飛び散る血の中から翼を持った白馬ぺーガソスが飛び出してきました。これはポセイドーンの子供で、メドゥーサが身ごもっていたものでした。
 ペルセウスは魔法の袋キビシスの中にメドゥーサの首を入れ、ペーガソスにまたがり退散します。眠りからさめたゴルゴーンたちは、ペルセウスの後を追おうとしたのですが、魔法の帽子に隠されて彼の姿を見つけることができませんでした。このようにしてペルセウスは無事逃れることができました。

■アンドロメダの受難と救出



 首尾よくメドゥーサの首を手に入れたペルセウスは、帰途エディオピアを通りかかったとき、海の怪物の餌食として海岸の岩に鎖でつながれている美しい娘アンドロメダーを見つけます。
 これには、つぎのような事情がありました。エチオピア王ケーペウスの妻カッシェペイアは、海のニムフたちと美を争って、自分は「すべてのニムフよりも美しい」と自慢したのです。それを聞いた海のニムフたちは怒って海の神ポセイドーンに訴えます。憤慨したポセイドーンはエチオピアの海岸に怪獣を送り、海岸を荒らさせて人々を苦しめます。これに困った王が神にうかがいをたてたところ、「娘アンドロメダーを怪物の餌食として供えるならば、禍いから救われるであろう」という神託を受けます。ケーペウスは仕方なく神託に従って娘を海岸の岩に鎖で縛りつけたのでした。
 ペルセウスはアンドロメダーをひとめ見て恋してしまいます。彼は、もし怪獣を退治し彼女を救うことができたら、彼女を妻にくれるよう、ケーペウスと約束をとりつけます。そして、彼は首尾よく怪物を殺し、約束どおりアンドロメダーを妻に迎えます。
 しかし、ケーペウスの兄弟でアンドロメダーの最初の婚約者であったピーネウスはこれに怒ってペルセウスに対して陰謀を企てます。しかしその陰謀を知ったペルセウスは、メドゥーサの首を見せて彼とその共謀者たちを石にしてしまいます。
 ペルセウスとアンドロメダーは,のちにペルシア王家の祖となった長子ペルセスをもうけますが、長子をケーペウス王のもとに残して、ペルセウスの母のいるセリーポスに向かいます。

■ペルセウスの帰国と悲劇


 セリーポスにもどったペルセウスは、ポリュデクテースの横暴のためにディクテユスとともに苦しめられている母を見つけます。そこで、ポリュデクテースや彼のとりまき達をメドゥーサの頭を見せて石に変え、ディクテユスをセリーポスの王にします。
 そして、ペルセウスは母ダナエーとアンドロメダーとともに祖父アクリシオスに会いにアルゴスに向かいます。しかしこれを知ったアクリシオスは、神託を恐れてアルゴスを去り、ラーリッサに行きます。
ラーリッサでは、王テウタミデースが亡くなった父のために運動競技会を催します。
 ペルセウスも競技に参加するためにラーリッサにやって来ました。彼は五種競技に参加し円盤を投げたのですが、手元が狂って、円盤は客席にいた老人の足に当たり、老人は死んでしまいます。実は、それがアクリシオスでした。神託が成就したのです。
 ペルセウスは、自分が殺してしまった祖父の領地アルゴスを相続することを恥じて、アルゴスをティーリュンスの土地と交換し、その地を統治することになります。
 その後、ペルセウスとアンドロメダーの間には、多くの子が生まれますが、その子孫に英雄ヘラクレスがいます。

                      ★☆★

 この物語の登場人(怪)物のうち、ペルセウスはペルセウス座、アンドロメダーはアンドロメダ座、ケーペウスはケフェウス座、カッシエペイアはカシオペア座、ポセイドーンの送った怪獣はくじら座、ペーガソスはペガスス座となって、秋から初冬の夜空に輝いています。


 ギリシア神話は人間(神)関係も、その間に展開される物語も複雑で、その「意味」を読み解くのが大変です。呉 茂一さんは、『ギリシア神話』新潮社版、第六章の英雄伝説の始めに、ギリシアの七賢人の一人、アテーナイのソローンの言葉を引用して次のように語っています。

 ペルセウスははからずも祖父を殺して故郷を去り、ヘーラクレースは自焚(じふん)し、テーセウスは孤島に憤死し、…。ソローンの言が真ならば、彼らは皆不幸である。いずれが真か、彼らはむしろ「幸福」とは何かと、訊ねているようにも見る。あるいは彼らの価値は、「幸福」が唯一無二の価値ではない、と身を以って提示するところにあるとも、判断されようか。ギリシア神話は、当然に彼らは上代ギリシア人の世界観・人生観の結晶であるから。

 ギリシア神話には、このような人間の心の深層や人間観・世界観が隠されているようです。単純な善悪や幸・不幸では判断・理解できない物語や世界が展開され、それが人々の想像力を刺激します。古来、芸術・美術・文学などの題材となっていますが、アンドロメダとペルセウスの物語もしばしば古典絵画や彫刻の題材になっています。
 よく見ると何気なく描かれている事物にも神話の物語との対応を見つけることができます。「表紙」も見直してみてください。今回はそのような楽しみのために、少し詳しく神話を紹介しました。


注:東北大学教授・土佐誠先生の執筆によります)

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