しかし、それでもやはり何かを書くという段になると、いつも絶望的な気分に襲われることになった。僕に書くことのできる領域はあまりにも限られたものだったからだ。
「風の歌を聴け」/ 村上春樹


とりとめもなく身辺雑記のようなものを書き綴ってみようと思います。

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4月30日

 おかげさまで4月末で、サイト開設丸2年となりました。これからもよろしくお願いします。
 指輪物語第2巻「二つの塔」、新設した児童文学コーナーの第1弾バーネットの「秘密の花園」と映画化作品の紹介を追加しています。今は指輪物語最終巻「王の帰還」を読んでいます。

 3年目スタートという事で、トップ・ページの変更をしようかなと思っていたんですが、これといったアイディアが浮かばないので、そのままとなりそうです。新しい企画として、懸案だった"'70年代のJ-Pops"をスタートさせようと、とっかかりに年表を作成中です。この作業はなかなか楽しいです。連休中にアップの予定です。とりあげるアルバムにかなり傾向の片寄りができそうな気がしますが、どうなることやら。それから中原中也の詩の紹介と、プラド美術館展の紹介ページも連休中にできればいいんだけど...
 それと、7月の発表会で弾こうと思っているバッハのフランス組曲第1番のアルマンドを、何とかこの連休中に覚えておかないと本番に間に合わないと思っていて、そんなこんなで結構忙しくしています。

 amazon com.からの収入還元第1弾ということで、当サイトで紹介中の本の中から、ご希望の本2冊(2名の方に1冊ずつ)プレゼントさせていただきます。メールにご希望の書名を書いていただくだけで結構です。当選された方には、当方から連絡させていただきます。締め切りは5/4中ということで、メールはこちらの方へどうぞ。
  

○内田光子 ピアノリサイタル(NHK教育TV 芸術劇場で放映)
 内田さんは、小澤征爾と並び日本を代表する世界的な音楽家で、英国を拠点として活躍しているピアニストです。エリザベス女王から勲章を授与されたとのこと。もとよりモーツァルトのソナタ、協奏曲の録音は名盤として評価が確立していますが、90年代のシューベルトのソナタや即興曲の録音も本当に素晴らしいものでした。
 このリサイタルは昨年12月11日にサントリーホールで開かれたもので、曲目は以下のようでした。
 ・3つのピアノ曲 op.11/シェーンベルク
 ・ピアノ・ソナタ ト長調 D.894「幻想」/シューベルト
 ・ピアノ・ソナタ ハ短調 op.111/ベートーヴェン
 
 シェーンベルクも近年の内田さんの重要なレパートリーとなっているようで、この曲はシェーンベルクの最初の無調作品ですが(1909年の作曲)、12音技法による作品のような無機的な感じは受けず、聴いていて、とてもスリリングでした。内田さんの表現力に負う面も大きいのかもしれませんが、"勇気とか葛藤とか、最も力にあふれた曲"という内田さんの言葉が納得できます。
 シューベルトは、内田さんの最も好きな作曲家で、やはりサントリーホールのシューベルト・リサイタルでの変ロ長調 D.960のソナタの演奏の素晴らしさが思い出されました。このト長調のソナタでは、第1楽章の幻想曲においてシューベルト以外には考えられない抒情を湛えた悠久無辺の世界が現出しています。内田さんのシューベルトは、「即興曲op.90/op.142」の素晴らしい録音でもそうだったけど、精神の張りつめた厳しい演奏だと思います。
 op.111のベートーヴェン最後のピアノ・ソナタは、op.110のソナタとともに、僕にとってかけがえのない音楽で、第1楽章の"動:緊張"と第2楽章の"静:浄化"の対比により晩年のベートーヴェンが到達した精神世界が表現されている深遠な作品です。内田さんの演奏については、素晴らしいものの、シューベルトの作品ほどには練れていないのではという第1印象を持ちました。ブレンデルやポリーニがサントリーホールで弾いた映像もあるので、こちらも見・聴き直しながらもうすこし考えてみようと思っています。
 内田さんは、番組の冒頭のインタビューの中で、「音楽で一番大事なことは、音楽にしかできない表現を探すこと」と語っていますが、内田さんの演奏には、自分の意志の表現を一義とする精神の強靭さが感じられます。今後どんな演奏を目指していくのか、これからますます期待される演奏家です。



ピアノ・ソナタ ハ長調 D.840、
ト長調 D.894 /シューベルト
試聴できます。

即興曲集op.90/op.142
/シューベルト '96録音

 
4月20日

 
ハリー・ポッター・シリーズ第2作「ハリー・ポッターと秘密の部屋」の紹介を追加しました。もも天さんからいただいた三人組の素敵なイラストを掲載させていただきました。近々、第3巻の紹介を追加します。『指輪物語』の第2巻「The Two Towers 二つの塔」を読み、第3巻「The Return of the King 王の帰還」を引き続き読む予定です。
 和書では、梨木香歩さんのファンタジー『裏庭』を読みました。第1回児童文学ファンタジー大賞受賞作で、梨木さんの作品は初めてでしたが、大変面白かった。文庫で出ている『西の魔女が死んだ』と『からくりからくさ』も読んでみたい。

 
私はかつてバーネットの『秘密の花園』について書いたとき、すべての少女は心の中に「庭」を持っている、と述べた。この作品も、少女の内なる庭について描いているのだが、バーネットの庭と比較すると、現代に生きる少女のかかえている課題の深刻さが強く感じられる。
新潮文庫『裏庭』解説/河合隼雄


 ということで、バーネットの『秘密の花園』も読みました。こちらも初読だったけど、とてもよかった。いずれ映画化作品と一緒に紹介しようと思っています。


「裏庭」(1996)/梨木香歩

 
「私は、もう、だれの役にも立たなくていいんだ」
 全世界に向かって叫びたかった。
 自分が今まで、どんなにそのことにがんじがらめになっていたのか、たった今、気づいた。


 戦前、英国人のバーンズ一家が住んでいた屋敷には秘密の裏庭があった。13歳の照美には双子の弟がいたが、7歳の時に事故で死に、それ以来彼女の母は、父とともにレストラン経営に没頭し、照美は母の冷たさに知らず知らず傷ついていた。
 ある日照美は、今は無人で荒れ果てたバーンズ屋敷に入り込み、そこにある大鏡を入り口とする裏庭の世界に迷い込んでしまう。裏庭の世界は、いままさに崩壊しつつあり、照美が再び現実の世界に戻るためには、この世界を救う冒険の旅に出なくてはならなかった。

 照美の迷い込んだ裏庭の世界は、バーンズ家代々の裏庭の"庭師"の役目を継承したバーンズ家の娘レベッカ、さらにレベッカを引き継いだ照美の祖母、妙を初めとする既に死者となった過去のたくさんの"庭師"たちの潜在意識の蓄積により作りあげてきたものであり、新たに照美が迷い込む事によって、彼女が抱く理想の『母親なるもの』を求める意識が投影され、さらにその様相を変えていったのだと思います。
 そして照美は、この生と死の混淆のような場所である裏庭の世界を崩壊から救うという使命を果たす過程で、自らの意識下に潜むものに触れ、さらには、祖母→母→照美と継がれてきた命の流れを垣間見ることにより、いままで気づかなかった自分の心の傷を正視し、抑圧していた自分の感情の強烈な解放を経験することを通じて、自身との、そして母との和解に至る事ができたようです。

 この作品では、「いわゆる『裏庭』こそが人生の本当の表舞台。『裏庭』こそが生活の営みの根源...」という言葉も語られていますが、ここでの『裏庭』は、全人類が意識下でイメージを共有する場であり、ユングが神話や昔話の母体であると考えた普遍的無意識を象徴しているのではないかと思います。根源的で、広大で、豊穣で、ワイルドな裏庭世界の事物とのスリリングな出会いにより、自分自身の中の歪みのいくらかが解放されるというカタルシスをもたらしてくれるのが、僕にとっての最良のファンタジーなのでは、と思っています。

 
ファンタジーは内なる自己の言葉です。
 /U.K. ル=グィン

(本サイトで紹介中の他の梨木作品)
 ・西の魔女が死んだ
 ・
からくりからくさ


裏庭/梨木香歩
新潮文庫 '01年初版
第1回児童文学ファンタジー大賞受賞

The Secret Garden(1909)
秘密の花園
/ Frances Eliza Burnett



4月13日
 
(更新情報・近況など))
 ペーパーバックでは、「J.K.ローリング」のページを追加しました。ハリー・ポッター・シリーズに関するあれこれと第1作「ハリー・ポッターと賢者の石」と、その映画化作品を紹介しています。映画では、「ボーイズ・イン・ザ・シネマ」コーナーに「スタンド・バイ・ミー」を追加しました。
 
 先週、プラド美術館展(上野・国立西洋美術館にて6/16まで開催)に行ってきました。プラド美術館はスペインのマドリッドにあり、王室コレクションを中心に約3万点の絵画コレクションを誇る世界でも有数の国立美術館で、ゴヤ120点、ベラスケス52点、エル・グレコ30点、ルーベンス83点、ティッツアーノ36点などを所蔵しています。中でもポピュラーなコレクションには、ベラスケスの「ラス・メニーナス(女官たち)」、フラ・アンジェリコの「受胎告知」、ボッスの「快楽の園」、ゴヤの「着衣のマハ」と「裸のマハ」などがあります。もちろんこういった超弩級の絵は門外不出なので、今回の展覧会には来ていませんが、ゴヤの6点を筆頭として、ベラスケス5点、ティッツアーノ、ルーベンス、エル・グレコ、ティントレットがそれぞれ3点出品されています。リベーラ、スルバランの作品(各3点)も印象に残りました。いずれ、この美術展のページをアップしようかなと思っています。プラドは、いつか絶対に行ってみたい美術館のひとつです。
 これから行ってみようという方には、平日でも10時過ぎは混んでくるので、出来るだけ10時前の早い時間(開館:9時半)に行かれることをおすすめします。

 
春眠暁を覚えず、と諺(ことわざ)にいう。生活がさして苦しくない時には、生きるということもまた楽しいことである。例えば、まるまる三時間を美術作品の鑑賞に当てうるとすれば、それは眠りに優る営みであり、生に優る喜びである。
「プラド美術館の三時間」/エウヘーニオ・ドールス(ちくま学芸文庫 '97年初版)


(展示作品から)


聖アンナと聖ヨハネのいる聖家族
/エル・グレコ
油彩、カンヴァス 107×69cm
1595−1600年

貴紳の肖像
/ベラスケス
油彩、カンヴァス 40×36cm
1619−1622年

ドニャ・タデア・アリアス・デ・エンリケス
/フランシスコ・デ・ゴヤ 1789年頃
油彩、カンヴァス 191×106cm

 Courtesy of Museo del Prado.


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