緊急座談会 格闘技はプロレスか(2)

 二〇〇一年 一月一九日 (金)  下井草 村さ来にて

 

  小林稔  (こばやし みのる) 一九六ニ年生まれ

中学時代は卓球部のナンバー2 高校時代は美術部 趣味は漫画、ロック プロレス イラスト 現在はゴルフ キャバクラ

  小山昌宏 (こやま まさひろ) 一九六一年生まれ        

中学時代は卓球部のナンバー3 一貫してロックバンド ヴォーカリスト 高校時代は創作部 趣味は小林稔に同じだが現在は、無趣味 二人は中学校以来の友達

         

21世紀の格闘技

小山 あけましておめでとうございます。ちょっと遅すぎかな。先週もプロレスの話してたんだよな(笑い) さて今回は前回の座談より、いっそう深くプロレス・格闘技界の真相について探求したいのですが。

小林 暮れには猪木祭りが大阪であって、プライド12があった。今年に入って向井亜紀ちゃんのガン宣言(1)、ヒクソンをめぐる交渉が各方面ですすめられているよね。

小山 ヒクソンVS桜庭、小川のほかに、パンクラスの近藤がヒクソンとやるってしゃかりきになってる。だけどリングス、パンクラスの選手はスポーツ紙の露出度が低いよね。プロレスラーの船木、前田だからこそ、記事になるわけで、脱プロレス化した両団体の選手、確かにプロレスラーの田村もいますよ。金原もいるけど、山本、高坂、渡辺謙吾、国奥だって、一般の人は名前すらしらないでしょ。

小林 なるほど。つまり格闘技はプロレスよりもマイナーであるというわけですね。

小山 そうそう。なんかはやくもいきなり結論だすけど(笑い)。今年は格闘技のプロレス化がより強まるよね。

小林 だからK―1が成功したのも、そこなんだよね。地味な格闘技。空手は強い。いやテコンドーだ。やはりキック、ムエタイだっていうのを、じゃープロのマット、リングの上でやってみたらいい。というわけ。

小山 もう男たるもの。「誰が一番強いかきめたらええ」て、前田じゃないけど、わくわくするわけだよね。この路線は大成功したわけだ。立ち技系はK―1.寝技系はプライドに収斂されていった。だけど問題点が、このことによって明らかになってしまったよね。

小林 どういうこと?

小山 つまり新日、全日、NOAHといった古いプロレスをする団体と、リングス。パンクラスといった格闘、スポーツ性を強めた団体は、プライドの出現によって同じ物語系の団体内に追いやられてしまったわけ。物語系によりリアルな強さを基準としてつきつけたのがプライドのリングだ。パンクラスの対応は早かったよね。リングスは、リングス内のトーナメントの無意味さがようやくわかって、KOKトーナメント(2)を開催した。オープントーナメントだよね。賞金を高額にして強いやつを呼び寄せる方式。

小林 これは野球ににてるよね。チーム内での自分の存在が、こんなチーム内で終わってたまるか。もっと強いやつとやりたい。大リーガーの大打者を三振に討ち取る。大リーグで打率首位打者だっていうチームでありながら、個人競技でもある野球は、自分が世界でどこまで通用するのかっていう個の戦いなんだよね。

小山 そうそう。プロレスラーだって格闘技者だから、自分の強さがどのくらいのものなのか。はかりたいやつだらけなわけ。しかし実際は、プロレスラーは物語の中にいて、外にとびだそうとしないわけ。これって何かににてませんか?(笑い)

小林 これはサラリーマン社会(笑い)

小山 プロレス対格闘技ではないんだよね。問題は(笑い)

   格闘技者」は必ずしも優秀な政治家ではない

小林 思えば、鎖国の全日本と新日本が交流したあの80年代の一戦は、当時夢のカードだったけど、今おもうと、パリ―グとセリーグが日本シリーズをしないようなもので、どのチームが日本一なのかっていう夢なわけだよね。これって日本プロレス選手権構想なわけ。

小山 プロレス界はセリーグとパリーグが試合しなかったから、みんな仲良しクラブになってしまったよね。長州や前田、天龍、船木だって、その仲良しクラブが嫌いで、「革命」とか「反乱」したわけだけど、これって社内の人事をめぐる権力闘争そのものだよね。伊藤忠と丸紅がいがみ合っているうちに、世界が変貌してしまったのに気づかず、相変わらず国内の中小企業の権益の吸収と途上国の権益に奔走しているっていう。構図だよね。アメリカを中心にする巨大なコングロマリットとまともにぶつからない。

小林 そのアメリカというか。WWFやWCWを利用してきた全日本、新日本は、今までそれでうまくやってこれたけど、グレイシーという黒船、これはITだけど(笑い)に恐怖したわけだ。

小山 これは、もう世界戦略を立てないとやばいよってね。SONYなんかは、九十年代の日本の「失われた十年」に、IT戦略たてて、世界通信構想やってるから、今元気だよね。パナソニックはなんてったってナショナルだから。SONYははじめからインターナショナルなわけ(笑い)

小林 その点、猪木はさ。馬場が鎖国しているうちに、アミン大統領と試合しようとか、カストロとさしで喋れる唯一の日本人。これはもちろんアリと闘ったことが大きいんだけど、強さだけでなく、世界に通用するビジネスマンだったから、今格闘技世界構想を進められるわけだよね。

小山 前田もそう。これは格闘者であると同時に政治家、ビジネスマンだよね。前田は掘米さんに旧ソ連の要人を紹介してもらって、ロシアに太いパイプを築いた。最近だとKGBに接触とか。記事も載った。

小林 馬場も猪木も経営者だったわけだけど、猪木は政治家でもあったわけ。日本の政治家は地元に利益をもたらせればやってこれたけど、猪木は自我の増長と同時に、世界戦略をもっていた。馬場さんにはなかったよね。鎖国だから。地元利益誘導型だからね(笑い)

小山 格闘技の世界は、K―1、プライドによって、グローバル化したとかんがえていいよね。世界を相手にするときは「政治」と「ビジネス」が絶対必要だ。哲学と心理学といってもいいだろうね。今のところこのレベルにあるのは猪木と前田だけだね。

小林 三沢、長州も一経営者だし、船木もプロデューサーになったばかりだし、だけど世界戦略がないよね。

 

   サラリーマン化した新日本に変動が

小林 新日本の話題に戻すけど、新日は長州体制になって現場の緊張がなくなり、かえって不安がましたよね。それは強いやつ、上をめざすやつだけどね。でもその根は、レスラー同士が仲がいいっていうことにあると思うんだ。

小山 コバミは新日の人の服を作ってたから(3)、現場のレスラー、フロントの空気を直に知ってるよね。

小林 もう蝶野、橋本、武藤はね、仲よすぎ。みんな「さん」づけで呼び合ってる(笑い) 闘魂三銃士で古館一郎が売りだしたときに、不通一緒にするなって怒るのに、喜んでたからね。

小山 話変わるけど、レスラーの身長疑惑っていうのがあるでしょ(笑い) 八十三とかいうと、八〇なかったり、だいたい、八十七以上だと本当の高さを公表するみたいだよね。鈴木みのるが、プロレス時代八〇だったのに、パンクラスにいったら七十八になった。これはスポーツだから、肥大ば自己を必要しなくなったからでしょうか。

小林 イヤー。中西は小さいよ。八〇ないもの。テレビだとい大きい印象あるけど。新日でおおきいのは、越中、武藤クラスだよ。後は小さい。健介も小さいよ。ジュニアといわれた小林邦明が会ったら大きいんでびっくりしたから。

小山 ライガーなんて七〇ないからね。横と厚さはすごいけど。

小林 それに比べると全日は大きいよね。

小山 オレと仲のいい食品会社の息子(専務)(4)が、高校時代、足利工業高校の川田、三沢とレスリングしてるんだけど、小さいっていってたから、二人も八〇ちょいでしょう。当時は川田のほうが、引く力は強かったっていってたから。まあ、息子は大学時代は谷津嘉章にも使われてたから、車あらっておけとかね(笑い)。

小林 鶴田、小橋、田上は大きいけどね。

小山 この身長疑惑って、会社社会の学歴疑惑(笑い)と似てるんだよね。レスラーは体がでかいと強いっていう。このレスラーの身長もあまり意味を持たなくなるよね。サラリーマン社会だと意味もつけどね。

小林 その新日に変動が。契約を渋り、条件を逆提示する。安田が猪木の下に入り、カシン(光沢)(5)が契約保留、橋本につぎ、蝶野も新日本離脱、武藤も本契約保留だ。これは、従来の組織では新時代の要望、野心を満足させられないっていうことだ。

小山 これは会社と同じで、二極分化だ。会社にいて欲しいやつはいなくなり、たいしたことないのが残る。生産性が落ちる。だから企業としては総力戦でいくのか、強い個の集団でいくのか、を明確にしないとだめだよね。

小林 いずれにしても戦略なきところに組織はないね。

   再び21世紀の格闘技・プロレス

小山 ということで、プロレス界が、リアリズムの侵略にさらされている反面、頑として物語のプロレスを支持するファンがほとんどなのは、どうかんがえます?

小林 やっぱり大勢は、サラリーマンなので、サラリーマン社会から離脱する強い個にあこがれる一方で、組織人の悲哀をレスラーにたくせる「物語プロレス」のほうが、感動できるわけ。

小山 この要素はでかい。プロレスの生き残り方は、新しい時代の価値観をマットに再現できるかどうかだよね。もうレスラーの個性、覆面だとか、関係が弱い。組織の中で闘う一般サラリーマンに夢と苦悩を共有するレスラー。外圧で物語は瓦解しつつあり、しかし物語を放棄してはプロレスはなりたたない。

小林 契約レスラーは、フリーターなので、これからはプロレス界も正社員が少なくなり、自由契約レスラー、フリーターの心情を代表するレスラーが登場するかもしれない。

武藤の生き方なんてまさにそれだよね。

小山 しかし、橋本にしても、道場ZERO―ONEの下に小さく新日本プロレスって入ってるのは、これ独立じゃないだろう(笑)。子会社だよな。蝶野にしても武藤にしてもフリーアナウンサーとかわらないよね。契約社員だよな。もしかするとこれからの時代は、前田や佐山みたいな選手はでないのかもしれないな。

小林 というと。

小山 実は佐山(5)というやつは物凄い人間だと思う。

佐山はプロレス界の吉田松蔭だ

小山 事実、馬場なき後のリングは猪木が牛耳っているようにみえるけど、実は理論的にこの路線は佐山がひいた路線に猪木も乗っている。

小林 佐山がタイガーマスクをやめてUWFに参加していく過程で、佐山はUWFは実験場だと考えていたわけでしょう。

小山 そうそう。前田はもう団体責任者、体張る自覚があるのに対し、佐山はプロレスと格闘技の融合を本当に理論的に考えていた。臨床実験のためにプロレスをやっちゃうわけ(笑) 

小林 前田がマジぎれするのもわかるよな。

小山 前田はようするに中小企業のオヤジさんと化して、佐山にぶつかるのに、佐山は研究所の所長として発言する(笑い)これはケンカになるわな。しかし。あれから二十年たつと、佐山は黒船(ヒクソン)を招来し、格闘技でプロレス界に揺さぶりをかけ、自分の信じる格闘ロードにプロレス界を引き入れようとしている。これはまさしく黒船襲来におびえたにもかかわらず、黒船を実際上引き入れ、、これからの時代を見据えたエキセントリックな松蔭そのものだ。

小林 猪木がなぜ佐山と別れられないかというとそこなんだ。

小山 猪木はカリスマであり、リングの覇王だけど、佐山のような理論はない。また格闘技を身体だけでなく頭で考えられる佐山の存在は絶対必要な

小林 前田はそこいくと、猪木と佐山の両面をもち、しかも、格闘王のあとは、日本のドン・キング(6)をめざしているから、猪木にとってもやりにくい。

小山 つまり前田はその格闘技への忠誠心は佐山に負けず劣らずあり、しかも、リングの上のみならず組織的にも大物だから猪木とぶつからざるを得ない。

小林 つまり、世界を頭においているのは、猪木と佐山と前田ということだね。

小山 これって、もうUの遺伝子そのものだよね。純粋に誰が一番強いか、人を倒すもっとも合理的な技術は何かという純粋な運動! これはまさしくUの魂そのものだ。

小林 なんか、UWFって、マンチもオレもだまされたでしょ。だってさ、前田と他の選手の実力差がありすぎて、

結局、パンクラスじゃないけど、秒殺するわけいかないから、自然と格闘プロレスになっていったよね。

小山 歴史的にみるとそうなんだけど、Uの技術、当時のアキレス腱固めや脇固め、羽折固めだって、全部新日本の道場技でしょ。しかし、この技術はプロレスでは解りにくい。当時では、その技術をプロレスとしてみせることが限界だったとしかいいようがない。(7)

小林 桜庭や小川は出てくるべくしてでてきた選手だね。

 

再び新日本プロレス

小山 ところで、新日本、観客半減、藤波さんの「殺し合いじゃない」発言のあと、がたがただよね。それで長州カムバックだから(笑) 

小林 新日はつねにスキャンダル団体だから。前田事件の後、TPG馬鹿野郎事件の時(8)、猪木ホーガン事件(9)のとき、皆、観客そっぽむくんだ。だけど今回、問題なのは、そのときはつぎのリングを背負う選手がいた。しかし、今新日は誰もいない。皆出て行った。

小山 やばいよね。猪木の魂を背負う西村はガンでへろへろ。伝道者がいない新日。橋本は己のために団体を使うという器用さがなかった。本当に野武士だな(笑) 

小林 新日のリングにUの魂が消滅した。長州が戻るっていうことは、これは会社的だ。長州をみたい人間のほうが、多いからね。ファンは。

小山 小島、中西は反発してるけど、役者がちがう。今のレスラーは人生が試合にでない。人をぶち飛ばさんばかりの気がリングで発散されない。そこいくと、大谷と金本を比べた場合、大谷嫌いなんだけど、大谷のプロレスは少し熱さを感じる。ヘビー級転向頑張ってほしいね。

小林 その大谷も新日離脱でしょ。いい選手はでてくよね。

小山 新日、上昇策はあるのか。それは物語プロレスを追及することだ。そして格闘技専門者を排出し、「強いプロレスラー」を輩出しながら、興行的には、物語を再生し続けることが重要だ。

小林 藤田、光沢の責任は重大だよな。レスラーが格闘技者に負けるわけにはいかない。格闘技のリングに上がらないレスラーは全選手演劇学校にかよったほうがいいよね(笑い)

小山 でも客が選手を育てなくなったかもしれないね。今の選手たち新日 NOAH、全日が交流した跡に、廃墟がのこらないともいえない。期待できるのは、秋山くらい。

小林 オレは高岩(笑)に期待している。U出身のヒールだからね(笑)。

小山 ライガーもやりたいことやったから。次の案がでてこないよね。

小林 山田くんは、もうあのジュニアの祭典で、全精力つかいはたしたよね。

小山 もう、あれは夢だった。ライガー、サスケ、ドラゴン、サムライ、リッキー、邪道・外道、とにかく本当美しいジャパメキシカンプロレスをみせてもらった。

小林 ライガーも武藤とにてるけど、業界に対する功績は武藤より上かな。ムーブメントを組織したっていう点で。

小山 武藤は結局、一人の世界だものね。 

馳浩と佐々木健介

 

小山 ところで、馳(10)の動きが最近?どうも全日と新日、NOAHの間で統一構想を? 馳ならできるって?

小林 またがせねたを(笑) これも猪木の差し金ですか。この間、三沢が猪木大嫌いだっていう事件あったでしょ。

小山 猪木がまた戦略的に、マットを統一しようとしてるわけ。だから三沢君。世界戦略がないと買収されるよ。今はいいけど。

小林 ところで佐々木健介?

小山 えっ? 

小林 健介。 馳ときたら健介でしょ。

小山 あー。暫定チャンピオンね。(笑い)。健介が生きる方向性を誰かコーディネイトしないと、新日は沈没するよ。、川田をからませておいて、どこまで変身できるかな。健介。

やっぱりこのねただ(笑)。ということで、今回はこのへんで。

小林 そうですね。つかれました(笑い)。

 

(注)

1 向井亜紀はいい女である。残念。高田頑張れ。

2 ルールを変えたら主力選手が勝てなくなった。

3 新日の選手に洋服屋さんと言われ親しまれていた。寸法をはかったので知っている。

4 とある食品メーカーの息子。元レスラー。プロレス談義すると終わらなかった。

5 制圏道を創始した。格闘技界の昔牛若丸。ぶーちゃん。

6 いわずとしれたボクシング界のドン。プロモーター。

7 上野毛の新日道場で、高田がボディスラム一発でゲホゲホいってたのを忘れない(小林稔 談)

8 TPG(たけしプロレス軍団)の襲来にはあきれた。そりゃーおこるわな。

9 まさか、猪木さん。本当に失神したのですね。

10 妻は作家 高見順の娘、高見恭子。馳は国語教師でレスラー、んで国会議員。松浪健四郎と乱闘したら?