恒例座談会  プロレスは格闘技か (5) 

 

2003年 5月2日(金) 下井草 つぼ八

小林 稔 (こばやし みのる) 一九六ニ年生まれ 

     新格闘義塾「虚無道」主催 

小山昌宏 (こやま まさひろ) 一九六一年生まれ        

     人生塾「無軌道」主催 

 

衝撃・混乱のプロレス・格闘技界

小山 前回からはや九ヶ月がたちました。いやーこの間、本当に進展がはやいはやい。

小林 なにからどう話したらいいのいか(笑い)

小山 話題を整理すると、まずボブ・サップ現象だよね。それからK1石井館長、脱税逮捕。森下プライド社長自殺。かな。

小林 大きい話題だね。プロレス界は、長州のWJの発足、高山のNWFとIWGPのベルトニ冠、NOAHの小橋のGHCベルトに収斂されていくかな。

小山 格闘技界はホーストvsボブ・サップとノゲイラvsヒョードル戦につきるかな。

小林 わかりやすくいえば、前回話にでていたこのプロレスと武道が格闘技界に侵食される形で、変質していく視点からプロレスをみていくとわかりやすいよね。

小山 そうそう。驚いたというか。あきれたのは、格闘技界からのプロレス界への転向ラッシュだよね。成瀬の新日入り、長井の全日から新日入り。高坂剛の新日参戦あたりはまあいいけど。リングスだって格闘プロレスだったわけだから。

小林 だけど、あのエンセン井上の新日リング参戦には…。しかも星野勘太郎総裁の下で、小原あたりとつるむとは(笑い)。

小山 いやー。でもさすが新日だよ。永井に柳澤、リングスにパンクラスいれて、村上、安田をもってくる。対抗馬にはエンセンをかます。バランスがいいね。商売の。

小林 なんか、プロレスが格闘技組の老人ホームみたいで(笑い)。

小山 そのとおり(笑い)。格闘技の強さには、年齢と体力、技術の衰え、限界があるけど、プロレスは「強さ」をみせるのが基本だから、勝ち負けにこだわらないから、やれるんだよね。それに人材をどうすればいかせるかという視点からみれば、格闘プロレス経験者をいかしてますよ。新日は(笑い)

小林 うわ。このへん。まずいよ。

小山 でも、プロレスは強さを感動が上回らないと、それを期待しているんで…

小林 歯切れ悪いですね(笑い)。

小山 格闘プロレスはなんていったって、新日から生まれたんですから。ジョシュ・バーネットもそういってます(笑い)。Uインター最高ですって(笑い)。

小林 そういえば、田村がUWF再建をかけたUースタイルが行われたね。

小山 田村はほんとうに頑固ものだ。若いのに立派!

ボブ・サップ現象

小林 ボブ・サップ。やっぱり人気に火がついたのは、K1スリータイム・チャンピオンのホーストを二度破ったことで爆発したよね。

小山 確か田村を秒殺して、おーと思っていたら、あのノゲイラを苦しめた試合。やっぱり、技も圧倒的な力の前では通じないのかと思いましたね。結果はノゲイラの辛勝だったけど。

小林 「タイガーマスク」の「みなし児のバラード」じゃないけどさ、「力さえあればいいんだ〜」ってわけ。

小山 でも「ひねくれて星をにらんで」はいないよね。サップは。野獣を装ってるけど、かわいらしいからテレビ、CM、雑誌に引く手あまただよ。

小林 やはり、身体がでかいやつは、それだけで強いという話で、サップはアメフトでしょ。あの身体であの動き、それにあの力。すべてが規格外だよね。

小山 負けたけど、あのミルコ戦で、左を顔面にもらって痛がって倒れた。サップには申し訳ないんだけど、かわいらしいんだよね(笑い)。本当に「いたいよー」って顔して倒れるんだから。いやー人徳ですよサップの。

小林 たしかに、ボブ・サップが技を身につけたらどうしようもなく強いんだけど、僕としては、あまり技を覚えてもらうよりは、技なしで力だけでいってほしいよね。

小山 サップはかしこいので、プロレスも格闘技もちゃんと見せ場をしってるんだよね。だってさ、中西のアルゼンチンにかかってあげるんだよ〜(笑い)サップは。だからサップは、力、人徳、パフォーマンスすべてをみんなビジネスを成功させるためにもっていく、こだわりがないんだよ。

小林 というと。例の「世界論」ですか。

小山 そうそう。サップは「世界」をつくらない。世界を利用する。最近商売して疲れてきて(笑い)、思うのは、世界をつくるというのは、これは守りであると。世界をつくるということは。それは自分を守る城壁を築くことなわけで。

小林 えっ。そこに気付かれましたか(笑い)。

小山 あのー。一応わたしも成長してますので(笑い)。世界をつくろうとするものは、猪木さんにしても、前田にしても、長州にしても…。戦国武将でしかない。

小林 あの、確か何回かまえに、世界をつくらないから船木はだめだとか、世界をつくる猪木、前田は偉いっていってませんでした?

小山 いってたような気がしますね(笑い)

小林 名言しましょう。「弱いものが世界をつくる」。はじめから強いものは世界なんかつくらなくても、はじめから強い。

小山 俺たちはさ。凡人だから、弱いものが強くなる「なりあがり」にも感動し、天然のというか、天からもらったとんでもない才にも感動するわけだ。これが。

小林 やはり、スターっていうのは、その両面をもってるのでしょうけど。サップは規格外でしたね。

小山 しかしサップはいいけど、ホーストがサップとプロレスするとは(笑い)。しかもK1でホーストが負け、プロレスでサップが負けるとは…。ホーストも開きなおったんだよな。

小林 いやーまじにやるんだもんな(笑い)。みあげたエンターテイメントだよ。あのまじめなホーストが…。サップもちゃんと負けてあげるところがプロだよ。

 どうしたというんだ石井館長・森下社長

 小山 前回のいやーな予感が的中してしまいましたね。金と力に翻弄された顛末が、今回の事態に。

小林 あまり多くを語りたくないですね。この件に関しては。

小山 ただひとついえるのは、石井さんが、K1というニュービジネスをたちあげて、立ち技で「誰が一番つよいのか」きめようという夢をかなえてくれたわけじゃない。その舞台はのこった。プライドにしても同じだということしかいえないよね。

小林 あまりウラのことは知らないほうがいいってこともありますよね。

小山 週刊誌やらネットでいろいろ憶測されたけど、結局、プロレスもそうだけど、興行だから、一発屋的な危険がいつもつきまとうよね。この世界は。

小林 …

プロレス原点回帰

小林 またプロレスにもどしましょうか。

小山 ここのところ、格闘技に侵食されたプロレスの原点回帰がみられて面白いんですけど。

小林 やはり、NOAHで小橋がチャンピオンに帰り咲いたのは大きいですね。最近レスラーを感じさせる人があまりいなかったじゃないですか。この間の小橋vs蝶野は、久しぶりに熱くなった。

小山 俺はZEROーONEかな。この間の武藤・小島vs橋本・小川はよかったよ。確かに橋本がいうようにつぶしあいなんだけど、一人一人が持ち味をだしていたよね。橋本の袈裟切りチョップは、新日時代どころではないね。本当、思いっきり撃ちこんでいる。武藤のシャイニングウイザードもいいし、小川のきれのいい打ち込み、投げもいい。小島のラリアットも見せ場をつくった。

小林 ただ、小川は…。

小山 そうなんだ。また切れた(笑い)。小島にマウントからパンチの嵐。いきなりバリーテュードになるから。

小林 それってやっぱり、村上とおなじだね。新日時代の村上・小川のタッグはテロリストと無法者のタックだったから。ふたりとも切れる切れる(笑い)

小山 で、川田がそこにからんでくるわけだ(笑い)。「俺を倒さないと全日本を倒したことにならないぞ」って。

小林 蔭で渕も見守っている(笑い)。これがポイントだ。

小山 いいねー。渕。嫁さん、もらったか(笑い)。

小林 永源じゃなかったっけ(笑い)。やっぱり、プロレスは一人一人が物語をもってるわけで、これがリング上で延々と続く。

小山 そうそう。このひっぱりがプロレスなんですよ。

小林 新日vsNOAH、全日本vsZEROーONEの交流が、また新たな物語をつくっていく。で、WJなんですけど。

小山 WJは80年代の新日プロレスだよね。長州イズム健在どころか、より強くなってるよね。

小林 でもハイスパートレスリングではないよね。

小山 いやー。やっぱりマサ斉藤がいるよね(笑い)。我慢のプロレスだよ。WJは。意地のはりあいが格好いい。

小林 斉藤じゃないよ。浜口だよ〜。それって橋本、天山、小島のスタイルじゃない。

小山 だから〜。みんな新日なんだよ(笑い)。

小林 しかし健介はいいとしても健想もWJにいくとはな。

小山 NOHAで一番新日的なのは、やっぱり小橋だな。だいたい小橋のあの逆水平がさ、いやーいいか(笑い)。

小林 ところでさ、永田vs高山どうだった。

小山 なんか。高山。存在感がでてきたよね。器用じゃないし、強さもあまり感じないんだけど、負ける感じがしないよね。

小林 それって強いってことじゃない(笑い)。

小山 あっそうか(笑い)。

小林 で、中西vs藤田。格闘技ルールですが。

小山 藤田が勝って当然の試合だったけど。あまり面白い試合じゃなかったよね。

小林 藤田vs中西、プロレスルールだと、中西が勝つでしょ。アルゼンチンで(笑い)。

小山 だから〜。いいんだよ。プロレスなんだから。(怒)

ばらまかれた猪木の遺伝子が(なんだよ)

小山 前にさ、猪木の格闘遺伝子(I)がU遺伝子をつくったっていう話でたでしょ。気になるのは、猪木によって前田がプライドに吸収され、高田がプライドに回収されたでしょ。この時点で、もうUはないんだよね。

小林 でも田村がさ。パンクラスがあるさ。修斗があるや。

小山 これはさ、プロレスが新日的になり、格闘技がプライドに収斂されたのは、猪木の遺伝子がマットを制圧したといえないだろうか?

小林 そうかも。こうなったら。邪道に走るか〜。えっえ。

小山 でも、大日本、WMF、WEWはみなかったよな。あっ。そういえば冬木なくなったんだよな。理不尽大王。最後のラジオ出演がおそらく、文化放送でやってる辻さんの番組だったかな。あのあとすぐなくなったんだよな。冬木のプロレススタイルは好きじゃなかったけど、なんかさびしいなぁ。

小林 冬木はやはり全日遺伝子ばりばりですよね。馬場さんというより、天龍かな。

小山 戦うスピリットはすばらしかったよね。

小林 今気づいたけど、全日の遺伝子はそうだ。天竜革命によって作られたT遺伝子だ。今気づいた。これからはI遺伝子とT遺伝子の対決だぁ。

小山 でも天龍は一代に始まり、一代で終わる人だと。いい意味で。後継者なんてつくらない。そう。天龍は世界をつくらない人だから。そういう意味で遺伝子として強いかもしれない。

武道 格闘技 プロレス バランス関係

 小山 武道、格闘技、プロレスのバランスが動いたよ。

小林 膨張する格闘技が、K1脱税事件とプライド問題で、いい意味で落ち着いてきた。

小山 いい三者の関係は、法の精神、立法、司法、行政のバランスだよね。武道は立法で、戦いの精神をおこす。格闘技は司法。法をいかし、裁き(試し)あう場。プロレスは行政。法をいかしながらも、ビジネスのために法を無視する。エンターテイメントのためにもちいる。

小林 それってWWEにはまったく通用しないよ(笑い)。

小山 ごもっともです。(笑い)。だからプロレスは面白いんだよ〜。じゃ経済の三面等価の原則にはあてはまるぞ。これは。生産(武道)、分配(格闘技)、支出(プロレス)の付加価値は等価であると。武道によって生み出された精神と技術は格闘技にいかされ、格闘技でつちかわれた精神と技術はプロレスでお客を喜ばせる(笑い)。

小林 だから。WWEには関係ないって(笑い)。

小山 そうだね(笑い。)   

プロレスとプライド ねじれた関係

小林 で、プロレスはまた盛り返す。

小山 K1もカードでつくしたよね。プライドもノゲイラvsヒョードルで終わった。

小林 高田が新日の格闘技、本格参戦に好意をしめしてるね。

小山 これって、高田のUインターの弔い合戦なんだな。

小林 プロレスで負けたUインター。今度は格闘技で新日をやっつけてやる。プライドvs新日は形をかえた弔いか。

小山 これで、また物語ができるでしょ。岩窟王高田。十年越しの決意ってね。

小林 もっといいのは、ブラジリアン・トップチームとロシアン・トップチームに対抗して、ジャパン・トップチームを結成し、三者でトーナメント戦を実施っていうのはどう? 

小山 もちろん、小川、吉田、藤田、桜庭、高坂、田村あたりをあげて。あと井上康生も電撃参戦だ。

小林 で、ブラジル、ロシアのオーダーは?

小山 今、考えるから(笑い)。ちょっとまって(笑い)

小林 高山もいれたほうがいい。

小山 えっ。敵チームだよ。

小林 だから、高山は覆面でロシア代表。その名はモンスタージョー。

小山 それって。あのアストロ球団の。一人だけ覆面っていうのも(笑い)。結局死ぬんだよ。ジョーは(笑い)。

小林 高山は、馬場さんなんだよ。ほら「グレートゼブラ」なんだよ。

小山 いっそのこと、全員覆面ででるっていうのは?

小林 おおっ。それいいね。プライド初。覆面団体戦、全試合、ブラジルは柔術着、日本は柔道着、ロシアはサンボ着で覆面試合。

小山 これぞ。プロレス界の格闘技界への応酬だ。プロレスが元気になると、世界はHAPPY。強さだけが。価値尺度になるとろくなことはない。強さはすぐ金とくっつきたがるからね。「今度また話すころには、おそらく、プロレスと格闘技のひとつの方向性がみえてくるような気がするんだよね」って前回いってるんだけど。みえたかな。

小林 不況、憂鬱、沈滞する時代には、リアリズムは利かない。やはりプロレスのようにシュールかつ理不尽でないと(笑い)。

小山 そうそう。リアルだけだと絶望しかないもん。夢をみないと。リアリズムもそれはビジネス下ではエンターテイメントでしかありえないわけだから。楽しく、やりましょー。

小林 今年は、プロレス復活の年ですぞ〜。

小山 だといいけど(笑い)。

 

21世紀のアナログマガジン「まぐま」 10号掲載