ミュージカル『モーツァルト!』(再演)

脚本・作詞ミヒャエル・クンツェ
作 曲シルヴェスター・リーヴァイ
演出・訳詞小池修一郎

キャスト

            ※自分が観劇した「大阪井上さん楽」の主なキャストです。
ヴォルフガング・モーツァルト 井上 芳雄
コンスタンツェ(モーツァルトの妻) 西田ひかる
ナンネル(モーツァルトの姉) 高橋由美子
フォン・ヴァルトシュッテン男爵夫人 香寿たつき
コロレード大司教(ザルツブルグの領主) 山口祐一朗
レオポルト(モーツァルトの父) 市村 正親
セシリア・ウェーバー(コンスタンツェの母) 阿知波悟美
カール・ヨゼフ・アルコ伯爵(コロレードの部下) 花王おさむ
エマヌエル・シカネーダー 吉野 圭吾
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STORY(公演のチラシより)

 幼い頃「神童」と呼ばれたヴォルフガング・モーツァルトは、父の英才教育をうけながらも、ありのままの自分の姿を受け入れず、「神童」のイメージを押し付ける父に反発していた。
また、モーツァルトと父の雇い主でもあるザルツブルクの領主コロレード大司教は、モーツァルトを自分の宮廷音楽家として束縛し、才能の独占を図るが、反発したモーツァルトは宮廷音楽の職を辞めてしまう。
ザルツブルクを飛び出し、ウイーン、パリ、ロンドンと恵まれた職場を求め旅に出るモーツァルト。
故郷で姉はモーツァルトの成功を夢見ている。
しかし、父は未熟で世間知らずのモーツァルトが心配でたまらない。
コロレード大司教の策略もあり、モーツァルトは新しい仕事に就くことも出来ない。
その上、ウェーバー一家に利用され、一文無しに・・・。
しかも、ザルツブルクから一緒だった母が死に、絶望の淵に立たされる。
そんな中、ウェーバー一家の娘コンスタンツェに惹かれ、二人は愛をはぐくむ。

 モーツァルトの才能を認めるフォン・ヴァルトシュッテン男爵夫人はその才能を開花させるために、ウイーンでの音楽活動を勧めるのだが、コロレード大司教はザルツブルクに戻れとモーツァルに命令する。
対決はエスカレートし、それぞれに最後通牒を投げつける。
コロレード大司教とたもとを分かったモーツァルトは、束縛するものから解放され、自由の身になれたように思えたのだが・・・。

 やがて、モーツァルトは自分が自由でない事を理解する。
神童アマデの姿でモーツァルトを追い詰めるもの・・・それは自分自身の才能・・・今までのすべての障害よりも
強固で、更に高みを目指し進む事を要求してくる。
アマデは次第に悪魔と化す。モーツァルトは、その悪魔に仕える運命に定められていた・・・。

2005.6.25(土)ソワレ観劇。梅田芸術劇場にて 座席2階6列42番

初めてのモーツァルト!観劇でした。それがくしくも井上さん大阪楽。狙ったわけではありません(笑)
それにしても・・・2階はやっぱり遠かった・・・。でもセンターだったし、全体が観えてよかったです。
表情は殆ど分からなかった、ということをふまえた上で感想を少し書いてみたいと思います。
あ、演出は初演と殆ど変わってなかったように思います。ちょっとほっとしました。

まず、初演と違っていたと思うちょっとした(?)シーン。
ヴォルフガングが女性と二人で部屋にいた時、パパがやってくるシーン。井上さんが上着はだけた状態で慌てて出てきて、その後さあっと女性が帰ろうとしてばれますが、その時市村パパが「あらっ?」と^^;
しかも、2度「あらっ?」と小首かしげてその女性を観てました。(なんだかちょっとお茶目・・・。)
そして女性が逃げ帰って、井上さんが「パパ・・・」と話しかけても、ちょっとの間その女性が帰った方(上手)をじっと見ていてました。その仕草と間がなんだか可笑しかったです。(客席からも笑いが。)
でも、一瞬にしてその空気を引き戻す市村さんはやっぱりさすが。

あと、カツラをかぶってコロ様の前に現れる井上ヴォルフガングがそのカツラを投げますが、それをキャッチしたコロ様、そのカツラにキスしてたように観えました。
あの、意図があったのかどうかは分かりませんが、前では井上ヴォルフガングが熱い演技(しかも怒り)をしているのに笑いをとってはいけないように思いますが、いかがでしょうか(笑)

さてさて。井上さんですが、本当に声が太くなってたくましい男前な(?)声になりましたねえ。
出だしの台詞からその違う声にドキッとしてしまいました。
ナンネールとふざけてる姿や、友人たちと騒いでる姿はとてもはじけていて、時にはお茶目というかコミカルでした。
それだけに、苦悩していく様が痛々しく、後半の狂ったような感情は鬼気迫るものがあって、すごい迫力でした。
演じているというより「生きている」感じでしょうか。
歌声もとても伸びてよく出てたように思いました。「残酷な人生」の「ただひとり〜♪」の「り〜♪」を地声ギリギリで歌ったのにはびっくりしました。初演は裏声だったように記憶しているので。
「なぜこのままの僕を愛してくれないの・・・」では涙がじんわり。

2幕は特に「何かに取り憑かれてるんではないか」と思った位で、アマデと争うシーンも「家族を帰せ!!」と搾り出すような絶叫で狂ってしまったかのようだったし、、その直後アマデの後ろをついていく井上ヴォルフガングの放心状態ぶりはもう魂抜けてるんじゃないかと思う位で。
レクイエムを書くその姿はもう怖くて観てられない位でした。
またアンサンブルもとてもよくて、まとまっていて迫力もあったため、その相乗効果が更に緊迫感を生んでいて本当に惹き込まれました。
井上さんが仰向けになって拍手がおきた時、私は拍手出来ませんでした。というか忘れたんですね。呆然としてしまって。拍手の音でちょっと我に帰って(笑)遅れて拍手をした私でした。
若干高音がきつそうな部分もあったように思いましたが、こんな遠くの席にも伝わるような演じ方、歌い方をしている井上さんに成長を強く感じました。
今度は表情の観える席で^^;じっくり観てみたいです。

アマデもよかったなあ。ヴォルフガングの後ろにストン、と降りてきた時怖かった〜。
とても存在感がありました。

山口さんですが、相変わらずの迫力ある安定した歌声でした。
ただ、「神よ、何故許される」の歌い方、前の方が私は好きです。「猿でも!」「傲慢!」「自惚れ!」と所々を歌ではなく、叫んでいるのですが、個人的にはじっくり聞かせてほしいなあ、と。

高橋さん、とても安定しててよかった。寂しさ、不安がその歌声から感じられて、市村パパとのハーモニーも合っていた様に思います。

香寿さん。お初でした。とても歌がうまいし、よく声も出ていたように思います。ただ、久世さんのようなやわらかい包容力を持った声が好きな私にとっては、少々物足りなさを感じました。
でも、とても安定した歌声でした。
「星から降る金」のラスト、歌い方を(初演の久世さんと)変えていたのですが、これは彼女だけなのでしょうか?

西田さん。初演の時より感情が表に出てる感じがしました。「ダンスはやめられない」の仕草とかもとても大きくなってました。
後は、好みでしょうか・・・。高音になると裏声になって弱くなったり、癖をつけて歌ったりして、ガツン!とこないんです。ちょっと残念・・・。

市村パパはさすが、でした。余裕があるというか、観て聞いて安心します。

圭吾さん、初演よりも仕草と言うか動きが大きくなったような印象を受けました。


そうそう、カーテンコール。
市村パパのお茶目ポーズは健在だったようです(笑)足をたかーく上げてくるっと回してました。
そして挨拶ですが、
市村パパの司会で、「今日、一足早く楽を迎える役者がいます。私の息子を演じました・・・アマデの高橋愛子ちゃん」
には肩透かし(笑)
でも、「アマデはマイクがないので私が変わりに・・・」と市村パパ。愛子さんが耳打ち。ふんふん、と聞いた市村パパは、
「今まで生きてた中で一番・・・」(おいおい。)客席爆笑でした。
で、井上さんに移ると、井上さんは「ありがとう、パパ。」と言って一歩前に。
「今死んだばかりなんで頭が働かないんですが」と言いつつ、「体力的にもきつく、顎がハズレそうになったりもして死にそうになったんですが(笑)」と笑いをとる井上さん。
モーツァルトの曲のように、この作品もずっと皆さんの心に残って欲しい、一ヶ月やり遂げることが出来て嬉しい、またこの作品でここに立ちたい、とかそういう話をしていました。
そして、先に楽を迎えるのは寂しいやら得した気分やら、と^^;
相変わらず達者なしゃべりでした(笑)そして、深々とお辞儀してました。
そういえば、「愛子と・・・」と呼び捨てにしてたなあ。あんまり井上さんが誰かを呼び捨てって聞いたことがなかったので、ちょっと驚きました^^;
話してる途中で「なんだろ、分からないけど。」って井上さんよく言う気がしますが、この前シンストで浦井さんも同じこと言っていたのを思い出しました(笑)

オケが終わっても拍手がやまず、井上さんと愛子さんが登場。「大阪ばんざ〜い!」と万歳三唱をし、上手下手中央と移動してはお辞儀をし、最後には「ん〜まっ!!」と2人で投げキッスをしてました。
そして、「さあ、帰ろう!」と言って愛子さんをお姫様抱っこして下手までダッシュ。そして、愛子さんを軽く胴上げ状態して(ポンと上に上げて)はけていきました。

とてもよい舞台でした。東京も楽しみです。