tptフューチャーズ2002

「アダムとイブ」〜私の犯罪学〜

作:寺山修司 
演出:木内宏昌 デザイン:サイモン・ドウ、松岡泉 舞台監督:増田裕幸 
プロデューサー:tpt門井均

出 演

中年の男/または老いたアダム 真名古敬二
中年の女/または欲深きイブ  中川安奈
その長男/または殺人者カイン 塩野谷正幸   
その次男/または切手蒐集狂アベル 北村有起
少女/または壁の外の神の声 小山萌子 
神父/またはコロス 植野葉子/久松信美/由地慶伍
/坪川拓史/辰巳蒼
   

STORY

新宿の場末のトルコ風呂「エデン」の三階にある、うらさびれたアパートの一室。
安普請の床から煙のように湯気があちこちから立ち昇っている。
とびきり大きい穴に板を打ち付け、湯気をふせいでいるのは次男。
ベットに腰掛けて林檎をかじっているのは中年の女。
いきなり怒鳴りだすこの聖家族の父親・・・・・・中年の男。
・・・・・・・・・・・・・・・

林檎を目の仇にしている男は(林檎を食うたび悪い事が起きていたそうな。)ベットの中から沢山の林檎を
発見する。
脅える女。男は「食った分だけ払えばいい」とその林檎をすべて帰してくると強引に持っていってしまう。
一人残された女は、実はその他にも沢山(半端じゃ無い数の)の林檎を隠していた。
ごろごろ転がる大量の林檎。(※床が激しく斜めになっているから。)
ひどく慌てる女。とうちゃんが帰ってくる前に始末しなくては・・・。
そこへ長男が帰ってくる。女は、次男が打ち付けていた板を長男にはずさせ、そこから捨てようと考える。
そして、とうちゃんにも内緒だよ、と釘をさし、代わりに何でも言う事を聞いてあげると言うと長男はこう言う。
「僕を逃がしてくれる?ここから・・・」

当然、女は反対する。そして、板は長男の苦労の末開く。その穴からあふれるように黄金の賛美歌が流れる。。。

長男が一人っきりで、自分の思いを呟いている。

自分の中に赤い血という鉄道を持ち、その中を走り抜けていく汽車。
いつも汽笛を鳴らしつづけ、次の駅を探し続けていた。でも、どこへも行けなかった・・・と。

すると、壁の外から清冽な少女の声が聞こえてくる。
そして、少女は「その板を開けて‘天国(エデン)’を見てみれば」と言う。
躊躇していた長男だが、少女の言葉の誘導に、そーっとその下(エデン)を覗き込む。そして、そこにある「現実」
を目の当たりにし、呆然とする・・・。

場面が変わり、女と次男がいる所に激怒した男がとび込んでくる。
「果物屋に返しに行ったら、200ばかり足りねえと言いやがる!」と。
相当の大喧嘩をし、果物屋も刑事を呼んでここに踏み込む、と言ったらしい。
男も「林檎が無かったら名誉毀損で100万円ふんだくってやるぞ!」と宣言してしまったらしい。
すっかりうろたえた女。男を誤魔化して処分しようとするが、失敗し大量の林檎は見つかってしまう。
せっぱつまった女は長男のせいにする。次男も話を合わせる。
半信半疑ながらも、とにかくこの林檎を処分してしまわないと、と男はあの穴から捨てようとする。
1個2個、と捨てていく男に、急に未練がましく、女はすがる。「2,3個は残してもいいだろ?」と。
当然そんな事は出来ないと言う男に、女は急に激しく立ちはだかる。「いや!林檎は渡さない!!」
それでも強引に箱の中の林檎を捨てる男を、女は鬼のような形相で突き飛ばしてしまう。
悲鳴と供に穴の中に落ちてしまう男。びっくりした次男は女から逃げようとし足を滑らせ、女の差しのべる手も
間に合わず、次男もまた落ちてしまう。二人とも暗黒のエデンの園へ・・・。

女は呆然としながらも「誰にもやらないよ・・・わたしの林檎だからね・・・」

あたりを見渡し女は独り言を呟きつづける。そして、はっと刑事が来ないうちに林檎を始末しないと、と穴の中に
林檎を1個1個落とし始める。悔しそうに、「りんごの唄」を歌いながら・・・。

場面は変わり、最初のシーンと同じになるが、目に見えて豊かになっている。
シーツ一つにしてもシルクのようだし。
そして、女は真っ赤な下着に、真っ赤な口紅。髪もひっつめから綺麗におろしている。
実は男が保険金を残してくれていた。女は無邪気にはしゃいでる。
怒鳴り散らすとうちゃんもいないし、金はあるし、林檎も食べ放題・・・。
しかし、長男は聞いてるのか聞いてないのかあまりしゃべらない。
そして前は「ここから出て行きたい」と言っていた長男は「ぼくにはここが一番似合う。(だからもう行かない)
と言い出す。
女は途中でもう長男の言葉を聞いてないように独り言を始める。そこへ誰かがやってくる。ビクッとする女。

刑事かと思った女に長男は言う。「この人は刑事じゃない・・・病院の人だ」と。
事態を飲み込めない女に長男は「お母さんはきちがいだ、しかも人殺しまでやったんだ・・・」と。
精神病院に連れて行かれる女は最後まで「冗談だろ・・・?」とすがるが、長男は冷たい。
すると、女は「かあちゃん、お前なんか(昔から)大嫌いだったよ」と言い、泣きそうな顔で連れて行かれる。
教会音楽の流れる中、長男は呟く。
「みんな行っちまった・・・一人になれたのだ、とうとう。しかも一人でいながら一人じゃない。僕の中にはもう
一人の「あのお方が」いる
・・・(その「あのお方」は)こう言っている。「お母さん僕は貴方を売りました!」
「お母さん僕は貴方を愛してた!」・・・・毎日、林檎を食って食って食いまくってやる・・・信じられるたった一人
の「あのお方」と一緒に。そう、地獄から愛を込めて。だが待てよ・・・そう地獄じゃない。天国よりも高い所に
あるのだから。」

そうして高まっていく音楽の中、長男は湯煙が沢山立ち上る部屋の中、闇に包まれていく。ー終ー


これは、欲深いイヴがむさぼる林檎をめぐって新たに巻き起こるもう一つの「創世記」。
聖と俗の鮮烈なコントラストに彩られた都市生活とノスタルジー、家族と孤独、血と愛欲、記憶と未来、
希望と絶望.....。

(観劇、及びパンフ、tptHPより自分なりにまとめてみました。)

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感想観劇:2002.4.6 座席:2番(※開演時に来てない人がいて4番に(^^ゞ)

 まず最初に一瞬びっくりしたのは、(舞台への)入り口が前扉だったこと。入ったら、目の前に舞台のセットが!
(しかも後ろから見る感じ。)一瞬立ち止まっちゃいました(^^ゞ普通はありえないよなあ。
そして席につき、そのセットをじっくり見ると、壁はなく、大人が(手をつかず)上がれるか上がれないくらいの
台の上に激しく傾いた床、錆びれたようなベット、トイレetc・・・。そして紐が吊るされ、洗濯物がかかっている。
見るからに不健康、っていうかなんか歪んでる空間が浮かび上がってる。

 感想、っていうと一言でいうと「不思議な気持ち」。でも各場面が妙に印象に残ってるんだよなあ・・・。
中川さんすごいガニマタ歩きでひっつめ頭なんだけど、やっぱり綺麗です。すんごい色が白い。
そして、すごい勢いで林檎をかじる、食べる、食べる・・・。なんか、いつも常に林檎を食べてる感じ。
どの場面でも。しかもむしゃむしゃ。なんかある意味「中毒」じゃないか、って思わせる雰囲気でした。
そして所々溶暗すると、「神父たち」がやってきて口々に話し始める。
この会話も不思議だし、一人はアコーデオン持ってて、弾き出すし。
そして夢のようにすーっといなくなってしまう。
?????と思っている間に違う展開が始まっている、という感じでしょうか・・・。
この家族、とにかく歪んでる感じがしました。長男は親に向かって敬語だし、しかもなんか感情が入ってない
感じだし。次男はいかにも「マニア」っぽい感じだし。
そして繰り広げられる会話の中にいろんな感情が混じっていて、なんとなく分かる気もしました。
実際行動におこすかどうかは別として、何も特別な出来事ではなく、感情ではなく、現代の中にも十分
ありえるものなんだろうな、と。

※長男も女も長い独り言を呟くシーンがあるんだけど、全部はとても載せられず省略しました。
特に長男の台詞はとても長く、また時々ぞっとしたりなんだか苦しくなったりしました。
でも、本当はすべてを聞くのとでは印象が変わるかも知れません。それは御了承下さいませ。
 
見終わって、直接人殺しをしたのは「イブ」だったけど、結局「カイン」はやっぱりカインだった・・・。とふと。
いちお、↓に「創世記」について少し勉強してみたのでご覧下さい。
確かに、この舞台と重なるなあ、と(当たり前ながら)思いました。
なんだかレポになってなくて御免なさいm(__)m

そうそう、このパンフ、面白い。「アダムとイブ」という表紙をひっくり返すと「火あそび」に!
しかも、上下逆なので、真中のページは上半分と下半分が上下逆。
そして上演本つき(^^ゞ
さすが、tpt。(?)

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《参考》旧訳聖書「創世記」より(自分なりに要約?)

その1「アダムとイヴ」

アダムは旧約聖書-創世記において創造主が最初に創造した人間。
アダムは神が水からの姿を象り、地上を支配させるために創造したという。
神は赤い土で人形を作り、その鼻から息を吹き込み、アダムを創造した(命が吹き込まれた)。
(※アダム語源はヘブライ語の「アダマ(土)」と「アドム(赤)」の合成語だそうな。)
 イヴはアダムの肋骨より創られた。(※イヴの語源はヘブライ語の「命」。)
当初、アダムとイヴはエデンの園において平穏な日々を送っていたが、一匹の蛇によってそれは終わりを次げる
ことになる。蛇はイヴに絶対に口にしてはならないと言う「善悪の知識の木」の実を食べるように誘惑する。
(※「りんご」という記述はないらしい!)
イヴは蛇にそそのかされついにその実を口にしてしまう。
アダムもまたイヴに勧められその実を食べてしまう。
そのことが神の怒りに触れアダムとイヴは楽園を追放されることになる。

その2「アベルとカイン」

アダムとイヴの間に2人の兄弟がいた。兄のカインと弟のアベルである。
アベルは羊を飼い、カインは土地を耕した。
アベルは子羊を神にささげた。一方、カインは大地から収穫したものを神にささげた。
神はアベルの供え物は受け取ったがカインの供え物は受け取らなかった。
カインは激しく怒る。
神はカインに「なぜ怒っているのだ。正しいことをしているなら顔を上げよ。」と言う。
カインはアベルを野原に誘い出しアベルを石で打ち殺した。
これを知った神はカインに言った。
「なんということをしたのか?アベルの血が大地から叫びをあげている。アベルの血により大地は呪われた。
もはや土地を耕してもお前のために作物を生み出すことはないだろう。お前は地をさまようことになる。」
神はこの土地からカインを追放し,カインは地上の放浪者となり,エデンの東のノドの地に移り住む。
・・・・・・・

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