髑髏城の七人〜アカドクロ〜

作 中島かずき /演出 いのうえひでのり

《主なキャスト》

玉ころがしの捨之介・天魔王(二役)/古田新太

無界屋蘭兵衛/水野美紀
沙霧/佐藤仁美
極楽太夫/坂井真紀

抜かずの兵庫/橋本じゅん

裏切り三五/河野まさと * 磯平/礒野慎吾

斬光の邪鬼丸(じゃきまる)/山本亨
狸穴(まみあな)二郎衛門/佐藤正宏
贋鉄斎(がんてつさい)/梶原善

あらすじ

時に天正十八年。戦国の覇者織田信長が、本能寺の変により倒れてすでに八年。
寂漠として広がる関東荒野、その砂塵の彼方にひとりの男が現れた。
と、その眼前を駆け抜ける女がいる。名を沙霧
「絵図面はどこだ!」
黒の鎧に身を包んだ武士団・関東髑髏党の荒武者邪鬼丸らが沙霧を追い詰める。
男は、通りかかった謎の牢人者・狸穴二郎衛門と共に沙霧を救った。
その男、人呼んで玉ころがしの捨之介。女の春と夢を売る、人買い稼業のろくでなしー。

彼は髑髏党の目からごまかすために、沙霧を関東一の色里、無界の里に放り込む。
主人、無界屋蘭兵衛が捨之介と古いなじみだったのだ。が、その無界の里にも髑髏党の手は伸びる。

天下統一は大阪の豊臣秀吉の手によりなされようとしていた。唯一、関東荒野をのぞいては。
この無頼の地に、天魔王と名乗る仮面の魔人が率いる一大武装集団が現れたのだ。その名を関東髑髏党。
関東の平野に忽然とそびえる髑髏党の根城を人々はいつしか髑髏城と呼び畏れ、天下統一を狙う秀吉にとって、
いまや関東の天魔王こそが最後にして最大の敵であった。
そして、沙霧が追われている理由、「絵図面」はその髑髏城の設計図だったのだ。
沙霧の父はその髑髏城の設計者。しかし、築城に関わった父や一族は城が一夜にして完成した直後皆殺しに・・・。
「絵図面」が秀吉の手に渡ることを恐れる髑髏党は懸命に沙霧を追っていたという事だった。
築城に関わった一族の唯一の生き残り沙霧は、闘う事を決意する。
武力による支配を嫌い無界の里を守ろうとする遊女、極楽太夫も共に共に闘う事を決意する。
そして、彼女たちを守る為に、捨之介、蘭兵衛、太夫の自称用心棒・抜かずの兵庫も立ち上がる。

しかし、彼女たちを守る為ある商談を持ち込んだ蘭兵衛は、逆に過去を引きずっている己の心の揺れを天魔王に指摘される。
天魔王に信長の面影を重ねているのか、烈しく抵抗するも抵抗しきれない蘭兵衛。ついに、魔の杯を口にする。
「無界屋蘭兵衛は死んだ・・・今の私は人切りお蘭・・・・」
蘭兵衛は、天魔王に寝返ってしまったのだった。
それを目の当たりにした沙霧は混乱する。天魔王の顔は、捨之介と瓜二つ。そして、蘭兵衛の裏切りー。

容赦ない髑髏党。そして天魔王。その天魔王の鎧は刀を砕き、銃弾さえもはじき返す無敵の強さ。
そこへ、この世で唯一、あの天魔王の鎧を砕く刀を打てる男、天才謎刀鍛冶・贋鉄斎も闘いに加わる。
兵庫の仲間・裏切り三五、兵庫の兄・磯平を巻き込んで捨之介と沙霧とともに髑髏党に立ち向かう。
その頃、ついに秀吉は、十万の軍勢を率いて関東軍に攻めのぼらんとしていた。風雲急を告げる関東荒野。
善悪愛憎入り乱れて、奇しき縁に結ばれた七人の戦いが今始まるー。

(パンフを基にはしてますが、自分なりにアレンジもしてます。)
2004.5.2(日)新国立劇場にてマチネ観劇 座席1階(チケットが手元にない・・・^^;18列の20番台でした。

私がかなりはまった「髑髏城の七人(97年)」。その再演(正確にいうと90年が初演なので再々演。)とあって、私はかなり楽しみにしていた。
しかも、新国立劇場中劇場。この空間と髑髏城〜は絶対合う!と思っていた。
勿論、97年とは違う捨之介だと、観る前から自分に言い聞かせてました(笑)

まず97年との主な大きい違い。
歌やダンスのない、ストレートプレイであったこと。冒頭にあった「本能寺の変」シーンがばっさりカットされていたこと。「邪鬼丸」という人物が加わったこと。
天魔王のヘアスタイルも色も最初、捨之介と違っていた事。(この意図がまだよく分かってない私。)
ラスト、沙霧が家康に「天魔王」の首を差し出すシーンが大きく変わっていたこと。(前回は、もう既に落としてある首を白い布に包んで渡していました。が、今回はよりリアルに・・・)
・・・でしょうか。
コンセプトは勿論同じですが、今回の髑髏城〜は前回とはかなり違ってました。そんな中で「あ、このシーン懐かしい」「この台詞、一緒だ」と所々リンクするっていうか。
新鮮でした。
ストレートプレイにすることによって、それぞれの思いがより強く感じられて引き締まってたように思います。
アカドクロを観る事によって、アオドクロも同時に楽しみになりました。
客席も「髑髏城〜」を知ってる人が多いのか、「お馴染みの懐かしシーン」では笑いだけでなく、拍手もおきたりしてました。
私も結構笑いました。そして、切なくもなりました。

主なキャストの方々についてちょっと独断と偏見^^;の感想を。
☆佐藤正宏さん
文字通り(?)の狸親父っぷりはぴったりでした。かる〜いトーンで周りをひょいひょいかわしたかと思うと、ふと厳しい表情をのぞかせたり。存在感たっぷり。ちなみに、この狸穴二郎衛門=徳川家康という設定です。

☆山本亨さん
怪しい(笑)面白い(爆)名前の通り、思いっきり悪で、サディステックなんですが、時折笑いポイント(?)が・・・。
自分の髪の毛をいじりながら、ぼそぼそっと(ちょっと甘えるような言い方で)同じ言葉を繰り返したりしてたり。
「天保十二年〜」でのその面白(っていうかぶっ壊れ?)キャラが印象深かった彼ですが、「もう、tptには戻れない(謎)」的な思いっきりぶりには噴出してしまいました。
勿論、殺陣はばっちり。「秘剣かまいたち」も鮮やかでした。

☆水野美紀さん
この役は前回は粟根さんが演じていました。そろばん殺陣(そろばんの珠は、信長の骨を削って作ったもの。)が見事だった粟根さんとどう変わるのか楽しみでした。
水野さんは、綺麗で、かっこよかった。この役に合ってるかも。
過去を断ち切って生きてきたはずが、天魔王との再会で信長への想いに揺れるお蘭。でも、凛とした強さがある。
女性的な部分(感情も含め)は殆ど見えませんでしたが、それは意図でしょうか。この方も殺陣がお上手。

ちなみに、彼女は首に大きな数珠をかけていて、これが「信長の骨を削って作ったもの」という設定に。そして、天魔王に指摘され、せまられます。
天魔王の古田さんが彼女の着物の肩の部分が脱がし、そこにキスをしながら、足元をまさぐり、そして薬入りの飲み物を口移しに飲ませる、というシーンだったのですが、流石にドキドキしました(@_@)

☆坂井真紀さん
キュートな方でした。うまいこと言って兵庫達を丸め込む小悪魔的な感じ。
セクシーに迫るシーンもあるのですが、どっちかというと、可愛い感じで、色っぽさは正直あまり・・・(笑)まあ、これが彼女の武器でもあるのかも知れませんが。
ただ、私としてはどうしても高田さんの太夫がかなり好きなので、どうしても物足りなさを感じてしまうのです。
キャラは別でも構わないんだけど、無界の里の女たちを仕切っている「姐御」としての説得力がちょっと足りない気がして。インパクトはあまり・・・。

☆佐藤仁美さん
前回の芳本美代子さんとは全くイメージの違うキャラのように感じました。はじけたところはあまりなく、落ち着いた感じの沙霧でした。
その為なのか、周りがあまりにも個性的な人が多いのか、正直、あまり印象に残ってないんです。すみません・・・。

☆河野まさとさん&礒野慎吾さん
前回と同じ役で同じキャラ。なぜかほっとする(笑)
河野さんは、文字通り裏切り続け、友達は「鏡の中の自分。」ナルシスト全開の三五。
途中出番があまりなく、久々に登場するシーンで「もう帰り支度をしていた!」とカバンを見せるシーンはお馴染みなのですが、やっぱりおかしかった。
礒野さんは「磯平」、兵庫を連れ戻そうとやってくるけど、結局は一緒に闘う羽目になった兵庫の兄さ。
敵と闘う時彼が使うのは両手に持った草刈鎌(^^ゞこれが、鮮やかです。そして、びしっと決めると客席からは拍手が。

☆梶原善さん
この人、存在自体が既に卑怯というか、反則というか・・・^^;自由奔放加減が爆笑です。
「めんどくせぇーなぁー」が口癖。
所々で詠む一句がまた笑えます。
後半の見せ場、捨之介の100人斬りで、(刀を研ぐ)雁鉄斎と刀を投げあってキャッチするシーンがあるのですが、キャッチミスしてた気が・・・^^;

この100人斬りのシーンすごく好きなんですが、このシーンは流石に前回にはかなわないかなあ。今回は殆どが手渡しでした。
前回は度々空中キャッチあり。これがびしっと決まってたんです。劇団員の逆木さんが雁鉄斎でした。改めて凄さを実感。
善さんの自由奔放ぶりはカーテンコールでも(笑)飛行機が旋回するように両手を広げて走ってきてました。時間とり過ぎて(笑)お辞儀する前に既に次の役者さんが後ろからやってきてました^^;

☆橋本じゅんさん
今回の公演で一番いいなあーと思ったのは実はじゅんさん。
兵庫の、単純で少々間抜けでおバカ(笑)だけど、ハートフルな兄貴っぷりは愛すべきキャラ。それは健在でありながら、前回よりも「兵庫」が歳を重ねているのが随所で感じられました。
でも、決して老けてるわけではなく、むしろフレッシュな感じさえする。不思議。
歳を重ねてる、と感じるのはその話し方やその空気から感じます。がむしゃらに暴走してた前回と違って、ちょっと力が抜けて余裕を感じました。
「天魔王!!お前らが雑魚だと思っている連中の力、見せてやろうじゃねえか!!」という私が好きなシーンも、「見せてやるぜ」というニュアンスが違っていました。
しかしながら、拳ひとつで立ち回る(後半、前回と違って、磯平の用意した鎌を両手に持ってたけど)その動きはキレもあり、かっこよかった!
「兵庫、変わらないねー相変わらずだ。でも、ちょっと大人になったじゃん。」って感じ。
じゅんさんのこの兵庫と轟天はもう私の「新感線キャラ」の中でかなり上位に入っています(^o^)丿

☆古田新太さん
さすがの貫禄。この舞台稽古で9`「腹」を中心に痩せたそうですが、確かにこれだけ殺陣があればそうだろうと感心。
ちょっと歳を重ねた捨之介がそこにはいました。それは見た目だけではなく(笑)その台詞の言い方などからも伝わってきました。
「・・・俺は、お前を守る為に戻って来たんだぞ・・・」私のツボの台詞ですが、ここの部分も「戻ってきたんだけどな」となってたり。
ギラギラした部分がちょっと影を潜め、沙霧に対する接し方も「男と女」というより「兄と妹」みたいな距離感を感じました。
殺陣はさすが、立ち回りもびしっと決まってたと思いますが、微妙に「年齢」を感じてしまったんですよねえ・・・。
色っぽさ、かっこよさも健在なんだけど、微妙に・・・んー・・・すっきりしないなあ。
うまく言えないんですが、満足したとは言えなかったかも。


・・・ということで。
全体的には、かなり満足ではありました。新国立劇場でもう一度観たかったなあ。
あの空間。
そして、奥行きがすごーくある不思議な空間。(カーテンコールの度にその奥からみんな猛ダッシュしてました。)
それと、この作品がすごく合ってたと思います。
後ろから3番目の下手でしたが、それでもかなり急な段差である為結構間近に感じたし。
次の東京は東京厚生年金会館大ホールだそうで。距離がありそうだなあ^^;

そうそう、97年のDVDも今度発売になりますし、小説版は既に発売してました。
私はとりあえず、パンフのみ購入しました(^^ゞ