ダブリンの鐘つきカビ人間

作/後藤ひろひと 演出/G2
出演
水野真紀/大倉孝二/橋本さとし/長塚圭史/中山祐一朗/山内圭哉
及川 健/田尻茂一/八十田勇一/後藤ひろひと/遠藤久美子
池田成志/若松武史

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STORY

霧深い山奥で道に迷った若い男女長塚・遠藤)は、とある山荘へ逃げ込む。
真奈美が霧の中で聞いた歌 ♪みーたぞーみーたぞー 紙人形が見ーたーぞー 僕らの教会見ーつけたー紙人形が見ーつけたー♪ と、今はもうない鐘の音が聞こえてきたことをきっかけに、そこでかつては市長を務めていたという山荘の主池田)から不思議な物語を聞くことになる。
それは、「ポーグマホーン」と呼ばれる剣をめぐる不思議な物語だった。
そして、その男女(真奈美)は山荘の主に誘われるようにその不思議な世界へ足を踏み入れる・・・。

 時は中世。かつては栄えたこの町は、今、大きな危機に瀕していた。町全体が不思議な病に冒されていたのだ。
その病は人によって症状が違う。「偉くなれない病気」にかかった王様後藤)や、「外見と心の中身が入れ替わる病」を患ったため美しい心に醜悪な姿となってしまったカビ人間大倉)、それに「思ったことと反対のことしか話せない病」に苦しむ少女・おさえ水野)。などなど、治療の方法すら見つからない病が氾濫していた。
 ある時、は町を救うためにおふれを出した。
「伝説の剣・ポーグマホーン」を見つけだした者に王位を譲るという。「ポーグマホーン」は千人の人間を斬ったとき、
奇跡を起こすといわれていた。
尻込みする市民の中から名乗りを上げたのはなんと真奈美(遠藤)。
どうせこれは夢だからと戦士ばりの勢いで剣を受け取る。戸惑いながら後を追いかける(長塚)。
だが、それを阻止せんと立ちはだかったのが、市長池田)だ。市長は神父山内)と結託し、この病を利用して私服を肥やしていた。病を治されてはかなわない。ひとまず、言葉巧みにおさえの許婚「戦士」(橋本)に、真奈美は悪者だと言い含め、「ポーグマホーン」を渡すなと、奪って持って来い、と伝える。
「ポーグマホーン」を巡って、戦士たちと市長一味の攻防戦が始まる。
戦士
おさえの為にも、とその言葉を信じ、怪獣が潜むという森へ向って旅立つ。
(後々、戦う中でその誤解は解けるのだが。)

一方、カビ人間はその醜悪な姿から、誰も側には寄らず、嫌われていたが、、ただ一人「あなたは素敵。もっとこっちへ来て」と声をかける少女がいた。「思ったことと反対のことしか話せない病」に苦しむ少女・おさえだ。

 おさえの病に気がつかず、恋に落ちてしまうカビ人間。だが、おさえは「絶対こっちへ来て」と泣きわめきながら、カビ人間から逃げてしまう。
勿論おさえの父(※年齢以上に年を取ってしまったジジィという病気しかも、昔ある男に騙され、金を取られた挙句、薬を飲んだら目が見えなくなってしまっていた。若松)も大反対だ。
おさえの父カビ人間の過去を知っていた。
そして今はその病気におかされ急に老い先が短くなり、戦士おさえの婚礼を楽しみにしていたのだ。
だが、カビ人間おさえの罪をかぶって投獄されるという事件から、二人の仲は急発展する。
カビ人間も投獄中に偶然おさえの病気を知ってしまっていた。
おさえカビ人間の心の純粋さを知り、惹かれるようになっていく。そして、ついにある日、カビ人間を抱きしめながら言う。

「まったくムカつく野郎ね。みんなに甘やかされてうぬぼれてんのよ」

 やはり、反対のことしか言えないおさえ。しかし、病気を知っているカビ人間はそれをなんとかさかさまに解釈しながらますます恋に落ちていく。
世界で一番美しい罵倒が二人の愛を盛り上げていくのだった。
 
そんな中、市長市長「セント・スティーブンズ・ディの正午の鐘が打たれた時、死ぬ」というやっかいな病気に冒されていた。(神父の占いによるものらしい。)
市長はその病から逃れるため、鐘つき塔で働くカビ人間に交渉する。「セント・スティーブンズ・ディは、正午の鐘を打つな」と。
しかし、その醜悪な姿とはうらはらに美しい心を持つカビ人間は「その鐘を鳴らさないと、皆がお昼の準備が出来ずに、お昼が通り過ぎてしまいます」とそれを断ってしまい、市長は、カビ人間を亡き者にすべく計略をたてることになる。

 
 カビ人間おさえの幸せな時間は長くは続かなかった。
市長神父が教会に火を放ち、その罪をカビ人間にかぶせようとしたのである。
それに荷担した「背中に羽の生えた嘘つき病」天使(及川)の歌がじわじわと市民に伝わってしまう。

♪見ーたぞー見ーたぞー カビ人間が火ーつけたー 僕らの教会火ーつけたーカビ人間が火ーつけたー♪


怒る市民たち。
市長に扇動された市民たちは暴徒と化しカビ人間に襲いかかろうとしていた。
間一髪で、おさえが飛び出してくる。そして渾身の思いを込めて叫ぶ。
「やったのはカビ人間よ!殺して! 彼を殺して!」
皮肉なことにその一言が合図になったかのように、市民たちの猟銃が火を噴く。

慌てておさえは、鐘つきに行ってはいけないと(勿論反対の言葉で)必死にカビ人間を説得する。
しかし、説得も虚しく、カビ人間は分かっていながら「鐘つき」の仕事へ向かう。

その頃、戦士(と真奈美)は数々のゲーム(?)と戦いを潜り抜け、無事「伝説の剣・ポーグマホーン」を手にしていた。その剣には今まで切られた数が残っている。
暴徒と化した市民を3人切り、残り1となった所で、戦士おさえにその剣を奪われる。

真奈美は必死に「カビ人間を助けて!」と訴えるが、「過去にあった事を再現してるだけ、もう変える事は出来ない・・・」市長は言う。
真奈美の姿は市民達には見えない。どうすることも出来ない。
そして、鐘をつきに階段を登る途中、カビ人間は何発も撃たれてしまう。そんな中、ポーグマホーンを手におさえが走ってくる。
倒れていたカビ人間も「おさえちゃんだ!」と、最後の力を振り絞って鐘のあるてっぺんまで登りきる。

涙ながらにカビ人間に想いを訴え、(勿論反対の言葉で)ついにはおさえ自ら「最後の1」になるべく
ポーグマホーンを自身の身に振り下ろす。
瞬間、同時に侍従長の撃った最後の一発がカビ人間を貫く。

静寂・・・。
皆の病気が治る。ポーグマホーンの奇跡がおきたのだ。
倒れたおさえのもとに戦士が駆け寄る。戦士は静かにおさえを抱きかかえ、去っていく。
泣き崩れる真奈美。それを支える
町は消え、もとの山荘に戻っている。
真奈美市長は静かに言う。
「私にも勿論奇跡は起きました。(死なずにすんだ)・・・しかし、(今はないはずの)あの鐘の音が何度鳴っても私は死ぬ事が出来ないのです・・・」

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(パンフを基にしてますが、殆どが自分の観劇した中で思い出しながら書いています。多少、異なる点があるかも
知れません。ご了承下さい。敬称略。)

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2002.6.8パルコ劇場にて観劇。 座席B列8番

 こうやって、思い出しつつSTORYを書いていると、なんだか悲劇だけが先行しがちかもしれないが、その実、大爆笑しっぱなしだったりする(笑)
カビ人間とおさえちゃんはいい話担当(?)というかなんだかちょっとした笑いの中にも切なさがずっとあって、なんだか泣きそうになった。
でも、その周りの方々が・・・^_^;
面白い、っていうかおかしすぎる(爆)

私の印象に残ったのはまず「戦士」(橋本さとしさん)。この戦士の病気は「知らない人の名前が口を突いて出てくる病」。しかも「井上さんとか・・・」と出てくるのは殆ど日本人ばかり(笑)しかも、ずらずら言った後、「誰だよ・・・」と人に突っ込まれたり、自分で突っ込んだりしている^_^;
すごいハイテンションですすむ、すすむ。どこまでいっちゃうの?^^;というくらいで、おさえちゃんを好きでかっこつけたりもしてるんだけど、なんだか天然っぽいっていうのかな、動きも台詞回しもとにかくテンポ良く、面白かった。
あと、戦いに出かけるとき、「馬!」って叫ぶと「ひひひーん!」と馬の声と共に馬がやってくるんだけど・・・。
・・・え?馬?馬なの?(謎)
(※リアリティの無い間抜けな(?)馬の顔だけが(二本足で)歩いてきている(爆)当然乗れない。
大爆笑。
しかし、戦士は真顔で、その馬の後ろに立ち、「はっ!」と掛け声をかけ(?)一列になって去っていくのでした(笑)
なんだか、新感線っぽい雰囲気がするなーと思っていたら、本当に元新感線の方だった^_^;

次に、悪役神父(山内さん)&市長(池田さん)。
二人は手を組んで悪巧みをするせいか、コンビのように二人一緒のシーンが多かったけど、これがまた、コントのような(笑)
あげくに、「群馬水産高等学校校歌」とか言って二人で片手を振りながら歌いだすし。
「なつかしいなー(野球部の)黄金のバッテリーだったよなあ」みたいな事を言って何度も繰り返し、二回目の同様のシーンで「僕がライトで僕がレフト。」
「おい、それバッテリーじゃないやんけ!」(←私の心のツッコミ。)
しまいには、当の二人が笑い出してるし^_^;
そうそう、市長もミョーな乗り物(動物なのか、怪物なのか?)に乗ってきた時には大爆笑でした。
だって、明らかに、市長の足は偽者で、自分で歩いてるんだもん。(分かるかな?)

そしてそして、王様(後藤さん:通称「大王」だそうで^^;)。王様以外の役でもちょこちょこ出てきてはリアルタイムのアドリブをがんがんきかせ、大笑いせずにはいられないのですが(爆)この王様に速攻やられました^_^;
威厳を持って、市民の前に登場して「ありがたいお言葉を」との侍従長の言葉に一歩前に踏み出した途端。
「どもー王です〜」
って^^; 病気のせいで、えらい口の達者な腰の低い王様がそこにいるのでした(笑)

他の役者さんもあげればきりが無いほど、沢山印象の残ったシーンはありましたけど、なんせ1回しか観ていないので(泣)書ききれないです。すんません。

そしてそして、最後にこの二人について少し。
おさえちゃん(水野さん)。本当に綺麗な人だなーとまず感心(?)。透明感があるっていうか。
だからこそ、この役が生きるのかあ。
カビ人間と最初出逢った時、おさえちゃんは脅えながら、「来て!今すぐ来て!」とか「触って!」とか言うんだけど、笑ってしまいながらも、なんだか可哀想で、守ってあげたい雰囲気がしました。
あの綺麗な顔でにっこり微笑みながら「死んでしまえ」とか酷い言葉が出てくる出てくる。
観てる自分もカビ人間同様、必死に言葉を反対にしながら^^;引き込まれていってるのでした。

最後に、カビ人間(大倉さん)。さすが、でした。
不思議なんだけれど、すごく純粋な心が伝わってきて、いとおしく感じてしまいました。
「ただ今お昼の10分前ー」と鐘をつく姿も可愛いし(失礼!)おさえちゃんを思う気持ちも素直で、痛い目にあれだけあってもにこにこしている姿もすべて、それが逆に切なくなりました。
カビ人間は、昔と見た目、中身が入れ替わったという病気。ということは、昔すごくいい男でモテまくってた、しかし、性格が性悪だった、ってことなんだけど、(騙して金を巻き上げたり。)ジジィとのシーンで一つ印象に残ったのが、
「お父さん(おさえのお父さん)、どうして目が見えなくなっちゃったの?」
「・・・昔、ある男に騙されてな、(お金を払ってニセ薬を飲んで)こうなっちまったのさ・・・」
「・・・僕、お父さんの顔、見た記憶がある・・・もしかして、その男って・・・・ぼく・・・」
「・・・いや、別の男だったよ・・・」

というような会話が交わされたんです。(正確じゃないけど)
なんだか、切なかったなあ。
最初は反対していたジジィもその後唯一(おさえを除いてね)カビ人間を暖かい目で見ていた人だった。
なんだか、妙にそのシーンが焼きついてしまった私でした。
何作品か大倉さんの舞台を観ていて、どれも面白いし、いかにも大倉さん、って感じがしてたけど、この作品を観て、なんだか一番自然な感じがして、はまっている気がしました。

あまりの悲劇と涙をボロボロ流す真奈美に思わず泣きそうになってしまった私です。もう1回観ときたかった(泣)