陥人 ―どぽんど―

脚本・演出/松村武(カムカムミニキーナ)〜シェイクスピア作品より〜 小田島雄志訳

出演
山田まりや・・・ポーシャ
森崎博之(TEAM NACS)・・・アントーニオ
津田健次郎・・・イアーゴー
林剛史・・・キャシオー
     宝積有香・・・デズデモーナ
     小林健一(動物電気)・・・バッサーニオ/マルコポーロ
     藤田記子(カムカムミニキーナ)・・・ヘレナ
     小手伸也(innerchild)・・・キャリバン
     今奈良孝行(EHH∃)・・・オセロー
     町田カナ(reset−N)・・・シコラクス
     松村武(カムカムミニキーナ)・・・シャイロック

     佐戸井けん太・・・ダンカン/ドローミオ

ものがたり?

ヴェニスに住む無一文のバッサーニオは、美しいポーシャに求婚するため親友のアントーニオに金を借りようとするが、あいにくアントーニオの全財産は船の積荷として海の上。
しかたなくアントーニオは船の積荷を抵当にして、親友のために商売敵のシャイロックから3000ダカットの大金を借りる。
シャイロックは、期日までに借金を返済できなかったらアントーニオの体のどこからでも1ポンドの肉を切り取っていいという証文を取り付ける。
嵐で船が難破し、アントーニオは全財産を失ってしまう。借金を返せなくなったアントーニオに、シャイロックは心臓にもっとも近い肉1ポンドを要求する。アントーニオの友人達が3倍にして返すからとアントーニオの命乞いをしても、アントーニオを嫌っているシャイロックは金の受け取りを拒み、証文通りに肉をよこせと譲らない。
そこへ男装し法学博士になりすましたポーシャが「シャイロックは証文通りにアントーニオの心臓の肉1ポンドを手に入れる権利がある」が、「証文に書いていないものはたとえ髪の毛一筋、血の一滴でもアントーニオから切り取ってはならない」という見事なとんちを披露。シャイロックは完全にやりこめられ、全てを失い海に身を投げる。
どぽん・・・。

その夜、平和と繁栄の都ヴェニスには、陥れられたあきんどの復讐の嵐が迫っていた。
はめたつもりがはめられて。----この世は罠でできている。

「陥人ーどぽんどー」はこの「ヴェニスの商人」のクライマックスシーンから幕を開けます。
(パンフ&公式HPを基にしています。)

2006年9月9日(土)マチネ 東京グローブ座にて 1階L列11番

2時間半ノンストップだったこの舞台。
飽きることなく、あっという間でした。
いくつものシェイクスピア作品が入っているのですが、私のようにろくにシェイクスピアを知らない人でも「どぽんど」という一つの作品として充分楽しいし、知ってる人は「おっ。ここはこの作品だっ」という楽しみ方も出来るのではないかと思いました。

ちなみに「どぽんど」出典は
「ヴェニスの商人」「マクベス」「テンペスト」「オセロー」「十二夜」「間違いの喜劇」「終わりよければすべてよし」
です。

ものがたりはこんな感じだったと思います。↓(だらだら長いのですが、ご了承ください。)


海に沈みかけたシャイロックを、魔女シコラクス(と不気味な生き物?キャリバン)が助け、ヴェニスに復讐しようと企む。
ポーシャは、変装したシャイロックたちに「錬金術」というエサで釣られ、ヘレナの言うことも聞かずどんどん金をつぎ込んでいく。
自分では用意できないため、彼女を愛するバッサーニオにすがる。バッサーニオは、彼女を愛するがゆえにどんどん釣り上がっていく金額にも「なんとかする」と言ってしまう。

そしてアントーニオは雨宿りしたある日、不思議な女(魔女)に「ばんざい。アントーニオ・・・」と自分が出世することを告げられる。
半信半疑のアントーニオだったが、その直後、その女の言う通り国の重要なお役目に任命される。
そして、予言や噂に巻き込まれるように、どんどん「欲」にはまり込んでいく。
ついには、王(という呼び方じゃなかったかも。)であり、親友でもあるダンカンに手をかけてしまう。
そこへ、アントーニオの親友であり、ポーシャの婚約者でもあるバッサーニオが偶然尋ねてくる。
バッサーニオは無一文であったため、ポーシャのために親友のアントーニオにお金を借りにきていた。
ダンカンに手をかけてしまったことを見られた!と思ったアントーニオは断れるはずもなく、その後も度々訪れるバッサーニオの借金依頼に応じていく。
「アントーニオは眠りを殺した・・・もう眠れない・・・」
そんなアントーニオは王になっていた。

不安や妄想にかられていくアントーニオは、かつての自分の住処(?)に足を向ける。そこにはみすぼらしい姿のイアーゴーが今も住んでいる。
「兄貴」と慕うイアーゴー。そんなイアーゴーを邪悪な表情で見つめ、地位(と自分への愛情?)をエサに、友人のはずであるオセローを陥れるよう伝える。
そして、アントーニオを愛するイアーゴーは、数々の悪知恵を使い、あれほど愛しあっているオセローとデズデモーナの仲を壊そうとする。
友人キャシオーとデズデモーナの仲が怪しいとたき付けられたオセローは、どんどんその悪知恵に巻き込まれていく・・・。

そんな時、ヴェニスにマルコポーロとドローミオが流れ着く。
マルコポーロはバッサーニオと瓜二つ。
ポーシャとヘレナは、すっかりバッサーニオだと思い込む。間違われているマルコポーロは、自分の素性を話すことなく、ポーシャの言動に「醜い」と言い放ち、ヘレナを「美しい」と言い出す。
激怒するポーシャ。婚約指輪を質に入れてやる、と言い出す。

そしてドローミオは、ダンカンと瓜二つ。
街でドローミオを見かけるたび、アントーニオは「亡霊だ!」とその姿におののく。

大金をつぎ込んでいくポーシャ。
ポーシャのために、釣りあがるお金をアントーニオに借りに行くバッサーニオ。
そんなバッサーニオの行動を「脅し」だと受け取り、言われるがまま金を差し出すアントーニオ。
そんなアントーニオのために、オセロー達を破滅させようとするイアーゴー。
そしてそんな口車に乗せられ、ついにはデズデモーナを殺そうとするオセロー。
ついに、ポーシャは返せるはずもない借金を残したまま無一文になってしまう。
騙されたことにやっと気づくポーシャ。
しかしすでに取り返しのつかないところまできていた。しかも婚約者バッサーニオは、(マルコポーロと勘違いしている)ヘレナとベットの中・・・。

ダンカンの亡霊(?)におののき、ついには自分の罪に耐え切れなくなったアントーニオはバッサーニオらの前でその罪を告白する。
しかし、バッサーニオは本当に「見て」いなかった。
「え〜〜〜〜!!!」

我に返ったアントーニオ。そしてヴェニスの人々。
シャーロックを許さない、生かしておくわけにはいかないと意気込む。
そこへダンカンと瓜二つのドローミオが口を開く。
「!!!」

お互いがお互いの罪を許し、一適の血も流すことなく済みそうだった矢先。
手の平を返したようなアントーニオの態度にショックを受けたイアーゴーはナイフを手にアントーニオへ・・・。


魔女は、昔の娼婦の悲しい話をする。
娼婦は身ごもったが、産まれる事は無かったという。

そして、血の海からあなたは「人間」として産まれるとキャリバンに告げる。
シコラクスの言うとおり、人間としてキャリバンは産まれる。

が・・・。


こんな内容だったと思いますが、記憶違いとか多々あると思うのでご了承ください。
それぞれの役者さんが個性を発揮していて、かなり爆笑しました。
特に、小手さんの暴れっぷり(?)と思いっきりのよい藤田さんは強烈でした。
物語もうまく繋がっていて、テンポもよかったと思います。結末がどこに置かれるのかドキドキしちゃいました。
二転三転とし、上記で書いたものがたりにも続きがあるのですから。
ただ、全体的には大声で台詞をまくし立ててるように感じることが多々あり、台詞が聞き取り辛かったり、少々聞いてて疲れることもありました。
でも、松村さんや佐戸井さんはさすがだったなあ。
言い回しい抑揚があるというか、自然に声が通って聞こえてうまく引き締まっていました。
特に、佐戸井さんは動きも軽快で楽しかったです。後ろ向きでお辞儀をした時のピンと伸びた両手とお茶目なポーズが眼に焼きついています(笑)

そして、森崎さん。
大きな声で叫んだり、台詞をまくし立てる姿は大きいと言えば大きいのですが(すみません。)長い台詞を自然に話していたし、語りかけるような感じがなんだかシェイクスピアっぽかったです。
アントーニオ自体はある意味「マクベス」だったのと思うのですが、その姿を観つつ、思わず「メタルマクベス」がリンクしそうになった私なのでした^^;
最初は優しい笑顔だったアントーニオが、罪を犯し、様子がどんどん変わっていく姿にちょっとぞくっとしました。
特に、イアーゴーとの絡み。
するどい視線で、ぞっとするような表情。人間、欲望にまみれるとこんな顔になってしまうのか?!と思う位の落差でした。
挙句、イアーゴーの顔をくいっと自分に向けさせるとそのままキス・・・。ひえ〜。
赤いライトも手伝って、「ダークなリーダー」がそこに浮かび上がったようで、私は本当にゾクッとしてしまったのでした。
確かに、イアーゴーはアントーニオを観るなり何度もズボンを下ろしてパンツ姿になったり、「兄貴〜抱いてくれよ〜!」って言ってたのだけど、あのキスシーンと森崎さんの表情に、「想像以上の二人の繋がり」を感じて少し怖かったです。
後半の、自分の心の声(?)を一言一言言うたびにわざわざ下手前に来て叫んだり、観念したように罪を告白したのに、バッサーニオが本当に何も観てないことが分かって「え〜〜〜〜!!」と叫ぶ表情なんかはお茶目でかわいかったです(笑)思わず吹き出してしまいました。

カテコでは、森崎さんが中心にいました。
あの・・・リーダー・・・口を開いた瞬間、「演出の・・・」って言いませんでしたか?(笑)
気のせいかなあ?
言った瞬間、リーダーは下を向いて絶句したまま肩を震わしてるし、松村さんなんかは「ん?なに?」みたいな顔でリーダーを見てるし、客席は大爆笑でした。
最後まで楽しませてくれますねえ(違う。)リーダー。
ちなみに、1公演ずつ、お1人の挨拶をするとのことで、この公演では小林さんでした。

そういえば、森崎さんの悪役や怖い役って観たことないなあ・・・。
精神的にゾクッとさせるダークな一面も観てみたいです。
新たな森崎さんを観て、この先のいろんな可能性が更に気になった私でした。
観に行ってよかったです!