「法王庁の避妊法」

作:飯島早苗
作・演出:鈴木裕美
出演
勝村政信/稲森いずみ
持田真樹/横堀悦夫/三上市朗/西牟田恵/西尾まり他

物語

大正時代、新潟市内の竹山病院産婦人科。産婦人科医荻野久作の診察室。
「お父ちゃんと仲良くしたのはどの晩だった?」
「え?」

「私と結婚したら、月経の時はこのカレンダーに赤鉛筆でマル印をつけていただきたい」
「は?」
「夫婦というものは媾合します。そうした場合には青鉛筆でペケ印をつけていただきたい」
「ペケ・・・?」

病院にやってくる純朴な農家のおかみさんたちは目を白黒させ、彼の妻・とめにいたっては月経や夫婦生活の記録までも論文に発表されて、大迷惑。
それでも荻野センセイは、「女性の排卵は一体いつなのか」という大いなる謎に敢然と挑むのであった。

2003.12.14(日)マチネ/12.21(日) 世田谷パブリックシアターにて観劇
※1回目の観劇はかなり前で、表情も汗さえも肉眼でばっちりでした。2回目は2階席。

主な登場人物を説明すると、こんな感じです。
研究に没頭している、女性にはうとい荻野センセイ(勝村さん)、
ドイツ留学の話をけってまで荻野の研究の手助けをしたいと考えているその助手・古井(横堀さん)、
元気いっぱい(だけど、実は多産に悩んでいる)妊婦のキヨ(西牟田さん)、
不妊に悩む無邪気でまっすぐなハナ(持田さん)、女性の権利を主張する気の強いナースより子(西尾さん)、
荻野の友人でいつも悪態ついてるけど本当は優しい外科医・高見(三上さん)、
背が高く結婚出来ないまま今に至ってしまったと嘆く、とめ(稲森さん)。

一番印象に残ったのは、西牟田さん。とにかく前半は大笑いしちゃいました。元気でいつも笑っていて、ちょっとお世話好きで。
荻野センセイのお見合いの相手が来るって知って、その相手に知られないように荻野センセイに合図をするんですが、(○とか×とか)
ハナさんやより子をお見合い相手と間違えては合図を送るシーンが笑えました。特により子は酷かったので(笑)キヨさんと古井さんは一瞬の間の後、呆れる様に手で×を出し、一礼。まるで「ご愁傷様でございます」と言わんばかりで。
そして、荻野センセイも一礼。「いえいえ、どうも」と言う感じで。そのタイミング、間が2回とも笑っちゃいました。

あと、↑では無事7人目の子供を出産したキヨさんが、1年後再び受診し、8人目の子供を妊娠していることが分かったシーン。これが私の一番好きなシーン。

生活やらいろいろ考えるとどうしても踏み込めないキヨさんが初めて神妙な表情で堕胎を口にします。
驚きを隠せない周り。その重い空気をなんとかしようと、そして思い直す事を口にするキヨさん。
そこへ、義母にカレンダーのことを言われ激怒して家出してきたとめが乱入^^;
「もうカレンダーなんかつけない!」とくしゃくしゃにして床に叩きつけ、それを拾おうとした荻野の目の前でその紙を更に足で蹴る。(スルーパス?)
キヨの存在を忘れて喧嘩してる二人。それを拾って見たキヨさんが「それじゃ奥さん、先月は月のものがなかったがですがの?」。
「え?」(とめ)−「これ、おめでたじゃ?」(キヨ)荻野もそのカレンダーを覗き込む。
「ほんとだ、月のものがない。」(荻野)「おめでたですって。」(キヨ)
すると、荻野の椅子にキヨが座り、患者側の椅子に荻野夫妻が座り。立場が逆転?している。
「(キヨに)おめでたですか?」(荻野)−「間違いありませんね。」(キヨ)
おいおい。荻野センセイ・・・。
大喜びしている荻野夫妻を見ながら、静かに一礼をしてそっと出て行くキヨさん。。。
切なくなって、大笑いして(とめさんの剣幕とキヨさんの切り返しがおかしかった!)、そしてまたキヨさんの姿に切なくなって・・・。泣き笑い状態でした。
キヨさんの心情を思うと、ただただキヨさんの幸せを願うしかないっていうか・・・。これだけ頑張ってる人に「頑張れ」なんて言えないし・・・。

結局生む覚悟をしたキヨさんでしたが、1幕最後、容態が急変して荻野センセイのところに運び込まれてきます。
「まだ死ぬわけにはいかない・・・助けて・・・」力と声を振り絞ったキヨさんはすごい迫力でした。
でも、そのまま息を引き取ってしまい。
愕然とした荻野センセイは、なんのためにこの研究をしているのか、意味はあるのか、そもそも自分なんかに解けるのか・・・と自分を見失い、研究を放棄しようとするのでした。

2幕はそんな心あらずの荻野センセイとそれを心配する周りの人々から始まります。
でも1人クールに「そういう時はほっとくしかない」と言う高見を演じる三上さん。めっちゃおもしろーい(>_<)
クールでホットな外科医(?)。重みのある渋いクールな部分とめっちゃかるーい部分とのバランス、タイミングがすごくよかった。
荻野の研究ノートをこっそり見て、すごく長―いタイトルを渋い声でスラスラ読んだあと、「なっげー」と超かるい声で言ってみたり。
いつも悪態ついたり、自分を見失ってる荻野に「全部やめてしまえ!」って言ってみたり。
一見強面でガタイもいいし、クールだったり、かと思うと「よりちゃ〜ん」と何度あしらわれてもアタックしてたり(笑)
どこまで本気なのか一瞬迷っちゃうキャラですが、常に彼には厳しさの裏に優しさが感じられるし、スマートに周りを支えてるって感じ。好きなキャラです。
そして、彼がいる事でバラバラになりかけた皆の気持ちがほぐれ、前向きになったりします。重要です。
そして、常に何か食べてます(笑)ナッツだったり、桜餅だったり、焼芋持ってきたり、とめの作った愛妻弁当まで食べてます^^;(荻野がいらない、と言ったからなんだけど。)

より子は相変わらず女性の権利を主張し、度々荻野に食って掛かります。でも、その裏には彼女の生い立ちが関係してました。
そんな彼女にとって、荻野の研究は「救い」だったのかも知れません。女性の、望まない妊娠を防ぐという意味で。
そして、助手の古井は、自分のしたいことを考えるよりもすべてを荻野にささげようとしてます。
そんな2人の「よりかかり」が重荷になっている荻野センセイ。ついに切れちゃいます。

そんな荻野を復活させてくれたきっかけは、ハナさん。1幕から度々登場してます。無邪気でかわいい、まっすぐなキャラを、持田さんが自然に演じてました。
「媾合?それはなんのことですかの?・・・あー夜の、あのことですかあ。それならしょっちゅう・・・あーはずかし〜!!」とこんな感じで。
照れては持ってる巾着でバンバン荻野センセイを叩いたり。
「(精子は元気におよいでますよ、と言われ)はあ?お父ちゃんはカナヅチですけど、その方は元気に泳いでますですか」と天然ボケ(?)
そんなハナさんが、いわゆる排卵痛と思われる症状を話したことがきっかけで荻野センセイは重要な事に気付く。「次の月経が始まる前の2週間前・・・」
そして同時にハナさんがなかなか妊娠しないわけも解明したのでした。
一気に、研究が進展した荻野センセイ。

そんな嬉しいはずの急展開に、1人悩む人あり。
研究は最終的に実証することで完成する、その為に狙った日に媾合してほしい(=子供を身ごもる)と荻野。
「嫌です」協力的だったとめがここにきて拒否。
「子供は天からの授かりものだと思ってます。それを人の勝手で人が作っていいのでしょうか。怖いです。」
そして、「たとえ研究の為でも何も言わないでほしかった。それで身ごもったとしても、それは天からの授かりものだから。」
うん、確かに。とめさんの女心はもっともだ。でも、荻野センセイには分からない。

でも、散歩がてら尋ねてきたハナさんと荻野の会話をたまたま聞いていたとめさんは、荻野が心から子供をたくさんほしいと思ってる事を知ります。幸せになれるように姓名判断という「非科学的な」ことまでして。
そしてその後、ハナさんを送っていった荻野と入れ違いにやってきた高見に、とめさんは自分の不安を話します。
「(荻野の研究は)選べる、という進化した悩みです。その進歩であなたが幸せになれるかどうか考えてみてはどうですか。幸せを見いだせなかったら断ればいいんです。」
いろんな思いの中、とめさんは、そこに「幸せ」を見出したのでした。

・・・とこんな感じだったと思います。
一番感じたのは、出演者の方々のバランスがすごくいいなあーってこと。
誰が飛びぬけてて、誰が「ちょっと・・・」で(笑)っていう事がなく、皆さんいいレベルで舞台を作っていたと思いました。
そして、皆さんがそれぞれの役になりきってた。自然でした。誰が演じてる、とか考えさせない舞台でした。
高見は高見だったし、ハナさんはハナさんだったし、キヨさんはキヨさんだったし。
そういう舞台に会えると、すごく気持ちが良くて、幸せな気分になります。
それに、この作品そのものも、最後にはあったかい気持ちにさせてくれるものでした。
もちろん、かっちゃんは面白かったし、不器用だけど、まっすぐな優しさや、苦悩・・・いろんな思いが伝わってきたと思います。
そして、初舞台という稲森さんもなかなかでした。笑いの間もなかなか。背の高さも充分生かしてました(笑)
でも、その2人を支える周りを含めた全体的なバランスが私には心地よかったです。
全体的にドタバタ劇っぽい感じはありましたが、私は好きです。大笑いして、切なくなって泣いて。
こういう泣き笑いに弱い私でした。

追記。14日は、舞台終了後、ポストトークがありました。かっちゃん&稲森さん&池下先生(産婦人科の有名な先生です。)。
面白かったんだけど、司会の人の、話の持ってきかた、話のすすめ方があまりに酷いのでイライラしました(苦笑)
せっかく池下先生まで呼んだんだから、もっとタメになるいろんな話が聞けるかと思ったのに。
かっちゃんの疑問もあっさり流してるし。アドリブきかない人なのかなあ。
かなり、毒吐いてますね、私。でも言わずにはいられない位だったぞっ。勿体無い!