モンテクリスト伯

作:アレクサンドル・デュマ (訳:山内義雄「岩波文庫版」より)
脚色・演出:高瀬久男

【 配 役 】
エドモン・ダンテス … 内野 聖陽
ファリア司祭… 関 輝雄
ダングラール … 高橋 耕次郎 /フェルナン … 瀬戸口 郁 /ヴィルフォール ……若松 泰弘
モレル … 三木 敏彦 /サン・メラン侯爵 … 石川 武 /父、記者ボーシャン … 大原 康裕
カドルッス … 吉野 正弘 /門衛 …鈴木 弘秋 /アルベール … 浅野 雅博
ルイジ・ヴァンパ … 松井 工 /ドブレー … 石橋 徹郎 /フランツ … 椎原 克知
マクシミリアン … 城全 能成 /獄丁 … 亀田 佳明 /ベネディット … 長谷川 博己
メルセデス … 塩田 朋子
サン・メラン侯爵夫人 … 南 一恵 /エルミーヌ … 金沢 映子 /エロイーズ … 奥山 美代子
ヴァランティーヌ/ルネ … 岡 寛恵 /ユージェニー … 佐古 真弓
エデ … 山田 里奈

【 物 語 】
ナポレオンがエルバ島に追われ、ルイ18世の治世下となった1815年のフランス。
商船ファラオン号の若き一等航海士エドモン・ダンテス(内野聖陽)は
長い航海を終えて、故郷マルセイユに無事帰港した。
仕事ぶりも優秀で、人望も厚く、親孝行な好青年のダンテスは、
船主のモレル氏(三木敏彦)からは急死した船長の後任を約束され、
加えて美しいメルセデス(塩田朋子)との婚約披露と、まさに人生の幸福の絶頂にあった。
しかしダンテスは突然、船の会計係ダングラール(高橋耕次郎)や
メルセデスに横恋慕するフェルナン(瀬戸口 郁)、
検事補ヴィルフォール(若松泰弘)の奸計によって無実の罪を着せられ、
披露宴の席上で逮捕されてマルセイユ港外にある地獄の牢獄シャトー・ディフに送られてしまう。

絶望の中、9年後のある日。壁の中からある囚人が顔を出す。噂に聞いていた「気のちがった司祭」。
しかし、このファリア司祭( 関 輝雄 )の出逢いにより、ダンテスは事の真相に行き着く。
ダンテスはいつか来るチャンスの為に日々ファリア司祭の教えを受け、信頼関係を強めていく。
投獄されてから14年後、奇跡的に脱獄に成功したダンテスは、知識と金銀と自由という宝を手に入れ、
彼を絶望と悪夢のどん底へ陥れた人々への復讐を開始する。
脱獄から更に10年が経っていた。彼は、モンテ・クリスト伯爵と名を変えて姿を現した・・・。

2004.7.24(土)ソワレ 天王洲アートスフィアにて観劇 座席2階C列24番

2階席一番後ろではありましたが、結構近く感じました。
ただ、細かい表情までは分からなかったので残念。これこそオペラグラスを用意するべきだったか・・・。とちょと後悔^^;
初演と比べつつ、自分の中で印象に残ったシーンを書いてみたいと思います。

まず、青年期のダンテス。
初演はもっと甘々な(?)かわいい感じのダンテスのように感じましたが、今回は爽やかでキラキラしながらも精悍さが加わった青年でした。
でも、ラブラブぶりは倍増でした(笑)顔を見て直ぐに押し倒してるし^^;キスの嵐、嵐・・・おいおい、そこまで人目もはばからずするか、と思わずこっちが恥ずかしくなってしまいました(笑)
初演は初々しい2人、今回はちょっと大人な2人、という感じでしょうか?

取調べが終わって「この人について行きなさい」と言われるダンテス。初演は正面後ろから去っていきました。
今回は上手のドアから去っていく形だったので、よりダンテスの「(解放されたという)喜び」が見えました。
その分、その直後の「落胆」との落差がはっきりしててかなり胸にこたえました。
そんな捕らえられてから何年も経って絶望の中、ふと「婚約の宴」の時の音楽と共に楽しかった日を思い出すシーンがありますが、
初演は町のみんなの姿を思い出していましたが、今回は白いドレス姿のメルセデスを思い出すシーンに変わっていました。
すっと現れ、すっと消えていくメルセデスを目で追っているダンテスがすごく切なかったです。
町のみんなも勿論大切だけど、何より愛するメルセデスが第一に決まってるし、悲しみながらも待ってくれてると信じている。
それだけに、その未来の「裏切り」を知った時のダンテスの辛く哀しい感情がより強く感じたように思いました。

私は、ダンテスとファリア司祭のやり取りが大好きです。司祭は今回も関さんですが、なんだか安心します。
ちょっと惚けた感じ(?)や、飄々とした感じは思わずくすっと笑ってしまいそうでした。
でもその中にある人間として生きることを悟ってるその説得力・・・ダンテスが直ぐに信頼し、父のように慕うのがよく伝わってきました。
我を忘れかけた時に出逢ったダンテスとファリア司祭。お互い、お互いの中に絶望の中に希望を見つけた、その光がわずかながらその「牢獄」から感じました。
そして、ギラギラした内野さんの眼差しにちょいとクラッ(*_*)

ダンテスが「真実」を悟った時、それをよりよく分かりやすくするため、フェルナン、ダングラールらがその「真実」を再現するシーンがあります。
初演は上の舞台の上手で行われていましたが、今回は下の舞台の下手で行われていました。より分かりやすかったです。
あと、ダンテスの父が亡くなるシーンも今回の方がより切なかったです。「エドモーン・・・」と小さく叫びながら息絶えてしまう、そのわずかな時間に父の「愛」を強く感じたのです。
そこへ何かを手に入れ、胸を張って現れるフェルナン。絶望の中のメルセデス。愛する人が次々自分の前から消えていく。長い年月。思わずすがってしまったのでしょうか?
分からないでもありません。でも、私はすごく頭に来るシーンでもあるのでした。
エドモンを思って飢え死にしたその父と、哀しみにくれるメルセデスの前にああやって堂々と胸を張ってやってくる神経に、私は本当に頭にきました。
そして、そんな彼の手をとったメルセデスにも・・・。

さて。モンテクリスト伯となったダンテス。初演よりも落ち着きを増したモンテクリスト伯でした。
見た目もちょっとロマンスグレーで、実年齢より少し上に見えましたし、話し方もいい感じにかなり力が抜けて、自然で落ち着いていたと思います。
苦労と復讐の為の努力を長年続けてきたであろうその人生が、その姿からその表情から、具間見れるような気がしました。
でも時折見せる「びくっ」という仕草など、ちと大げさかな?と思う事もありましたが(笑)

秘密がどんどん暴かれていくシーンは、これだけいろんな人が複雑に絡んでいるのに実に分かりやすく、原作を読んでいなくても優しい流れになってると再び感心。
みなさんそれぞれにちょっとした仕草や表情で、その人の心情、立場、性格などが伝わってくるようでよかったです。
しかーし、ダングラールはどうして坊主になってるのか、どうしてあんな喋り方(?)なのかイマイチ分かりませんでした。ちょっと大げさなような気も・・・。
時折、彼のシーンになると近くから笑いのような(よく分からないけど)声が聞こえてきて、正直、すごく耳障りでした。そして残念でした。

モンテクリスト伯が復讐の決着をつけたシーンですが、ヴィルフォールの独白シーンでエロイーズに馬乗りになりその首に手をかけて登場したのにはびっくりしました。
初演は、1人フラフラやってきて独白ししゃがみこむと、そこへエロイーズがお茶を持って現れ差し出し「まだエドワール(エロイーズの子供)がおりますわ」と言うと暗転してました。
私はその時、「このお茶には毒が入ってるんじゃ?」と勝手に思いました。そして、さすがにエロイーズも自らの毒で命を絶ったんじゃないかと。
でも、どうにでもとれるので分かりずらくはありました。↑が合ってるのかも分かりませんし。
原作を読んでいない(正確に言うと少し挫折したので全部は読んでいない^^;)私にとっては今回の方が分かり易かったです。
少なくとも、ヴィルフォールは全てに決着をつけエロイーズも含め死んでしまうことは伝わりましたから。

そして、ダンテスとメルセデスのシーン(メルセデスが自分の息子を助けて、と言うシーン)ですが、私の中で「この2人は未だに愛し合ってるのに・・・」と勝手に引きずっていました^^;
なので「今一度メルセデスと・・・」の台詞がない事にちょっと淋しさみたいなものを感じました。
でも、最初の再会もこの時も(初演より)お互い心をぐっと押さえていたように感じたのですが、私にはその「押さえてる」がゆえに2人の愛情の深さを感じました。
そして、過去に何があったとはいえここに「現実」があり、受け入れなければいけないというお2人の意思と、でも葛藤みたいなものを感じました。
メルセデスは、「自分の罪」を背負い、息子を守らなくてはいけない。ダンテスは(メルセデスも例外でなく)全てに対して復讐を成し遂げなければいけない。
でも、お互い今でも深く、愛している・・・。
メルセデスが去った後に「心臓をむしりとっておけばよかった」と烈しく動揺しているダンテス。再び生を与えたファリア司祭の言葉。
その瞬間、ダンテスは何かに気付き救われたのだと思いました。罪あるものにのみ復讐し、ある意味「エドモンダンテス」を終わらせ、決着をつける。
そして、「今ある現実」に眼を向け、愛しい者を大切にこの先を生きる・・・。
ダンテスとエデはお互い、お互いの存在に「絶望からの希望の光」を見つけたんだと思います。投獄の中、司祭との出会いに希望を見出し、「第2の生」を得たように・・・。

そしてその「愛しい者」エデですが、正直私は初演のイメージがかなり印象深く、違和感を感じました。
強さの中にも優しさ、ひたむきで真っ直ぐな愛情があるエデだから、ダンテスは無意識に彼女に対していとおしいという感情を持ってたと思うし、大切にしてきたと思うんです。
初演の鬼頭さんにはそんなエデを見ました。時にはかわいい子供のようで、時には恋する女性のようで、時には愛する者を守ろうとする母のようで・・・。そして、敵に対しての憎しみの激しさは思わず息を飲む程でした。
なんていうんでしょう、女性として、人間としてすごく説得力があったんです。
でも、今回はちょっと・・・。正直、強さというかきつい感じが表立って感じ、私は最後まで「いとおしい」という感情がもてませんでした。ごめんなさい。独白シーンでは、思わず息を飲む、という感覚にはなりませんでした・・・。
メルセデスとエデ。このお2人の女性としての生き方に説得力があるかどうかって、結構ポイントかな、と改めて思いました。

全体的には、カットされたり展開が早くなったり、演出が結構変わっていたと思いますが、より分かり易くなってたと思います。すごく観易かったです。

最後に。内野さんですが、実はこの日結構かんでました(笑)そして、周りの役者さんも何人かかんでました^^;
しかし、それを除けば(除いちゃだめ?)説得力の増した素敵なエドモン・ダンテスだったと思います。
皆に愛されるのが納得できるような、精悍さも加わった青年ダンテス。
理不尽な陰謀から絶望の中でもがき苦しんで冷酷な復讐の鬼となるダンテス。この時の彼の表情には「エドモン・ダンテス」の面影はありませんでした。完全に心が凍っていたような・・。
そんな中やっと大切な何かを見つけ、過去に決着をつけ、凍った心も融け、「人間」として希望を見出したダンテス。
初演時より力みみたいなものが抜けたように思ったし、そういった月日の流れ、感情がより自然に伝わってきたように思いました。
正直、初演時はここまではまらなかった私ですが、なんだかじわじわとはまっていて(^^ゞ何度も初演のビデオを観返しているのでした。
原作をまともに知らず、1回の観劇である私の勝手な感想ですので、的外れも沢山だと思いますが、適当に聞き流してください(笑)