劇団M.O.P第41回公演「ズビズビ。」
作・演出: マキノノゾミ

出演(1幕2話の計4話オムニバス形式)

 第一話「っと貴方が・・・・・・」
キムラ緑子、小市慢太郎、奥田達士  /永滝元太郎、塩釜明子、神農直隆

 第二話「ックな男」
酒井高陽、林英世、木下政治  /三上市朗、勝平ともこ、岡村宏懇、友久航、
      塩湯真弓、永滝元太郎、塩釜明子、権藤昌弘(飛ぶ劇場) 

 第三話「いぶんな話」
勝平ともこ、岡村宏懇、塩湯真弓、権藤昌弘(飛ぶ劇場)  
/キムラ緑子、三上市朗、小市慢太郎、酒井高陽、林英世、木下政治、友久航、塩釜明子

 第四話「タースイーツ」
キムラ緑子、三上市朗、小市慢太郎  /酒井高陽、木下政治、奥田達士、
      友久航、永滝元太郎、神農直隆、権藤昌弘(飛ぶ劇場)

2006.12.2(土)マチネ 紀伊国屋ホールにて観劇 座席1階Q列5番

初のM.O.P観劇でした。
今回、1話30分×4話のオムニバス形式ということで、テーマ(繰り広げられる場所)は一つでも、それぞれのお話はてっきり独立したものだと思っていました。
いやー、油断するところでした(謎)

ちなみに、ステージには「楽屋」が。これがいろんな物語を、いろんな楽屋の姿を見せてくれます。
以下、あらすじと自分なりに感じたことを。
長くてすみません^^;自分なりにまとめているので、「こんな内容だった」位の感じで読んでいただけるとありがたいです。勘違いもあると思うので・・・。
また、太文字はそれなりに理由があります(謎)
あと、私は小市さんと三上さんしかもともと存じ上げなくて・・・。すみません(汗)


第一話。
紫のガウンをきた不機嫌顔の南大作(小市さん)。往年の大スター。「ハムレット」のマチネが終わった直後らしい。
なぜ不機嫌か?・・・それは「劇評」。概ね好評なのにも関わらず、大作の演じた国王だけが「大げさ」「ミスキャスト」だのこき下ろされていたのだった。しかも、そんな劇評を楽屋廊下に貼ってしまうスタッフ・・・。
劇評のことを聞かれた衣裳係の山ちゃん(若手の女性)は途中ではっとしながら「み、南さんのところだけはあまり読んでないっていうかむしろ全く読んでませんっ!!」と慌ててその場を去ってしまう。
そんな重い空気の中。
取材のために新聞記者がやってくる。事務所社長が勝手に入れたもので、大作は応じようとしない。
が、映画の本数から何から(昨年亡くなった大作の妻・水原百合の亡くなった日時まで!)やたらと南大作に詳しい新聞記者・沢口映子(キムラさん)の大ファンっぷりに、大作は気をよくし少しの時間なら、と応じる事に。

「君の意見を聞きたい。」大作は言う。しかし、次の瞬間から空気が少しずつ変わっていく。
「・・・劇評とほとんど一緒というか・・・。すみません。」と映子。
国王の懺悔の場面が特に物足りないと、貴方ならもっと出来るはずだと、「クローディアス」は悪役だとは思わない、恋しい人の為に人殺しをし、ずっと苦しんでいた弱い人間・・・そんな役なら出来るはず、と訴える映子。
簡単に言うな、そんな演技をしたことはないのになぜそんな事が分かるのだ、と言う大作に映子は伝えます。

「それは・・・貴方が25年前に同じ事をなさったから。」

映子は、25年前にあったある交通事故の話を始めます。
酔っ払っていたある男性が赤い車にひき逃げされ亡くなった。それを運転していたのは南大作だと。
最初は相手にしなかった大作と社長の高野。アリバイもある、殺人的スケジュールの中であり得ないと。
そんな中映子は言う。「亡くなる前に、運転していたのは南大作だと、娘さんに伝えていたそうです。」

次第にいろんな事が明らかになっていく・・・。

昔、ジャズバンド「ビタースイーツ」にいた若手の大作は、人気女優水原百合に憧れて俳優の世界に飛び込んだ。「その日」は百合の誕生日。大物スタートの噂もあった。そして大作は年8本も映画を撮る人気スターになっていた。
一方、ひき逃げされたその男はろくでもない男で、妻にも娘にも手を出すような男だったらしい。
最初は自首も考えた大作だったが次第に気持ちが変わっていったと。

映子は、母方の祖父の話を唐突に始める。母にとって怖い祖父だったけれど、入学祝いにくれた万年筆は死ぬまで大切に持っていた話。そして、ひき逃げされた被害者のポケットにも壊れた新品の万年筆が入っていたと・・・。
「想像は間違っているかもしれません。でも、そんなささやかな幸せを踏み潰す権利は誰にもないと思うんです。」

そんな映子に大作は言う。「娘さんは元気にしているのか?本当に申し訳なかったと、どんな償いでもすると伝えてほしい・・・」

その言葉に映子は溢れる思いを抑える事が出来なかった。彼女こそが「娘さん」だったのだから。
そして、同時に南大作の大ファンであり、ずっと好きだったことも本当であった。

「ソワレも観て行ってほしい。」「そのつもりでした。」

映子が去った後、高野は言う。「なんで今更言ってきたのかね?・・・あ、奥さんがなくなったからじゃ?奥さんになりたいんじゃないの?大ちゃん、気をつけなよっ!
「うるさいよ。」

楽屋に一人きりになった大作は、鏡前の白い花を一部抜き取り、大鏡の前で国王の台詞稽古を始めるのだった・・・。

***
このお話が一番好きでした。
テンポが心地よくって、度々笑いつつ、自然に「ある真実」に惹き込まれていきました。
少しずつ揺れている心情が小市さんから伝わってきたし、聞きたかった一言をやっと聞けた時のキムラさんの子供のように大号泣する姿にはぐっときてしまいました。
そして、ラストの台詞稽古を始めた小市さんの背中にじわっときました。


第二話。
とある大衆演劇の楽屋。昭和45年、季節は夏。会話(訛りあり)から掛川の劇団らしい。
冒頭、長脇差を手にすごむ組員・工藤(三上さん)と土下座している座長・劇団員。困った顔の会館職員。
どうも、「森の石松」の主役が直前になって雲隠れしてしまったらしい。別演目ならなんとかなる。しかし、興行元の親分さんは石松ものが大好きらしい(笑)別演目は許さないと工藤。
座員は何人かいるのだが、何を言っているのか分からない・異常なアガリ症・首になんか巻いてる(ムチウチ?)座員とどれも使い物にならない。
「いっそのこと貴方どうですか!」会館職員にふる始末。職員は「とんでもない!」といいつつ「学生時代は演劇部でした」と何気に進み出る・・・が、全然ダメなのであった。
その横でペラペラと石松の台詞を語りだす工藤。おいおい、めっちゃうまいやんけ。
「あなたどうですか!」「とんでもねえ!」

困った劇団員。思わず誰かが呟く。「マサル兄さんがいてくれたら・・・」

そこへ、「たまたま通りかかったから」とマサルが現れる。喜ぶ座員だが、座長は頑なな態度を崩さない。

「ビックな男になる」とミュージシャンになるためにこの劇団を捨て、挙句にお金を持ち逃げしたマサル。
しかも、主役が雲隠れしたのとマサルが現れたのは偶然ではなかったらしい。
座長VSマサル、大喧嘩^^;
しかし、マサルの石松が父に似て魅力的なものだということも事実。
そこで二転三転、ドタバタ劇(?)が繰り広げられる。

このドタバタも面白かったのですが、爆笑したのは最後。

バタバタと座員が出て行き誰もいなくなった楽屋に。
「ズラはどこだよ。・・・あ、誰もいやしねえ」。
なぜかズラ以外完璧な石松姿でやってきた工藤(三上さん)。おいおい、やる気満々やん(笑)
しかも、何か食べていてそれを置く場所がなく、膝をきゅっと閉じてその上に置くキュートな三上さんの姿に爆笑してしまいました^^;

工藤が石松の台詞を独り言のようにブツブツいいながら、静かに暗転。


第三話。
ある千秋楽の楽屋というか衣裳部屋。舞台も終盤らしく、主役が早換えのために飛び込んできたりしている。
そのスタッフの中に山田アキ(山ちゃん)もいた。
そこに出演者なのにも関わらずすでに私服姿の白銀マサルがビール片手にやってくる。
60を超えたこのマサル、実にいい加減でやっかいな役者のよう。
アキをくどくは、同部屋の草野を訛ってるだの、台詞を食うだの、文句タラタラ。
「一発殴ってから帰るかな。」とまで言っている。

「(訛ってるって)掛川に言われたくない。」ボソッと悪態をつくアキ。
実は、草野とアキは中学の同級生で、25年ぶりに再会、それをきっかけに付き合い始めていたのだった。
草野は奥さんを亡くしていて、子供もいない、とのこと。
同僚は「結婚できるならしとけば?」と。
そこへ、草野が顔を出す。気を利かせ二人っきりにする同僚。

「(結婚したら)仕事を変えてほしい。」
舞台監督を目指しているアキであったが、「・・・考えとく。」揺れつつも、なかなかのムードの二人。
が。

息子登場(笑)しかも、「長男」って・・・5人もいた!
しかも、「母さん連れてきたからちゃんと話し合え」と一方的に出て行ってしまった。(アキには聞こえず)

ショックを受けて気を失いかけるアキ。人工呼吸する草野。偶然見ちゃった同僚^^;

ラストの風船振りを頼まれていたのにも関わらず既に舞台ではカーテンコール。
挙句に、マサルは半分私服のままカーテンコールに出たらしい。
そして、草野はカーテンコールに出れず。
アキはキレかかっている様子(笑)
「もう決めた!仕事辞める!」子持ちも覚悟し宣言するアキ。
が。

「もう一つ問題あるんだよね。」「なに?」
「もうすぐ女房がくる。」「誰の?」「僕の。」「亡くなったって言ったじゃない!」「いなくなった、って言ったんだよ!」
「滑舌がぁ!!!」
再び気を失うアキ。人工呼吸する草野。偶然見ちゃった役者(三上さん)。「おっ。やってるね!」
それでも「毒を食らわば皿まで」と草野を信じて出て行ったアキだった・・・。

セールスマンと浮気をして出て行った草野の女房は、これが初めてではない様子。いつも都合が悪くなると泣いてはなし崩しに元鞘というパターンらしい。
「許さないから」と言いつつも、泣いて出て行く妻を追いかけていく草野。入れ違いにやってくるアキ。

そして、舞台監督に数々の大失態を責められる。次の「ハムレット」をまかせようとしてたがまだまだダメだ、舞台を舐めるな!と・・・。

戻ってきた草野にアキは言う。「これってずいぶんな話だよね。」
女房と話し合わないといけないから今日の約束はキャンセルさせて、また電話するからと言っている草野に「もう一言言っていいかな。」

「死んでくれ。」

出て行った草野を廊下で白銀マサルが呼び止める。「何か忘れもんですか?」「おめえを殴るのを忘れていたんだよ!!」 ・・・ボコッ!!「なんで〜?」

その様子を聞きながら、
「グッジョブ!」と親指を立てるアキなのでした。

そこへ出演者の一人と思われる老役者(小市さん)と付き添うように奥さん?(キムラさん)が。
・・・あれ?この二人・・・。と思っていたら。

「この度は南大作がお世話になりました。」

客席も大爆笑。やっぱり映子と結婚したんかい!!

「あんたはもしかして昔俺が国王やった「ハムレット」に付いてた、あのヤマちゃんかな?」
「はい。」
映子の「(小声で)聞いたわよ。お幸せに。」という言葉に「・・・はい。」と微笑するアキ。静かに暗転。


第四話。
昭和35年の冬。ここはジャズバンド「ビタースイーツ」の楽屋。リハーサル中で誰もいない。
私には分からなかったのですが、下手にはあゆみの写真が飾ってあった様子。(台本より)

そのまま時は5年前にー。
バンマスのシンジ(小市さん)は化粧前に突っ伏すように寝ていて、ケンジ(三上さん)達は花札をしている。
ボーヤの田中大作がジャズシンガーのあゆみを迎えに行っている。
外は雨。

会話の様子から、大作は水原百合のファンで、百合があゆみに似ていると力説していているということ、
そして、そのあゆみはケンジの女で、ケンジはクスリに走っているということ、
シンジとケンジとあゆみは戦争前からジャズを通しての知り合いだったことが分かる。

そんな中、大作は思いつめた表情でケンジにせまる。「ニューヨークに行くのはやめてください。」
ケンジがバンドを抜けてアメリカに渡るということをその時知っていたのはシンジとあゆみだけだった。
あゆみがポロッと大作に言ってしまったらしい。
あゆみが可愛そうだと、迫る大作だが、ケンジに相手にもされない。そして大作はあゆみが産婦人科から出てきた所を見た、とも告げる。
それでも「ジャズがやりてえんだ。ガキは御免だ」とケンジ。あゆみも「そんなドジは踏まないよ」と否定。
そして、あゆみをかけてバクチ勝負をする羽目に。
ケンジが負けたらバンドに残る。勝ったら、あゆみは子供ごと大作のもんだ、と。
結果は・・・
いたたまれずに飛び出していく大作、笑い出すバンドのメンバー・・・。

「あいつはジャズ屋に向かないな。いっそのこと日活のニューフェイスでも受けて堂々と水原百合を口説けばいいんだよ。」

シンジ、ケンジ、あゆみが3人きりになった時に交わされる会話は、それまでと全く違う雰囲気で。
特別であり、誰も入る事の出来ないものだという感じでした。

大作は結局意を決して告白するのですが、当然ふられてしまいます。
そして、子どもはもういないようにしてしまった、とも・・・。
「ありがとう」あゆみがそう言って大作の頬にキスをします。遠くからジャズの音・・・。


そのままケンジとあゆみが神経衰弱をしながら会話をしているのですが、どうも‘時’が違うらしい。
「懐かしいでしょ、ビタースイーツの演奏。」「ああ、悪かぁねえな。」
そして、子どものことを謝るケンジ。「ケンちゃんのせいじゃないよ。」とあゆみ。
「アメリカはどうだったの?」
「最初の2年位は最高だった。が・・・」結局、壁にぶち当たり乗り越えられず再びクスリに手を出してしまったというケンジだった・・・。

そこへ楽器をもったシンジが。
2,3会話を交わしたところで、突然舞台がセピア色になったんです。ドキッとしました。
初めて観ました。セピア色の写真のように時が一瞬止まったかのように感じました。
そのまま、時は本来の昭和35年に戻ったようで、新しいメンバーらしき人がいたり、大作がいなかったり。
シンジは冒頭と同じように突っ伏して寝ていました。
勿論、あゆみとケンジも「その場」に。でも過ごしている空間が違うような・・・。
二つの‘空間’がそこに存在してるかのようでした。
メンバーの会話から、大作はあの南大作で、水原百合と婚約したことが分かります。

そしてその日、ひとつの小さな新聞記事が。
それは、ケンジがマンハッタンの自宅アパートで死んでいた事を伝える記事。
そして、「今日」はあゆみの命日でもあった・・・。

シンジを気遣って一人にするメンバー。雨の音・・・。

・・・・・・・

「よぉ、シンちゃん」「ん?」「なんであゆみは死んだんだ?」「ケンちゃんが向こうに行って2年目位に白血病で・・・」

あゆみは、「戦争中結婚していて、ジャズが出来るようになったから捨ててきた」と言っていたがそれは嘘で、実は一家で広島にいたのだった。そこにぴかが・・・。
子どものことも、原爆症の遺伝を心配してのことだった。

「おまえそんなこと、オレたちにゃ一言も話さなかったじゃねえか」とケンタ。
「言えないよ、そんなの。」とあゆみ。

「アメリカ憎いけどさ。ジャズまで嫌いになっちゃ、しょうがないじゃない。」

静かな楽屋と雨の音。「しょうがないねえ・・・」「そうだな」と呟く3人。

そして、ケンタとあゆみがシンジを神経衰弱に誘う。
「ガキの遊びだな。」というシンジにあゆみは言う。
「いいじゃない。あたしたち二人にはたっぷり時間があるんだから。」

‘いつものように’おどけた会話をしながら、くすくす笑いながら、札をめくっている内に静かに暗転。

ホントにタイトルどおりの大人な空間がそこに存在していて、3人の空間には誰も入れない特別なものを感じました。
「時間の移り変わり」や、「後半のあゆみとケンタの空間」の線引きには若干戸惑いましたが(今も自信はないけれど)とても素敵で切ない時間でした。
あのセピア色の舞台は強烈に印象深かったです。

四話が終わった後。
出演者の皆さんがそれぞれ楽器を持って登場。なんと、バンド演奏を始めたのです!びっくりしました。
小市さんはトランペット、三上さんはテナーサックスでした。
そして、風船も無事ふり(笑)大満足なまま時は過ぎたのでありました。
とっても面白かったです。すべてにおいて、間やテンポもよく、流れも自然でメリハリがあって、心地よかったです。
タイトルの意味も分かってすっきりしました♪