泣かないで
原作:「私が・棄てた・女」(遠藤周作)

キャスト
森田ミツ:今津朋子  吉岡努:吉田朋弘 
長島 他:安中淳也  三浦マリ子:中村桃花  スール山形:秋本みな子 
加納たえ子:浜崎真美  金さん・中野 他:佐藤伸行   大野:渡辺修也 
田口:沓沢修一郎   田口の妻・院長 他:西岡由布子   ヨシ子 他:清田和美  

他 Rカンパニー(覚えきれなくてすみません。)

物語

物語の舞台は、戦後間もない東京ー。
街は復興のエネルギーに満ちていた。
貧しい大学生の吉岡努はある日、雑誌の文通欄で知り合ったクリーニング工場の女子工員、森田ミツとデートをする。
大学生とのデートに胸をときめかせるミツ。
しかし、吉岡は、ただやるせない気持ちのはけ口が欲しいだけだった。ミツと一夜を共にした吉岡は、その後下宿を引き払い、姿をくらませる。そんなことを知らないミツは、吉岡と会う日に着ていくことを夢見て、カーディガンを買うために残業に励んでいた。
  やっと手にした給料袋を握りしめて店に出かけるミツだったが、酒と博打に溺れる工員の田口が生活費のことで女房と言い争う場面を偶然に目撃してしまう。
目をそらし通り過ぎようとするミツの心に、女房に背負われている赤ん坊の泣き声が突き刺さる。結局ミツは、残業で稼いだ金を田口の女房に差し出してしまうのだった。

 一方、大学を卒業し、小さな会社に就職した吉岡は、社長の姪である三浦マリ子に思いを寄せるようになる。
社員たちが帰った夕暮れのオフィスで話したのをきっかけに、吉岡とマリ子は急速に親しくなっていく。
マリ子と映画に行く約束を取り付けた吉岡は、幸せな気分にひたりながら雨の街を眺めていた。そんな時、急にミツの面影がよぎり戸惑う吉岡。
同じ頃、大学病院の窓から吉岡と同じ鈍(にび)色の空を見つめているミツの姿があった。手首にできたアザを検査してもらったミツは、医師からハンセン病という宣告を受ける。富士山の麓にある復活病院。それは世間からうとまれ、死を待つだけのハンセン病患者たちが集められる病院だった。
「さいなら、吉岡さん。」
  吉岡への思いを断ち切るように、ミツは竹林に囲まれた復活病院の門をくぐっていった。
2006.6.24 関内ホールにて 1階5列(実質2列目)12番☆プレビュー初日


観終わった後は、胸にずっしり重くきたようでいて、優しいキモチになれるような感覚でいて。
言葉が未だに見つからなかったりします。
いろんな事を考えさせられました。

正直、1幕を観終わった時は微妙な感じだったんです。
心があまり動かずに淡々と過ぎていってしまって。
個々のシーンでは印象深かったりするところもあったのですが、軸になる主人公の感情がイマイチ私には観えなくて…。
「お前変わったな」
長島が主人公の1人・吉岡に言うのですが、私にはその吉岡の「変化」が観えなかったんです。
吉岡を演じた吉田さんは、若さゆえの行動や、野心を強く持って生きる姿とか、キャラとしては吉岡に近いものを感じました。抜擢も納得。
ただ、その裏にある繊細な感情が感じられなかったのが残念です。
これからに期待したいです。

ミツを演じた今津さん、原作のイメージまんまのまるで飛び出してきたかのようなミツさんでした。
特に2幕になってからは、彼女の「天性の神様」的な姿が自然に出ていて、復活病院が明るく変わっていったのにも納得しました。
ただ、個人的には1幕の「与える」決断が早過ぎる気も…。
吉岡に対しても、そして田口の妻に対しても…。

2幕後半、ミツが戻ってきて、病院内がとても明るくなって、生き生きしている中でのアンサンブル「ビギン」はじーんときました。
そして、ラストのスール山形(秋本さん)の歌も。
ミツを通して確立していくその想いみたいなものが感じられました。

で。
私は、良席をいいことに安中淳也さんチェックをしていたわけですが(笑)
まず、メインの役:長島の登場にびっくり。
調子がよくて、欲望を隠さない明るい男。女を見る眼はいやらしい位ギラギラしてたような…^^;
なのに、なんだか嫌いになれない男。
裏のなさそうな、自分に正直に生きているような、そんな人に観えました。
2幕でも少し、社会人になってからの長島が登場しますが、その目つきといい、性格も変わってない様子がなんだかほっとしてしまった私です(笑)
※その前に吉岡の勤める会社の同僚としても出ていたので、一瞬どっちだ?とも思ったのですが、「眼」でなんとなくすぐ長島だと分かりました。

(長島として出ていたシーンの)ダンスもシャープでパワーがあってかっこよかったです。
床に手をついて体重をのせるダンスシーンでは個人的にひやっとしました^^;
そして、ちょくちょく伸びている人差し指を思わず見てしまう私なのでした(謎)

2幕最初の方でペアダンスがあるのですが、(「カサブランカ」をイメージしたダンス:安中さん談。)コートに帽子というダンディないでたちで素敵なダンスを披露していました。
ただ、出来たらもう少しセクシーさや、しなやかさ、男の色気が出ていたらよかったかなあ、と思いました。
ここでは観ている人をドキッとさせるダンスが、私の好みとしては欲しいかな。

2幕後半では、患者の1人として出ていました。
くったくのない笑顔。最初は包帯をしていなかったけれど、その後のシーンでは頭に包帯…進行しているのかな、と感じ、でもそんな中でも楽しそうな笑顔になんだかキモチが救われました。
…葡萄と顔を並べて比べられてませんでしたか?(笑)

実は、私の個人的なツボが…。
1幕で、吉岡と長島がサンドイッチマン(?)のバイトをするシーンがあるのですが、チャップリンの格好の吉岡と、金髪にドレスの長島(安中さん)…^^;
一瞬、パチクリ(@_@)
かわいいお姿で…。(本当に可愛らしかったです。本当ですって。)
投げキッスするそのお姿、今でも眼に焼きついていて離れない…どうしましょう(汗)
ちなみに…チャップリン、眼の見えない花売り少女…これってチャップリンの「街の灯」?
気のせいですか?
(注※この初見の時に看板になんて書いてあったか、よく観ていませんでした。看板に書いてあったんですね。)

カテコで、なんだか胸が熱くなってしまいました。
しかも、安中さんの表情が、「とってもゴースト」とは全然違う。
余裕のある、落ち着いた表情。
芝居中でも思っていたんですけど。
頼もしく感じましたし、だからこそ、更に先に進んで欲しい、とも思いました。

音楽座さんは、その主人公にあった役者を見出すのがうまいなあと思います。
が、逆に一見違いそうな役者でも観てみたいです。

他の役者さんでは、西岡さんと佐藤伸さんが印象的でした。
芝居がしっかりしてるなあと。
短いシーンの中でも(伸さんは短くもないか…)しっかり存在を残す役者さんだと思います。

あと、個人的に、藤田さんがもっと前面に出る舞台が観たいです。
実力もそうですが、華のある役者さんだと思うので。