東京セレソンDX PRESENTS
切ない夏の風鈴三部作・第三弾「ぴえろ」

物語。

お間抜けな泥棒コンビ沢木とヤスがその夜忍び込んだ先は東京は下町、蔵前の寿司屋「すし政」。
しかし、難なく見つかりボコボコにされ気絶・・・
しかし翌朝目覚めた沢木を出迎えたのは「お帰り!テル!」という勘違いの歓迎の嵐で・・・
〜セレソン風サスペンスストーリー

CAST
沢木裕次郎/本宮照夫(テル):二役 宅間孝行

ヤス    永田恵悟

大友秋子:阿南敦子/大友春子:竹森りさ/
藤原源太:飯島ぼぼぼ/藤原セツコ:砂塚 舞/明菜:水谷かおり

小野田:笹嶋和人/香田:樫原弘明

本庄純:鈴木陽子/ひろし:金子俊彦

エリカ:西村花織/広岡:西村清孝 
2005・9・10(土)マチネ観劇。 座席(自由席)後方センター寄(J列位?)


開演前に永田さん達がまだ薄暗い舞台(「すし政」の中)にやってきました。
「予約してた永田ですけど〜…忘れられてるのかな」
なんて言いながらカウンターに座っておもむろに話し始めました。
「…携帯の電源はさあ、切ったほうが、いいよね」「そう…だよね、携帯はね」
(台詞に自信はないんですが…こんな雰囲気ということで)
台詞調ではなく、素の会話のような口調で「観劇マナーのお願い」をぼそぼそっと話し始め、それが妙に面白かったです。
こんな風に言ってくれると、みんな見入っちゃって効果的だと思いました。

この日はすごい人で通路にも人が座っている状態でしたが、比較的マナーもよく、気持ちよく観劇できました。
(アラームを切り忘れた人がいたのか、後半のいい所で「時間になりました」という電子音が遠くから聞こえて少しがっかりでしたが。)

さて。
感想&ネタバレです。
間抜け泥棒沢木&ヤスが暗闇でボコボコにされた翌日。
二人がピンクのネグリジェで降りてきたのには噴出しました…(笑)
それはさておき。
主(大将)を失った「すし政」では、何年も修行をしていた元気ものの明菜、主の娘(妹)春子、近所のセツコが何やら「”テルお帰り”お祝いパーティ」(?)の準備をしながら元気よく会話をしています。
そこに戸惑う沢木&ヤスも交じってきます。

いきなり苦言で申し訳ないのですが。

前半の部分、(女優の皆さんの会話が)正直少しうるさく感じました…。
下町の活発な女性、を表現したのかもしれないのですが、大声でがなっている感じで、それが飛び交っていて少々聞き辛く、観ていて疲れてしまいました。
余裕がないのかな?という感じで。
後半になって「このシーンはこういう状態だったんだ」と分かって、「もしかしてカラ元気な状態で無理矢理明るく振舞ってたのかな」と思ったりしましたが、そう思い返してみてもやっぱりちょっと…。
大事な導入部だし、ここをどう印象つけるかによって全然違ってくると思うので…ちょっと気になりました。

あと、度々生ビンタとかあるんですけど、場面によってはちょっと痛々しく見えちゃいました…。(たまに、ね。)

そうそう。
夜の仕事をしている秋子(姉)ではありますが、それにしても周りが妙に気を使って休ませてるなあ、と最初から気になっていたのですが、これについては後半になってすっと繋がりました。

沢木は当然テルではないので、「10年ぶりだなあ」と昔話をされても困惑しつつ、捕まるのも嫌なので(笑)様子を伺いながら話を合わせていきます。
亡くなった主の事を知って戻ってきてくれたんだろう、と。
みんな、嬉しそうに、楽しそうにテルの昔話をしています。みんなに愛されていたんだなあ、というのがひしひしと。

酒が進むに連れ、すっかり調子よく溶け込んでいる沢木が面白かったです。
そして、その舎弟ヤス(パンチパーマ?にヒゲというなんともチンピラ加減が面白くて、しかも少し可愛く観えてしまうのはなぜ)の偽名が「鈴木○男」っていうのも噴出しました。しかも、漢字一文字違い…^^;

秋子に一目ぼれし、でれーっとする沢木(しかもお互いいい感じ。)。やきもちを焼く春子。春子狙いのヤス(笑)←しかも勘違い甚だしい。
そんな思いも絡みつつ、周りの疑いのない明るさと居心地のよさに沢木もヤスもこのままここにいたいと思いだします。
沢木なんて握ったこともないお寿司を握ろうとしているし。
(寿司っていうか、俵おむずびにネタがちょこんとのっている感じ:爆)

観てる私もすごく居心地がよくって、沢木とヤスが「犯罪者」だということを忘れそうになってしまいました。
このままでいさせてやってよ…と。
沢木もヤスも、とても悪い人には観えないし…。

でもそんなわけにはいかなくて・・・。

クリーニング屋の店員純は恋人とのゴタゴタにテル(沢木)を巻きこんだため、誤解されたまま乗り込まれるわ。
(秋子と楽しい(?)ショッピング帰りで浮かれていた沢木だったけど、すぐに事態を察し、態度が急変。相手の男に蹴りを入れて啖呵をきる。これが男くさくてめっちゃかっこよかった〜。)
でも、これがいい方向に変わって、ひとまずほっ。

が。
悪徳金融業者が乗り込んで来たり(しかも、「テル」とも関わりがあったりして。)聞きこみにきた警察の1人が沢木を知っていたり。
(でも沢木は「テル」だと言い張った。それがまた大変な事に・・・)
不穏な空気に…。
そして、沢木は周りが「テル」じゃないことを知ってることをうすうす気付く。でも、どうしてそれなのに…。
沢木とヤスは出かける。「戻ってくるよね?」という言葉に答えずに。


そして夜。
なぜか喪服姿の秋子。土地の権利書を持っている。電話の会話から父親が亡くなった直後に時間が戻っている様子。
そこに現れるテル。本物のテルはかなりの悪党になっていた。
悪徳金融業者とも繋がっていて、すし政の土地の権利書を奪おうとしていた。
10年ぶりのテルに喜ぶ秋子。でも、その笑顔はすぐに苦しみ、悲しみの表情に…。
非情なまでに秋子を痛めつけ権利書を奪おうとするテル。
そして、穏やかで大人な秋子が「壊れて」いく。
悲痛な叫び声を上げて、テルの頭に…。
何度も何度も殴打するその秋子の姿は切なくて悲しかったです…。
身体の痛み以上に心をズタズタにされたように思えて。

そこにセツコらがやってきます。
驚愕しつつ、泣き叫ぶ秋子を奥に連れて行きます。
と、そこへ。
のんきに島倉千代子を口ずさむ沢木とヤスがこっそりやってきます。冒頭に観た風景です。
身を潜めるセツコら。
そしてあっさり沢木&ヤスはボコボコに。


「…これはどういうこと?」

ボコボコにして気絶している男の顔は、「あっち」で殴られ死んでいるテルとそっくりだったのです・・・。


結局、沢木とヤスはすし政を出て行くことにしました。
ヤスが「皆さんに感謝の手紙を書いてきました」と言った時には思わず笑ってしまいましたが、おかしいはずなのに切ないんです。
涙を堪えながら手紙を受け取るセツコや源太ら。
そして「みなーさんーほんとーにいままで、ありがとーございました!」という感じで、沢木とヤスが声を揃えて話し始めます。
その言い方がまるで、小学生が卒業式か何かで「みんなといった、しゅうがくりょこう!」と声をそろえて言ってるような(?)感じの言い方で(うまく書けなくてすみません。)すごくおかしいのに、すごく切なくて切なくて、必死に涙を堪えていた私はついに堪えきれずボロボロッと涙がこぼれて止まりませんでした。
泣き笑い状態で胸が苦しかったなあ…。

ちなみに秋子は。
警察がやってきて、沢木は「テル」として連れて行かれそうになった時、ついに告白します。
「その人はテルじゃない!テルは私が殺しました。」と…。

「借りていた着替えをクリーニングに出してきました。」沢木とヤスが去った後、その紙袋を見ると。
中に風鈴が…。

台詞とか感じ方とかあくまでも「こんな感じ」という程度で見てください。
少しでも興味を持った方がいましたら、ぜひ、自身の目で観て感じてみてください!
こんな文章を読んでもあんまり伝わりません!(笑)

終わってから気になったことがひとつ。
カーテンコールの後、永田さんと水谷さんが残って「この劇団は口コミだけが頼りです。周りの皆さんにも是非…」ということをおっしゃったのですが、個人的にあまりいらないかも…。
言われて広めるものではなく、舞台で魅せてくれれば評判は広まっていくものだと思うんです。
しかも、こんなにネットが普及してる時代だし。
プロなんだし、こんなに素敵な舞台を創っているんだし…。
なんて、ちょっと思ったりして。

印象に残った役者さんは宅間さんと秋子役の阿南さん。
宅間さんは全然違う二人を自然に演じてました。
テルが入ってきた瞬間すぐに分かったし、その仕草や雰囲気も全く沢木とは別人。
同じ「怒鳴る」でも全然違う。そこに「血が通ってるか通ってないか」が自然に伝わりました。
とぼけた感じも秋子にメロメロな姿も男くささもすべて魅力的でした。
存在感もありますねえ。
そして阿南さん。
最初の登場から「何か」を心に押し隠してるような気になる雰囲気を感じました。
品もあり、感情をあまり表にさらけ出すことがない感じで、大人な雰囲気。
沢木が一目ぼれしてしまうのも分かる気が(笑)
それだけに、テルを殺してしまうシーンは、すごく切なくて胸にぐっときました。

ちなみに、9/19まで公演しています。詳しくは公式HPで。