SLAPSTICKS スラップスティックス

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

サイレント映画からトーキーへ、情熱が溢れていた創生期のハリウッド。
夢と希望に満ち満ちた1人の青年を通して、映画を愛してやまなかった人々を描いたロマンチック・コメディ。

 【出演者】

オダギリジョー ともさかりえ 古田新太  
   山崎一 金久美子 峯村リエ 廣川三憲 住田隆 村岡希美 
吉増裕士 中坪由起子 坪田秀雄 すほうれいこ 種子
     大谷亮介 他

STORY

1940年。
暗闇に浮かび上がる映写機の光、カタカタという映写音。やがて、スクリーンに映し出されるのは、陽気な太った男。
大きな図体からは信じられぬ程素早く、かつ優美な身のこなしのこの男の名は「ロスコー・ア−バックル」
(古田新太)

チャップリン、キートン、ロイドの三大喜劇王全員と共演経験のある、唯一のコメディアン・・・・・。

画面を見ながら熱のこもった解説をするのはビリーという中年男(山崎一)、聞き手は映画配給会社に勤務する
デニ−(住田隆)。しかし、デニーは時間ばかり気にしている。
ビリーはアーバックルの映画をリバイバル上映してもらおうと、あちこちの配給会社を奔走していた。
だが、人々にとってサイレント・コメディーはもはや過去の遺物。ビリーにはデニ−が最後の砦だ。
だが、デニーは映画になどまるで興味のない男。加えて、アーバックルは18年前、いわくつきの「事件」に
巻き込まれており
、今でも一部の人々によって、彼の映画の敗訴運動が行われている。
それでもビリーは食い下がる。デニ−を説得するべく、熱いまなざしで当時の思い出を語りだす。
それは17年前のハリウッド。コメディアン志望のビリー(オダギリジョー)が、映画の世界に潜り込むきっかけに
と、助監督として入社した〈喜劇の神様〉マック・セネット(大谷亮介)の撮影所での出来事だ。

何もかもが今より単純な時代。トーキー時代の到来までまだ7年あった。
撮影所は今日も大騒ぎ。撮影に熱中すれば常識も人の意見も気にも止めないセネット。
出演するコメディアン、コメディエンヌ達も、セネット監督に負けず劣らずの奇人揃い。
自転車などなんでも食う女(種子)殴られる事しか能のない白塗りの男(廣川三憲)、そして首を折って
ギブスをはめているのが、ベットごと様々な困難に立ち向かうシリーズの作品に出演中のキャリー(村岡希美)
などなど、破天荒な撮影所の日常に、入社したてのビリーは目を白黒させている。
その日はアーバックルの姪、ルイーズ(すほうれいこ)が、彼の紹介で映画界入りすべく撮影所を訪れ、一層
ザワザワと落ち着かない1日だった。

夜。編集室でフイルムの山と格闘中のビリーの前にふらりとあらわれた美しい女性、メーベル・ノーマンド(金
久美子)
。チャップリンの先輩であり、自身で監督もこなしながら、セネットと共にプロダクションを支えた、大女優だ。
いきなり現れた憧れの大女優を前に、極度に緊張するビリー。彼女を追って慌てふためいたセネットも登場。
明らかに様子がおかしいメーベルについて、セネットはビリーに口止めすると、処分するよう小さな包みをビリー
に渡し、二人は立ち去る。
包みをあけると、中から白い粉が・・・・。メーベルはコカインに手を出していたのだ。
ビリーはくしゃみをした拍子に粉を吸い込んでしまう。
その時電話をかけてきたアーバックルに支離滅裂な対応をした挙句、眠り込んでしまうのだった。
夢に現れたのは、初恋の人、アリス(ともさかりえ)を家に連れて行ったあの日・・・・・・。

その頃、サンフランシスコでは、アーバックルがホテルの一室で主宰するパーティの準備をしていた。
ホテルのフロントで、彼に声をかけてきた派手な服装の女は女優のヴァージニア・ラップ(中坪由起子)
アーバックルは請われるままに彼女をパーティに誘う。それが彼の運命を大きく変えてしまう引金になるとも
知らずに・・・・。

再び撮影所の光景。新しく出来た〈自動ドアのあるレストラン〉で昼食中のビリーや役者達の前に、青い顔をした
セネットが飛び込んできた。
アーバックルが暴行殺人容疑で逮捕されたのだ。ラジオは、アーバックルのパーティ中に、ラップが彼の寝室で
血まみれで倒れていた事を告げる。鍵のかけられた部屋にいたのは、アーバックルとラップの2人だけ。
ラップはアーバックルの名を数回叫んだ後昏睡状態に陥り、4日後、死亡・・・・・。

新聞各紙が煽り立てる。「変態コメディアン・アーバックルの正体」「ハリウッドの殺人鬼アーバックルを許すな」。

17年後の街を歩きながら、ビリーはデニ−に言う。
「実を言えば私も初めのうちは疑っていたのです・・・・」デニーは少しずつ、ビリーの思い出に興味を抱き始めて
いるようだ。腹を減らした二人は、美味い食べ物を求めて夜のハリウッドを歩き回る。

再び回想の世界。第一審の裁判を一週間後に控えたアーバックルは、サンフランシスコの留置所で、嘘ばかりを
書き立てられた新聞記事に絶望している。
撮影所ではそれでも日々の仕事が続けられていた。ビリーは編集室で作業中。
そこへ、女優を辞めようと撮影所に別れを告げに来たキャリーが現れる。何気なくつけたラジオでは、トーク番組が
アーバックルのスキャンダルを扱っていた。相変わらず事件を面白半分にあおるばかりの無責任な内容。
だが、スイッチを切ろうとしたビリーは、耳に飛び込んできた声に思わず手を止める。
それはアリスの声だった。ビリーは耳を疑う。かつてあんなに恋していた女性が、今ラジオで語っているのは、
アーバックルを更に不利にする証言。
時の隔たりは、2人を残酷な形で再会させる。そして・・・。

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2003.2.6(木)PARCO劇場にて観劇。 座席Y列10番

 席が2列目。もうそれだけで、嬉しくてしょうがない私。いつもと違う古田さんが観られそうだなあ(^^ゞ

舞台の前後が黒いカーテンのような、壁のようなもの(2枚)で仕切られていました。
その壁(?)が‘シャーッ’と左右に交差するように動くと、後ろから突然、人が現れるという仕組みになってて。
結構、効果的に使われていたと思います。
(新感線の「古田新太之丞〜」でも同じような壁(?)が使われてました。)

そして、物語途中、その中から突然のように現れた古田さんに既に大爆笑。
なぜ、あんなすごい肉襦袢をつけているのだ・・・・。(本人は素でもいいんじゃないか、と言っていたらしい:笑)
見た目はとてもコミカルでチャーミング。でも物語の中でヘビーな部分を背負っているアーバックル。
そんなイメージがすごく伝わってきました。

※ちなみに、場面転換(?)で、度々スライドが出てきて、実際の(当時の)サイレント映画が度々ながれるという
形でした。なるほど、たしかにアーバックルさんはでかい(笑)

前半はかなり大爆笑を誘ってたなあ。(あれ?笑わせない役だったよなあ・・・^_^;)
でも、決して笑わせていたのではなく、思わず笑っちゃう愛すべきキャラ、って感じだった。

ホテルに入るシーンで、すごい態度のデカイ女(?)にサインを求められて、言われるがままににこやかに応じ、
女が去って数歩歩いてから、「お、おーいっ!!なんだあの態度はあ!!」って突っ込みいれるシーンとか、
その当時の電話(電話機がスタンドマイク?みたいな形で、それを片手に持って、もう片手で受話器を耳に
あてるっていうやつ。)を持って、軽やかに踊って、受話器を剣玉のようにぐるぐる回してキャッチして、ポーズ
(これがまたお茶目。)をとるシーンとか。(しかも、このシーンでは拍手までおこった。)
ちょっとした仕草や台詞回しも笑ってしまうのです。さすが、古田アーバックル。

でも、事件に巻き込まれた後のアーバックルは、切なかったなあ。笑っていてもその笑顔が哀しいんだもん。
留置所で「出してくれよお・・・!!」って嘆くシーン。
釈放されたものの、街で女の子にサインを求められて快くしていると母親が出てきて、罵倒された上に、
そのサインしたノートを二つに裂かれてしまって、哀しそうに笑ってそのノートを拾うシーン。
セネットら友人とレストランに入りオーダーをしようとすると、店側から出ていってほしい、と、しかも裏口から
と言われ、逆上してウエイターにつかみかかったセネットに「しょうがないよ」って寂しげに言うシーン。
どのシーンもなんだか切なくて、しかもアーバックルを応援してしまいそうな気持ちになって、不思議でした。
「確かに、いろんな悪いことをしてきた・・・でも、映画をとれなくなるようなヘマだけはしない!!」
そう嘆くアーバックルを信じてしまいました。事実は、分からないけど。きっと、誰にも。
いつになく、抑え気味のヘビーな部分を背負った古田アーバックル。かなり、ヨイです。

他に印象深かった役者さん。
まずは、山崎一さん。相変わらず台詞回しも綺麗だし、表情も豊か。「この人が出るなら観てみようか」と思わせる
役者さんの1人です。しっかり、笑いもとるし。
山崎さんの今にも泣き出しそうな切ない表情を観て、思わずこっちも泣きそうになってしまいました。
引き締まるなあ、この人が出ると。

そして、ビシバシステムの住田さん。今までは正直「お笑い」のイメージが強かったけど、これがなかなかヨイです。
最初はすごくいやーな人だったけど、徐々にビリーの話に惹かれていく様子や、最後には暖かいいい人になって
いく過程が自然ですごくよかったです。

あと、村岡さん。なんかはまり役?表情を決して表に出さず、淡々とこなす役者さんの役がすごく合っていました。
それが逆に面白くて笑ってしまったり。かなり印象に残りました。
後半役者を辞めて去っていた後、そのキャリーから撮影所にハガキが届き、その内容が「自分の出てる映画を
見に行ったら周りがすごく笑っていて、嬉しくて泣いてしまった」とかそういう内容で、(ハズ。自信ないけど^_^;)
役者仲間が「元気そうでよかったねえ」とかいろいろ言いながらしみじみしていると、直後に信じられない一報が
入って、それが、「キャリーが自殺した」というものだったんだけど、なんだか切なくてねえ・・・・。
妙に、印象に残ってます。

そして、オダギリジョーさん。自然でピュアな感じがとてもよかったです。真っ直ぐな思いも切なさもコミカルなシーン
もストレートに伝わってきたと思います。
関係ないけど、TVで見るよりずっとかっこいい方でした(^^ゞ

全体的にも笑いあり、切なささり、でかなり満足しました。ビリーは架空の人物だけど、他は実在した人物、事件。
その当時をちょっと垣間見てるような、リアリティを感じました。

ちなみに、カーテンコールでは、古田さんお辞儀をした後そのまま上を向いて「ぷはーっ!!!」と水(かな?)
しぶきを飛ばしていました(笑)結構な勢いで。
しかも、全員が出てきてその後の去リ際は、古田さんお馴染みの投げキッス3連発(笑)
こんな間近で幸せです♪

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参考*初演NYLON100℃ 2nd SESSION SLAPSTICKS(1993.12.17〜30)
        ビリー:三宅弘城 アリス:秋山菜津子 アーバックル:藤田秀世 17年後のビリー:山崎一 他