トーチソングトリロジー
作=ハーヴェイ・ファイアステイン 上演台本・演出=鈴木勝秀

キャスト
アーノルド: 篠井英介/エド:橋本さとし
アラン:長谷川博己/ローレル:奥貫薫/ディビット:黒田勇樹/ベッコフ夫人:木内みどり
レディ・ブルース(VOCAL&PIANO):エミ・エレオノーラ/DJの声:池田成志

公式HPに舞台写真もUPされています。


ACT1 アーノルドとエド〜インターナショナルスタッド〜

ニューヨークのナイトクラブで働くアーノルドは、今しっかり女装をし、メイクの仕上げをしているところ。
「女装のオカマより楽な生き方もある。でも、あたしはどうしようもなかった。どんなにがんばっても、ヒールのない靴じゃ歩けない。」彼はとめどなく言葉を重ねていく。どんな男と出会い別れてきたか、自分にとって最高の男とは、本当に欲しいものは・・・
「でも、誰も一度たりとも本気で、「アーノルド、愛してるよ」とは言ってくれなかった。だから自分に問いかける。「あなたは本当に愛してるの?」。正直な答えはたったひとつ、イエスよ。だって・・・とても愛してるもの。でも充分じゃない」

アーノルドはゲイ・バー‘インターナショナル・スタッド’でエドと出逢う。ブルックリンで教師をしているエドはバイセクシャル。このバーには、その場限りの関係を楽しむために通っている。
が、アーノルドとは新たな関係に進展しそうだ。誘いはエドからだった。
「初めてだよ。そういう人と出会ったの・・・準備はいい?車は道の向こう側だ。声がセクシーだって言われたことない?」

4ヵ月後。アーノルドはイライラと電話を待っている。もう1週間もエドから連絡がない。家のどこにいても、彼の意識は電話に向かっている。
そして結局は、また自分からダイヤルを廻すのだ。で、嘘をつく。
「たった今の電話。あなたがかけてきたの?ちょうど家の前で鍵を開けようとしたら、電話の音が聞こえたから」。
エドは誰かの訪問をまっていたらしく、明らかに電話を切りたがっている。アーノルドの言葉は次第に怒気を帯び、その勢いに押されるかのようにエドの答えはアーノルドが恐れていた核心に近づいてゆく。
「僕は君だけだなんて言えない」「・・・そうだな、彼女は素晴らしい」。
「このまま付き合っていけたらいいなと思ってた。信じられないかも知れないけど、本当に君を失いたくない」・・・言葉がアーノルドの心をえぐる。彼は受話器を置いた。

5ヵ月後。ナイトクラブに突然エドが現れた。恋人のローレルとの関係は続いているという。友達として逢いに来たと言うエドだが、どことなく不安気で落ち着かない様子だ。
「怖いんだ。君が必要なんだ」。エドの告白にアーノルドの心は揺らぐ。


ACT2 アーノルドとアラン、エドとローレル〜Fugue in Nursery〜

1年後。エドの恋人ローレルがアーノルドに電話をかけてきた。二人が言葉を交わすのは、これが初めてのこと。週末、一緒にエドの農場で過ごさないかとローレルは誘う。
「エドは、かつて恋人だったアーノルドに深い友情を抱いている。その彼のためにも二人は一度顔を合わせたほうがいいだろう」とローレルは言うのだ。そして、これはエドと二人で計画したことだとも。
躊躇するアーノルドに。傍から「俺、行きたい」と、アランが口をはさんできた。アランはアーノルドの若き恋人だ。
「・・・ねえ、ローレル。友達を連れて行ってもいい?」アーノルドは答えた。

週末、それぞれの思惑を抱きつつ、2組のが恋人集う。エドはアランの存在を知らなかった。
不愉快な思いを隠しきれないエドは、「あのくそガキのせいだ。素敵な週末になるはずだったのに。僕は・・・君たち二人と一緒にいて・・・人生に区切りをつけるつもりだった」と、ローレルに当たる。
いっぽう、アランはアーノルドに執拗に問う。「本当にエドを愛してた?」返ってきた答えは、「それはね、愛したからよ。それはね・・・あたしが愛したから。それはね・・・あの人がそうさせてくれたから」

「君はアランを愛していない」−エドもまたアーノルドにつめより、自分の存在をふたたび認めさせようとする。
「愛してないかもしれないけれど、あの子があたしを必要としてるって思うのが好きなの」と、アーノルドは言い放つ。そして、ローレルまでも、いつもアーノルドの影におびえエドとの関係に確信を持てずにいることをアーノルドにほのめかす。
それぞれの心の揺らぎは、微妙は四角関係の会話によって、さらに増幅され、やがてエドはアランの体を抱いてしまう。

恋人の情事を知ったローレルは「胃をかぎ爪でひっかかれているみたい」とアーノルドに訴える。アーノルドは言う。「人生に多くを求めすぎてる。そうじゃない?あたしは誰かに「愛してる」って言えればそれでいい」

ナイトクラブのアーノルドの前に、ローレルがふたたび現れた。アランと永遠の契りを交わすことにしたと話すアーノルドに、「エドとあたし、婚約したの」と彼女は告げた。「あたしたち、うまくいっているわ。でもエドの心はまだ揺れているの」


ACT3 アーノルドと母、そしてディビット、エド〜Windows and Children First!〜

5年後、6月の朝。
アーノルドは保護観察中の少年ディビットを引き取り、養子縁組の申請をしている。朝のあわただしい時間、ディビットの服装をチェックし、朝食をとらせ、学校に送り出す姿はまるで母親だ。二人の間に心地よいテンポの会話が交わされる。ささやかなファミリーが形成されつつあるのだ。

その風景の中にエドがいた。ローレルと別居して4日目、このアパートのソファがベット代わりになっている。しょっちゅう電話をよこす妻の心を落ち着かせようとしているが、不安定な精神状態の妻にはなかなか言葉が通じない。
アーノルドは夫婦間の問題に耳を貸さないばかりか、「お手軽な共同生活は嫌われるから」とディビットのソーシャルワーカーがやって来る日は姿を消してくれとエドに頼む。二人には確実に5年の隔たりがあった。
「僕たちが一緒になってたら、今頃どうなってたかなんて考えたことない?」と問うエドにアーノルドは答える。「あると思う。アランが死んだ時、バカなことをいろいろ考えた。あなたもそこに入ってたわ」

この日、アーノルドの母親ベッコフ夫人がアパートを訪ねてくることになっている。典型的なユダヤ人女性である母親は、13歳でカミングアウトした息子のセクシュアリティを受容できないでいた。彼女にとって、エド、アランは息子の友人、ディビットは単なるルームメイト。そんな母親にアーノルドは養子縁組の申請中であると告げられないでいた。醜い言葉の応酬になるのは目に見えている。「母親に一人で立ち向かうなんてできない」。アーノルドはエドに立ち会って欲しいと頼み込む。

予想通り、ディビットの養子縁組に母は猛反対した。彼がここに送られてきたのは「同性愛者としてのポジティブな姿勢で育つように」との行政の判断であり、アーノルドにとってもアランを失った喪失感から立ち直るためだと訴えるが、母は聞く耳を持たない。
根本的な価値観の相違を改めて思い知らされたアーノルドは、「人からもらう必要があるのは、愛と尊敬だけ。その二つをあたしにくれない人は、あたしの人生から出て行ってもらう」と母親に告げる。
そんな彼にディビットは言う。「あんたとママの間に起きることって、俺たち二人にも関係あるんだよ。だって、あんた、ママに似てるもの。・・・俺はとやかく言ったりしない。ただ、責めるべきは自分自身で、他の人じゃないってこと、わかってくれるかな」
そしてエドは、「ここで君とディビットと過ごした時間は・・・望んでるものに一番近い。最高の気分だった・・・」と。

翌朝、ベッコフ夫人は自分の居場所に戻っていった。別れ際、「アランが恋しい」と嘆くアーノルドに、「時間が必要だよ。でもね、それは決して消えない。そしてお前の一部になる。指輪やメガネと一緒だ。彼のことを忘れたいなんて思ってないだろ?」という言葉をかけて・・・。

(パンフより)
感想。

☆2006.11.25(土)マチネ パルコ劇場にて観劇。 座席1階B列(5列目)22番
 (別ウインドウで開きます。)

※次回は12月の予定。