「噂の男」

作:福島三郎 潤色・演出:ケラリーノサンドロヴィッチ

キャスト

鈴木光明 …堺雅人
宝田興業のエリート社員。宝田グランド劇場支配人。

モッシャン …橋本じゅん
宝田興業所属の漫才コンビ“パンストキッチン”のツッコミだったが、
相方のアキラに先立たれ、今は酒びたりの日々。

加藤信夫 …八島智人
ボイラー室の整備のためにやって来た、ボイラー技師。

ボンちゃん …山内圭哉
宝田興業所属の売り出し中ピン芸人。

アキラ …橋本さとし
“パンストキッチン”のボケで、モッシャンの相方。12年前に他界。


骨なしポテト(トシ&アヤメ)…猪岐英人&水野顕子
宝田興業所属の中堅夫婦お笑いコンビ。

物語

時は現在。
場所は大阪にある宝田興業の持ち小屋、昭和の戦後に建てられた、宝田グランド劇場。
その舞台袖、地下にある『ボイラー室』と呼ばれる一室。
そこを訪れる、芸人たちとそれをとりまく人々。
2006.8.12(土)マチネ観劇。パルコ劇場A列(4列目)22番

注※ネタばれ大有り、自分なりの解釈大有り、結末まで書いてますので、これから観る方は観ない方がいいかも^^;







my初日。
まずびっくりしたのは、キャストが2人増えていたこと。
より深く描くための2人ということは分かるんですが、個人的にはちょっと残念。
しかも、女性の方は本筋にちょっと絡みすぎかなあ・・・。

しょっぱなの客電out(さとしトムかい。)の中、女性のあえぎ声から始まります^^;
私としては、明かりがついたら実はあえぎ声ではなかった、というオチを期待したのですが(笑)まんまだったようです。
ボイラー室の奥では、(出番を待つ)ボンちゃんとアヤメが・・・。そして、なぜか見張り役をしている(?)トシ。
この行動が既におかしいでしょ、この3人・・・。
それにしても・・・何をしていたのか分かるので、出てきてからのボンちゃんとアヤメの生々しい台詞はいらない。(苦笑)


舞台の中心は「舞台袖」。よく芸人さんたちが練習したり、着替えたりと使う場所。上手奥は奈落、下手奥はボイラー室、下手階段を上がると「舞台」(らしい)。この中で現在と過去が行き来します。


アキラの命日の今日。
いつもはムトウさん(だっけかな?)が常駐しているはずなのだけど、何日か前から消息がつかめないという事で、代わりにボイラーの修理にやってきた加藤。
そして↑3人の状況に出くわす。

この加藤、かなり曲者。いつの間にかボンちゃんとアヤメの写真を携帯でとってたり(写っていたのはなぜか3人)、挙句、骨なしポテトに容赦ないダメだしをし、アヤメがキレれ、そのアヤメがさらにトシを殴ってしまう。
血だらけのトシは支配人の鈴木さんらに運ばれながら「これ(殴られたこと)、ボンちゃんにされたってことにしてもいいですか。それ位で丁度いい・・・」と言い出し、鈴木さんはその言葉がひっかかる様子。

二人っきりになった鈴木さんとボンちゃん。
着替えるボンちゃんをねっとりとした視線で見つめる鈴木さん。
まさか・・・(汗)
いつの間にか、二人は濃厚なキスをかわしていたのでした^^;


12年前。
モッシャン&アキラの漫才はおかしかった〜。
じゅんさんに何度もバシバシ顔を叩かれてるさとしさん、大丈夫なのかしら?でも、おかしかった(笑)

そして、気の弱い気の利かない(?)マネージャー鈴木さん。
こんな鈴木さんが、12年後には冷静で淡々とした支配人になるとはねえ・・・。
それにしても堺さん・・・。やんちゃなモッシャンにいじめられるわ、いじめられるわ、あられもない姿にされるわ、目のやり場に困りました。セ、セクシーすぎっす^^;モッシャン、キュービズムって(謎)

そんなモッシャンに逆らえないけど、そんな鈴木さんを気遣う優しい・・・はずだったアキラ。

漫才一筋で、アキラの才能を愛し、何が何でもパンキチを貫こうとしているやんちゃなモッシャン。
見た目のかっこよさから、ピンでの(しかも漫才以外の)仕事が増え、相方に内緒である野望を持ち始めるアキラ。不穏な空気が流れ始めていました。
鈴木さんは完全にアキラ中心。しかし、アキラは鈴木さんに言い放ちます。
「お前、ホモだろ!そんな目で見られるのは嫌なんだよ!!」

だっさいジャージだったアキラは、革のパンツなんか穿いちゃって、ピアスなんかしちゃって。完全に天狗状態で、モッシャンを煙たがってる様子さえ見える。
(余談ですが、漫才ネタであった「矢印代わりの手の形(要は拳銃みたいな形)」から「バ〜ン!」と言ったさとしさんを観てエンジニアを思い出した私でした。)
モッシャンは、気に入らない。そして、ついにアキラの野望がモッシャンにばれてしまう。
その直後に起きた「1つの大きな事件」と「1つの鈴木さんにとっては大きな事件」。
前者はある漫才コンビの片割が襲撃され重傷を負った事件。
後者は、鈴木さんの大事にしているハムスターが行方不明になってしまった事件。
疑われるモッシャン。そんな中で、アキラのぞっとする顔・残虐な性格が・・・。
それを身をもって知ってしまったアヤメは(アヤメもアヤメでなんだかな、の性格なんだけど・・・)激しく反発。

アキラは、モッシャンの機嫌を取るために、数日後の単独ライブの打ち合わせを積極的に行う。
ちょっと気分をよくするモッシャン。
そんな中ボイラー室に異変が。
大きな音のするボイラー室を気にするモッシャンは、「お前ちょっと観てこいよ」とアキラに言う。
嫌だと言っていたアキラだったけど、アキラのメモをコピーしてくるとモッシャンが出て行った後に、何気にボイラー室を覗く。
大きな音。アキラの悲鳴。そこに居合わせたアヤメ。
アキラは命を失う。しかしこれは事故であって事故でない・・・。


さて、「現在」。
現在のモッシャンは、薄汚れたランニングシャツにボサボサの髪、酒びたりの、頭がおかしくなっちゃってた人だったのです。
何週間もずっと奈落に住んでいた様子。
・・・このじゅんさんが、おもろくてかわいらしくてたまりませんでした(^^♪
お腹を掻きながらつぶらな瞳で「酒、こうてきてくれんかのぅ。酒がのうなって・・・」とか「背中かゆぅて・・・掻いてくれんかのぅ」と。
ボンちゃんに甘える(?)モッシャン、いいですわあ。


鈴木支配人に殺意を持つボンちゃん(ボンちゃんはホモではない。)は、加藤にボイラー事故を起こしてほしいことをほのめかす。
加藤は本気なのか、からかっているのか、馬鹿にしたように笑っていながらボイラー室へ・・・。


その加藤はモッシャンと二人きりになった途端、本性を現す。
「俺のおやじはお前のせいで・・・!」殴る蹴るの加藤。
やられっぱなしのモッシャン。

そしてモッシャンは、相変わらずのボケボケ状態でしきりにロッカーを指差し、もっと右、だの言っている。
加藤がそのロッカーを開けると、出てきたのは首なし死体・・・。悲鳴を上げる加藤。
いくらパンキチをけなされた(確かそんな台詞が)からって・・・。そして加藤は。


鈴木さんは「この日」に向けてモッシャンの行方を捜していました。話題づくりといったところ?
そしてモッシャンに、マニア向けの変なビデオ出演の仕事を持ってきた様子。
そんな鈴木支配人の前にやっと姿を現したモッシャン。そして、ボンちゃん。
モッシャンは漫才の話になるとふと昔の顔に戻り、ギラギラした目に声に変わり、またすぐにボケボケに戻るのでした。
鈴木支配人が笑顔で淡々と、その変態ビデオの仕事を話すのが怖かった・・・。
それに対して、「ああ、そうですか」とモッシャン。でも、しきりに言います。「でもアキラでないと・・・」


・・・そういえば、鈴木さんとボンちゃんにボケとツッコミ(?)を教えようとする(??)モッシャンが、「(鈴木さんの発する言葉に対して)何かうまく返せ!」みたいなことをボンちゃんに要求し始めてました。
昔の血が騒いだってことでしょうか?(笑)
そして、ボンちゃんに対して「こうやるんだ」と、鈴木さんの発した言葉を何やら逆さにしてフランス語みたいな訛りで(?)しゃべったら(内容は忘れました^^;)ボンちゃん・・・というか山内さんがえらい勢いで下向いたまま肩を震わしてなかなか顔を上げられずにいたのですが・・・これってマジ落ち?!
客席もその状態といい、その空気に爆笑でした。
そして、やっと顔を上げたと思ったら「いや、おもしろいですわ」って。
これってアドリブなのかなあ?


ロッカーから血だらけで出てきた加藤。息も絶え絶えの瀕死の重傷。
そして、鈴木さんにしか見えない(自分のイメージが作り出したものだと思っていた)と思っていた幽霊のアキラの姿は加藤にも見えていた。(死にかけだから?)
でも、ボンちゃんやモッシャンには見えない様子。
アキラは「あの事故はモッシャンのせいではないと伝えてほしい」と言うのだけど、モッシャンに強い憎しみを持つ鈴木さんはちゃんと伝えず、モッシャンを追い込もうとするばかり。加藤もしかり。
おののき、必死に謝るモッシャン。でも実は・・・。


トシはいつの間にかボイラー室で倒れていて(目が覚めたらアヤメがいなかったので、アヤメを探しにきちゃった?)そのまま死んでしまう。
アキラのことを「動物(ハムスター)虐待野郎」だと言い放ったアヤメ(もうひとつの真実は言わなかった・・・そりゃそうか。)は、その言葉に急に激怒し興奮した鈴木さんに首を絞められて死んでしまう。
興奮した鈴木さんは、「本番中」の舞台に乗り込んで暴れてしまうし、その後を追いかけたボンちゃんは、同じく後を一升瓶持って追いかけたモッシャンに殴られ(恐らく)、頭から血を流して戻って倒れこむ・・・。
割れて血のついた一升瓶を片手に「舞台袖」に戻ってきたモッシャンの顔は、ボケボケの顔ではなく、12年前のあの顔のまま。

「アキラ、さっきは無視して悪かったな。」

そして、姿のないアキラと「会話」をした後、冒頭と同じ漫才を1人でし始めたのでした・・・。


・・・びっくりしました。
モッシャン、全部芝居だったの?そして、そこまでしてアキラとのパンストキッチンを愛してたの?
怖い・・・。異常だよ〜。
っていうか、みんなおかしいよう。ボンちゃんが唯一少しまともに観えた位(笑)みんないや〜な人。
でも、面白かった。なぜ?!(笑)
爆笑しながら、いつの間にかいや〜な気持ちになりながら、でもあっという間で面白かった150分でした。
みんなそれぞれ「表と裏の顔」を持っていて、それのふり幅が大きいんだけど、それを自然にすっと見せるところがさすが。
特に、じゅんさんに惹かれました。「現在」での、ボケボケ具合とふと見せる「昔の顔」。瞬間の切り替えがさりげないのにとてもよく伝わるというか。

私のツボった台詞。
じゅんさんの、鈴木さんに対して言った「すべての喜怒哀楽を笑顔で表現する男!」
ちょんまげヅラをとってスキンヘッドになったボンちゃんが、着替えて戻ってきたら髪の毛があったので(笑)それに驚いて発言した(ユウレイのアキラ)「ヅラにヅラ?!」

私の気になること。
幽霊になったアキラはモッシャンに対してどんな風に思っているんだろう?
モッシャンの、アキラに対する尋常じゃない思いは分かるんだけど、アキラはどうなんだろう?
ラストのモッシャンの台詞と、死ぬ前のアキラの感情を思い返すと、混乱する私なのでした。