倉田英之作品の紹介                  
倉田英之 (くらた ひでゆき)
1968年7月9日生。岡山県井原市出身。血液型O型。
有限会社スタジオオルフェ所属。
アニメ脚本、漫画原作、コラム、小説執筆等活動は多岐に渡る。
最も多く手がけているのはアニメ脚本。
2005年、TVアニメ「かみちゅ!」(全話脚本)が
文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞。
 
 

《 作 風 
 本を月に200冊読み、DVDを100枚買い、チャウ・シンチーと対談すれば「前作、新宿で舞台挨拶を拝見しました」と。漫画コラムでは「業界で最も漫画を読む漢」と称される。ボーナスが出れば最大型のTVを一括買い。「稼いだ金は全部オコヅカイ、悪い意味でのバリアフリー」(ちくま文庫、山田風太郎著「忍者六道銭」の解説文より)、かなりのオタクである。(ただし各エピソードは年代に幅があるし、流動的であるとも思いますが)
 その作風は「真摯で瑞々しい」と評する人もいれば「変人のだらしない日常を面白可笑しく書く」と言う人もいる。少年ジャンプのような少年漫画テイストもあるし、女の子を主人公とした作品を多く書いていて、「萌えの人」と言えなくもない。いろんな事を言う人がいるが、評価が分かれるのは、実際は複層的な作風だからだと思われる。各作品に度々現れるサプライズや変調が、倉田作品の特徴のひとつだ。ただ人それぞれに変調の前の部分が好きだったり、後が好きだったり、変調そのものが好きだったりと、印象が異なるのでしょう。一言で言えばエネルギッシュ、エンターテインメントを心から愛し追求する人ならではの作風、とでも申しておきたい。具体的説明は難しい。色々な倉田作品に触れて感じて欲しい、というのがファンサイトらしいまとめだと思います。
 また倉田は長年黒縁メガネを愛用、メガネっ子を愛し、R.O.Dの読子・リードマンなど、数多くのメガネキャラクターを登場させてきた。広く他作品にも影響を与えているところがあると思う。尚、著作では徹底して「メガネ」とカタカナ表記である。読子が遭難する話では、外れて海岸に打ち上げられたものは「眼鏡」、拾って掛け直すと「メガネ」に戻る。

《 ヒストリー 》
 倉田は高校卒業後上京、いくつかのアルバイトを経て編集会社に入社。そこで千葉智宏、黒田洋介氏と出会う。やがて1993年、彼等が独立してスタジオオルフェを立ち上げ、倉田も唯一の社員として加わる事に。
 スタジオオルフェも基本的には編集プロダクションとの事だ。最も初期の仕事は、ガンダムのゲームの攻略本の編集だったとか。アニメ周辺には様々な文芸の仕事がある。末端の仕事からキャリアを重ねて行き、今ではガンダムの最新作「機動戦士ガンダム00」(2007〜)で千葉氏がメインの設定考証、黒田氏が一人で脚本を書くまでになっている。
 黒田氏はオルフェ設立後間もなく脚本家としての頭角を現し始め、「天地無用!」などAIC作品の多くでアニメ本編のライターを務めるようになり、人気を博して行く。倉田も手伝いをするような格好で徐々にその世界に入って行く。
 「天地無用!」のドラマCDの脚本、「神秘の世界エルハザード」のノべライズ(1996、倉田の処女小説)などを経て、「魔法少女プリティサミー」(1996〜7)では「黒田洋介・倉田英之シリーズ構成」となり、アニメ本編の脚本家として以後活躍を続ける。
 「バトルアスリーテス 大運動会」はゲーム、小説、OVA、TVアニメシリーズと、ほとんどを倉田一人で執筆。TVシリーズ(1997〜8)は黒田・倉田シリーズ構成だが、26話中20話を執筆した。当時は異例だった。続いて黒田氏は「トライガン」で全26話を執筆。記録をどんどん更新し続け、一人の脚本家で全話書くというスタイルが業界の主流になって行った。
 大運動会は美少女物でSFで、荒唐無稽な体裁ながらスポーツ根性、青春物として非常に熱い作品だった。特に小説版が真面目な作りで、その前半を基にしたTVシリーズ(1997〜8)は黒田氏との交互脚本での前半の盛り上がりが実に劇的。演出、作画陣が更に盛り上げ、一大感動作としてアニメファンの注目を集めた。しかし終盤のSFでコミカルな超展開は真面目なファンやスタッフの間で賛否両論を生む。後の事実のひとつとして、「大運動会」スタッフの次回作に倉田の名前は無かった。
 「アンドロイド・アナ MAICO2010」(1998)はコメディで、舛成孝二監督と出会う。翌年は同時期にシリアスの「今、そこにいる僕」(初の単独脚本)、コメディの「エクセル・サーガ」の2作を手掛ける。
 この頃から倉田はオリジナル作品を手がけるようになる。
 「TRAIN+TRAIN」は初のオリジナル小説。小説を読んでもらう形で漫画版も作られた。萌え漫画誌の中で異例の少年漫画テイストだった。「R.O.D」はメディアミックスでOVA、漫画、小説と作られていった。
 ガンダムのサンライズが脚本をオルフェに発注、黒田氏は「無限のリヴァイアス」を、倉田は「BRIGADOON まりんとメラン」(2000〜1)を手がける。
 ところが「まりんとメラン」では監督と衝突、2000年秋、中盤のガイド番組で倉田本人が「TVアニメの脚本はこれが最後」と、アニメ脚本家引退宣言を発する。トータル的には決して悪い作品では無かった。前・中盤は随所に倉田らしさも出ていたと思う。後年大部分のスタッフが再結集して「ガン×ソード」が作られる事になる。
 オリジナル作の小説や漫画原作をこなす一方で、R.O.DのOVAが2001,2年にかけて発売され、2003年にTVシリーズの製作となり、原作者である倉田の登板が最も好ましいという事で、脚本家復帰となったが、その反響で後も脚本の仕事が次々に入って、引退はすっかり撤回された格好となった。
 R.O.DTV版の落越プロデューサーと舛成監督、倉田の3人でユニット「ベサメムーチョ」が結成され、TVアニメ「かみちゅ!」が2005年文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞。現在はベサメムーチョ最新作として劇場アニメ「ザ☆宇宙ショー(仮)」を製作中。
 漫画原作、アニメ脚本とも気鋭のクリエイターとのコラボレーションが続き、目が離せない。
 小説については、オリジナル2シリーズは未完のままとなっている。「餓萌伝」シリーズの連載は続いており、マニアックなファンとしてはそれも十分楽しいが、ライトノベルなど本にまとまったものも待望される。倉田の作風に深く触れるには、やはり小説がおすすめである。
 またキャリア初期からコラムは文章芸人とも評すべき面白おかしいものが多い。このほどコラム集「倉本 倉田の蔵出し」が出版されるそうなので興味深い。また漫画紹介コラム「漫道」はWeb上で読む事が出来るが、これには面白い文もあるが、まじめな解説もあり、倉田コラムとしては珍しい体裁だ。
 
《 主な作品 》
バトルアスリーテス 大運動会(1997〜8)
 2000年後の地球でパワフルなアスリーテスたちが、大学衛星で行われるスポーツの祭典「大運動会」の頂点を目指す。
 ここでは特にTVシリーズの解説を。歴代最強のアスリーテスを母親に持つが、最初へらへらしていた主人公あかりは、「努力をしない貴方は傲慢なのよ」と殴り倒されて、泣いて実家に逃げ帰る。そして親友の一乃が追いかけて大説得の末に連れ帰る。が、あかりが成績を上げて行くと一乃には嫉妬が芽生え、中距離走で追い抜こうとするあかりを、一乃は進路妨害で振り払おうとした挙句、転倒骨折。いったい二人はどうなるんだというところで訓練校の最終試験に絡んで行って。この辺りの盛り上げは驚愕だった。大運動会の決勝では宗教の問題で相手選手が出場出来ないという事態に。ギャグじゃなくて、非常に真面目な展開になる。またライバルキャラ、ジェシーは努力の人なのに報われなくて。光を追いかけて、自分では見れなくて、終盤で後輩に「輝いて見えた」と言われてはっとする。良い話だ。大運動会決勝で終わりではない。UFOが現れて、宇宙人の侵略を阻むべく、アスリーテスたちがスポーツ勝負を挑む。結局これは主人公の母親を復活させて競わせようという伏線。「天才を越えるものは天然だ!」という迷言と共にお母さんが大暴れ。さあ主人公はこの壁を越える事が出来るのか?! この超展開は賛否両論を生んだ。私も冷静に考えたら、ひいてもおかしくなかったかも。でもそれ以上にサプライズやコメディや親子対決というシチュエーションも魅力的だったんですよね。
 
今、そこにいる僕」(1999)
 「未来少年コナン」のように、荒廃した未来世界でバイタリティのある主人公が、ヒロインを助けて冒険を繰り広げる。ただ、比べて非常にシリアス、アンチだと言ってもいい作品。捉え方は人それぞれですが、私はコナンより真摯な作品だと思います。
 異世界に飛ばされた主人公は、軍事国家に捕まって拷問を受けたり、少年兵団に入れられたり、少年兵達は非情で心を閉ざしていたり、一緒に捕まった女の子がレイプされて妊娠したり、人殺しはいけないって抗議したら先方には結構つらい理由があったり、助けてくれた人達が蹂躙されたり、優しかった幼女が父の敵討ちの為殺意に駆られ、結果命を落としたり、様々な困難に直面する。まあ楽しいアニメが好きな人は見られない。当サイトにも抗議の書き込みがありました。つらい事を描く作品の意義はあると思います。主人公は決して希望を捨てない。それに対して、つらくて見れないって事を言っていいのかどうか、考えてみる必要はあると思う。
 
TRAIN+TRAIN(1999〜2003)
 人類が宇宙へ広がった未来、移民惑星を舞台に、各地を巡る巨大な学園列車に乗り込んだ少年少女達が、各停車地で風変わりな授業を受ける。列車→脱線というのがテーマだったと思う。そうして漫画版は完結したが、小説版では授業どころではないハプニングをとヒートアップ、果てに物語半ばで書かれなくなったのは、脱線の極みとも言える。破天荒な少女アリーナとメガネ少年礼一のコンビは、「クロスロオド」のジェニファー&ファーガスに引き継がれた感がある。

R.O.D(1999〜2006)
 読むか死ぬか。愛書狂のヒロインとアクションを融合させたシリーズ。基本的には1期と2期があって、小説、漫画、アニメそれぞれで設定が違う。1期ヒロインは読子・リードマン、愛書狂で大英図書館特殊工作部のエージェントで紙使い。数年後の2期ヒロインは香港の紙三姉妹探偵。最終作「R.O.D -THE TV-」はキャラクターが総登場する。
 媒体毎に設定等が違うのは、倉田が一人で書いている為、同じ事は面白くないというか、実際書けないという事もあったでしょう。また原作者ながら、各クリエイターの特性に対して倉田は柔軟に対応するようだ。メディアのボーダーに挑んだ作品でもあったと思うが、なかなか難しかったよう。
 読子は「このライトノベルがすごい」キャラ投票で2位を獲得した事も。本が死ぬほど好きな人ですから、本好きな人達の支持も納得です。メガネ好きな人達の支持というのがまた違う勢力分布を持つんですが。
 結局読子は倉田自身に最も近いキャラクターだったと思う。もちろん女になりたいわけではなく、異性への願望と共に、自分の放蕩ぶりを理想方向にやや修正した感じを投影している。
 ちょっとダメな人なんだけど、正義感があって、いざという時は頑張る人。私はまず読子のそんなところが大好きですね。
 個人的にはR.O.D小説1巻は、自分が最も好きな小説のひとつです。倉田作品の中でもイチオシです。小説版、もっと書いてほしいですね。
 
サムライジ SAMURAI RISING(2003〜4)
 週刊少年チャンピオンに連載された漫画。なかなか活きのいい漫画だったと思うが、残念ながら35週で打ち切られた。
 魔界からやって来た巨大な黒船が江戸の町を襲う。少年剣士達がこれに対抗。主人公を逃がす為、強大な敵の前に立ちはだかる父親の激戦が、前半の見どころ。打ち切りの為そうはならなかったのだが、おそらく死んだ父親が魔界の力で復活して主人公に対峙する構想だったのではないか。大運動会と同じ展開だが、これは山田風太郎著「魔界転生」へのオマージュが多い事からの推測だ。この作品はR.O.Dの骨子にもなっているし、サムライジの後半にはやはり山田の「忍法八犬伝」のオマージュもある。これがちくま文庫の山田風太郎忍法帖短編集の編者の眼に留まり、第10巻に解説文を寄稿する事になった(経緯は12巻)。この中でいかに山田作品に影響を受けたかが語られている。
 
かみちゅ!(2005)
 神様で中学生のゆりえを中心にしたコメディアニメ。
 舞台は1985年(辺り)の尾道。大林宣彦監督の尾道映画をフィーチャーし、舛成監督、倉田らの青春時代への憧れなども投影されたと思われる。尾道ロケハンが敢行され、背景美術が丁寧に作られている。倉田の実家にやや近く、倉田がよく訪れた近郊の町福山や祖父のエピソードも登場。割とのんびりとしたコメディだが、台風が来たり宇宙人が来たり戦艦大和が来たり、それなりにスペクタクル。でも寝正月で最後までこたつから出ない話が最高視聴率を稼いでいたり。
 
ハンド×レッド(2006〜)
 剣と魔法のファンタジー漫画。かつて親友だった二人の青年が、魔法の呪いをめぐり、百年の時を越えて争い続ける。
 第1巻あとがきで倉田は、「大運動会」からの自作について振り返りつつ、親友テーマは深い、信頼や憎悪の果てに到達すると語っている。つまり現段階は途上で、やがて二人に和解の時が訪れるのか。推移を見守りたいところ。
 
バンブーブレード(2007〜8)
 最近はなかった、自分の原作ではない、アニメオリジナルでもない、人気漫画のアニメ化作品の脚本。高校女子剣道部の話。
 後半はオリジナル展開だが、終盤から最終回の完成度が素晴らしかった。最近作では会心の出来ではなかろうか。
 
《 小 説 》
●アニメ「神秘の世界エルハザード」(1996 徳間AM文庫)処女小説。アニメのノベライゼーション
●「バトルアスリーテス大運動会」(1997〜8 電撃文庫)メディアミックス企画で、ゲームから始まり、他にOVA(オリジナルビデオアニメ)、TVアニメがあり、小説版は前半がTVアニメの直接の原作となっているよう。後半は全作品の最後に書かれた。
●「メリーメント・キャリング・キャラバン」(1998 ファミ通文庫)ゲームのノベライゼーション。
●「TRAIN+TRAIN」(1999〜 電撃文庫、既刊5巻)初のオリジナル作品。残念ながら2002年以降続刊は出ていない。
●「R.O.D」(2000〜 集英社スーパーダッシュ文庫、既刊11巻)11巻が出たのは2006年。
●「ガンソード〜夢見る頃をすぎても〜」「ガンソード〜夢見るように眠りたい〜」((2006 角川スニーカー文庫)アニメの本編以前の物語を綴っている。

 
 
2008.6.29 敬称略 近日修正、追加予定

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