第3章 質量はエネルギーである


【わかっても相対論 第3章 質量はエネルギーである】

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1.E=mc2

おそらく、特殊及び一般両方の相対性理論で、最も有名なのが、「質量エネルギー」であろうと思う。
「質量=エネルギー」を知らない人も、「E=mc2」といえば、聞いたことくらいあるはずである。

それほど有名な、「E=mc2」であるが、意外と、簡単にこの式を導く方法に触れた啓蒙書が少ない。もちろん専門書には、それなりに証明式はあるのだが、相対論の入門書のような本では、これを説明せずに、いきなり金科玉条のように持ち出すものが多い(ように思う)。まるで、「E=mc2」は、黄門様の印籠のようである。
「ええーい、E=mc2 をなんと心得る、頭が高〜い、控えおろう!」というところである。

しかし、これは、かなり不親切なことなのだ。私も、大学の講義で「E=mc2」の証明式は習った覚えがあるが、初心者向けの説明法を、この文章を書き始めるまで知らなかった。こいつは大変だ。これを、初心者に納得してもらえなければ、「わかっても相対論」などという、まことしやかなタイトルのHPを作っている意味がない、とさえ言えるほどである。そう言うわけで、いろいろ考えてみて、一番納得してもらえそうなものを発見した。それが、第2章の最後に書いた、「4元位置」なのである。

覚えているだろうか? 空間時間を結びつける4元位置は、(x, y, z, ct)である、というのがそれであった。これを、他の物理量に当てはめて、拡張すれば、素直に「E=mc2」にたどり着くことに気がついた。

この章では、その説明を試みるわけであるが、はじめに結論をわかってもらっておいた方が良いと思う。

みなさんは、「質量保存の法則」というのを、中学の頃習ったと思う。そして同じ頃「エネルギー保存の法則」というのも習ったはずである。ところが、「質量はエネルギー」である、ということは、「質量はエネルギーに変わるし、エネルギーは質量に変わる」ということと同義なので、厳密に言うと、「質量もエネルギーも保存しない」ことになる。これでは大混乱必至なので、「質量は、エネルギーの一形態である」と考えて、「エネルギー保存の法則」が正しく、「質量は保存しない場合(エネルギーに変わってしまう)がある」と説明しておこう。

質量がエネルギーだなんて、そして、「質量保存の法則」が嘘だなんて、聞いたことがないぞ、という人も多いと思う。しかし、現実には、一般にエネルギーが発生している場合、その源は質量なのだ。
このように断言してしまうと、「質量はエネルギーである」ことを知っていた人もちょっと不安になるかもしれない。
しかし、中学のころ習った「どんな化学反応においても、反応前の物質の質量の総和と反応後の物質の総和は等しい」というのは間違いなのである。「中学の理科では、嘘を教えているのか?」と、疑問を持つ人もいると思うが、厳密にはそのとおりなのだ。

余談
わたしたちは、高校物理でも、いわゆるニュートン力学しか習っていない。「相対論」と「量子論」がすっぽり抜けている。細かく教える必要はないだろうが、存在することくらいは教えるべきだと私は思う。なぜなら、「理科」でなく独り立ちした「物理学」とは、高校で縁が切れてしまう人も多いはずで、その人たちは厳密に言えば宇宙の真実を知らないままなのだ。


閑話休題
どんな化学反応においても、結果として熱(エネルギー)を発する場合、反応前と反応後の質量の総和は反応後の方がわずかに小さい。逆に、その反応が熱を奪う(温度を下げる)反応であれば、反応後の質量の方が大きい。
えっ!と思う人が多いはずである。質量がエネルギーに変わる、と思っていた人でも、それは、核反応でしか起こらないと思っていたであろう。しかし違う。エネルギーが発生するときは、必ず質量が失われている。逆にエネルギーが失われた場合は、その分質量が生まれている(化学反応程度では極微量なので、「質量は保存する」と教わるが、正しくは「質量保存則」と「エネルギー保存則」はふたつでひとつの法則なのである)。

というわけで、「E=mc2」は、精密な実験により確認された事象である。今のところ、これを否定する実験結果は出ていないので、特殊相対論は生き残っている。この事実を知らずに、特殊相対論を否定することはできないのだ。

但し、この事実は認められても、「E=mc2」などという極めてシンプルで美しい関係が、質量とエネルギーの間に成立することを疑問に思うへそ曲がりも、たまにいる。(私などは、シンプルで美しいほうが信用できるのだけれど)

それについて、これから説明する。そして、エネルギーとは何か、質量とはなんなのか、についても触れて行くつもりである。

一言いいたい!





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2.固有時間

特殊相対性理論により確認されたことのひとつに、「慣性系同士の間に相対速度がある場合、一方の時間と他方の時間とは別のものになる」という結論があったことを思いだしてほしい。相手の時間がローレンツ因子をかけた分遅れるというという有名な結論である。(しかも、物体間には相対速度しかないので、互いに、相手の時間が遅れて見えるという真っ当な常識人には、信じがたいことが突きつけられる。)

どうも、この話を持ち出すと不安になる人がいる。生まれて物心ついてから、少なくともみんな同じ時を過ごしている、ということを疑った人はいないはずだ。ましてや、愛する恋人とあなたが、違う時間にいるなんて耐えきれないことであろう。だから、時間が違う、ということには、みんな不安を感じてしまい、それが特殊相対論が万人に簡単には受け入れられなかった要因であると思われる。

しかし、心配してはいけない。あなたと私の時間の違いが、無視できないほど大きくなるのは、互いの相対速度が光速度の99.999%を超えたあたりからであり、そうなれば、ふたりは秒速299997Kmくらいの相対速度で運動しているので、とてもじゃないが腕を組んでデートするような恋人同士ではいられないだろう。

ことほどさように、他人と自分との時間の進み方が異なると、不安なだけでなく、いろいろ不便である。そこでなんとかみんなが使える時間の基準を考えられないものか、ということで、思いだして欲しいのは、4次元時空間のピタゴラスの定理だ。

   τ2= (ct)2−x2−y2−z2

である。なに、第2章で出てきたのと式が変わっている? よいのだ。(τ)は、もともと不変量として定義したものだから、符号をひっくり返したものと同じと言ってもなんら問題はない。
なぜこんな書き方をしたかというと、 (ct)2 の項が重要なので符号をプラスにしておいた方が理解が容易なためである。

上の式で、x、y、z がゼロであるとする。これは、時間(t)の間に物体が(他の物体から相対的に)動かなかったことを意味する。すると何が言えるか?

   τ2= (ct)2

であることは、明白である。そうすると、

   τ/c=t

となるではないか。もともと(τ)は不変量として定義したのであり、これを定数光速度(c)で割ると、あなたと私の時間の違いは、τ/c という不変量になるのである。そこで、(τ)を、「固有時間」と呼ぶことにする。もちろん、(τ)は、3次元空間で言うところの「棒の長さ」を4次元空間に拡張した「2事件間の時空距離」ともいうべきものだから、慣性系が変われば、違う値はとるが、とにかく4次元時空間の事件の間の不変量には間違いない。そこで(τ)を「固有時間」にしたわけである。(私個人的には、τ/c を「固有時間」と呼んだ方がよいように思うのであるが...)

(t)は、あなたと私で進み方の異なる時間である。しかしどんな時でも、(τ/c)は、あなたと私にとっての不変量なのである。(τ/c)は、それぞれの点にくっつけた、みんなで使える時計であると言い換えてもよい。つまり、みんなで使えるたった一個の時計は存在しないが、それぞれの系で管理できる時計が存在するのだ。アインシュタインはこのことを「私は全宇宙に時計を置いた」と表現した。

さて次回は、少々数学を使う。と言っても中学生の数学だからご心配なく。 E=mc2までは、もう少々かかる。どうやって求めるか推理しながら読むと楽しいかもしれない。

一言いいたい!





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3.4元速度

しつこいようだが、時空間における4元位置は、

   (x、 y、 z、 ct)

であった。同様に4元速度

    (ux, uy, uz, uw)

とおく。(ついでに、w=ctとしておいた)

時空間のピタゴラスの定理は、(τ)という不変量(固有時間)を導入して

   τ2=w2−x2−y2−z2

と表したのであった。4元速度は、時空間距離を固有時間で割ったものと考えれば、不変量なので、両辺を(τ2)で割っても問題ない。

   1=(w/τ)2−(x/τ)2−(y/τ)2−(z/τ)2

それぞれの2乗項の中身は、同じ単位同士の割り算なので、ノーディメンジョン(無単位)である。そこで両辺に光速度(c)の二乗を掛ける(なにしろ、光速度はこの宇宙では、どんな慣性系から測定しても同じだからこういう場合便利なのである)。

   c2=(cw/τ)2−(cx/τ)2−(cy/τ)2−(cz/τ)2

これで、めでたく2乗項の中身は全て速度の単位になった。これで4元速度は、

   uw=c(w/τ)、 ux=c(x/τ)、 uy=c(y/τ)、 uz=c(z/τ)

となる。

次に、もう一度時空間ピタゴラス式にもどり今度は、両辺を w2 で割ると、w=ct を考慮して

   (τ/w)2=1−{ (x/w)2+(y/w)2+(z/w)2 }
       =1−1/c2{ (x/t)2+(y/t)2+(z/t)2 }

となり、{ }の中は通常の物体の速度の2乗となるので、これを(v)で表し

   (τ/w)2=1−1/c2( vx2+vy2+vz2 )
 ∴ (τ/w)2=1−v2/c2
 ∴ τ/w=√(1−v2/c2)

ここで、分子と分母をひっくり返す。

   w/τ=1/√(1−v2/c2)

さて、右辺は、どこかで見たことがないだろうか。そう「ローレンツ因子」になっている。

なんだかだまされたような気がするかもしれないが、

   uw=c(w/τ)=c × (ローレンツ因子)

になる。ついでに、

   ux=c(x/τ)=c(w/τ)(x/w)=c×(ローレンツ因子)× (x/ct)
         =(ローレンツ因子)×vx

y、zも同様に計算できる。いちいち(ローレンツ因子)と書くのも面倒なので、これを(γ)で表す。

結論、4元速度(ux, uy, uz, uw)は、

   ux=γvx
   uy=γvy
   uz=γvz
   uw=γc

である。


嗚呼、なんと美しい!

一言いいたい!





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4.「質量」と「エネルギー」

本章のタイトルは、「質量エネルギーである」である。1項で、なんだかんだと「保存則」を絡めて話をしたのであるが、実はまだ「質量」及び「エネルギー」をきちんと説明していない。それほど、”E=mc2”が有名なわけで、なんとなく、質量はエネルギーだ、と言われても疑問を持たずに受け入れている人も多いのではないかと思う。特に、質量については説明できても、エネルギーって何だ? と問われると以外と言葉に詰まる人が多いのではないか。そして、多分、質量の方も、半分しか理解していない人が多いと、私は考えている。

さて、最初の問題は「質量」である。「質量」ってなんだ?
「簡単だ、重さのことだろう」と答えた人、実は、半分しかあっていない。「重さ」というのは、万有引力に起因する「重力質量」のことである。言い換えると、万有引力によって物体同士が引き合うときの基準となる量である。
だから地球上で測った6Kg重の物体は、月で測ると1/6の1Kg重になるのだ。Kg重(いわゆる重さ)という単位は、測る場所によって変わる可能性がある。だが、「重」をとったKgという単位の量はどこで測っても変わらない単位だ。いうならば重力による引かれやすさを量で表したものだ。

これに対し、「慣性質量」というものがある。「慣性質量」とは、力を加えた時の動き難さを量で表したものである、同じ大きさであっても、鉄の玉と発砲スチロールの玉では、突っついたときの動き難さは、鉄のほうが大きい。これは経験で知っているだろう。そして、この場合の「慣性質量」もKgという単位なのである。

「重力質量」と「慣性質量」は上記のように定義が全く異なる。だから同じものかどうか本当はわからないのだ。
ただ、いかなる実験をしても、「重力質量」と「慣性質量」の違いが見つからないのである。(ちなみに、アインシュタインの一般相対論は、この「重力質量=慣性質量」を前提に出発する。)

というわけで、「質量」には二種類あるのだが、この読み物では、「重力質量」=「慣性質量」として話を進める。

次に「エネルギー」とはなんであるか?
力学では、「エネルギー」とは「仕事」と同じであるとされ、「力」×「距離」と定義される。物体に対して、どのくらいの力でどれだけの距離動かしたか、という量のことである。物理的な意味で仕事をする、とはそういうことなので、例えば、40Kgの石を持ってだまって立っていたら、何時間これを続けても、仕事をしたことにならない。「でもすごく疲れるじゃないか!」といわれても、それは人間の生理的な問題であって、事情は台の上に石をのせているのと同じこと、なのである。

「力(F)」=「質量(m)」×「加速度(a)」という有名なニュートンの「運動の第3法則」に出て来るように、力とは、質量を持つ物体を加速させるものである。(この場合の質量は、「慣性質量」だね。)
だから、「エネルギー」は、「質量」を持った物体の運動を「加速」させながら、どのくらいの「距離」動かすか、という量になる。

単位でいうと 「力」=「質量」×「加速度」:Kg・m/s2→N(ニュートン)
         「距離」:m(メートル)
なので     「エネルギー」=「力」×「距離」:kg・m/s2 ×m=Kg・m2/s2=Kg・v2→J(ジュール)
という。
ニュートンジュールも人名なので、「ニュートンは力持ち、ジュールは仕事好き」ということになるのかな?
まあここでは、「力」=「質量」×「加速度」、「エネルギー」=「質量」×「速度の二乗」と覚えておこう。
以上、これ大事。よーく覚えておかないと、次の項が(?)になってしまう。

一言いいたい!





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5.4元運動量からエネルギーへ

ここで新たな物理量、「運動量」が登場する。「運動量」の定義は、「質量」×「速度」である。この量は、物体の衝突のときに、よく引き合いに出される。物体が何かに衝突するとき、相手に与える衝撃は、質量が大きいほど強く、速度が大きいほど激しい。これは、経験で誰でも知っている。同じ速さなら、小錦に体当たりされるより、舞の海に体当たりされたほうが、吹っ飛ぶ距離は短いであろう。これは質量の話。
同じ質量なら全力疾走のカール・ルイスより、歩いているカール・ルイスに体当たりされたほうが、ダメージは小さいだろう。これは速度の問題。
まあ、簡単に言えば、運動量というのは、物体の運動の勢いを量にしたものと言ってよいだろう。

4元物理量としての運動量(4元運動量)の話をする。
前回の結論として、4元速度(ux,uy,uz,uw)は、

   ux=γvx
   uy=γvy
   uz=γvz
   uw=γc

が結論であった。(γはローレンツ因子
今度は、4元運動量(px, py, pz, pw)を考える。
運動量は、速度に質量をかければよいので、(m)を質量として、4元速度に、(m)を掛ける。従って

   px=γmvx
   py=γmvy
   pz=γmvz
   pw=γmc

である。ここまでは良いであろうと思う。px、py、pzについては、我々の良く知っている運動量に、「ローレンツ因子(γ)」を掛けたものであるから、これを4次元時空間における運動量と考えることに抵抗はないはずだ。
問題は、pwである。これは何を意味するのか?
両辺に光速度(c)を掛ける。(常套手段である。)

   cpw=mc2γ

単位はどうなったであろうか。(γ)は、単なる係数なので無単位である。よって、【質量(m)】×【速度(光速)の二乗】である。これは【エネルギー(E)】の単位だ。
よって、pwは、エネルギーを光速で割ったものと判明した。

これで証明終わり、である。えっ、何の証明が終わったの?

   E=cpw=mc2γ

ここで、思い出してもらいたい。ローレンツ因子(γ)は、

   γ = 1/√(1−v2/c2)

であった。
つまり、物体との相対速度(v)がゼロであれば、γ=1、すなわち

   E=mc2

である。
いやー、あっけなく出てきましたね。

自分に対して静止している物体の質量(これを静止質量といい、m0で表す)のエネルギーは、m02で間違いない。
専門書(教科書)では、わざわざ微分など使って、難しい説明をしているものがほとんどであるが、慣性系を扱う限り、速度の変化はないのが前提なので、微分など使う必要はない。掛け算と割り算で充分なのだ。(多分、これが最もわかり易い説明ではないかと私は自負している。)

   4元運動量(px, py, pz, E/c)

あまりに簡単すぎて、信用できない?そういう人多いんですよ。私の知ってる人にも、「原子力を知っているから、エネルギーが質量に比例することは認める。しかし、こんなに簡単に、その比例定数が、(c2)になるのは、認めん!」というへそ曲がりがいた。他の相対論の入門篇は、どうもそういう輩を納得させるために、わざわざ難しい説明をしているのではないか、と疑ってしまう。4元速度では、ちょっと苦労したかもしれないが、あそこが理解できればあっという間に、E = mc2 は出てきてしまうのだ。(本当は、ここでこの項を終わってもよいのだが、以下は補足である。)

質量がエネルギーであることを、証明するには上記で充分なのだが、次の式

   E2 = (mc2)2 + (pc)2

を求めることを、同時にやろうとするから、話が複雑になる。"mc2γ"を2乗して展開すると上の式になることを、暇な人は計算してね。(私は、一応確かめました。)
実は、この式の良いところは、(v)が(c)より、充分小さな場合、次の式で近似できる、ということによる。

   E≒mc2 + mv2/2

この式の第2項が、アインシュタイン以前の物理で、運動エネルギーと呼ばれたことは、承知であると思う。

一般には、下記(再記)

   E2=(mc2)2 + (pc)2

が、エネルギーの正式な書き方となっていることは、知っておいた方がよいかもしれない。


一言いいたい!





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6.諸々(もろもろ)

ここまでを振り返ってみよう。

4元位置空間(x、y、z)に対応する4番目の次元は時間(t)であった。これがアインシュタインの発想である。そして光速度(c)は、この宇宙で絶対不変なので、単位あわせの目的として、式の両辺に掛けたり、割ったりしても問題ない量である、というのもアインシュタインの発想(光速度不変の原理)であった。

ここからは、上記の展開(応用)で、

   (x, y, z, ct)   :位置
   (γvx, γvy, γvz, γc):速度
   (γpx, γpy, γpz, E/c):運動量

が導かれ、各々、4次元のピタゴラスの定理が成立する。
つまり(位置)に対する4番目の次元(時間)は、(運動量)に対する4番目の次元(エネルギー)と対象な関係となる

さて、しつこいが、ローレンツ因子(γ)は

   γ = 1/√(1-v2/c2)

であった。これの意味するところは、以下になる。

   (1)物体の相対速度(v)が(c)より充分小さいときは、(γ)は、ほとんど、1になる。
   (2)従って物体の相対速度(v)が(c)より充分小さいときは、アインシュタイン以前の古典物理量で近似できる。
   (3)物体の相対速度(v)が(c)に近づくほど、(γ)は大きくなってゆく。
   (4)物体の相対速度(v)が(c)とイコールになったら、(γ)は無限大となる。
   (5)従って、物体は、事実上光速度になることはできない。

大事なのは(5)である。思い出してほしい。

   @相対速度を持つ物体の長さは、静止している時の1/γ倍に縮む
   A相対速度を持つ物体の時計は、静止している時のγ倍に遅れる
   B相対速度を持つ物体の質量は、静止質量(m0)のγ倍に大きくなる

上記Bについては、説明が必要かもしれない。
運動量の4番目の次元(エネルギー)は、

   E = m02γ (m0は、静止質量)

であった。 相対速度(v)が大きくなってゆくと、エネルギー(E)も増大する。 これは見方を変えると静止質量(m0)がγ倍になってゆくことを意味する。

従って、ここまで出てきた全ての物理量は、光速になるとみんなおかしくなるのである。

   @長さ:ゼロになる。(物質の進行方向につぶれてしまう?)
   A時計:進まなくなる。(静止状態でもないのに停止して見える?)
   B質量:無限大になる。(いくら力を加えても動かなくなる?)

よって、全ての物体は、光速度にはなれない。すなわち光速度が宇宙で一番速い速度であり、何者もこれを越えることはできない。不思議だけれど、そういう結論になる。

この宇宙では、光だけが特別なのである。なぜ? 観測の結果そうなる、としか言えない。

つまり、質量を持つ物質は、光速になる前に、光になってしまうと言えないか? 私はそう考える。だから、質量はエネルギーに変わるのであり、究極のエネルギーは、光だ、という結論になる。

実感してみよう。

1円玉(1グラム)を全て、エネルギーに変えたらどのくらいになるか?

E=mc2に当てはめる。

1グラムは、1/1000Kgであり、光速は300000Km/秒=300000000m/秒だから、、

   E = 1/1000 * (300000000)2 = 9×1013 (J:ジュール)

あまりにも大きすぎて実感がわかない? 私もそうである。
エネルギーの単位にカロリー(cal)というのがあるのは知っていると思う。1calは、1cc(1グラム)の水を1℃上げるのに必要な熱量(エネルギー)である。これなら実感がわくかもしれない。換算してみよう。

   1(J)=1/4.18605(cal)なので、
   9×1013(J)≒2.15×1013(cal)

数値だけでは、まだ実感がわかない。ちょっと数値の見方を変えて、
   100×215×109(cal)と書き換えてみよう。 109グラムの水とは、どのくらいの量であろうか。

一辺1mの水は、106グラム(=1トン)であるから、109グラムとは、一辺10mの水の立方体である。
ということは、100×215×109(cal)とは、0℃の一辺10mの水の塊、二百数十個を一度に沸騰させるエネルギーということになる。すごい! これが1円玉1個のエネルギーなのだ。
(ちなみに、これは石油を10万トン燃やしたエネルギーに相当する。)

実は、広島・長崎に落とされた原爆の質量欠損(質量がエネルギーに変わった分量)が約1グラムなのだ。1円玉2個で日本は、無条件降伏に追い込まれたことになる。

こんなエピソードがある。
日本で原爆が使われたことを聞いたアインシュタインは、ドイツ語で「オー・ヴェー!」と叫んだ。英語の「Oh my God!」であろうか。原爆によって、E=mc2が実感できたというのは、人類にとっても、まさに痛ましいことである。


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