第7章 暗黒の穴


【わかっても相対論 第7章 暗黒の穴】

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1.ブラックホールの作り方

話を始める前に、今一度ことわっておく。この章「暗黒の穴」も、相対論で遊んでいるので、ここで述べたことが、必ずしもこの宇宙の真実ではないかもしれない。私自身の個人見解も含めて、たくさんある説のなかのひとつだと思っていただきたい。「これが真実だ!」と公の場で叫ばないよう注意してほしい。「Cimarosaさんが言っていた」と主張しても、一般世間に対する説得力はないので。。。

さて、まず確認しておこう。この宇宙にブラックホールは、あると思うか?

   (1)そんなものは確認されていない
   (2)多分あるだろう
   (3)具体的なブラックホール候補の星がいくつもある

さあ、どれでしょう。

私の認識は、(3)である。おそらく、今では、間違いなくブラックホールだ、という星がいくつか確認されているはずだ。(私の記憶では、白鳥座のX1という連星の片われが、ブラックホールであったはずだ。)

ここで星の一生を振り返ってみよう。

   @宇宙空間の塵(ガス)が集まって、中心部で水素が融合してヘリウムを作る反応が始まる(恒星の誕生)
   A核融合が中心部から周辺部へと移行し、星は膨張する(赤色巨星)
   B内部のヘリウムが疑縮を始め、たまったエネルギーに耐えかねて大爆発する(超新星爆発)
   C残った中心部で、ヘリウムが融合を始め、これ以上融合しない鉄原子になって行く(白色矮星)
   Dさらに自らの重さのために縮み、原子核の中に電子がもぐりこみ隙間のある原子が核だけになる(中性子星)
   E核はさらに収縮し、光も飛び出せないほどの密度になる(ブラックホール)


但し、全ての星がこの遷移に従うわけではない。我々の太陽の8倍の質量を持つ恒星が、白色矮星となり、8〜30倍程度の質量を持っていた星は、中性子星に至る。これより重かった星が、ブラックホールになる。これがブラックホールの作り方だ。

安心した? 我々の太陽は、ブラックホールにはなれない。良かった良かった。でもね、赤色巨星になった段階で、地球は、太陽に飲み込まれるので、それまでには、人類はもっと遠くの惑星、ないしは、他の恒星の惑星へ移動していなければならない。但し我々の孫やひ孫の時代でないことだけは確かなので、あまり心の負担にする必要はない。

それよりも、中性子星ってなんだ? と思った人が多いと思う。

原子というものは、原子核の周りに電子が存在するものである。原子核は、電子と同じ数の陽子および陽子数と同じくらいの数の中性子からできている。そして、この状態は、東京駅に直径1メートルの玉を置き、これを原子核とすると、電子は、銚子あたりを通る円軌道となるらしい。電子はほとんど大きさを持たないので、原子というものは、隙間だらけということになる。

上に書いたように、この隙間だらけの原子内で、電子が原子核へもぐりこみ、陽子と合体して中性子になるのである。もともとあった中性子と新たにできた中性子が残るので、原子は中性子の核だけになる。さらにそれが隣の原子とくっつくような状態になったのが、中性子星である。いってみれば巨大な一個の原子核で作られた星である。これは重い。いや想像を絶する。

中性子星から角砂糖一個分を切り出して地球へ持ってきたら、約100万トンであるという。こんな重さを1cm2に集中させたら、多分地球の中心までずぶずぶもぐりこんで行くと思われる。

ブラックホールは、これのさらに上を行く。

現在の宇宙で想定されるブラックホールは、上の手段でしか作れない。人間がどんなに頑張っても、人為的にブラックホールは作れない。できたらノーベル賞だ。(これは嘘だ。なぜなら地球上でブラックホールを作ったら、多分地球はそのブラックホールに飲み込まれて、バラバラになってしまうだろうから。)

一言いいたい!





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2.ブラックホールとの遭遇

この項では、もし、ブラックホールが地球めがけて飛んで来たら、という事態を考える。
とてつもなく大きいブラックホールが接近した場合は、地球など一飲みにしてしまうことは自明なので、前項の最後に書いたような地球上で作れるくらいの小さなブラックホール(半径1cmくらい)が飛んで来たと考えよう。

アルマゲドン」や「ディープ・インパクト」のような現象がおこる、と考えた人がいるかもしれない。

甘い。

物質が、ブラックホールとなるためには、「光も飛び出すことのできない」というのが条件であり、これを満たすためには、物質の大きさが、以下の値で示される半径より小さくならなければならない。

   r=2GM/c2

この半径(r)を、「シュワルツシルドの半径」という。ただし上の式での(M)は、物質の質量、(c)はもちろん光速度、(G)は、万有引力定数である。

ここで、半径(r)を、1(cm)として(M)を計算すると、G=6.67258×10-11 m3s-2kg-1 なので、

   M=rc2/2G=0.01×3000000002/(2×6.67258×10-11
    =9×1014/6.67258×1011×0.5
    =6.744×1024 (Kg)

地球の質量が、5.9742×1024 (Kg)だから、おおよそ地球と同じほどの質量である。(以前、地球のシュワルツシルド半径は、約9mmであると言った根拠はこれである。)

地球と同じほどの質量をどこかから調達して来て、それを半径1cmの球の中へ押し込んでしまうとブラックホールができあがる。(どうやって、地球と同じほどの質量を持ってくるか、また、それを半径1cmに押し込むかの手段は、この際問わないことにしよう。)

これを地球上でやったとしよう。前項で、中性子星のかけら(100万トン)を持ってきたら、地球の中心までずぶずぶともぐりこんで行く、と書いた。これは、100万トンという質量が、地球に比べると遥かに小さいから言えることであって、ブラックホールになると、そうは行かない。地球と同等の引力を半径1cmの球が持っているのだ。これは、地球が半径1cmの球に飲み込まれる必要がある。しかし、あまりに地球の方が大きいため、次のようなことが起こる(と思われる)。

ブラックホールが地球に接している点と、その反対側では、引力の大きさが著しく異なる。従って、ものすごい潮汐力を受ける。(潮汐力というのは、文字からわかるように潮の満ち引きのことで、これは月が地球に及ぼす引力によって発生する。月とは桁違いに重いものが身近にあるのだから、これはものすごい潮の満ち引き...)つまり、地球は、ブラックホールに向かった方向へ、引っ張られたかっこうで、引き延ばされることになる。地球は、水飴のような流動体ではないので、延びる前に砕け散る(と思われる)。砕け散った破片が、またそれぞれに潮汐力を受け、砕け散り...を繰り返した結果、半径1cm以下にまで砕け散ったかけらがどんどんブラックホールに吸い込まれて行く、という光景になる(はずである)。
従って、もし、地球ほどの質量を半径1cmの球に閉じこめる方法を発見したとしても、それを絶対に地球上で実験してはならない。成功した瞬間、上記の事態が発生し、ノーベル賞どころではない。

これが彼方から飛んでくるのだ。半径1cm程のブラックホールが、彼方から地球めがけて飛んできたらどうなるか?ブラックホールの飛んでくる方向と速度により、発生する現象は異なるが、その異変に気付いたときは、もう遅い。
もし、地球めがけて比較的低速で飛んで来た場合、大気がブラックホールめがけて吸い込まれることが最初に観測されるに違いない。そして海水が、竜巻のようにブラックホールめがけて落ちて行く。そのあとは、上に書いたのと同じ事になる。

もし、ブラックホールが超高速で飛んで来たら、スイカを弾丸で撃ち抜いたようになる。もしかしたら、地球全体は、ブラックホールに落ち込まずに済むかも知れないが、結果は、ろくなもんじゃない。

もし、地球めがけて飛んでこず、至近距離を通り過ぎた場合は、速度と距離によっては、地球は砕け散らずに、ブラックホールと連星を構成するかもしれない。その時は、地球はブラックホールにつかまったきり、太陽系とはおさらば。たとえ、ブラックホール自身が太陽に捕まって太陽の周りを公転し始めたとしても、惑星になるのはブラックホールであり、地球はブラックホールの衛星である。四季折々に俳句を詠んだりする風雅な生活をおくることができるとは考えられない。

なるべくなら、私が生きている間は、ブラックホールとは遭遇したくないものである。

一言いいたい!





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3.ブラックホールへの接近

私個人は、ブラックホールに遭遇したくないのだが、世の中には、冒険家と呼ばれる人がいて、ブラックホールの中がどうなっているのか確かめてみたいという欲望というか義務感というかそういうものを持った人がいるものである。彼をこの項では「A」と呼ぼう。そして、私のように、平々凡々と暮らしたい人がいて、地球に残り、「A」からの連絡だけをひたすら待っている人を「B」と呼ぶことにする。
AとBは、同い年の友人であるとする。Aは宇宙船に乗って地球の近傍を光速度の99.9%という巡航速度で出発し、10光年先にあるブラックホールへ向かったとする。なに、どっかで聞いたような設定だって? 第6章の3項「相対論マジック」と同じ設定である。この方が、話を進めやすいのである。あのときと同じ状況であると思ってほしい。

さて、この項では、ブラックホールへ向かったAの立場になってもらいたい。私はBのほうがいい、と思う人も、ここでは、是非ともAになってほしい。

Aは、光速度の99.9%で10光年はなれた星(ブラックホールだよ)に向かう。すると、約164日で、ブラックホール近傍に近づく。(話がおかしい、と思う人は、第6章の3項「相対論マジック」をおさらいしてちょーだい)
Aの目の前には、光すら出てこない黒い穴がある。それは、「シュワルツシルドの球」に囲まれた、外からは全く見えない宇宙の穴である。今書いた、シュワルツシルドの球のことを「事象の地平線」と呼ぶことがある。なぜなら、そこからはいかなる情報も出てこないからである。(本当は地平面であるはずだが、そう呼ぶと、みんなの理解を妨げるので、地平線と呼ぶらしい。但しこの読み物では、今後、「シュワルツシルド球」=「事象の地平面」と呼ぶ。

ここでひとつ考察しておこう。一般の星とブラックホールの大きな違いについてである。
前に地球を貫通する穴を掘って、そこに飛び込んだらどうなるかという話をした。その穴に飛び込んだら、地面に衝突する心配をせずに、自由落下(空間の曲がりに対して素直な状態)することを思い出して欲しい。それは、地表にいる人から見たら、地球の中心で最も速くなるような加速度運動である。これはなぜ、こうなるのか、と言えば地球の中心で空間の曲がりがゼロになるからである。つまり地球の中心は、重力ゼロの場所である。地球上の人々は、地面が邪魔をして自由落下することができない。このため、地表面が最も空間の曲がりが大きい。


ちょっと、寄り道。
第5章の6項で、次のような事を書いた。

>地球の地面にへばりついている物は、地面の上と下とで、極端に歪んだ時空間に対して無理して直進している

この意味がわかりづらかった人が多いと思うので、ここでもう一度解説しておく。
地表面を境に、空間の曲がりは、その下へ行っても、上へ行っても小さくなるのである。だから地表面が一番時空間が曲がっていることになる。これを上の表現で示したのである。



さて話をもどす。ブラックホールの場合はどうか? シュワルツシルドの球を貫通する穴を掘って、という理屈は通用しないことは自明である(穴に、穴は掘れない)。ブラックホールというのは、言ってみれば、時空間の曲がりが普通でない場所である。「事象の地平面」の外では通用する常識は、この極端な歪みの場に適用できるのか? まずブラックホールの大きさはどのくらいか? ブラックホールの質量は、光の曲がりから計算することができる。だがそれ以外の情報は(事象の地平面の外にいる者にとっては)ない。だって、どうしたって観測できないんだから。Bは、事象の地平面までしか知ることはできないのだ。

それでは、ブラックホールの中は、物理学の対象にしてはいけないのではないか。お前は散々そう言ったではないか、と突っ込む人は非常にこの話しをよく読んでくれている人である。確かにブラックホールの中がどうなっているのかわからない。但し、それは事象の地平面の外にいるBには、である。ブラックホールの中に飛び込むAにとっては、実在する現象である。ただ、そこで知り得た事実を事象の地平面の外に知らせることができないだけである。

かなり強引な論法であることは、自分でもわかっている。でも、ブラックホールの中がどうなっているか知りたいではないか。そして、知ろうと思えば、ブラックホールに飛び込んでみればいいのだ。私には、その勇気がないだけである。

言っておくが、事象の地平面は、数学的な特異点を持っているわけでもなんでもない。Aにとっては、単なる通過点である。しかし、ブラックホールとは、巨大な原子核のような超高密度の中性子星が、さらに重力崩壊を起こしてできるものである。もう、崩壊を支える力は存在しない世界だ。従って、ブラックホールは、中心の一点めがけて崩壊し続けるしかない。つまり事象の地平面の中は、その中心点に特異点があるだけの存在になってしまう。
地球と異なって、中心が重力ゼロのような、普通の状態ではないのである。

Aはブラックホールの近傍で、すでに巨大な潮汐力のため体を上下に引っ張られ、それが、事象の地平面の中に入ってどんどん大きくなって行く。ただひたすら、中心の特異点に向かって落下する。(潮汐力のため、こなごなになり、通常の物質ではなくなってしまうのだが...)

本当に特異点は存在するのか?そして、この様子を地球のBは、どう見るのか?

一言いいたい!





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4.ブラックホールへ落ち行く者を見る

この項では、ブラックホールへ向かった「A」を、地球から観測する者「B」の立場にたって考えよう。

Aは、地球の脇を光速度の99.9%で通り過ぎた。そして10光年先のブラックホールへ向かったのだ。
Bは、Aが遠ざかる様子を望遠鏡で観察することができる。その結果、Bは次のようにAを観測するはずである。

   (1)遠ざかりつつあるAの長さと時間は縮んで観測される。特殊相対論の結論だが、これはまあ置いておこう。
   (2)Aは、光速の99.9%で10光年先のブラックホールへ向かっているのだから、

      (時間)=(距離)/(速度)=10/0.999=10.01≒3654(日)

      つまり、10年と4日かかって、Aはブラックホールの近傍へと到着する。
   (3)ブラックホールに近づくと、ブラックホールの存在により、Bにとって、Aのいる時空間の曲がりは増して行く。
   (4)時空間の曲がりが大きくなるほど、Bにとって、Aの時計は遅れて見えてくる。
   (5)「事象の地平面」では、光さえ戻ってこれない程時空間の曲がりが大きくなり、BにとってAの時計は止まる。

これは何を意味するか。そう、Bが見ていると、Aは「事象の地平面」で停止してしまう。いつまで観測しても、Aはブラックホールには落ちて行かない。正確に表現すると、Aは限りなく「事象の地平面」に近づいて行くが、決して「事象の地平面」には到達できない。

これは、ブラックホールへ飛び込むAの立場(前項で記述)と、全然異なる。Aの立場では、まったく時間は遅れることなく、「事象の地平面」を通り抜け、ブラックホールへ落ちて行くはずであった。

ところが、「事象の地平面」の外にいるもの(B)にとっては、ブラックホールへ向かう者(A)は、決してブラックホールにたどり着くことはないのである。

とても不思議だが、これが結論だ。というより、こうだからこそ、Aが発した情報(光)は、「事象の地平面」より先からは、絶対来ないのだ。BはAから「事象の地平面」内の情報を永遠に聞くことができない、それはAが「事象の地平面」にたどり着かないからだ。ある意味でロマンチックかもしれない。BはAの最後を見ることはないのである。

しつこく書いたが、前項と本項をもう一度読んで、納得してほしい。

一言いいたい!





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5.ブラックホールに落ちた物はどこへ行く

以前、事象の地平面に特異点はない、と書いた。光がそこからは出て来ない、という意味で、「シュワルツシルド球」を事象の地平面と呼んだのである。
いま、「ブラックホールの近くに位置し、ブラックホールから一定の距離を保つためにブラックホールから遠ざかるように絶えず加速されている」観測者を考える。(これをクルスカル座標系にいる者、というらしい。)詳しいことは、私にもよく理解できていないので、結論だけをとりあえずいうと、

このクルスカル座標系の、ある特別な時刻において、ブラックホール内部の空間と外部の空間が連結されることが導かれるという。(理解できなくてよい。私にもよくわからん。)
この連結された領域を「アインシュタイン−ローゼンの橋」または「シュワルツシルドの喉」というらしい。これは、SF的用語でいうと、「ワームホール」である。面白い人には面白い展開である。つまり、ブラックホールの内部と外部が繋がっていて、それを結ぶ道が「ワームホール」、つまりワームホールを通ると、「ワープ」できるのである。(ワープもSF用語であり、時間をかけずに、遠く離れた空間に跳んで行く、事である。)「宇宙戦艦ヤマト」が、宇宙の彼方イスカンダルへ行って帰ってこれた理由の裏付けが、物理学的に存在する、ということである。

クルスカル座標系では、もうひとつの領域があって、それは「ホワイトホール」と呼ばれる。(出た!)ホワイトホールは、ブラックホールを時間的に逆さまにしたようなものである。つまりホワイトホールにもシュワルツシルド半径が存在するが、それを事象の地平面とは呼びづらい。なぜなら、いかなるものもホワイトホールの中に入ることはできないからだ。ホワイトホールからは何かが飛び出してきてもかまわないが、そのエネルギーの元がホワイトホールの中になければならないという。誰でも考える、ブラックホールとホワイトホールを特異点ができないように繋いでやれば、すべてバンザイうまく行く。

ちょっと、言葉的に理解不能なものの羅列になったので、私の比喩で置き換えてみる。

   ブラックホールに落ち込んだ物は、中心の特異点には落ち込まず、ぎりぎりのところでワームホールを通って、
   ホワイトホールから抜ける。

ワームホールの抜け口は、明らかにホワイトホールになるから、まとめて上記のように書いた。そして、抜け口(ホワイトホール)は、この宇宙にはない。なぜなら、この宇宙の者が見ている限りブラックホールには何ものも落ちて行かないからだ。事象の地平面で、全ては凍結している(前項参照)。
つまり、ブラックホールに飛び込んでしまった物は、どこか別の宇宙に出るしかない。その宇宙がどんな宇宙であるか知らないが、もしホワイトホールばかりの宇宙だったら、そりゃあ、いったいどんな宇宙だ?噴水みたいな宇宙だ。

うまく理屈づければ、ブラックホールもあり、ホワイトホールもバランスよくある宇宙がよいのだろうが、少なくとも我々の宇宙にホワイトホールは見つかっていない。
私見であるが、ブラックホールの中心に特異点がある、というのは何となく納得できない。だから、ブラックホールの中心で、特異点でない、どこかへするっと抜けて、ホワイトホールの宇宙へ繋がっている、と考えたい。多分その宇宙は、ホワイトホールだらけなのに、収縮しているに違いない。そしてその宇宙こそ、万有斥力の宇宙である、という気がする。みなさんの考えはどうだろうか?

今、ブラックホールとホワイトホールがワームホールで結ばれる、というモデルを考えた。このモデルを100%無条件に当てはめてみると、妙ではないか? と考えた人がいるかもしれない。それは次のような疑問である。

   ブラックホール内の質量が、ワームホールから外へ出て行くならば
   ブラックホールは、急速に質量を失い
   ブラックホールでなくなってしまうのではないか?

言われてみると、確かにそうだ、と思う人が多いと想像する。
ところが、これは考え違いというものだ。なぜなら、この宇宙にできてしまったブラックホールは、極端に通常でない者(クルスカル座標系のある特別な時刻の者)にしか、ワームホールやホワイトホールを導くことができないからだ。つまり、通常の者には、ブラックホール誕生後、そこへ飛び込んで行くものは存在しない。全て事象の地平面でストップしている!

一言いいたい!





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6.ブラックホールの蒸発

本項は、「ブラックホールの蒸発」がテーマである。実はこれ、ホーキング博士の提唱した理論なのだが、知っている人も多いだろう。

みなさんは、「真空」をどう定義するだろうか?

実は、「真空」とは、何もない空っぽの場所ではない。もし何もない空っぽの場所があったら、そこは空間ですらない。

では、「真空」には何が存在するのか? 量子論の結論は、「揺らぎがある」ということだ。
「揺らぎ」って何だ? 考えてもわからない、多分。

実は、真空中には、「粒子」と「反粒子」が、生成・消滅を繰り返しており、それが「揺らぎ」だというのである。よくわからん?多分それで正常である。
ハイゼンベルク不確定性原理」によると、「エネルギー」と「時間」は、不確定の関係になる。すなわち

   ΔE・Δt = h     (hは、プランク定数という)

である。どういう意味かというと、物質の「エネルギー」の不確かさ(ΔEで表す)をゼロに近づけると、その物質がそのエネルギーである「時間」(Δtで表す)がわからなくなり、逆に、物質の存在する「時間」(Δt)を正確に決めようとすると、その「時間」帯の「エネルギー」(ΔE)がわからなくなる。何のこっちゃー?

言い換える。 物質の「エネルギー」を確定させる(ΔE=0)と、物質がそのエネルギーでいる「時間」が無限大になる(Δt=∞)。つまり、いつでも、そのエネルギーだ、ということになる。(これを物質の「定常状態」という)
逆に物質の存在する「時間」を確定させる(Δt=0)と、「エネルギー」の幅が無限大(ΔE=∞)になる。つまり、極めて短い時間なら、とてつもないエネルギーが存在してもよいことになる。これが「真空の揺らぎ」だ。

まだ、わからんよなあ。つまり、一瞬なら、大きなエネルギーが生まれても、「エネルギー保存測」は文句を言えないのだ。(あーあ、ついに、「エネルギー保存則」まで危うくなってしまった。)

さて、ほんの一瞬なら、「光子」と「反光子」が生まれて、消えてもいい。但し、光子と反光子は同じ素粒子なので、光子が正エネルギーを持つなら、反光子は負エネルギーを持たねばならない。負のエネルギーなんて観測できないから、もし物質と相互作用したら、物質の質量を奪う。(E=mc2を思い出そう)

ここまで、いいかな?納得いかない人、もう一度最初から読み直しである。ここを通り抜けてくれなくちゃ、これから先は、真っ暗闇だ。

さて、「シュワルツシルドの球面」の内と外の境目近辺でも、真空の揺らぎは発生している。光子と反光子が頻繁に生まれては消えて行く。通常の場合は消えて元の黙阿弥になる。ところが、シュワルツシルド球面の極々近傍(外側)でこれが起こると話がややこしくなる。「正エネルギー光子」と「負エネルギー光子」の負の方がブラックホールに落ち、正の方がその反作用で遠くに飛び去る。

なにが起こったように見える?

ブラックホールに飛び込んだ反光子は、ブラックホール内の物質と相互作用して、質量を奪う結果、ブラックホール内部の質量は減る。そして、球面の外にいる者にとっては、(正エネルギー)の光子が、一個、ブラックホールから飛び出して来たように見える。つまり、ブラックホールが光り輝く。
負エネルギーの光子は、安定になろうとして、質量を求めてブラックホールに飛び込んで行くのだ。これが頻繁に起これば、だんだんブラックホールの質量は減って行く。すなわち「ブラックホールの蒸発」である。

とんでもないことを考えるものである。これでは、ブラックホールがブラックホールでなくなってしまうではないか!
と心配しなくていい。この宇宙に存在する恒星から生まれたブラックホールのように規模の大きなものは、蒸発するより多量の物質を吸い込むので、無くなってしまう心配はほとんどない(そうだ)。この「蒸発効果」が効いて来るのは、ビッグバン初期に生まれたミニ・ブラックホールだけだという。これらは、ほとんど蒸発してしまい、残っているとすれば、10-15mくらいの大きさである(らしい)。こんな素粒子みたいに小さなブラックホールの中に10億トン程度の質量がつまっている(と言う人もいる)。このミニ・ブラックホールが1秒ほどで蒸発する(らしい)。これは、もはや「蒸発」というより「爆発」である。

うーん、考えるのも疲れて来た。こんなものと遭遇しないことを祈るばかりである。

一言いいたい!





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7.ブラックホールの末路

前項では、この宇宙で、恒星から生まれた大きなブラックホールは蒸発しない、ということを話した。そして、現実的に考えて、「この宇宙では」、ブラックホールとホワイトホールが繋がっているケースも極めて希(ある特別な者だけが、ホワイトホールを認識しうる)である、ということも述べた。

だとするならば、ブラックホールは、この宇宙でどうなってしまうのだろうか?

奇妙な結論が出ていたはずだ。ある特別な者以外は、ブラックホールの成長を見ることはないのだ。なぜなら、事象の地平面で全ての物質は凍りつき、ブラックホールに落ちて行くことはないからだ。これは、できてしまったブラックホールは成長しない、ということを言っている。
あり得るとすれば、ブラックホールの合体しか考えられない。

ブラックホールが別のブラックホールに「落ちる」ことはないはず(禅問答みたいだが)だから、ブラックホール同士の衝突は、我々にも観測可能のように思われる。但し、広い宇宙で、存在自体が希なブラックホールが衝突するなどということは、非常に起こりえないことである。確かに、現在の膨張期においてはそうであろう。

だが、収縮に転じた宇宙ではどうであろうか。宇宙にまばらに散らばった星々も今度は徐々に一点に向かって集まり始めるのだ。ブラックホールでない星同士が衝突する可能性も増大し、多重衝突の結果、新しいブラックホールが誕生する、ということも収縮宇宙ならありそうである。そのようにブラックホールができてしまうと、今度はそこに落ち行くものは、この宇宙から見ると、事象の地平面に凍りつく。

こうして宇宙は、周りに凍結した物質を纏ったブラックホールの密集する時空間になって行くに違いない。

但し、間違わないでもらいたいのは、もしこの宇宙を観測する意識体(あなたのことだ)が、他より一足先にブラックホールへ落ちてしまったら、(少なくとも)あなたにとっては、この宇宙はそこで終わりである。何回も言うが、事象の地平面は特異点ではない。だから落ち行く者にとっては、事象の地平面は凍結点ではなく、単なる通過点である。ブラックホールの中心に向かって落ち込み、粉々になるか、ホワイトホールに抜けるかは、入ってみなければわからない。(どちらにしても、我々は、素粒子レベル以下に分解された物質とも呼べないものになってしまうのは確かで、もし「魂」というものが、物質とは別次元に存在するならば、それがどこか別の宇宙に輪廻するのかもしれない。)

閑話休題。
ブラックホールがそれ相当の密度で集まった宇宙になってくれば、おそらくブラックホール同士の衝突が起こる。これがどんな状態になるか計算した人がいる。その計算によると、ブラックホール同士の衝突過程は、ほとんど真空中の水滴同士の衝突に似ているという。ブラックホールの事象の地平面が接すると、そのくっついたところから、なめらかなひょうたん型を経てひとつのブラックホールになる(らしい)。

最終的に宇宙が一個のブラックホールに収斂したとき、もしその内部に特異点があれば、ビッグクランチは起こらない。やはり最終的には、時空間が裏返って、ビッグクランチがビッグバンに転ずる、と考えたいものである。

そして、もし、今現在の宇宙の全質量から計算される、シュワルツシルド半径が、この宇宙そのものより大きければ、この宇宙そのものが、すでにブラックホールであるという考え方もできる。(恒星がブラックホールになった場合と異なり、このブラックホールは、内部に構造を持つ。)

いかに考えても答えは藪の中。朝永振一郎先生が、ファインマン氏の言葉を引用して、こう書いている。

「夜、街灯の下で何か探している人がいる。何を探しているかときくと、鍵を落としたという。どこで落としたかと聞くと、どうも向こうの暗いところで落としたらしいが、あそこは暗くてわからないからここを探しているのだ、と答えた。今の物理学はそんなものだよ。」

我々が宇宙を論ずるのもこんなものなのかもしれない。

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