第8章 メタ相対論


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1.「メタ」ってなんだ?

相対性理論」の最後の章になるが、「メタ相対論」という話をする。うまく行けばちょっと長くなるかもしれない。
知っている人は、「ははあ、あの話か。」とすでに、にやにやしていることであろう。

「メタ」というのは、辞書によれば、『(接頭語的に用いられ)「間に」「超えて」「高次の」などの意』 とある。まあ私的に解釈すれば、「超」という程の意味である。

「超−相対論」ってなんだろう。一般相対論で、すでに相対論は拡張され、アインシュタインは、次に「大統一理論」に取り組んだのではなかったか?そしてその完成を見ることなくこの世を去った。そう記憶している人は正しい。その通りである。

では「メタ相対論」では、なにを扱うのか?

   (1)エネルギーを失うほど、速くなるもの
   (2)真空中でもチェレンコフ光を発するもの
   (3)「因果律」を破ることがあるかもしれないもの
   (4)物質から無限のエネルギーをくみ出すことができるもの
   (5)虚数質量を持つもの


このような性質を持つ「もの」を考える。きちんとわかっていただくために、補足する。

チェレンコフ光:
   高エネルギー荷電粒子が、媒質中を走る時、荷電粒子が見かけの光速を超えた場合に発する光の衝撃波。
   (第4章 特殊から一般へ 1項「なんか変じゃない?」の後半部を参照)

因果律:
   原因が結果に優先する。つまり結果には必ず原因が必要である、ということ。
   (第6章 相対性・浪漫 9項「反転する宇宙」を参照)

さて、どんな「もの」を扱うのか理わかしていただけただろうか?
多分わからないと思う。が、それは、これを読んでいるあなたの責任ではない。なぜなら、私はわざとわからないように書いているからだ。

でも(1)〜(5)をひとつずつ検討するとぼんやり見えて来るはずなのだ。

(1)エネルギーを失うほど、速くなるもの
   エネルギーを失うほど速くなる? じゃあエネルギーがゼロになったら速さは?
   でも、物質には静止質量があったはずで、止まっていてもエネルギーはゼロじゃない。よくわからん。

(2)真空中でもチェレンコフ光を発するもの
   チェレンコフ光とは、荷電物質が媒質中の見かけの光速を超えた場合に起こる。
   真空中のチェレンコフ光?なんだそりゃあ。

(3)「因果律」を破ることがあるかもしれないもの
   んっ?ということは、結果が原因の先にある?

(4)物質から無限のエネルギーをくみ出すことができるもの
   「エネルギー保存則」はどうなるんだ?

(5)虚数の質量を持つもの
   ・・・・・・

というわけで、ひとつずつ検討したがわからなかった。具体的には次回から説明するが、このような性質をもつ「もの」を『タキオン』という。

一言いいたい!





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2.超光速粒子「タキオン」

相対論の最後には、やはりこの話題を持ってこなければならないだろう。それは、「光速度を超えるもの」の話である。

「言葉も出ない」「あきれた」「お前は今まで何回『光速度の壁』の話をした」「光速度はこの宇宙で特別だと言ったのは誰だ!」という声が聞こえる。

だが、超光速を話題にする『メタ相対論』においても光速は特別なのだ、と言い訳をすることにしよう。

相対論における質量の式

   m = m0/√(1−v2/c2   (m0は、静止質量)

を、思い出してほしい。粒子の質量は、「静止質量」に「ローレンツ因子」を掛けたものであった。
第3章 質量はエネルギーである 6.諸々を参照)

これまで我々が相手にしていた粒子は、静止状態でm0の質量であり、速度が増すと質量が大きくなり、光速で無限大になるのであった。
これに対し、光は、常に光速度で走り、いかなる条件下でも、光速度以外にはなれない。
では、超光速粒子は? 上記のアナロジーで考えると、超光速粒子は、生まれた時から、光速を超えている。速いほうには上限がないが、遅い方の限界は、光速であり、光速で質量が無限大になる。
光速度不変は捨てないのである。私はそれを覆そうとはしない。粒子の速度は光速度と等しくはなれないのである。ただし、光速度を超えるのだ。

つまり、相対論における質量の式を、超光速粒子に当てはめると、

   m = m0/√(1−v2/c2)   (m0は、静止質量)

という式は変えない。だが、分母はどうなるのだろう。v2/c2が、1より大きくなるから、ルートの中が、負の数になる。従って分母は虚数になる。虚数ではあっても、無限大ではない。

   m = im*/i√(2/c2−1
     = m*/√(v2/c2−1)

ばかも休み休み言え!と言われることは覚悟で言う。光速度を超える粒子は静止質量が虚数になる。

よって、光速を超える粒子の「静止質量」を、im*と置く。iは虚数単位(i = √(−1))であるから、m*は実数である。このときの、m*を「固有質量」と呼ぶ。上の式の最終結果は、分母のルートの中が正になるようにして、iを消去した式である。

さて、繰り返すが、「固有質量」m*そのものは実数である(そうなるように式をいじったのだ)。
これで、相対論をこれまでの通常粒子における理論を崩さずに、超光速の領域まで拡大したことになる。

静止質量が虚数って何だ? と思うかもしれないが、超光速粒子を次のように考えることで、一応の答えが出せる。

   超光速粒子の速度に上限はない。但し、下限があって、それは光速度(c)である、としてやる。
   つまり超光速粒子は、どんなことをしても、光速度以下にはなれない粒子だと考える。

そうすると、静止質量が虚数であることが見えてくる。つまり、逆立ちしても光速度以下になれない粒子の静止質量だから虚数なのである。



さて、ここでこれまで考えて来た粒子を静止質量によって分類してみよう。

   第1種:m02 > 0(m0は実数)
   第2種:m02 無い
   第3種:m02 < 0(m0は虚数:im*

第1種の粒子は、今まで扱ってきた通常の粒子であり、これを「タージオンと呼ぶ。
第2種の粒子は? そう、相対論では、特別な粒子である光子であり、これを「ルクシオンと呼ぶ。
第3種の粒子が、これから、メタ相対論で話題にする超光速粒子、「タキオンである。

一言いいたい!





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3.メタ粒子のエネルギー

これまで、我々がよく知っている粒子(タージオンルクシオン)に超光速粒子(タキオン)を加えても、(ちょっと強引ではあるが)相対論には矛盾しないことを前回書いたのである。

但し、ここまで書いた時点で誤解する人がいると困るのでひとこと言っておきたい。

   超光速粒子タキオンは、まだ実験で見つかっていない(と思う)。
   まっとうな相対論の講座では取り上げていない(はずである)。

でも、しごく真面目にタキオンを探し求める人もいるのである。(アメリカのジェラルド・ファインバーグ氏が代表格であるが、なにしろタキオンを提唱したのが1967年なので、いまだにタキオンを追い求めているか否かは定かではない。)


さて、タキオンの静止質量は、虚数になるのである。

しかし静止質量が虚数(タキオンは静止することができない)であっても、エネルギーは実数でなければならない。そうでなければ、それこそ我々は、そんな粒子を観測できない。そして、観測できないものは、物理学の対象にならない。

そこで、今回は、三種の粒子のエネルギーについて考えてみよう。

(1)タージオン
通常粒子であり、静止質量を持つ。そのときのエネルギーは、
   E=m02
であり、光速度に近づくほどエネルギーは大きくなり、その速度は、光速度に達することはできない。

(2)ルクシオン
光子であり、常に光速度。静止質量はない。エネルギーは、質量が出てこない(運動量/c)で表される。
光の運動量は、h/λで表される。hはプランク定数、λは波長である。アインシュタインは、「光電効果」でこれを示した。(第2章 はじめに光速度ありき 1.アインシュタイン登場参照)

(3)タキオン
超光速粒子であり、常に速度は光速を超える。その時のエネルギーは、
   E=m*2/√(v2/c2−1)
であり、式を解釈すると、タキオンは、光速度に近づくほどエネルギーは大きくなり、その速度は、光速度まで減速することはできない。(質量が無限大になるから)
そして、速度が増すにつれ、エネルギーは減って行き、無限大で、エネルギーはゼロになる。

多分言葉だけでは、理解しづらいだろう。このグラフを見て、納得してほしい。

驚くべき結論である。
タキオンを、光速度に近づける(減速させる)ためには、外からエネルギーを与えなければならない。
ところが、タキオンからエネルギーを奪ってやると、タキオンは、どんどん加速する。
そしてエネルギーゼロで、速度は無限大になる。



一言いいたい!





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4.超越タキオン

前回の最後に出てきた結論は、タキオンは、エネルギーを全て失いゼロになった時、その速度が無限大になるのであった。このエネルギーゼロで、無限大速度のタキオンを、「超越タキオン」と呼ぶ。

ちょっと余談。
前回、タキオンはまだ見つかっていない、と書いた。本当は、この事実は最後まで伏せて、みなさんの興味を引っ張りたかったのだが、この「タキオン」、実は、面白い話が多すぎるのである。途中まで読んだところで、これは面白いと、誰彼かまわず話しまくった後に、実は「存在があやしい」となると迷惑をかける、と思い、無念ながら告白したのだ。今回の「超越タキオン」でもかなり驚くのだが、次回以降に「スーパー・タキオン」や「ウルトラ・タキオン」というのが登場する。ほとんど空想科学の世界みたいになってしまうのである。

「超越タキオン」の最も大きな特徴は、速度無限大である。いままで、無限大が顔を出す場所は、数学的に特異点として記述され、物理的には、容認しがたいもの(というより、認識しがたいもの)であり、物理学者の20世紀は、無限大との戦いと言ってもよいほどなのである。

だが、この「超越タキオン」の速度無限大は、特異点とは呼びがたい。粒子がエネルギーを失って、最低の状態になることは、当たり前の現象であり、そこには疑問の入る余地はない。

タージオンが、最低エネルギーになるのは、速度ゼロのときであるが、タージオンは、静止しても質量をもつので、エネルギーはゼロにならないのである。ルクシオン(光子)だって、エネルギーゼロの存在にはなれる。波として波長が無限大になるのである。これと比較すれば、タキオンの速度が無限大であっても、特異点とは言えない。

次に運動量という観点で見てみよう。
   タージオンは、速度も運動量も可変で持つことができるが、速度ゼロで、運動量もゼロである。
   ルクシオンは、速度一定で、可変運動量を持っている。
   タキオンは、どうだろうか?

第3章 質量はエネルギーである 5.四元運動量からエネルギーへ の最後に書いた式を再度確認して欲しい。

   E2=(mc22+(pc)2 (pは、運動量)

この式で、エネルギーをゼロにしてみよう。すると、

   −(pc)2=(mc22=(−1)(m*22
   ∴(pc)2=(m*22
   ∴pc=m*2
   ∴p=m*

なんと、タキオンは、エネルギーゼロでも運動量がゼロではない!
従って、超越タキオンも運動量を持っている。

もし、直進しているタージオンに真横から、超越タキオンが衝突したとする。(この図を参照)

すると、タージオンは、タキオンから運動量だけを得るので、まるでタージオンは壁に当たって弾性衝突したように見える!

一言いいたい!





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5.斜交座標

まず、ことわっておかなければならないことがある。それは、この章になってから話していることは、「特殊相対論」に戻っているということだ。(そんなことわかっとるわい、という人も多いとは思うが。)つまり、超光速粒子が登場しても、今話していることは、実は慣性系が前提なので、「ローレンツ因子」が出て来るのである。

そして、「スーパー」や「ウルトラ」の話をする前に、ちょっと座標変換の話をしなければならない。(期待していた人にはお詫び。この章はかなり、いきあたりばったりで書いているので...)

さて、座標変換の話である。特殊相対論なのだから、絶対静止系というものはない。だから、まずPという基準になる慣性系を考える。このPは、タージオン系つまり、光速度より遅い慣性系である。で、これから出てくる系は、全てPに対する相対速度を持つ系と考えて欲しい。(この前提を宣言しておかないと、静止系ってなんだ?という話になってしまうので。)

静止系(もちろんPに対して)では、座標は、我々のよく知っている、直交座標で表す。図1を参照。

慣性系にいる粒子は、座標上で直線になる。縦軸は、4元位置の時間成分(ct)である。これは光が走る距離である。従って、直交座標において、ルクシオン(光)は、傾き45度の直線になる。(x=ctであるから。)

ルクシオンの直線が領域を二つに分けた。点Aがある領域は、点Oから発したタージオンがたどり着くことができる領域(Ax<At)である。これは、点Oにいる粒子が止まっていたら、ct軸に沿って動くことになることからわかると思う。
対して点Bがある領域には、点Oを発したタージオンは絶対たどり着くことができない。それは、粒子がルクシオンより速くないと(Bx>Bt)たどり着けない点である。

余談である。
メタのつかない相対論では、点Bのある領域は、点Oにいる人間には関わりのない領域であった。ルクシオン(光)の直線を、ct軸を中心にぐるっと回してできる円錐をライトコーン(光錐と訳されることもある)と呼び、その内側すなわち点Aのある側は、自分と関係ある領域なので、『時間的領域』といい、ライトコーンの外(点Bがある領域)は、『空間的領域』、と呼ぶことがある。


それでは、静止していない相対速度を持つ系(もちろんPに対して)を考える。どんな座標をとっても、光の走る道筋だけは不変であるのが慣性系なのであった。もし相対速度系の粒子が限りなく光速に近づけば、座標はどうなるかをイメージしてほしい。
特殊相対論の結論は、静止系から見た相対速度系では、時間も空間も縮む(小さくなる)のであった。それを実現すればよい。図2を参照。

光の軌跡はもちろん動いていない(不変だもの)し、点O及び点A、点Bも動かしていない。それなのに、斜交座標では、見事に時空間が縮んでいることがおわかりいただけると思う。

結論、静止系から見る速度系の座標は、斜交座標であり、タキオンもその座標の仲間はずれではない。

一言いいたい!





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6.スーパーとウルトラ

本項では、静止系から見た、二つの相対速度系を考える。
ひとつは、タージオン系であり、これを粒子Aとする。粒子Aは、静止系に対し、速度(v)で走っているものとする。
もう一つの相対速度系を粒子Bとし、これは、静止系に対し、速度(u)で走っているものとする。
ここまでは、問題ないと思う。

ここで、粒子Aから見た、粒子Bの状態を考える。
詳しい計算は、見ても煩わしいので省略するが、粒子Aから見た粒子Bのエネルギー(E’)は次のようになる。

   E’=Ea×(1−uv/c2)/√(1−v2/c2

   ※Eaは、静止系から見た粒子Aのエネルギー

例によって、静止系から見た粒子Aのローレンツ因子を(γ)と置けば、

   E’=γ{1−(u/c)×(v/c)}Ea ・・・@

である。粒子Aは、タージオン系であると決めているので、当然 γ>0である。(v<c だから)
さてここからだ。

もし粒子Bがタージオンであれば、その速度は光速より小さいので、u/c<1であり、

   (u/c)×(v/c)<1

となり、@式の右辺は、プラスである。これは、どのような座標系から見ても、粒子Bのエネルギーはプラスであるということだ。ところが、粒子Bがタキオンだったらどうなるか? (v)は(c)より小さいとしても、(u)が充分大きければ

   (u/c)×(v/c)>1

となることができる!
@式で見ると、これは、粒子Aから見たタキオンのエネルギーがマイナスになることを言っている。

そして、

   (u/c)×(v/c)=1

となることもあるだろう。このとき、@式で見ると、Aから見たタキオンは、エネルギーゼロの「超越タキオン」である。

ここで、まず何に驚かなければならないか? それは、タキオンのエネルギーは、タージオン系の速度によって変化する、ということだ。これは、タージオン系から他のタージオンを見ても言えることである。

   c < u1 < u0=c2/v < u2 < ∞

という条件を与えてやると、u1は、今まで我々が単純に考えていたタキオンであるが、u2の場合、タキオンのエネルギーは、マイナスとなるのだ。

それで、タキオンを次のように、分類する。

   (1)u1:スーパー(ルミナル)タキオン
   (2)u0=c2/v:超越タキオン
   (3)u2:ウルトラ(ルミナル)タキオン

   ※「ルミナル」というのは、「粒子の束」といった意味である。

ウルトラ・ルミナルは、観測系が二つ(静止系と、c2/vという速度系)あって始めて定義できる概念である。観測系がひとつなら、タキオンは、常にスーパー・ルミナルである。


この項は、非常にわかりづらかったと思う。理解できなくとも、最初から読み直す必要はない。
但し、次の事を認めてほしい。

タキオンは、タージオン系(速度v)から見て、c2/vという特別な速度(超越タキオン)を境に、
スーパー・ルミナル・タキオンとウルトラ・ルミナル・タキオンに別れる。


一言いいたい!





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7.タキオンは過去へ走るか?

前項の話は、我々すなわちタージオン側の存在であっても、その速度により、タキオンを異なる存在として観測してしまうことがあり得る、という話をしたのである。驚くべきは、マイナスエネルギーのタキオンであるが、とりあえず、マイナスエネルギーの話は、後に回して、本項では、ウルトラ・ルミナル・タキオンを別な面から見てみることにする。

状況を次のように設定する。

   (1)地球上にいる人間を、静止系とみなす。
   (2)地球から飛ばして、宇宙空間を速度(v)で走り続けるロケットを(A)とする。
   (3)地球から飛びだした、超光速(u)で走るタキオンを(B)とする。
   (4)タキオン(B)は、ロケット(A)を追いかけて、Aで反射され地球へ戻る。

状況は、前項で話した内容と同じである。具体的にキャスティングしたにすぎない。

もし(B)が、スーパー・ルミナル・タキオンであれば、速いことは速い(光よりも速く返って来る)が、なにも問題は起こらない。(図3参照

問題は(B)が、ウルトラ・ルミナル・タキオンの場合である。図4を、よーっく見てもらいたい。

(B)は、O→Q間を、直交座標から見れば、右へ、そして未来へ走る(O<Qt)。問題はない。
ところが、ロケット(A)の斜交座標から見ると、(B)は、右へ、そして過去へ走っている(O>Qt’)。
従って、(B)を受け取った(A)が、それを同じ速度で地球へ送り返せば、直交座標にいる人間は、Oより過去でそれを受け取ることになる。


過去へ走るのは、タキオンであって、タージオンではない。タージオンからできている我々は、どうやったって、過去へは行けない。そんなに驚く事じゃない、と思ったあなた、

   考えが浅い!

確かに地球にいる人間も、ロケットもタージオンである。ところが、ウルトラ・ルミナル・タキオンは、地球から発射して、ロケットで折り返せば、過去に届くのである。これは、昨日のあなたに、今日のあなたが、情報を送れることを意味している。

例えば、今日、競馬でものすごい万馬券が出たとする。それを知ったあなたは、昨日のあなたに、当たり馬券を知らせることができるのである。出走前に、当たり馬券(それも万馬券)を知ることができる。それを、ありったけの金で買えば、あなたは、長者になれる。

いやな想定だが、今日、あなたは自動車で、小学生をはねてしまったとする。仮に傷害で済んだとしても、家族への謝罪や補償金等、様々なペナルティーを背負わなければならない。そこで、事故を起こしたあなたは、昨日のあなたに事故が起こることを教えるのである。事前にそれを知っていれば、なんとかしてその時間に運転しないよう注意すればいい。

だんだん、話のおかしさに気付いてきたことだろう。

もし事故を起こしたあなたが、それを昨日のあなたに教えてしまえば、そもそも事故が起きない。事故が起きないのに、どうしてその事故を昨日のあなたに知らせる必要があるのか? 必要ないから教えない。そうすると昨日の自分は事故にあう。

これを因果律の崩壊という。

タイムマシンを作って過去へ行くことはできない。我々はタージオンでできている。従って、それは相対論メタ相対論を含む)が許さない。

しかし、過去へ情報を送ることができるだけで、話はおかしくなる。もし人類全部が、今日のうちに明日の新聞を読むことができたらどうなるか? 明日、自分にとって不都合なことが起こるとわかれば、今日のうちに、その不都合の回避行動をとる。当たり前だ。だから明日の新聞には、その不都合なことが起こった記事は載らない。そうすると、不都合はやはり起こる...

これを、どう解決したらいいのか? 多分、どんなに頭のいい人にも解決できない。だから、タキオンは、一般の物理学者には、研究対象外にされて来たのである。そして、ジェラルド・ファインバーグ氏以来、誰が挑戦してもそれは発見されていない。

だが、そのタキオンが、実際に発見されれば、現実に、過去に情報が送れることになる。その実験を行ったら、いったい何が起こるのだろうか?

次回は、「物質から無限のエネルギーをくみ出すことができるもの」の話をする。

一言いいたい!





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8.タキオンを探せ

これまで、特に確認していなかったが、この章で超光速粒子の話をするにあたって、実は以下を前提としていた。

   @タキオンも、タージオンルクシオン相互作用する。
   Aタキオンも、大枠では相対論に従う。


@については言うまでもないことである。タキオンが、我々の知っている世界と何も相互作用をしないのなら、そんなものは、物理学の対象にならない。何回もしつこく言ってきたことである。

Aは、メタ相対論という本章のタイトルからも明らかである。相対論に従うとしたから、静止質量が虚数の粒子が登場したのである。

以上を確認した上で、この項では、タキオンを観測する方法について考える。

(1)真空中でのチェレンコフ光
チェレンコフ光とは、高エネルギー荷電粒子が、媒質中を走る時、荷電粒子が見かけの光速を超えた場合に発する光の衝撃波のことである。
荷電粒子とは、仮想光子を出したり吸い込んだりしている。仮想光子が飛び回るところを電磁場と呼んだのであった。例えば、電子が水中を走るとき、電子の速さが、水中での光の速度を超えることがある。このとき、電子の周りの仮想光子がおいてけぼりを食らうことになり、仮想光子が実態となって飛び出す。これが一般に言われるチェレンコフ光である。

さて、電荷を持ったタキオンは、真空中でも、仮想光子を振り切ることが可能である。当然だ。タキオンは必ず光より速い。
これを利用して、タキオンを観測しよう、というプロジェクトがあった。1968年、アメリカのプリンストン大学で、荷電タキオンの測定が試みられた(らしい)。もう37年も前のことである。コバルトという放射性元素から出た高エネルギーガンマ線が、鉛の中で、プラス電荷のタキオンとマイナス電荷のタキオンを発生させる(*1)、と仮定した実験だったという。(この図を見れば概要は理解できると思う)
図に示した実験で、鉛中で生まれたタキオンは、出てくるまでに、かなりエネルギーを失うはずで、エネルギーを失えば速度は大きくなる。電極でタキオンを引っ張るのは、実は、加速ではなく、減速させているのである。

残念ながらこの実験により、タキオンを検出することはできなかった。

   (*1)高エネルギーγ線が、プラス粒子とマイナス粒子を作る(光子の物質化)ことを対創成(ついそうせい)という。


(2)ゼロエネルギー
超越タキオンを捉えることは可能だろうか?
タキオンからエネルギーを奪って行くと、それはエネルギーゼロの超越タキオンになるのであった。
例えばの話であるが、地球の大気中にタキオンを走らせれば、その相互作用によって、タキオンはエネルギーを失い、徐々に速度を増す。そしてエネルギーゼロになったとき、タキオンの速度は無限大になる。つまりタキオンは真空以外のところを走らせてやれば、ほっておいても超越タキオンになるのである。

なんらかの方法で、超越タキオンをタージオンにぶつけることを考える。
チェレンコフ光のように実際に実験した人はいないようである。しかし、チェレンコフ光の実験装置を使えば、実現可能かもしれない。電極を逆転させて、さらにタキオンからエネルギーを奪えば、ゼロエネルギータキオンをタージオンにぶつけることができるかもしれない。とりあえず思考実験でもいいからやってみよう。

止まったタージオンに超越タキオンをぶつけたらどうなるか? もしタージオンがタキオンを吸収したら、タージオンは、運動量をもらって動き出す。(超越タキオンはゼロエネルギーでも運動量を持つことを思いだしてもらいたい。)
あれっ、動いたらタージオンはエネルギーをもらったことになってしまう。これはエネルギー保存則に矛盾する。なぜなら超越タキオンにエネルギーはない。
じゃあ止まっていればいいではないか、超越タキオンは、タージオンに何の影響も与えず、どこかへ跳ね返って行く。これは、超越タキオンとタージオンの相互作用は無いと言っているのと同じだ。最初に書いた@を否定することになる。

したがって、タージオンはたった一個の超越タキオンと相互作用することはできない。相互作用させるには、タージオンの両側から超越タキオンをぶつけてやるしかない。そうすれば、タキオンの運動量は相殺され、物質も動き出さずにすむ。しかし事情はタキオン一個の時と同じだ。もしそれだけだったら、タージオンは、超越タキオンと相互作用したことにならない。そこで、どうせ観測できないんだから、マイナスエネルギーのタキオンを放出してしまえ!と言った人がいる。というより、相互作用するためには、マイナスエネルギーを放出するしかない、のである。

その結果、タージオンは放出したマイナスエネルギー分、重くなる(質量=エネルギーが増す)。これで、運動量もエネルギーも保存した。
さて、タージオンにとってみたら、何が起きた? 超越タキオンが両側からぶつかると、タージオンはエネルギーをもらうのだ。超越タキオン自身はエネルギーを持っていない。よって、タージオンにとっては、無からエネルギーをもらったことになる。そして放出するマイナスエネルギーは、無限大でもかまわない。(放出されたマイナス・エネルギーなるものが、回りにどんな影響を与えるのかは、議論の分かれるところではあろうが、ここでは、そこまでは言及しないことにする。)

これで、1.項「メタ」ってなんだ? で予告したタキオンの性質について全て説明した(つもりである)。それは、

   (1)エネルギーを失うほど、速くなるもの
   (2)真空中でもチェレンコフ光を発するもの
   (3)「因果律」を破ることがあるかもしれないもの
   (4)物質から無限のエネルギーをくみ出すことができるもの
   (5)虚数の質量を持つもの

順番は異なったが、上記5項目、納得いただけただろうか。

一言いいたい!





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9.タキオンという「夢」

メタ相対論をかじったことのある人は、ここで「再解釈原理」の話が来るだろう、と期待していたかもしれないが、私は、「再解釈原理」の話はしない。タキオンの実在を示そうと思ったら、相対論以外の別の理論を構築しなければならないことを断言できるからだ。

前項で、二つの前提を記述した。再度確認しておこう。

   @タキオンも、タージオンルクシオン相互作用する。
   Aタキオンも、大枠では相対論に従う。


まず、次のことを考えてみよう。

前項で、「止まったタージオン」というものが登場した。しかし、これは誰に対して止まっているのか?
特殊相対性理論では、粒子間に存在するのは、「相対速度」だけなのである。だから問いかけた。「止まったタージオン」とは、何に対して止まっているのかと。

難しく考えなくとも良い。それは、あなたに対して止まっているのだ。そうだよね。

従って、あなたに対して動いている「私」にとっては、タージオンは止まっていない。止まっていないタージオンと超越タキオンとの相互作用は、4項で話したように、弾性衝突したように見えるのであった。
そして、超越タキオンは、速度が無限大だから、あなたにとっても、私にとっても超越タキオンなのである。
整理してみよう。

同じ超越タキオンが、ある粒子(タージオン)と相互作用した。

   ・タージオンに対して相対速度を持つ「私」にとっては、超越タキオン1個は、タージオンの走る方向を変える。
   ・タージオンに対して静止している「あなた」から見ると、超越タキオン1個では、タージオンと相互作用できない。


つまり、下記が起こる。

   見る立場(異なる慣性系)によって、タージオンは異なる物理現象を起こす。

ここで、立ち止まって、よーっく考えてほしい。なにかがおかしくないか?



考えてもわからない人は、第2章 はじめに光速度ありき 2.二つの原理 を読み直してもらいたい。








実は、タキオンの存在を認めると、「特殊相対性原理」が崩れるのだ。

「特殊相対性原理」とは何であったか?
   どんな慣性系でも、物理現象は同じである。
であったはずだ。
タキオンは、どうだろう。
   異なる慣性系では、同じ出来事が、全く異なる物理現象を起こす。
のである。上記を振り返ってもらいたい。

   私、という慣性系にとっては、超越タキオンは、タージオンと運動量を交換する(弾性衝突する)。
   あなた、という慣性系にとっては、超越タキオンは、タージオンと相互作用しない(できない)。

「超越タキオン」が存在すると、慣性系によらず「区別できない」慣性系(相対速度が常に無限大)というへんてこりんな系が存在してしまうのである。これは、特殊相対性原理に明らかに違反している。

だから、相対性理論を用いてタキオンを語ることはできない。
「無限大」が登場する場合には、気を付けねばならないという良い手本かもしれない。

過去へ走る粒子も、とりあえずご破算である。

タキオンは、「メタ相対論」というまどろみの中に現れた「夢」である、と私は思う。



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