夜まわり

 野宿者ネットワークの夜まわりは毎週土曜日、心斎橋、日本橋、天王寺、山王で行なっている。
 また、3月から一心寺、10月から難波地域の夜まわりを加えている。
 この地区の野宿者数はこの10年、大きく減り続けてきたが、この数年は上下している。例えば、2007年6月23日の夜まわりで出会った野宿者の数は218人、2008年6月28日は198人、2009年6月20日は191人、2010年6月12日は103人、2011年6月11日は113人、2012年6月9日は98人。
 生活保護が受けやすくなり、多くの人が野宿からアパートへと移行している中、野宿者数があまり変化しなくなった背景には、「生活保護を受けたい・受けやすい人の多くが、すでに受けてしまった」ということがあるだろう。その一方、新たに野宿になる、あるいは再び野宿になる人がかなりいる。おそらく、今野宿している人たちの2〜3割が「この間まで生活保護ほ受けていて、アパートを出てきた」という人たちである。
 いま野宿をしている人たちの多くは、「統合失調や鬱などでアパートに入る手続きすら難しい」「家族とトラブルがあり、生活保護での扶養照会が難しい」「何度か生活保護を受けたが、さまざまな理由でアパートを維持できない」「借金を抱えていて、アパートに入ると貸し金業者が追いかけてくる」などの問題を抱えている。「生活保護を受けるより、空き缶を集めて自力で生きていきたい」という人も多くいる。夜まわりなどの支援活動では、一人一人と会話を重ね、その人にあった解決策を共に考え、病院や役所などに同行するという活動を続けている状態にある。

 夜まわりで出会う大きな問題としては、襲撃、排除、健康がある。
 深刻な襲撃事件は、この1年はほとんど起こっていない。しかし、以下のような事例をたびたび確認している。
7月30日 恵美須町駅で金曜日の朝4時から4時半にあった、卵の投げつけの話を聞く。小学生から中学生ぐらいの5人ぐらいがやってきて、駅の外のフェンス越しに中へ向けてかなりの卵を投げつけたらしい。「駅の中から投げていた」という話もある。
元歩道橋のところにいた人からは「5人の中学生ぐらいの子たちから、生卵を10個投げられた」という話。また、投げる蹴るがあり、ケガをさせられたという未確認の話もあった。
 道具屋筋で、月、火、水、木と2人組が蹴りを入れてくる。おそらくこのため、道具屋筋でずっと野宿していた人たちの多くが姿を消している。
阿倍野 山王15 天王寺24 JR天王寺駅タクシー乗り場前で3名が投げ付けられている。Aさん 昨日朝5時7人の男子高校生、リーダーはバイクでチャリ4台。タマゴ7つ投げ付けられる。Bさん2、3日前朝5時男子ということ以外は不明。ダンボールを持っていかれ、タマゴを投げられる。 Cさん 一昨日朝5時、二人の20代チャリでタマゴ2こ投げられる。
8月13日 2日前の夜、東の裏で20歳ぐらいの若者に野宿者がなぐられて血だらけなったという話を聞く。
 2週前の道具屋筋の殴る蹴るは、ホスト風の3人の若者にやられたという話を聞く。
6月9日 道具屋筋でいつも出会うリヤカーでダンボールを集めている人。先週木曜日(5月31日)の夕方、日本橋三丁目の西の裏で引いていたリヤカーをひっくり返される。リヤカーには、3分の1程のダンボールが積まれていて、リヤカーの下敷きになり、腰を強打、3日程、動けなかった、今も痛い。犯人は、体格のいい男1人で、自転車で逃げたと、回りの人が教えてくれた(先週の1ヶ月ほど前の愛染公園近くのリヤカーひっくり返し襲撃とも符合する)。

 襲撃の話を聞いていると、被害者から「あんたら、話を聞くだけで何もしてくれない」と言われることがたびたびある。昨年は西成公園で襲撃が連続したさい、張り込みを行なうなどの取り組みをしたが、この1年は行なっていない。しかし、襲撃は依然として途絶えることがなく、連続した場合は取り組みを考えなければならないだろう。

 排除について大きな事件は起こっていないが、6月2日「愛染公園では、午後5時頃に警官が来て、野宿者を「西成にでも行け」と追い出しているという」という話を聞いている。いまや、公園でテントを張ることはもちろん、ただ寝ることさえ困難な状態になっている。

 健康問題は日常的に出会う大きな問題だ。例えば、6月2日日本橋「二日前に野宿の状態で救急車を呼んだが、「証明書がないとダメだ」と拒否された」という話があった。胸痛を訴えたにもかかわらず、「野宿だから」という理由で(しかもウソをついて)搬送拒否をした悪質なケースで、野宿者への命に関わる差別である。
 また、高齢でかつ健康状態が悪い人にもたびたび会っている。例えば、
7月16日山王 72歳のおばあちゃんに出会う。4月まで平野で生保。ケースワーカーと揉めてアパートを出る。その後センター周辺で野宿。数日前に高架下に来る。右足がむくれてパンパンの状態。歩くことが出来ない。これまでは周りの仲間がダンボールや食べ物を分けてくれていたのでしのぐことが出来たが、ということなのでおにぎりと明日のこどもセンターのバザーのただ券と名刺を渡す。その後、救急で入院。お見舞いに行って相談を行なう。
 知的障がいのある人とも出会う。例えば、
 5月19日心斎橋、30代の男性。知的障害があるようだ。他市に家があるが兄から虐待を受けていたとのこと。親のことも良く思っていない。この人は以前にここで見かけたことがあるが「冬は家に帰った」「2日前に家を出た」と言っていた。一方、「ここの他にも向こうの公園でも寝る」「いろいろな所に行く。明日は別の所に行くつもり」とも言っていた。野宿と帰宅を繰り返している?そこらのことは要領を得なかった。荷物も何もなしの非常に身軽な格好。福祉は考えたことあるが家に連絡がいくのは絶対にいやだと言っていた。
 刑務所を出たばかりの人にも出会っている。
3月24日心斎橋 1週間ほど前に刑務所を出所して1〜2日前に心斎橋に来た73歳の人に会った。福祉を勧めるも九州に目処あるのでいいとのこと。ただ特掃にはかなり関心をしめしておられた。実家は別の県だが大阪にも住み西成も知っていると言っていた。寝袋を渡す。
 20代から30代の若者に会うこともたびたびあるが、その多くは、話しかけても無視する、自分は野宿していないと言い張る、「大丈夫ですから」と言ってどこかへ行く、という態度が多い。例えば、
11月26日日本橋 30代の人が、毛布も何もなしでコンクリート上に寝ていた。「寝袋取ってくるから使いませんか」と言うと、「お金がないからいい」と言う。「お金はいいから」と言うと、「ではすみません」と言ったあと、「いや、やっぱりいいです」とあわてて言う。「今取ってくるから」と取りに行って急いで戻ったが、もういなかった。警戒された模様。
 こういった人たちと話をして相談することは必要だが、話しかけても逃げていくパターンで、その糸口がなかなか見付からない。そもそも、「野宿している」ことを否定することがよくある。一方、電話での相談には20代〜30代の人からの相談がたびたび入っている。
 女性は常に3〜4人が野宿しているが、統合失調などの障がいを持っているらしく、毎週話しかけても話がつながらない事が多い。また、何人かはセックスワークで生計をたてている。女性に対しては女性の夜まわり参加者に話しかけてもらう、日中にも出かけて話してみる、などのことをしているが、なかなか話がつながらない状態だ。

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