1.糖尿病網膜症

ここでは糖尿病による目の障害で最も代表的なものである糖尿病網膜症について説明します。
大事なことは軽症の網膜症ではまだ自覚症状がないということです。
糖尿病になったら、悪化しないうちに定期的に眼科で眼底検査をうけるようにしましょう。


糖尿病網膜症とは糖尿病により網膜の毛細血管の破綻、閉塞を来し、眼底出血や白斑を生じる病変です。
放置すると増殖変化を来し、硝子体出血や牽引性網膜剥離が出現し、視力を著しく損ないます。
日本の後天的失明原因の中で上位を占める疾患です。


単純型網膜症

点状出血、白いしみ状の病変(硬性白斑)を認めます。この時点では、まだ自覚症状があまりなく、定期的な眼底検査が必要です。



増殖前糖尿病網膜症

出血や白色病変(軟性白斑)が多発しています。
早急な光凝固治療などをしないと増殖型に移行する可能性の高い状態です。



増殖糖尿病網膜症

増殖膜が出現し網膜を引っ張っています(牽引性網膜剥離)。
硝子体手術により増殖膜を除去し、眼内光凝固をしないと失明の危険が高い状態です。



蛍光眼底撮影検査


主には散瞳剤の点眼後に瞳孔が散瞳した状態で眼底検査をすることによりわかります。
特殊な検査として蛍光眼底検査といい、血管から蛍光造影剤を注入し血液の流れを詳しく知ることができます。
この写真は蛍光造影下の眼底写真で毛細血管に血流が乏しくなっているのがわかります


治療


1.単純網膜症
まず、内科的な血糖コントロールが大事です。網膜症の悪化と糖尿病との関係は糖尿病にかかっている年数にも比例しますが、血糖値の状態とも比例します。すなわち血糖コントロールが悪いと悪化も早いのです。
なお、この状態は自覚症状に乏しいため、知らずに悪化してしまい、次の増殖前網膜症になって初めて気がつくこともあります。進行してしまうと、治療に限界のある場合も多いため、糖尿病とわかった場合は定期的な眼底検査をうけ、自分の状態を知ることも大事です。


2.増殖前網膜症
血液の流れが悪い領域(無血管領域)にレーザー光凝固をします。網膜の全体に認められる場合は汎光凝固を行います。
その他、止血剤や血管強化剤などの内服を投与します。




3.増殖網膜症
硝子体手術により出血や、増殖膜の除去、レーザー光凝固、剥がれた網膜の復位などを行います。

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