05.4.25 Experience Sound
 最近よく聞く(見る)のが初期のExperienceの映像。『CRY OF LOVE』Bandが好きと散々言っときながら初期Experienceとは申し訳ないですが、今はこれに夢中なのです(笑)。というのも最近入手したブートDVDのせいなのです。内容はすでに持っている映像ばかりでしたが、付録に惹かれてしまいました。その付録というのが、Electric LadyLandのヌードジャケ写真のアングル違いのポスター(笑)。こんなのがあったんだ!と、思わず入手してしまいました。まあそれはおいといて、内容はデビュー当時のTV出演の映像やプロモなどが収録されています。その中でもデビュー直後の1967年3月18日BEAT CLUBから「Hey Joe」「Purple Haze」、モンタレー直前の1967年5月18日BEAT BEAT BEATから「Stone Free」「Hey Joe」「Purple Haze」、1969年1月4日収録BBCテレビのLULUSHOWでの「Voodoo child」がお気に入り。BEAT CLUBで見ることが出来るデビューしたてのExperienceは、TVカメラに緊張しているのかカチコチに見えて、結構笑える。「Hey Joe」では、Jimiの声が裏返って照れ隠しにノエルの方を見るというような場面も。演奏自体はレコードに忠実で、ほぼ再現といったコンパクトな内容。しかしそのPLAYはクールで大ブレイク寸前の大嵐の前の静けさのような緊張感を感じる。そしてBEATBEATBEATでは、モンタレー直前のノリにノっているExperienceの姿が見ることが出来る。Experienceの後期を捉えたLULUSHOWでは、初期の固さは微塵も感じられない。このときのノエルはルックス的にめちゃくちゃかっこいい。
 話は変わるが、最近のギターマガジンで取り上げられたJimiとFunkの特集記事は、非常に興味深い内容だった。
カーティス・メイフィールド「LIVE」はほんと名盤で最高だし、コーネル・デュプリープリンスが一番Jimiに近いと随分前から思っていた。もちろんファンカデリックのエディ・ヘイゼルもすばらしくJimiだ。とにかくこの特集はとことん「黒」い。しかし初期のExperienceの映像を見ると、Jimiが「黒人」だということを忘れてしまうくらいギンギラロックしている。そして逆にファンクやR&Bになりきらないところが魅力なんじゃないか?と思えてきた。例えば、トリビュートCDに入っているレニー・クラヴィッツ「エレクトリックレディランド」はかなり優秀なアレンジで非常に美しいR&Bに仕上がっている。しかし本家Jimiのは、たしかにカーティス・メイフィールドを思わせるR&Bをベースにした曲だが、全体としてはもやもやとした霧の中にいるような、音のスープの中にいるような、なんともすっきりしない(笑)音だ。「羊水」の中で聞くR&Bってこんな感じなんじゃないかと想像してしまう。極端にいえばレニー・クラヴィッツバージョンを聞いて初めて「ああ、R&Bなんだ」と理解したくらいで、簡単にR&Bだなんて言えない(笑)。「Voodoo Child (Slight Return)」もたしかにFUNKYな曲だが、LULUSHOWでみるこの曲もやはりすっきりしないリズムだ。Jimiのギターはかなりはねているが、ノエルの地を引きずるようなベースラインと相まってドロドロとしたROCKサウンドに仕上がっている。リズムもルーズで、かなり危なっかしい。Experienceの魅力はこの、ドロドロとした、もやもやした、何ともすっきりしないサウンドにあるように思う。FUNKになりきっていない状態。う〜ん、なんかムズムズするって感じ(笑)。これはExperienceが1人の黒人と2人の白人の混合バンドだった事が原因の1つであろうが、だからといってFUNKが出来なかった訳ではなく、むしろFUNKにいかなかったと言った方が正しいのではないだろうか?つまり白人狙いのヒット商品化したがる音楽業界の制約・抑制の中で、たまにははみ出しながら(笑)最大限の表現を求めた結果がExperienceのもやもや、ムズムズとしたサウンドを産んだ。The Experienceとは、そのFUNKにいきそうでいかない、寸止めされた爆発寸前の凝縮されたエネルギーの表面化なのだ。体制(業界)とバンドとのバランスも微妙な関係であったが、バンド内でも非常に危ういギリギリの関係だったに違いない。特にノエルとJimiとの関係は徐々に崩れ、最終的にはノエルが脱退しThe Experience解散という結果を招いた。こんなバランス関係だったから、サウンドもどんどん危うい感じになっていったんじゃないだろうか。LULUSHOWの「Voodoo Child (Slight Return)」と「Hey Joe」なんて、非常にコンパクトな演奏なのに鬼気迫る感じでゾクゾクしてしまう。あんなのがTVで放送されたなんて、なんて時代だ!昔、日本のパンクバンド、モッズがザ・ベストテンに出演したのを見たときの感覚を思い起こさせる(笑)。やばいもの見ちゃった(笑)。

 その後、良い意味でのポップミュージックの防波堤だったチャス・チャンドラーをぶっちぎって、純音楽の世界に飛び込んでいく。その時すでにFUNKやR&Bなど、あらゆるカテゴリーを軽々と飛び越え、コルトレーンの如きエレクトリックミュージックをアートへと昇華させた。CRY OF LOVE Bandでは、自然なありのままのJimiの音が聞くことが出来る。何にも縛られず、音が音を、リズムを生み、どこまでも深く、止むことを知らないギターフレーズ。壮大な音空間が3人によって生み出されていく。そういった意味でJimiのプレイヤーとして、アーティストとしての真の評価は、Woodstock以降にあるといえるかもしれない。

 最近はやたらFUNKHEADになっていて、ブートDVDのお陰でThe Experienceのドロドロギンギラロックサウンドにまたまた目が覚めたというのが本音なんですけどね。

 という事で、なんかムズムズするって感じをバンドで出せたらと思う今日この頃なのでございます。

次回のJimiに首ったけ乞うご期待!