2002年5月11日
下北沢ビッグマウスでのライブレポート
今回のしましまライブは4バンド中3番目の出演だった。 1曲目は「風」からスタート、何だかいつもよりも緊迫感の伝わってくる演奏だったように思う。 ![]() 風から朝もやへ、お客さんにしましまから何かビリビリと伝わってくるものが有るようで、みんな吸い込まれるように聴き入っている。 こういった緊張感はCDでは味わうことの無い、ライブならではのものだろう。 逆にそういう感覚が無いライブはいくら演奏が完璧であっても今一つ何か不満が残ってしまう。 とにかく斎藤榮の指先の強弱が聴いている人の心を徐々に揺すぶって行く..そしてそれが感動を呼び覚まし、ビッグマウスでの時間と空間を織り上げていくといった感覚だろうか。 ![]() 飯島ゆかりのパーカッションと斎藤・瀬戸とのコンビネーションも寸分の隙も許さない。 斎藤も瀬戸も飯島も何ひとつ特別なエフェクトを掛けていない、実に素朴な音であるのに、それらは宙を舞い、躍動し、単なる空気の振動では無く生命を持った生き物であるように駆け回る。 確かに癒し系の音楽であり、脳内麻薬が噴出して興奮する中にも大量のアルファ波が発生している、緊張するけどリラックスしている、何とも不思議な空間だ。 そして、その中にいつしか知らぬ間に引き込まれている。 ![]() 瀬戸のベースソロも今までで最高の演奏だったように思う。 いままで何度もライブを行っているが、斎藤も瀬戸もいつもこのソロの内容が違っている。これは演奏者にとってとても大変なことだ。 豊富な音楽的な経験とそれによって培われたセンス、それを音として実現することを可能にするテクニックがバランス良く備わっている事も勿論大切だが、それに加えてその場、その空間がどのような状態であるか、つまり聴く側の状態も演奏に影響を与えているように思える。 以前、有名なラリードライバーの話を聞いたことがある。極限状態で長時間の精密なマシンコントロール・素早い状況判断を強いられる彼らは脳がフル回転した状態で運転しているのかと思ったら、意外にも「ボーッとしているような感じですね」と答えていた。 そう言われると、そりゃそうだろうと納得出来る。生身の人間ならば脳フル回転状態を何時間も持続することは不可能だろうから、理詰めで操作している訳では無かろう。だから演奏中にソロを組立て、音にするにしてもいちいち音楽理論やらスケールやらを計算しているはずなんか無いと思う。しかし、こればかりは本人にしか解らないことだし、残念ながら私にはそんな技量なんか無い。 どうやら聴く側として参加した方が良さそうだ。 ![]() 気が付くと最後の「西日」。あっという間の出来事だった。 今までの緊張感から解放される安堵感と心地よい疲労感、そして脳裏には聴衆それぞれの風景が思い描かれていることであろう。 今晩のライブは瀬戸も言っていたが、今までで最高の出来だった。演奏の良さに加えてお客さんの反応、消え入るような演奏部分でもムリに音量を上げる事無く自然に聴かせた音響のセンスの良さが印象に残った。 |