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日記
2021年・1月

  31日





   …その時、私は、その場に居ません。


   …。


   …どうぞ、ひとりで会って下さい。


   あぁ…。


   ……。


   …どうか、拗ねないで下さい。


   拗ねてなんか、いません。


   連絡を取り合っていた事…黙っていたのは、謝ります。


   …別にどうでも良いです、そんな事。


   黙っているつもりはなかったんだ…ただ、話す機会が見つからなくて。


   今でも黙って取り合っていたと言うのなら、許しません。
   けれど、今は取り合ってないのでしょう?


   あ、うん…取り合ってない、です。


   …なら、良いです。


   榛名…。


   それに…取り合っていなければ、あなたは此処に居なかったかも知れませんから。


   ……。


   …ただ、会いたくないだけです。
   会ったところで…話す事なんて、ないから。


   榛名が


   会いたくないのなら、私も会わない。
   そう、言い掛けているのなら。


   …。


   会わないで下さい。
   私が良いと思う、その日まで。


   …最初から、そのつもりだよ。


   …。


   会うのなら…榛名、君と一緒が良い。
   そうじゃなければ…意味がないんだ。


   ありますよ、意味なら。
   私が居ようが、居なかろうが。


   …。


   あなたが会いたいと思うのなら、それだけで意味が生まれてしまうんです。


   ……。


   …。


   あの、榛名…。


   …あの頃の気持ちを思い出してしまって、ちょっと面白くないだけです。


   えと…ごめん。


   なんで謝るのですか。
   そもそも、比叡さんは悪くないし、私も悪くないんです。
   分からず屋ですっとこどっこいな金剛お姉さまが全部、悪いんです。


   すっとこどっこい、ですか…。


   …霧島も霧島よ、傍観者を気取って。
   比叡さんが追い出される時だって、ただ、見ているだけで。
   それなのに、ちゃっかり比叡さんと連絡を取り合っていて…本当、なんなの。


   取り合っていたと言っても、一ヶ月に一度くらいで…。


   …。


   …ごめんなさい。


   ……比叡さん。


   は、はい…。


  30日





   …会って伝えたい、ですか。


   霧島は、何も言わなかった。
   …子供の頃から、言わないんだよ。


   …。


   私も、察してあげられたら良いのだけれど…どうにも、鈍くてね。
   そういう子なのだと、頭では分かっているのだけれど…いつだって、後になってから気付く。
   姉として…


   …別に、良いじゃないですか。
   それに、あなたがそんな事を思っているだなんて知ったら…怒りますよ。


   姉さんのくせに、って?


   …そうです。


   手厳しいんですよね…霧島は。


   …今でも、取り合っているのですか。


   …。


   連絡。
   取り合っているのですか。


   …ううん、今はもう。


   …。


   これで仕舞いですと、一言だけ送られてきて。
   それからは一切…霧島らしいと言えば、そうなのだけれど。


   ……。


   …榛名と暮らし始めて、直ぐだったよ。
   霧島は、分かっていたのだろうね……榛名が帰らない事、私が帰らせない事。


   ……そういうところ。


   …。


   そういうところが、嫌いなんです。


   …はは。


   どうして笑うのですか。


   いや…つい。


   …。


   …四人姉妹で良かったと、思うんだ。


   それは、どうしてですか。


   …金剛お姉さまには、霧島が居る。
   私には榛名、君が居て呉れるように。


   …。


   …三人だったら、ひとり残されてしまうから。
   だから…四人で良かったと思うんだ。


   …いっそ、ふたりだったら良かったのに。


   若しも、そうだったら……こういう結果にはなっていなかったかも知れない。


   なっていたかも知れません。


   …。


   …どうして笑うのですか。


   いや…榛名は、どこまで行っても榛名なんだなって。


   …そうですよ。
   私は…どこまで行っても、私です。


   …。


   私は、私にしか、なれない。


   …。


   それは比叡さん…あなたも。


   …榛名。


   ね…そうでしょう?


   ……。


   そうだと、言って…。


   …私は、私以外の存在には、なれない。


   …。


   …だからこそ、私は姉として。
   霧島のしあわせを、願っている。


   …ッ。


   …。


   ……会いたい、ですか。


   …どう、かな。


   …。


   霧島が会って呉れないような…そんな気がするよ。


   …。


   …今日は、お出掛け日和だね。


   ……そう、ですね。


   よし、じゃあ出掛ける支度を…。


   比叡さん。


   …うん?


   いつか。


   …。


   …いつか。


   ……うん。


  29日





   …なんでしょう。


   私が、倒れた時…君はそれをどうやって知ったのですか。


   ……。


   誰が君に、知らせたのですか。


   ……知って、どうするのですか。


   どうもしない。ただ、知りたいと思っているだけだよ。


   …どうもしないのなら、知らなくても良いと思います。


   榛名。


   ……。


   金剛お姉さまではないね?


   …。


   あの家を出てから、私はお姉さまと連絡を取り合った事がない。そう、ただの一度も。
   だから、お姉さまは私が置かれている状況なんて知るわけがない、知りようがないんだ。


   …。


   だとしたら…ひとりしかいない。
   榛名…君に知らせたのは。


   …あなたが思っている通りです。


   …。


   あなたが居なくなってから…話す事なんて、ほとんどなかったのに。
   あの日、独り言のように私に話しかけてきた。
   或いは、本当にただの独り言だったのかも知れない。


   …。


   …姉さんはこどもの頃は躰が弱くて、今でも、風邪をひくと長引くきらいがある。
   ひとりで、無理をして…こじらせていなければ、良いけれど。


   …。


   …比叡さん、あなたは霧島とだけは連絡を取り合っていたのですね。


   ……。


   …。


   …それだけで、来て呉れたのですか。


   分かっているくせに。


   …。


   …霧島は、どうでも良い事は言わない。
   ましてや、独り言なんて…。


   ……部屋の住所はどうやって知ったのですか。


   …。


   …それも霧島からですか。


   わざとらしいんですよ。


   …。


   …あんなわざとらしい事、するわけないのに。


   ……。


   比叡さん、あなたもです。
   リターンアドレスを書いた葉書を霧島に送ってくるなんて。
   私には知らせてはいけないときつく言われていたでしょうに、そんな迂闊な事をするなんて。


   …。


   …金剛お姉さまに知れたら、処分されていたかも知れないのに。


   ……そうしたら、霧島は別の手段で君に知らせて呉れていたと思うよ。


   どうしてそう思うのですか。


   …なんとなく、だけれど。
   そんな気がするんだ…。


   …妹の事だから、分かるのですか。


   いや、分からないよ…霧島の考えている事は、私には分からない。


   …。


   …そうか、霧島はあの葉書を捨てずに持っていて呉れたのか。


   そんなの…ッ。


   …ん。


   当たり前じゃ、ないですか…。


   …霧島にはあまり良く思われてないと思っていたから。


   そんなわけ……霧島は、霧島も、あなたの事を…。


   …姉として、かな。


   ……。


   でも、そうか…少し、嬉しいな。


   …比叡さん。


   霧島にありがとうと、伝えられたら…。


  28日





   …姉妹って、なんなのでしょうね。


   血の繋がった他人、かな…。


   …。


   繋がっていなくてもそう呼ぶ場合はあるけれど…なんにせよ、所詮は他人に過ぎないよ。
   自分以外は皆、他人なんだ。


   …妹が、姉を愛してしまう事も。


   他人同士なのだから、ありえないわけじゃあない。


   姉が妹の愛に応える事も。
   姉と妹が愛し合ってしまう事も。


   …ありえる事なんだ、どこまで行っても他人同士なのだから。


   妹が、姉を、憎む事も。


   …。


   …姉が、妹を、嫌う事も。


   どれも、ありうる事さ…。


   ……。


   …榛名。


   ……霧島。


   …。


   …霧島には会いたいと思いますか。


   霧島、か…。


   …どうですか。


   元気にしてるかどうかは、姉として、気にはなるけれど…まぁ、霧島の事だから大丈夫だろうね。


   ……。


   ねぇ、榛名。


   …はい。


   ずっと、聞こうと思っていた事があるんだ。   


  27日





   ……。


   …会いたい、ですか。


   考えた事がない。


   …会いたくなるから、ですか。


   いや、そういうわけじゃないよ。


   …じゃあ。


   会いたいと、思わないんだ。


   …。


   榛名が居る、榛名が傍に居て呉れる。
   私はそれだけで良い。


   …。


   榛名の方が、榛名との生活の方が大切なんだよ。


   …会えるなら、会えたなら。
   会って、いましたか…?


   いや、会わない。


   …本当に、そう思っていますか。


   ……。


   …今、若しも、会えるなら。


   榛名。


   …。


   榛名は、会いたいですか。


   …いいえ。


   なら、この話はこれまでにしよう。


   ……。


   …榛名。


   ……昔の夢を、たまに見るんです。


   …。


   そこには当たり前のように…。


   …金剛お姉さまが出てくる?


   姿は見えなくても…存在を、感じるんです。


   …。


   …今も。


   少しだけ難しい顔、してた。


   …え?


   寝顔。


   ……。


   …榛名は小さい頃から金剛お姉さまが苦手だったね。


   ……あのひとは。


   …。


   …姉妹だからって、仲が良いとは限りませんから。
   寧ろ、姉妹だからこそ…。


   うん、そうだね…分かるよ。


  26日
   ちょっと寄り道。





   ……。


   ……。


   ……はるな。


   …はい。


   はるな…。


   …榛名は、此処に居ます。


   ……。


   ずっとこうしています…。


   …榛名。


   榛名にはこうしている事しか、出来ません…。
   だから…せめて。


   …。


   …あなたの、そばで。


   ……おなか、いたい。


   …。


   きもちが、わるい……。


   …早く、嵐が過ぎ去りますように。


   ……。


   比叡姉さま…。


   ……しんどいよ、榛名。


   …。


   ……。


   …榛名は、此処に居ます。
   あなたのおそばに、ずっと…。


   ……うん。


   …。


   …そばにいて、榛名。


   はい…比叡姉さま。


  25日





   ……。


   ……。


   ……ぅ。


   …。


   …ねぇさま。


   ん…。


   ……。


   おはよう、榛名。


   …ひえいさん。


   そろそろ、買い物に行こうか。


   ……はい。


   よし、じゃあ支度を…。


   比叡さん。


   うん?


   …ブランケット、ありがとうございます。


   どういたしまして。


   …。


   今日はどこへ行こうか。


   …パン屋さんにも行きたいと思っているのですが、良いでしょうか。


   うん、勿論。


   サンドイッチを作ろうと思っているんです。
   それで…。


   希望、言っても良いですか?


   はい。


   今回は湯こねパンが良いな。


   湯こねパン…。


   …だめかな。


   いいえ…私も湯こねパンが良いと思ってました。


   良かった。
   もちもちで美味しいよね、湯こねパン。


   はい、とても。


   タマゴサンドが食べたいな。


   ふふ、分かっています。


   やった。
   楽しみだなぁ。


   …。


   ん、なに…?


   …笑うあなたが、可愛くて。


   …。


   …支度、しますね。


   うん…。


   …。


   …。


   ……ねぇ、比叡さん。


   ん?


   …金剛お姉さまの事、今はどう思っていますか。


   …。


   ……会いたいと、思う事はありますか。    


  24日





   ……。


   ……。


   ……あ。


   …。


   あ、あの。


   …うん?


   ひ、比叡姉さま…。


   …あぁ。


   …。


   榛名、どうしましたか?


   …。


   ん…?


   …を、作ったんです。


   うん、なに…?


   …プリンを、作ってみたんです。


   プリンを…?


   は、はい…。


   …。


   そ、それで、良かったら、一緒に食べませんか…?


   …榛名と、ですか。


   あ、いえ…ごめんなさい…。


   どうして謝るのですか?


   …。


   頂いても、良いですか?


   …!
   は、はい。


   ありがとう、榛名。とても楽しみです。


   …。


   …本当にありがとう、榛名。


   姉さま…。


   …気を遣わせちゃって、ごめんね。
   今日はいつもよりも、長かったから…。


   そ、そんな事…。


   ……金剛お姉さまに、きつく注意されたよ。


   どうして、ですか…。


   …榛名の為に、色々やりすぎだって。
   やりすぎるきらいがあるって…。


   …っ。


   …けれど、榛名は大切な妹なんです。
   妹の為に…色々やりたいって思ったって、良いじゃないですか。
   やりすぎるかも知れないけれど…でも、それでも。


   ……。


   …榛名はひとりしか居ないんだ。
   守りたいって思ったって、良いじゃないですか…。


   ……ごめんなさい。


   …どうして謝るのですか。


   榛名が…だめ、だから。


   榛名はだめなんかじゃない。


   ……。


   …榛名を苛めるやつらが駄目なんだ。
   ゆるす事なんて、絶対に出来ない…。


   ……。


   …金剛お姉さまだって、同じ筈なのに。
   あのひとは、どこか…。


   ……。


   …榛名。


   ……。


   …プリン、私の為に作って呉れたんだよね。


   ……。


   ありがとう…榛名。
   私は…そんな榛名の事が大好きだよ。


   …ぁ。


   ……ずっと傍にいて、守りたい。


   ずっ、と…。


   …榛名に、私が必要でなくなる時まで。


   ……。


   ふふ、楽しみだなぁ。
   榛名のプリン。


   …ひえいねぇさま。


   はい、何でしょう。


   榛名も、姉さまの事…だいすき、です。


   …。


   だから…だから…ずっと、はるなのそばに…。


   …うん。


   ……。


   プリンのお礼に、私がお茶を淹れようかな。


   い、いえ、はるなが…。


   淹れさせて下さい。


   そ、それに、お口に合うか分からないし…。


   絶対に合うよ。
   合わないわけがない。


   …。


   ……榛名。


   は、はい…。


   …プリン食べたら、一緒に散歩にでも行きませんか。


   …。


   いや、かな…。


   …いえ、うれしい、です。


   うん…じゃあ、決まりで良いですか。


   はい…姉さま。


   …良かった。


  23日





   ……。


   榛名?


   …あ。


   良いよ、そのままで。


   …ごめんなさい、勝手に。


   ううん、構わないよ。


   …。


   興味、ある?


   …少しだけ。
   でも私には難しくて…。


   …。


   比叡さんはこんな難しい勉強をしていて…今も、続けているのですね。


   …私も最初は分からない事ばかりだったよ。
   六法を開いても、文語体で読み辛くてさ…。


   …。


   でも、積み重ねかなぁ…少しずつ、理解出来るようになった。
   六法の文語体にも慣れて、読めるようになった。


   …。


   …榛名は何を学びたい?


   私は…。


   …君が望むのなら、高校の先もと思ってる。


   ……いいえ、そこまでは望んでいません。


   …。


   私は…ただ、高校を卒業してみようと思ったんです。
   あの時は出来なかったけれど…あなたが傍に居て呉れる、今なら。


   …今は、望んでいなくても。


   …。


   望むようになるかも知れない…その時は、どうか言って欲しい。


   …はい。


   約束。


   …はい、約束です。


   ん…。


   …聞いても、良いですか。


   なんでも。


   …どうして法律を学ぼうと思ったのですか。


   それは…ね。


   …ん。


   ……守りたいものが、あったからだよ。


   守りたいもの…。


   …そう。


   ……それ、は。


   私達の日常生活は常に法と関わりを有する。
   法はね、いつだって日常の中にあるんだ。であるならば、知らないより知っている方が良い。


   …。


   …物理の力だけでは、守れない。守り切れない。
   そう思った…だから、学ぼうと思った。


   ……守れて、いますか。


   どうだろう。


   …。


   でも、そうだね…それで君との生活に必要な糧を得る事が出来ているから、そういう意味では守れていると思いたいな。


   …若しも、守りたいものがなかったら。


   …。


   学びたいものも、違ったのでしょうか…。


   …想像、出来ないなぁ。


   …。


   君が居ないなんて、想像出来ないよ。


   …この本、少しの間だけお借りしても良いですか。


   うん、どうぞ。


   …ありがとうございます。


   えと…聞きたい事があったら聞いてね。
   分かる範囲で答えるから。


   …はい、その時はお願いします。


   うん…。


  22日





   ……比叡さん。


   …榛名。


   ……やれるだけ、やってみます。


   うん…。


   …。


   …ねぇ、榛名。


   はい…比叡さん。


   …今日、どうしようか。


   今日…。


   そう…今日。
   お休み、だから。


   …。


   …学校、調べる?


   そう、ですね…。


   …それとも。


   お買い物に行こうと思っていたんです。


   …買い物?


   はい…そろそろ、冷蔵庫の中が淋しくなってきたので。


   あぁ…よし、じゃあ一緒に行こう。


  21日
   オクトパストラベラーをやってます。
   ドット絵はいいなぁ大好きだなぁと思いながら、ゆっくりと進めてます。
   ソシャゲの方も気になってはいるけど、手は出せない…。

   16日の拍手、ありがとうございます。





   …ねぇ、比叡さん。


   はい、榛名。


   …。


   なぁに、榛名?


   …。


   …なぁに?


   ……帰りにカフェでお茶したいです。


   良いですねぇ、是非しましょう。


   …行ってみたいお店があるんです。
   帰り道からは少し外れてしまうのですが…そこでも、良いですか?


   勿論!
   どんなお店なの?


   老夫婦が営んでいる小さいカフェなんですが…牛乳や乳製品がとても美味しいらしいです。
   元々は蔵だったものを改装したお店で…店内は落ち着いた雰囲気で穏やかな時間を過ごせるとか。


   それは…榛名、好きそうだね。


   比叡さんはどうですか…?


   うん、私も好きだよ。
   元々は蔵かぁ、実際はどんな感じなのだろう?
   楽しみだなぁ。


   牛乳を使ったシフォンケーキが美味しいらしいです。


   へぇ。


   プリンもとても美味しくて、なんでも一番人気だとか。


   プリン、ですか?


   はい。


   それは良いですねぇ!


   …比叡さん、プリン好きですよね?


   はい、とても!
   うーん、楽しみだなぁ。


   ふふ…良かった。


   でもね、榛名。


   ?
   はい。


   私は榛名が作って呉れるプリンが一番好きだからね。


   ……。


   どんなに美味しいプリンを食べたとしても、一番は変わりません。


   …知ってます。


   知ってた?


   …はい、知ってました。


   そっか、なら良かった。


   …何が良いんです?


   知ってて呉れたのが、だよ。


   ふふ…。


   ……。


   …?
   比叡さん…?


   …ううん、なんでもないよ。


   …。


   …楽しみだなぁって、思っただけ。


   私も……。


   …。


   …楽しみ、です。


   うん…。


   でも…学校の事も、ちゃんと調べないと。


   そうだね…。


   調べたら、思っていた以上にあって…。


   そっか…。


   …比叡さん。


   うん…?


   …多分、悩むと思います。
   その時は話、聞いて呉れますか…。


   うん…任せて。


   …中退して、何年も経ちます。
   勉強についていけるか…正直、不安で。
   若しかしたら、途中で…。


   …。


   それでも…。


   …学びたいと思った。


   ……はい。


   はじめの一歩。


   …。


   …まずは、踏み出した。
   今はそれで良いと思うんだ…。


  19日





   登校、スクーリングと言うのですが…大きく分けて3通りの形態があるみたいで。
   登校型、集中型、或いは合宿型など…学校やコースによって違いがあるようです。


   ふむふむ。


   月数回、年4回から5回の集中登校、土日、若しくは週5回など…多様なようです。
   私も調べ始めたばかりで、まだまだ詳しくはないのですが…。


   榛名はどれが良いと思っているのですか?


   私は…。


   …どれも、難しい?


   ……それで、悩んでいるんです。


   そっか…。


   スクーリングの日数をゼロにする事は出来ません…必須なんです。


   ふむ…。


   …どうしたら良いと思いますか。


   因みにさ。


   はい…。


   どんなひとが通っていそうなの?


   …。


   定時制のように、色んなひとが居たりしない?
   事情を抱えているひと…例えば、社会人とか。


   …居ると、思います。
   中には、私のように中退したひとも…。


   だったら、大丈夫じゃないかな。


   …え。


   いや、少し楽観的かも知れませんけれど。


   …。


   全日制の学校とは違うと思うんだ。
   それぞれがそれぞれの事情を抱えているから…。


   …そうでしょう、か。


   はっきりとした目的や目標を持っているひとが比較的多いような気がするんです。
   達成する為に頑張らなきゃいけないから、それこそ、それ以外の事なんかにかまけている余裕なんてない。
   実際、私がそうだった。


   …。


   とは言え…。


   …学校によっては。


   …。


   …減免出来なくはないんです。


   どうすれば良いの?


   …ラジオやテレビ、或いはインターネットを利用して計画的、継続的に学習する事。
   それを指導計画に取り入れる事…。


   榛名は減免したい?


   …出来るのなら、したいと思っています。


   じゃあ、そうしてみれば良いんじゃないかな。


   …私に出来るでしょうか。


   榛名だったら出来るよ。
   私が保証する。


   …。


   私に出来る事、手伝える事があったらなんでも言って欲しい。
   なんでもするよ。


   …比叡さん。


   とりあえず、もう少し調べてみようか。
   私も詳しく知りたいな。


   はい、比叡さん。


   うん!


   …あと。


   うん?


   …以前、通っていた学校に証明書を発行して貰わないといけないんです。
   編入という形になるので…。


   それは取りに行くの?
   それとも郵送?


   まだ問い合わせていないのですが…恐らく、郵送して貰えると思います。
   ですが万が一、取りに行かなければならなくなったら…。


   その時は一緒に行くよ。


   …来て、呉れますか。


   勿論。


   お休みは…。


   それは大丈夫。
   でさ、その帰りにどこかでごはんを食べたり買い物をしたりしよう。


   …。


   ね、そうしませんか?


   …比叡さん、若しかしてそれが目的なんじゃ。


   楽しみがあった方が、良いじゃないですか。


   …。


   ね。


   …もぅ、比叡さんは。
   でも、そうですね…。


   でしょう?


  18日





   最近、考えている事があるんです。
   聞いて呉れますか?


   うん、なに?


   実は…通信制の高校に編入しようか悩んでいるんです。


   通信制の高校、ですか。


   …私は高校に二年しか通っていません。


   うん…。


   ですから、ちゃんと卒業しようとここにきて思うようになったんです。
   比叡さんは…どう思いますか?


   それは榛名のやりたい事ですか?


   …はい。


   うん、良いんじゃないかな。
   私は大賛成だよ。


   …本当ですか?


   うん、本当。


   …。


   榛名…?


   …その。


   お金の事は心配しないで。


   …。


   大丈夫。


   …ありがとう、ございます。


   榛名にはずっと支えて貰っているから、ね。
   お互いさま、だよ。


   …。


   榛名が支えて呉れなければ、私は大学を卒業出来なかった。
   榛名には感謝してもしきれない。


   …そんな事。


   だから、今度は私が榛名を支える番。


   比叡さんは幼い頃からずっと…ん。


   ね。


   ……はい。


   それで、通信制ってどんな感じなの?
   学校に直接登校する事はあるの?


   え、と…。


   うんうん。


  17日





   〜〜♪


   はるなー。


   はーい。


   私のパーカー知らない?


   比叡さんのパーカー、ですか?


   うん、さっきから探してるんだけど見つからな…あ。


   はい?


   ふむ、どうりで見つからないわけですねぇ。


   脱いだ方が良いですか?


   あ、いや、そのままで大丈夫です。


   好きなんです、あなたのパーカー。


   いっそ、あげようか?


   いいえ。
   あなたのだから好きなんです。


   そういうものかな。


   そういうものです。
   たまにお借りして身に付けるのが好きなんです。


   そのパーカーも榛名に着て貰えてきっと喜んでるよ。


   ふふ、そうだったら良いですね。


   なんとなく、馴染んでいるように見えるんだよね。
   それこそ、私が着ている時よりも。


   そんな事ないですよ。
   だってあなたに良く似合ってますから。


   はは、そうだと良いなぁ。


   …。


   うん、榛名?


   …貰ってしまったら。


   うん。


   あなたのにおいが、しなくなってしますから。


   …。


   だから…ね。


   あー…。


   …なんですか?


   いや、ちょっと…ね。


   ちょっと…なんですか?


   …刺激が、強いかなと。


   …。


   榛名、ファスナーをもう少しあげた方が良いんじゃないかな?


   …もぅ、比叡さんったら。


   いや、ゆうべの事が…ね?


   比叡さん…?


   …ごめんなさい。


   もぅ。


   はは…。


   …ところで比叡さん、お腹は空きましたか?


   あ、うん、空きました。


   でしたら、朝ごはんにしましょう。


   うん。


   まずは服を着て下さいね?


   あぁ、うん、そうだね。
   え、と…。


  16日





   …ねぇ比叡さん、腕枕して。


   うん、どうぞ…。


   ……ありがとうございます。


   …ねぇ榛名、今度髪の毛切って欲しいな。
   前髪が、こう、目に入って鬱陶しいんだ…。


   はい…そろそろだと思っていました。


   …ありがとう。


   ……。


   …窓の外、今は何が見える?


   そうですね……いくつかの小さな灯りが見えます。


   灯り、か…。


   …あの灯りのもと、誰かが今日も生きている、生きていた。
   そんな風に見えます…。


   そう…。


   …この部屋の灯りも、誰かに見えているのでしょうか。


   たぶん…きっと。


   ……。


   …夜は、駄目だなぁ。


   …?


   どうにも、良くない方に考えてしまう…。
   昼ならば…たぶん、なんてことないだろうに。


   …私は、静かな夜が好きです。
   お昼は…私には少し、騒がしく感じて。


   あぁ…騒がしいと言うのは、分かるかな。
   考え事をするには夜の方が良い…。


   …けど、良くない方に思考が沈むと言うのは理解出来ます。
   冥い考えが浮かぶのは、決まって…。


   榛名…。


   …今は大丈夫、大丈夫です。


   …。


   ……あの家に、ひとり、残されて。


   …。


   夜になると、あなたのことばかり考えてた…。
   …たまに、あなたを想って。


   私も、榛名のことを考えてた…眠る前に、君の顔を思い浮かべるんだ。
   忘れないように……必ず、迎えに行くと。


   …淋しくも、なるんですけれどね。


   うん、そうなんだ…それがまた、しんどいところだよね。


   そうなんです…でも、あなたのことばかり考えていたから、私は。


   …。


   ……此処で、あなたと生きていられる。
   これからもきっと…生きて、いける。


   …榛名。


   いつか…いつか、あなたは私にこう言いましたよね。


   なんて言った…?


   …ひとりでしていても、私のことを想ってするのなら、それはひとりではないと。


   ……ええ、と。


   おぼえていませんか…?


   …言ったかも知れない。


   言ったんですよ…。


   …じゃあ、言った。


   もぅ…比叡さんは。


   …ごめん。


   ……あの時は、よく分からなかったけれど。


   …。


   …今なら、分かる気がします。


   そっか…。


   …でもやっぱり、ふたりの方が良いですけれどね。


   はは…。


   …もぅ、なんで笑うのですか。


   いや…なんとなく。


   もぅ…。


   ……ねぇ、榛名。


   …なんですか。


   私…私も、セックスが好きだよ。


   …。


   …君とする、ね。


   他のひととなんてしたら、あなたを殺して私も死にます…。


   …。


   …だから、しないで。


   しないよ…しない。


   ……。


   …そろそろ、寝ようか。


   腕…。


   …榛名が眠るまで、してるよ。


   はい…。


   …おやすみ、榛名。


   おやすみなさい…比叡さん。


   …また、あした。


  15日





   ……たぶん。


   …。


   …私はこれからも、あなたを傷付け続けるでしょう。


   ……。


   私は…あなたを、しあわせにすることは出来ないでしょう。
   …私は、歪んでいるから。


   …。


   それでも、私は……私は、あなたから離れたくない。


   …しんどいよ。


   ……。


   しんどい、けれど……それでも、私は。


   …比叡さん。


   君をひとりにすることは出来ない…暗い場所に行って欲しくない。


   …。


   …榛名、君を愛している。
   ただ、ただ、愛している…。


   ……ごめんなさい。


   …。


   ごめんなさい…。


   …これからも屹度、君は私を姉と呼ぶだろう。
   無意識に…。


   …。


   そのたびに、私の胸は痛むだろう…けれども、いつかはその痛みに慣れてしまうかも知れない。


   ……言わないように、


   良いんだ、良いんだよ、榛名。
   君が…私を、愛しているのなら。
   姉としてではなく…いや、姉としても、愛して呉れているのなら…それで、良い。


   …。


   …榛名、君は私以外のひとを好きになってはいけない。
   愛しても、いけないよ……絶対に。


   …はい、比叡さん。


   私も…君以外、愛さないから。
   そうすれば…いつか、不安も恐怖も薄らいで。   


  14日





   ……。


   …どうして、私だったの。


   …。


   ……不安になるんだよ、どうしようもなく。


   …あなたじゃなきゃ、だめだったの。


   どうして…。


   …どうしても。


   それじゃ、分からない…分からないよ。


   …。


   …榛名は私を試す。
   そのたびに、私は言葉を尽くして伝えてきたつもりだよ…。


   ……。


   どうして、私を試すの…好きだと、愛していると、伝えているのに。
   それなのに…。


   …怖いからです。


   …。


   …あなたは私と違ってにんげんが嫌いなわけではありません。
   私はあなたしかいないのに、あなたは…。


   ……興味がないと言う事は、嫌いと言う感情よりもたちが悪いよ。


   …。


   興味がない…つまり、どうでも良いんだよ。
   私は他人がどうなろうと…たとえ、不幸になろうともどうでも良い。


   …。


   …榛名にしか、興味がないんだ。


   ……恐らく。


   …。


   他のひともそうだと思いますよ…。


   …私ほどのひとはいないよ。


   いいえ…そんな事、ありません。


   …。


   私が…所謂、いじめを受けていた時。
   私に興味を持ってないひとは確かにいたんです…。


   …。


   …どうでも良いんですよ、私がどうなろうが。
   仮令、命を絶とうが…関係ないのですから。


   私は…。


   …そんなひとでも、いつかは誰かを好きになって、興味を持つかも知れない。
   そうやってひとは誰かと繋がっては、離れてきたのでしょう……ずっと。


   ……。


   …あなたも、屹度。
   今は私以外、興味を持つことがなくても…。


   ……榛名。


   あなたを、姉と呼ぶのは……呼んでしまうのは、あなたが私の姉だから。
   小さい頃の記憶が、私の中にあるから…。


   …。


   …私は、勝手なにんげんです。
   妹扱いされるのは、嫌なくせに…。


   ……榛名は、勝手だよ。


   …。


   勝手だ…。


   ………。


   …榛名。   


  13日





   …ん。


   …。


   比叡さん…?


   …ほっぺた、やわらかいですねぇ。


   もう…飲んでるのに。


   はは、すみません。


   …。


   …さて、私も。


   比叡さん。


   …はい?


   どうして。


   …。


   どうして…姉のように、話すのですか。


   …姉だからですよ。


   それは…。


   …ん、なかなか美味しい。


   嫌がらせ、ですか。


   …嫌がらせ?


   何なのですか。


   嫌がらせのつもりなんて全くないですよ。


   そうでしょうか。


   嫌がらせも何も、私は榛名の姉ですから。


   …ッ!


   ですから…。


   …。


   …榛名。


   どうして…そんな意地悪を、するのですか…。


   …意地悪、ですか。


   他に、ありますか…。


   …ただの冗談と、受け取れませんか。


   冗談にしてはたちが悪いじゃないですか…!


   …榛名、声が大きいですよ。
   今はもう、遅い時間です。


   ……。


   …飲んだら、休みましょう。


   ……私に妹に戻れと、言うのですか。


   …。


   そうなのですか。


   …そんな事は、一言も言っていませんよ。


   言ってるようなものじゃないですか。


   いいえ。


   …!


   榛名。


   …まるで、金剛お姉さまのよう。


   …。


   とても…不愉快、です。


   …。


   ……ミルク、ありがとうございました。


   未だ残っているようですが…。


   …もう、十分です。


   ……。


   先に休みます。
   おやすみな


   ごめん。


   ……。


   ごめん、榛名。


   …なんですか、今更。


   …。


   ……ずっと一緒にいたいって、言って呉れましたよね。


   …。


   覆したいのなら、はっきりそう言えば良いじゃないですか。
   ただの姉に戻りたいと


   たまに榛名は、私の事を姉と呼ぶ。


   …だから、なんですか。


   意識してそう呼んでいるのならば、冗談として流す事が出来る。
   でも…無意識のもの、は。


   …。


   それは…君が思っている以上に、私の胸に刺さるんだ。
   若しかしたら、榛名は…。


   …。


   …榛名は、私を好いて呉れている。
   姉としてではなく…恋人として、一生のパートナーとして。
   頭では、分かってる…けれど。


   …。


   …榛名、君はどうして私の事を好きになったの。
   姉である、私の事を…。   


  12日





   ……。


   …お待たせしました。


   …。


   お砂糖入りの温かいミルクです。
   どうぞ。


   …ふふ、ありがとうございます。


   眠たいですか?


   …いえ、大丈夫です。


   飲んだら、休みましょうか。
   明日も早いですし。


   …そうですね、そうしましょう。


   ……熱いから、気をつけて下さいね。


   はい…。


   …。


   ……ん、少し熱いです。


   小さい頃のように、ふうふうしてあげましょうか?


   …。


   はは、冗談ですよ。
   榛名はもう


   …お願いします。


   …。


   …冗談です。


   ……。


   ……。


   …そうしていると、君が小さかった頃を思い出します。


   そうですか…?


   …マグを両手で包んで、ふうふうと冷ます。
   あの頃の君の手は小さくて…とても可愛らしかった。


   …比叡さんだってあの頃は小さくて、可愛らしかったですよ。


   可愛らしいかどうかは分からないけれど、確かに小さかったですね。


   …可愛らしかったです。


   …。


   ……ん、丁度良くなりました。


   うん…それは良かったです。


   …美味しい。


   なんだか、懐かしい気持ちになってしまったな…。


  11日





   ……。


   …な。


   …。


   …はるな。


   ……。


   そろそろ、出ませんか…?


   …はい。


   ふたりで入れて良かった…ありがとう、榛名。


   …ねぇ、比叡さん。


   うん…?


   …お風呂から出たら、お砂糖を入れたあたたかいミルクが飲みたいです。


   あぁ…じゃあ、いれてあげるね。


   …一緒に飲んで呉れますか。


   うん、勿論…。


   …。


   …他にして欲しい事はありませんか。


   あたたかいミルクを飲みながら…窓の外が、見たいです。


   …分かった、一緒に見よう。


   ……。


   さぁ、出ようか…。


   …比叡さん。


   ……なに。


   あなたと一生、一緒にいたい…ただ、ただ、あなたと…。


   …。


   いたい……。


   …一生、いよう。


   あなたものぞんで、くれる…?


   …勿論、望んでいるよ。


   よかった…。


   …。


   ずっと…はなさないで、いてくださいね。


   …沈んでしまわぬよう、ずっと離さないでいるよ。


   うん…。


   …さぁ、榛名。


   はい、ねぇさま…。


   …。


   …?
   ひえいさん…?


   …いや、なんでもないよ。   


  10日





   ……ねぇ、ひえいさん。


   ん…。


   …どうして、したくなるんでしょうね。


   …。


   セックス…。


   …あぁ。


   ほんらいなら、それは…せいしょくのために、することです。


   …そうだね。


   でも、にんげんは…かいらくのためだけにも、して。
   こどもをのぞんでいるわけでもないのに、して。


   …。


   …わたしたちは、なんどしたところで、こどもはできません。
   つまり、せいしょくのためではないのです。


   うん。


   …わたしたちも、そうなのでしょうか。


   …。


   …かいらくのため、に。
   いみのないセックスを、くりかえして…。


   確かめたいから、かなぁ。


   …たしかめたい?


   気持ちが良いから…と言うのも、勿論あるけれど…意味がないとは、思わないよ。


   …。


   …榛名は好きだと言っていたね。


   ……はい、好きです。


   なら、好きだからしたくなる…で、良いんじゃないかな。


   …。


   うん…?


   …どうせ、わたしはいやらしいおんなです。


   あ…。


   ……どうせ、はしたないですよ。


   榛名。


   …。


   そもそも、相手のことが好きでなければこんなこと、したいと思わないよ。


   …そうでもないですよ、世の中のひとたちは。


   世の中のひとたちはそうかも知れない…だけど私は、榛名のことが好きだから。


   …。


   …私達に子供が出来ることはないけれど、それでもしたいと思う。
   それって、考えようによっては…とてもすごいことじゃないですか。


   なにがすごいのですか…?


   恋愛の終着点が生殖行為、つまりセックスだと聞いたことがあります。
   愛に変わる事がなければ…それはただ、ただ、本能を満たすだけに過ぎないと。


   …どこで聞いたのですか。


   だけれど、私達の終着点は生殖じゃない。
   セックスは…ただの、通過点に過ぎないのです。
   生活の中に組み込まれているもののひとつと言っても良い。


   …。


   ただ、ただ、相手のことが好きで…愛していて。
   それ故に、その肌に触れたいと思う。確かめたいと思う。


   …だから、せいしょくがもくてきでないセックスだってあると言ったじゃないですか。
   快楽を求めたり、寂しさを埋め合わせたり、弱みにつけこんだり……わたしだって。


   私はさ、榛名。


   …。


   …榛名が好きだから、したいと思う。
   それじゃ、だめかな…?


   …。


   榛名も…私のことが、その、好きだから。


   …わたしは、セックスが、すきです。


   …。


   …ひとりでしていたくらいに。


   私を想って、でしょう?


   …。


   …いつだって、相手が私だったのなら。
   それは…ひとりでしていたのかも知れないけど、でも…ひとりではないと、思うよ。


   ……どうかんがえたって、ひとりです。


   や、そうなんだけど…そうじゃないと、私は思うんです。


   …。


   …うまく、まとまらないけれど。


   そうですね…。


   …だから、私のことが好きだからにしておけば良いんです。


   …。


   それで、良いじゃないですか。
   他の誰が駄目だと言っても、良いじゃないですか。
   生殖とか、快楽とか…そんなの、どうでも良いじゃないですか。


   …ひえいさんのくせに。


   …。


   …でも、そのとおりです。


   ……榛名。


   あなたのことが好きだから、あなたとするセックスがすき。


   …。


   …ふふ。


   あー…。


   …なんですか、気の抜けたような声を出して。


   榛名は時々、私を試すようなことをしてきますよね…。


   …そうですか?


   そうだよ…。


   …めんどう、ですか?


   そうとは思わないけど…。


   …なら、良いですよね?


   …。


   ね…。


   …良いけど、もう少しだけ、手加減してくれると嬉しいな。


  9日





    …ん、…。


   ……。


   はぁ…。


   …許して呉れますか?


   ……ふふ。


   はは…。


   …ゆるしません。


   あれ…。


   …もっと、あいして。


   …。


   じゃなきゃ…ゆるして、あげません。


   …もう、だいじょうぶなのですか?


   だいじょうぶ…


   …なら。


   じゃ、ないです…。


   …あれ。


   ふふ…ふふ…。


   えと…どっちかな。


   どっち、とは…?


   いや…ほんとうはもう、だいじょうぶなのかなぁって。


   …まだ、ほんのすこししか、やすんでいません。


   あー、うん…そう、だね。


   …げんきですね、ひえいさんは。


   や…わたしは、まぁ…ね。


   まぁ、なんですか…?


   …体力、無駄にありますから。


   …。


   …ん。


   かぜ、ひきやすいくせに…。


   …それは小さい頃の話であって。


   いまだって、そうです…。


   ……。


   …ゆだんしたら、だめなんですからね。


   ……はい、榛名。


   …。


   …。


   …ひえいさん。


   なに…はるな。


   …こうしてるの、すき。


   …?


   …もぅ。


   あ、いや…分かるんだけど、も。


   …ほんとうにわかっているんですか。


   本当に分かってる…と、思うんだけど。


   …わかってないですよね。


   いや、分かってる…分かってる、よ。


   じゃあ……どう、わかっているんですか。


   あ、えと…。


   ……。


   …ひとつに、なれてるような、きがする。


   …。


   わたしは…おんなだから、おとこのひとのようには、できないけれど。
   それでも…こうやって、つながることはできて…。


   …。


   きみと、つながることは…つながっているのは、とてもきもちがいい。


   …。


   …はるなのなかにいると、とてもみたされる。
   たいせいは、しょうじき、ちょっとつらいけど…。


   ……あなたが、おんなで、よかった。


   え…?


   …だって。


   だって…?


   …そのきになればずっと、つながっていられるから。


   …!


   …それに。


   それ、に…?


   ……いいません。


   え…。


   …わからないなら、しらべてください。


   なにを、しらべたらいいの…?


   …。


   はるな…?


   …ゆびは、なえることがありません。


   なえ…?


   …しりません。


   わ…。


   ……ほんとう、なにもしらないんですね。


   は、はるな…?


   …でもまぁ、いいですけど。
   しらなくても。


   い、いいの…?


   …いいです、あなたはわたしだけしっていればいいんです。


   …。


   わたしだけを、しっていてくれれば…いいの。


   そっか…うん、私もそれで良いと思ってる。


   …げんきんなひと。


   ね、榛名……。


   …。


   …休めましたか?


   …。


   もう少し、休む…?


   ……キスから、はじめて。


   …。


   ぬいて…また、キスから。


   …うん、そうしよう。


  8日





   ……、…ぁ…。


   …うん?


   ……。


   あれ…。


   ………。


   …榛名?
   若しかして…もう?


   ……。


   でも、未だ……。


   …。


   ええ、と……一度、抜いた方が良いかな。


   ……、で。


   ん…なに?


   その、まま…で。


   だいじょうぶ…?


   …うごかさない、で。


   あ、うん…分かった。


   ……はぁ。


   …そんなに、良かった?


   ……いいたく、ありません。


   あー…。


   …ばか。


   あ、はい…。


   …。


   ……榛名、この姿勢だとしんどくはないですか?


   …だいじょうぶ、です。


   ……。


   ひえいさん…。


   …姿勢、少し変えても良いかな。


   ……どうぞ。


   じゃあ…。


   …ぁ、ん。


   …。


   …うごかさないでって、いったのに。


   ごめん、動かすつもりはなかったんだけど…。


   ……キス、して。


   え…?


   …キス。


   え、と…。


   …して。


   うん……。


  7日





   は、ぁ……。


   …指先って、さ。


   はい…。


   …感覚が敏感だよね。


   だから、なんですか…。


   …考えてみれば、何かに触れて確かめるのはいつだって手の役目だね。
   特に、指先は…。


   あ…ぁ…。


   …こうやって、探ったりもするし。
   鈍感だったら…


   …ッ、…あぁッ。


   …見つけられなかったかも知れない。


   ひえい、さん……。


   …榛名の、好きなところ。


   や…、……。


   …からだがね、ふるえるんだよ。
   ここを、擦ると…決まって、ね。


   …あっ、…ぁ…ッ…。


   …声よりも、先にね。
   からだが、はんのうしてくれるんだ…それが、たまらなくて。


   …だ、め……ぁ、ぁぁ…っ。


   ……見つけた時は、嬉しかったなぁ。


   …あっ、…あッ……ッ。


   はるな…。


  6日





   ……。


   ……榛名。


   …早く、外れるように。
   今直ぐにでも、外れてしまうように…。


   おまじない…とか?


   …ふふ、そういう事にしておきますか?


   うーん、少し無理かも…。


   …どう無理なんです?


   おまじないと言うには、少々…。


   …少々、なんですか?


   物理的と言うか…脳を直接、殴られているみたいと言うか。


   …そんな物騒な事はしていません。


   揺さぶられているような…掻き混ぜられているような。


   …私はただ、あなたに嵌められている箍を一刻も早く外したいだけですよ?


   あぁ…うん…そうだね…。


   ……。


   …何はともあれ、私も壊れてた。


   そうでしょうか…。


   …なんせ、他人に対しての感情が欠けているのだからね。
   そう言わずして、なんと言おう…。


   そのわりには誰に対しても親切で優しかったではありませんか…。
   そう、今でも…。


   …興味がなくても、親切にする事ぐらい簡単だよ。
   そう躾けられたのだからね…。


   厄介ですね…?


   …本当にね。


   けれど、良かった…親切にする、そのついでに手を出すようなひとではなくて。


   それは、ないなぁ…考えたこともない…。


   …と言うより、知らなかったのではないでしょうか?


   はは…そうとも言う…。


   …知っていたら、


   ないんじゃないかなぁ…うん、ないよ…。


   …。


   …榛名が教えて呉れなければこんな事、一生、興味を持たなかったかも知れない。


   あ…。


   …もう、十分だよ。


   駄目です、もう少し…。


   …そこも温かくて、気持ちが良いけれど。


   ……。


   …もっと良いところを、これは、知っている。


   それは、どこでしょう…?


   …多分、榛名も知っているところだよ。


   ……。


   …よく、ね。


  5日





   …それなのに。


   …。


   …姉と妹と言う事には、罪悪感を抱くのですね?


   それは…まぁ、そうだよ。


   どうしてです…?
   本当に壊れているのなら、そんなもの、抱かないと思うのですけれど…?


   …そこは難しいところでね。


   難しい…?


   …そう、難しいんです。


   ふふ…なんですか、それ。


   …なんでしょうねぇ。


   ね、なんでですか…?


   …と。


   ねぇ、どうしてですか…?


   …榛名、本当は分かっているんじゃないですか?


   いいえ…私には、分かりません。


   そうかなぁ…分かっていそうだけれど。


   …分からないから、聞いているんですよ?


   うーん…。


   …ね、どうして?


   ……。


   比叡さん…。


   …それが、私に嵌められた箍だから。


   ……。


   今となっては大分、緩んでいるけれどね…。


   …早く、完全に外れてしまえば良いのに。


   ここまで来たら時間の問題だと思うけどね…。


  4日





   …比叡さん?


   ん…。


   …何を考えているのですか。


   ……どうして榛名はこんなにきれいなのだろうって。


   はぐらかさないで…。


   …。


   比叡さん。


   …今になって、気が付いたんだよ。


   何に、ですか…。


   …。


   …何に気が付いたのですか。


   ……。


   ねぇ…。


   …榛名は、可愛いなぁ。


   ……。


   本当に可愛い…。


   …教えて呉れないのですか。


   私は、壊れている。


   …え?


   その事に、漸く、気が付いたんだよ…。


   ん…ひえいさん。


   …壊れているのは、榛名だけじゃない。


   それは、どういう…。


   …私も、壊れていたんだよ。


   ……。


   意味が分からないと言う顔をしているね…。


   …どうしてそんなに楽しそうなのですか?


   楽しいから、だよ…いや、可笑しいからと言った方が正しいかな…。


   …。


   私はずっと、恋愛感情と言うものが良く分からなかった…誰に告白されても興味を持てなかったし…どうでも、良かった。


   …それのどこが壊れているのですか?


   壊れていない…?


   …それだけでは壊れているとは言えないと思います。


   そうかな…。


   …興味を持てなかったと言うことは、そのひとに魅力がなかっただけではありませんか。
   比叡さんに問題があるとは思えません…。


   誰にも持てないものかな…?
   ほんの僅かでも…?


   …だからこそ。


   む…。


   …今、こうして。
   私と一緒に居るのではありませんか…。


   …。


   …比叡さんが誰かのものにならなくて良かった。
   仮令、そうなっていたとしても…私は、諦めなかったでしょうけれど。


   ……怖いなぁ、榛名は。


   嫌いになりますか…こんな女は。


   いや…とても魅力的で好ましいと思うよ。


   …ふふ。


   ……。


   比叡さん…。


   …榛名はにんげんが嫌いと言ったね。


   ……。


   私は嫌いも何もない。
   それすらもどうでも良いと思うにんげんだったんだよ。


   …だから、壊れていると?


   感情が欠けている…これを壊れていると言わないで、何と言うだろう?


  3日





   はぁ……。


   …きれいだ、榛名。


   私は、きれいではありませんよ…。


   …いいや、とてもきれいだよ。


   ぅ…。


   …榛名以上にきれいなにんげんなんて、きっと、いない。


   いますよ…ここに。


   …。


   …私の、姉さま。


   ……。


   ふふ…そんな顔、しないで?


   …なんだか複雑で。


   どうして…?


   …姉と呼ばないで欲しい。


   …。


   …自分を殴りたくなる、思い切り。


   罪悪感から、ですか…?


   …そうかも知れない。


   いいえ、そうなのでしょう…?


   …。


   ……。


   …榛名。


   私はやっぱり、壊れているのかも知れません…。


   壊れている…て。


   …だって、全く感じないんです。
   罪悪感なんて…あぁ、若しかしたら生まれた時から壊れていたのかも。


   ……姉と妹の違いないのかも知れない。


   大した違いなんて、ないと思いますよ。


   …けれど、姉は妹を。


   守る?


   …。


   ね…若しも、あなたと私、逆の立場だったら。
   あなたが妹、私が姉だったら…どうだったでしょうね?


   ……。


   …そうだとしても、私は壊れていて。
   あなたは罪の意識に苛まれていたかも知れません…。


   ……私が壊れているかも知れないよ。


   それは、ありません…。


   …どうして言い切れるのですか?


   だって、あなただから…どんな立場に生まれたとしても、あなたはあなただから。


   …。


   …きれいな、ひと。
   私の…愛しい、ひと。


   ……榛名。


   はい…。


   …他に、言葉が浮かばない事を許して欲しい。


   …?


   私は、君を、愛している。


   …姉として、妹の私を、ですか?


   いや、違う。


   ぁ…。


   …比叡として榛名を、愛している。


   ……。


   どうしようもなく、きれいだ…榛名。


   …抱いて呉れますか?


   今更、止められない…。


   …。


   …もう、止める事は出来ない。


   ……あなたが、望んで呉れるなら。


   …。


   私は…どんな事をされても構わない。
   あなたになら…。


   …大切にしたい。


   …。


   傷付けたくない…。    


  2日





   …あの時。


   うん…?


   …私が、見ていたものは。


   …。


   何だったのか…。


   …え、と。


   私達が未だ、幼かった頃…。


   …。


   …私は、外を見ていました。
   夜の、暗がりの中…薄着で、ただぼんやりと窓の外を…。


   …。


   …憶えていますか。


   榛名が外を見ていたのは…何度か、あったから。


   …何度かではなく、何度もありましたよ。


   ……そうだったね。


   大概、寒い夜で…そのたびに、あなたは私を心配して寄り添って呉れました。


   …。


   …私は、期待していたんです。


   …。


   あなたに見つけて貰って…寄り添って貰えることを。
   ふたりで頭から毛布をかぶり、温もりを分かち合うことを…。


   …榛名はいつだって、冷たかった。
   それは、まるで…。


   …死んでいるよう、でしたか。


   ……。


   窓の外…夜の向こう側……空の先……それは、何処にあるのか……ぼんやりと、考えていた…。


   …榛名。


   冬になると決まって…春や夏には、そんな思いに囚われる事、ないのに。


   …。


   そして、いつか気が付いたんです…それは、海の底にあるのではないかと。
   深い、深い…光も届かない、闇の中に。


   …。


   …この躰が重たくて仕方が無かった。
   心だけになって…何処かに、沈んでしまいたかった。
   海の、地球の底に…誰にも、看取られずに…終わってしまいたかった。


   榛名…ッ。


   …大丈夫です、今はそんな思いに囚われる事はないですから。


   ……。


   …あなたが呼び戻して呉れたんです。
   あなたの温もりが…いつだって、私に生を教えて呉れた。


   …。


   私は……私は、あなたを、愛しています。


   ……。


   …どうか、受け止めて。
   受け入れて…。


   …君が、望むのなら、私は。


   それでは、駄目なの。


   …。


   …あなたが、望んで呉れなければ。
   望んで呉れないのなら、どうか、何処かに沈めて。
   誰の手にも触れられないような場所に、あなたの手で。


   …。


   叶わないのなら、せめて、あなたの手で終わりたい…いいえ、それすらも。


   …。


   …あなたは、こんな私を、愛して呉れる?
   私が望むからではなく、あなたが自ら望んで…私を、受け入れて呉れる?


   ……。


   …私ね、セックスが好きです。
   あなたとする、セックスが…。


   …。


   …酷く、満たされるんです。
   ひとりでは、決して、得られない…だけれど。


   …。


   …私はやっぱり、壊れているんです。
   壊れているから…零れていってしまう。
   掬おうとしても、指の間から流れていってしまう…。


   …。


   ……比叡さん、私は。


   …榛名が何処かに行ってしまいそうで、怖かった。


   …。


   ぼうっとしながら窓の外を見ている君は…感情を、何処かに置いてきてしまったようで。
   そのまま、夜の暗闇に溶け合って消えてしまいそうで…。


   …。


   …どうにかして、繋ぎ留めたかった。


   ……比叡さん、セックスは好きですか?


   …。


   好き…?


   …好き、だよ。


   ほんとうに…?


   …君とするセックスが、好きだよ。


   ほんとうだったら、いいのに…。


   …どうしたら、本当だと信じて貰えますか。


   …。


   どうしたら…。


  1日





   …え?


   榛名は将来、どうしたいと思っていますか?


   将来…ですか?


   はい、そうです。


   ……よく分かりません。


   考えた事、ないですか?


   …あまり。


   そうですか。


   …おかしいでしょうか。


   いいえ、そんな事はないですよ。


   …比叡姉さまは考えていらっしゃるのですか?


   うーん、そうですねぇ。


   …いつか、この家から。


   うん?


   ……。


   榛名?


   …。


   何か言いたい事や聞きたい事があるのならば…遠慮なく、言って下さい。


   …特にありません。


   本当にありませんか?


   ……。


   …榛名。


   …ッ。


   ……。


   ねぇ、さま…。


   …何かしらの思いを、抱えている。
   思い悩んでいる…そんな顔をしている、ような気がする。


   そんなこと、は…。


   …榛名。


   ……。


   いつか、榛名に。


   ……。


   いつか、大切なひとが出来て。
   そのひとと共に歩いてゆく、そんな日が来るまで。


   …。


   …私は君のそばに居て、守りたいと思う。


   ……そんな日は、来ません。


   …。


   絶対に、来ません…。


   …絶対なんて、ないよ。


   大切なひとなんて……榛名には、出来ません…。


   今は、そうかも知れない…けれど。


   だから、そんな日なんて来ません…来ないんです…。


   …。


   来ない…絶対に、来ない…来るわけ、ない…。


   ……榛名。


   榛名は…私は、ひとが嫌いです……にんげんなんて、きらい…。


   …それでも


   止めて。


   …。


   …止めて、下さい。
   ねぇさまから、そんな事、聞きたくない…。


   ……。


   将来なんて、要らない…来なくて、良い……榛名は、榛名はこのまま姉さまと…。


   …。


   榛名は、いつまでも、姉さまと…。


   …それが、榛名の望む事なんだね。


   あ…。


   …私と居る事、それが榛名の願いなんだね。


   ち、違う、違います…は、榛名は…榛名は…。


   …私は、榛名のそばに居る。


   …!


   …居るよ、榛名。


   ちが、う…。


   …。


   だって、それは……。


   …。


   榛名が、榛名が、本当に、望んでいる事、は……。


   …なんですか。


   ………。


   榛名……。


   …姉さまの答えを未だ、聞いていません。


   私の答え…?


   …姉さまは将来、どうしたいと思っていらっしゃるのですか。
   姉さまが本当にしたいと思っている事は、なんですか…。


   …。


   私の事は、どうでも良いのです…だから、姉さまが本当に叶えたいと思っている事を、教えて下さい。


   …どうでも良いなんて、思えないよ。


   …。


   榛名。


   ……。


   将来…若しも、君が望んで呉れるなら、私は。


   …。


   君が私を必要としない日が来るまで、私は榛名のそばに


   言わないで。


   …。


   …そんな日、来るわけないのに。
   どうして、どうして、そういう事を言うの…。


   ……。


   姉さま、榛名は、榛名はあなたのお荷物になりたくないんです。
   それだけははっきりと言える、言えるんです。


   荷物だなんて、私は


   榛名の為に、榛名のせいで、姉さまの将来が潰れるような事があってはならないのです。
   ならないの。


   潰れない。


   …っ。


   そんな事には、ならない。
   絶対に、ならない。


   …ぜったい、なんて。


   ……。


   ないと、言ったではないですか…。


   言った。


   だったら…。


   榛名。


   …。


   …榛名が、望んでいる事はなんですか。
   将来、どうしていたいと思っていますか。


   …。


   叶えたいと、思っている事は…。