らー…。


    …。


    ららららーらららーららー…。


    ……。


    らー………。


    …アキラ。


    あ。


    なんの歌?


    …エリスさん。


    きれいな歌だね。


    …ありがとうございます。


    ……。


    すみません。


    …なんで?


    起こして、しまいました。


    気にしないで良いよ。


    …。


    ナディも、いるから。


    …え。


    エリス。


    …ね。


    そーいうことは、言わなくても良いの。


    でも、一緒。


    …すみません、ナディさん。


    エリスも言ったでしょ?


    え?


    気にしないでも良いって。
    それにアキラが夜、コイユルを見ていてくれるから、あたし達は眠れるんだしさ。


    …ありがとうございます。


    良いんだって。


    良いの。


    …はい。


    それで、さっきのは?


    さっきの?


    アキラが歌っていた歌。
    とてもきれいだった。


    …ああ。
    あれは…。


    …。


    …。


    …あの人とこっち来てから、聞いたです。
    あの人が聞かせてくれた、です。


    あいつが?
    あいつにそんな甲斐性、あるとは思えないけど。


    あの人、好きなんです。


    歌うの?


    うたうこと、ないですが…。


    そんな顔、してないし。


    ナディ、失礼?


    や、だってあの顔よ?


    ナディ。


    …。


    ふふ。


    …。


    …。


    コイユルさん、あしたからごはん、食べてもいい。
    あの人、いってました。


    …うん。


    それ、なんだけど。
    アキラにお願いしても良いかな。


    わたし、ですか?


    うん。
    ねぇ、エリス。


    …だめ?


    私でよければ…。


    じゃあ、お願いするわ。


    お願い。


    …はい、わかりました。


    …。


    …。


    …私のこと、聞きましたか。


    さぁ、何も。


    そうですか…。


    …。


    …。


    “Pavane pour une infante défunte”...


    は?


    …なに?


    こっちのことばだと…“Pavana para una infanta difunta”、いいます。


    亡き王女のための…


    …パヴァーヌ?


    私、好きです。
    このうた。


    …へぇ。


    ナディ、パヴァーヌってなに?


    あーそれは…。


    …。


    …まぁ、そういう名前ってことよ。


    名前?


    そう、歌の名前。


    …。


    …なに。


    本当?


    …う。


    …。


    …じぃっと見るなって。


    知らない?


    …うん。


    最初からそういえば良いのに。


    つか、分かるなんて言ってないでしょーが。


    …。


    …。


    …言ってなかった。


    でしょ。


    うん、そうだった。


    ん、宜しい。


    ふふ。
    ナディさんとエリスさん、ほんとうになかがいい。


    夫婦だから。


    エリス。


    私、見てるとき、いつもなかがよかった。
    しまい…いいえ、ほんとうのふうふみたいでした。


    そうだから。


    あー…もう、良いや。
    それで。


    ……コイユルさん、治る。
    よかった…。


    うん。


    ねぇ、アキラ。
    一つ、聞いても良い?


    …はい、なんでしょう。


    あの藪医者、名前なんて言うの。


    …はい?


    まぁ、どーでも良いんだけどさ。


    名前、聞いてないですか?


    うん、聞いてない。


    エリスさんも?


    ナディが聞かないから、私も聞かない。


    …。


    コイユルが治れば、それで良いんだよね。
    ナディ。


    まぁ、そーゆうこと。


    …やさしいんですね。


    そうでもない。


    ナディは優しい人なの。
    けど、それがちょっといやなの。


    …エリス。
    そもそもあんたが


    ふふ。


    …。


    …。


    あの人の名前、でしたね。
    あの人の名前は…





    パルジファルだ。





    あ…。


    アキラ、余計な事は言うな。


    …ごめんなさい。


    おーおー、えっらそうに。
    飯、作ってもらうクセに。


    ナディ。


    何よ。


    この餓鬼の親だと名乗る者がこいつを探しているらしい。
    それも躍起になってな。








    あんたは、どうしたい?


    …。


    あんたが…
あんたが、戻りたいと言うのならば、あたしは止めない。


    …わたしは。


    …。


    ……もどりたく、ない。


    戻れない、じゃなくて?


    …。


    親、として、あんたを探しているって話だけど。


    ……おとうさんは、もういない。


    けど、母親はいると。


    …もう、あのひとはおかあさんじゃない。


    でも、母親でしょ。


    ちがうよ。


    …。


    …わたしより、おとこのひとがいいって。
    そう、いって…わたしのかお、たたくの。


    コイユル…。


    …エリス。


    うん…。



    …さて。
    もう一度、聞くけど。


    ……。


    本当に戻りたくないのね。


    …だって。


    …。


    もどったら、きっと…わたし…。


    …きっと?


    おかね、もってかなかったらまた…また、おとこのひとに……ッ!


    …。


    こわかっ、た…こわかったの、に……おか、さんは…!


    …エリス、お願い。


    うん…。
    
…コイユル。


    う、うぅぅぅ…。


    大丈夫だよ…もう、大丈夫。








    それで、どうするつもりだ。


    …。


    赤髪と金髪の女二人組と一緒に居る、既にそんな情報も流されているだろう。
    人の目は何処にだってあるからな。


    だろうね。


    ナディさん…あの子、どうするですか。


    どうするって…戻りたくないって言って泣いてるけど。
    どうなるかは…


    だったら、


    戻さない。
    戻したところで、あの子は幸せにならない。


    それはお前達が決める事は無い。


    知ってるわよ。


    知ってて尚、か。
    身勝手な話だな。


    親に売られるのが分かっているのに、戻す方がどうかしてると思うけど。


    …お前達が連れて行くのか。


    しょうがないけど。
    エリスがそうするって言えば、そうする。
    あたし達と一緒で幸せになれるかどうかは、分からないけど。


    …。


    ほとぼり、冷めてる頃でしょ。
    外、そろそろ出たいし。


    治り切ってはいないがな。
    点滴は終えても、暫くは投薬治療が必要だ。


    けど、ここにいるよりは良い。
    医者なら他に、あんたよりマシなのはいる。


    ああ、然うだ。
    精々、ぼったくられれば良い。


    うるせ。


    ……ほんとうに、いいですか。


    …。


    アキラ、余計な事は言うな。


    コイユルさん、おかあさん、いる。
    それなのに、


    アキラ。


    …。


    親がいたって。
    それが幸せに繋がるなんてこと、無いのよ。


    でも、それでも、


    母親には変わりないだろうけどね。


    だったら、


    殴って蹴って、盗みをやらせて、金を持ってこないと躰を売り飛ばし、病気にさせても気付かないし、治すつもりもない。
    子供にしてみれば親は親だから、だから助けて欲しいのに、親の面をして子供を良いようにして、食い物にしている。
    アキラ。


    …


    あんたは子供を産めない。
    けど、産んで子供を道具にしている親もいる。


    どう、ぐ…。


    みんな、あんたみたいな考えが出来る親ばかりじゃないのよ。


    わ、わたしは…。


    …アキラ。


    わたしは…わたしは……ああ。


    …。


    …わたしは、みんな、売られてしまった。
    顔も、ろくに見られなかった。
    気づいたら、いなかった。
    でも、なんにも、かんじなかった…。


    …。


    …それで、男たちがまたわたしの上、のった。
    そして、またわたしは…。


    ……アキラ、もう良い。


    …わたしは、いえを、としおいたおやを、きょうだいを、まもりたかった。
    それだけだった、だったのに……。


    アキラ、止めろ。


    ……う。


    …もう良い、止めろ。


    ……。


    ありがとう、アキラ。


    …?


    あの子の母親が、あんたみたいだったら良かったのに。
    あの子だけじゃない…。


    で、でも、わたしは…。


    あんたがどんな事をさせられてきたのか、今はどうでも良い。
    そんなの、関係ない。


    ナディさん…。


    藪医者。


    パルジファルだと言ったが。


    どうでも良いし、言いづらい。


    …なんだ。


    明日、あたし達はこの町を出る。
    金は?


    …。


    払わなくて良いなら、払わないけど。


    踏み倒すか。
    らしいな。


    あ?


    流れ者らしい行いだと言ったのだ。


    誰が踏み倒すか。


    …ナディ。


    エリス。
    コイユルは?


    …大丈夫。


    傍にいなくて?


    …。


    こっちは大丈夫だから。


    でも、


    明日、この町を発つ。
    だから、その支度はしないといけないかな。


    え…。


    コイユルの支度もしないと。
    そこら辺はあんたに任すわ、相棒。


    ナディ…!


    わ…。


    ……ナディ。


    エリス…。


    金についてだか。


    …。


    明日、言う。


    …あ、そ。


    アキラ、今日で最後だ。
    餓鬼にも適当に作ってやるが良い。


    ……はい。









    Elevando los brazos al cielo, Ogaraití pidió al dios Tupá que lo ayudara.
    
(オガライティは両腕を空に向かって伸ばし、どうか私を助けてくださいと、神トゥパーに救いを求めた)


    …。


    El bondadoso Tupá oyó la voz de Ogaraití y se apiadó de él.
    
(善なる神はオガライティの声を聞くと、彼を哀れんだ)


    …。


    Ante el asombro de todos, el cuerpo de Ogaraití se fue haciendo pequeño y sus brazos se convirtieron en dos alas.
    Y después, Ogaraití voló cantando alegremente.
    
(皆の前でオガライティの体は小さくなっていき、その両腕は二枚のツバサになった。
     そして、オガライティは嬉しそうに歌いながら飛んでいった…)



    …。


    …コイユル。


    ……。


    大丈夫、大丈夫…。


    …えり、す。


    なぁに?


    ……。


    必ずナディが守ってくれるから。
    私をいつも守ってくれているように、コイユルも。
    だから…


    あたしはそこまでお人好しじゃないんだけどー?


    でも、お人好し。


    じゃないって、言ってるんだけど。


    ナディには分からなくても、エリスには分かるから。


    …。


    分かるんだよ?


    …ああ、そうですか。


    な、でぃ…。


    明日の朝早く、この町を出る。
    それまで時間はたっぷりあるから。


    …。


    あんたは小さいけれど、一人の人間だからね。
    あんたがしたいようにすれば良い。


    ナディ…。


    エリス。


    …うん。


    ほら、そんな顔しない。
    それより続き続き。


    …何度も、聞いているのに。


    それはあたしが、いつもあんたに言ってるコト。


    …えへへ。


    コイユル。


    …?


    あんた、今の言葉でも少しなら、分かるみたいだから。


    …。


    読み書き、そのうちあんたにも教えてあげる。


    …!


    エリスが。


    私?


    勿論。
    あたしはあんたに教えただけで十分。


    …。


    良い練習になるんじゃない?


    …あ。


    ……この子の、さ。


    じゃあ、ナディも。


    あたしは


    ナディも。


    …。


    ナディ、も。


    …ああ、はいはい。
    やれば良いんでしょ、やれば。


    うん、良いの。


    でも、順番にね。


    うん、順番にね。


    …。


    ま、出来た方が後々、役に立つと思うわよ。
    昔の言葉だけじゃ、莫迦にされるだろうから。


    莫迦に?


    そ。


    なんで?


    そーいうもんだから。


    どうして、そういうものなの?


    だから、そういうものなのよ。
    コイユル、あんたなら分かるんじゃない?


    …う、ん。


    ……。


    あのね、エリス。


    …うん。


    もしかしたら無くなってたかもしんないのよ。


    無くなる?


    今の言葉が、破壊者達に広められて。
    昔の言葉はどんどん、話されなくなっていった。
    今の言葉ってね、元々、海を越えた国から破壊者達が持ってきた言葉なのよ。


    …どうして話されなくなっていったの。


    昔の国を思い出して、言う事を聞かなくなるから。
    破壊者達が嫌がったの。


    ……。


    それに…。


    …それに?


    順応者達が進んで今の言葉を話すようになったから。


    …。


    しょうがないのよ。
    自分達が生き残る為には、手段なんて選んでる場合じゃないから。
    言葉や考えを破壊者達に合わせて、時には娘や妻も差し出して取り入った。
    そうして、生きた。


    …差し出された女の人は?


    …。


    ナディ。


    …まぁ、そればっかりじゃないから。
    中には恋愛して結ばれたって話もあったらしいし。
    たとえ、正妻じゃなかったとしても。


    ……。


    話を元に戻すけど。
    それでも、昔の言葉は無くならなくて、こうやって残ってる。


    …。


    それでも、話者の数はゆっくりと減っていってるって話。
    今の親は敢えて、子供に教えないって言うし。


    教えないの?


    やっぱりね、主に使われているのは今の言葉だから。
    だからもしかしたらそう遠くない未来、昔の言葉は無くなってしまうかもしれない。


    でも、コイユルは話せるよ。


    それは…


    ……おと、さん。


    ……。


    ……。


    いつ、も、はなして、た。
    だから、わたし、も…。


    …そっか、父親がね。


    でも、おか、さん、いやがる…。
    だめ、いう…。


    …のわりには、今の言葉もちゃんと教えないってね。
    ほんっと、良くある話だ。


    ……。


    ま、そういうわけよ。
    分かった?エリス。


    …私は。


    うん?


    好き、だから。


    …。


    ナディが教えてくれた言葉だから。
    だから。


    …じゃ、この子にも教えてやってよ。


    ……ナディも、だよ。


    …。


    …ナディも。


    やれやれ、しょーがないなぁ…。


    ……かまど、どり。


    …。


    うん?


    なでぃ、と、えりす、かまどどり。


    …。


    ...Al escuchar su canto, Eireté también se transformó en pájaro, y voló para reunirse con él.
    
(…彼の歌を聞いたエイレテもまた小鳥に変わり、彼と一緒になる為に飛び立った)


    おがらいてぃ…。


    …あたしが?


    えいれて。


    …エリス?


    ん。
    なかよし、ふ、ふ。


    …て。
    あたしは男じゃないぞぅ。


    …?


    でも、エリスと仲良し夫婦。


    だから、エリス


    違うの?


    …う。


    違うの、ナディ。


    …。


    ナディ。


    ……ああもう、違わないわよ。


    ナディとエリスは仲良し夫婦?


    そう、そうよ。
    あたし達は


    良かった。


    …たく、なに言わすんだ。





    たのしそうですね。





    アキラ。


    ごはんのようい、できました。


    そっか。
    ありがと、アキラ。


    ありがとう、アキラ。


    ふふ。
    どう、いたしまして。


    …。


    コイユル、こういう時は


    ありがとう、だよ。


    …コイユルさん。


    
……Sulpayki(スルパイキ).


    …?


    …ナディさん?


    ありがとう、だって。


    ナディ。


    そうとも言うのよ。


    そうなんだ。


    同じ言葉でも場所によってちょっと違うから。





    お前の父親の出は中央あたりだったのかも知れんな。





    …て。
    なんであんたが


    はなし、してくれた。


    父親が、か。


    …ん。


    然うか。


    つか、なんであんたが分かるのよ。


    アキラ、朝飯だ。
    冷めると不味くなるだろう。


    あ、はい。


    て、あんたもここで


    ナディ。


    あー?


    みんなで、食べよう?


    でも


    ね?


    …ま、今日だけだし。


    矢張り、尻に敷かれているな。


    うっせ、余計なお世話だ。








    ごちそうさまでした。
    あー食べた食べた。


    ……。


    コイユル、食べ終わったらそう言うんだよ?


    ……?


    コイユルさ、おなかいっぱいになった?


    …ん。


    なら、ごちそうさまってね。


    ……。


    ナディはおなかいっぱいになったら言うよね?


    まぁね。


    焦げたソーセージでも。


    …それ、コトあるごとに出してくるの止めろって。


    ナディの得意料理だから。


    んなわけあるか。


    えへへ。


    つかそんなに好きならいつでも、焼いてあげるわよ。
    そうねぇ、明日の夕ごはんあたりにでも。


    だって、コイユル。


    こげて、る…おいし、い?


    焦げた味がするよ?


    て、そのまんまだし。
    大体、好きで焦がしてるわけじゃないっつの。


    ナディはせっかち。
    でも、不器用だから。


    全く、フォローになってない。


    最近はあまり焦がさなくなったね?


    結構、前からだけどね。


    結構?


    大分。


    いつぐらい?


    そんなコトばかり言ってると、あんたの好きなトマトの、もう作ってやんないぞ?


    トマトの?


    そう、トマトの。
    もう作ってやんない。


    いや、作って。


    どうしようかなぁ。


    作って。


    だったら…


    人目、など。


    …あ?


    うん?


    お前達には問題では無い事が良く分かるな。
    放っておくと、どこまでもやり続ける。


    …何を、よ。


    どこまでも行く、の方が良いか。


    うん、どこまでも行くよ。


    て、エリス。


    ナディが。


    行かないっつの。
    大体、あたしは


    痴話喧嘩…いや、お前達の場合は喧嘩にもなっていないな。
    ただのじゃれあいだ。


    いや、だから、


    なかよしふうふ、ですね。


    て、アキラ。
    あんたまで


    うん、ナディとエリスは仲良し夫婦なの。


    エリ


    かまどどり。


    ……コイユル。


    なでぃ、と、えりす、は、かまどどり。


    だって、ナディ。


    …もう良い。


    あき、ら。


    はい、コイユルさん。


    ごちそ、さま。


    …!


    あ、りが…う。


    ……いいえ…いいえ…。


    あ、きら…?


    …どうか、コイユルさん。


    …?


    しあわせ、なってくださいね…。


    し、あわ…?


    ……どうか…どうか。


    アキラ、それぐらいにしろ。


    ……。


    アキラ。


    ……はい。
    ごめんなさい、コイユルさん…。


    ……。


    私、かたづけてきます。


    それならあたし達がやるわよ。


    え…。


    エリス。


    うん。


    でも…


    今日までごちそうになったし、今日の分くらいはね。
    後でどれくらい取られるのか、は、知らないけど。


    ありがとう、アキラ。


    まぁ、まだ夜も残ってるけど。


    よろしくね。


    けど、ナディさんたちはコイユルさんの


    それ、なんだけど。
    アキラに任せるから。


    え…。


    そこの藪医者が今日で最後だからって手ぇ、抜かないように。
    ついでに見張っててくれると助かるかな。


    …ふ。


    え、えと…。


    よし。
    じゃあ片付けようか、相棒。


    いえっさ、相棒。


    ま、まってください。


    うん?


    なぁに?


    エリスさんのおなか、赤ちゃんがいる、ききました。


    …で?


    あまりむり、しては…


    私ね、ナディの左手なの。


    …ひだりて?


    ね、ナディ。


    それは、初耳のような気がするんだけど。


    ……。


    ん、なに…。


    朝から、気にしてたから。


    …で?


    感覚、ある…?


    それ、朝にも答えたけど。


    ある?


    ま、酷くない程度にはって言ったかな。


    痺れてる…?


    …。


    ナディ?


    …まぁ、少しは。
    でもごはん食べられたし、


    落として割ったら、大変?


    …だから、そこまでじゃないって。


    何かしらの後遺症、とでも言うべきか。
    先天性のものでは無さそうだな。


    …。


    日によって程度は変わるようだが。


    ナディさん、ひだりて、きかないですか…。


    そこまで酷くないって。
    ただ、ちょっとね。


    ちょっと?


    調子悪いと、言うコト聞いてくれないだけ。
    この子と一緒で。


    エリスは調子悪くないよ?


    あんたの場合がキゲンの方。


    …。


    そう、こんな感じ。


    …でも、いつもナディのせい。


    言われると思った。


    …ふふ。


    また始まったか。
    油断も隙もあったものでは無いな。


    …。


    …えへへ。


    エリス、行くよ。


    いえ


    まってください。
    やっぱり、私、やります。


    アキラ。


    外、でないほうがいい。
    彼、オレホン、いいました。


    …?


    ……。


    アキラ。


    あ。


    オレホン…。


    …まぁ、どうでも良いけど。


    オレホンなの?


    俺はパルジファルだよ、エリス。


    ちょっと、馴れ馴れしく人の相棒の名前、呼ぶんじゃないわよ。


    …嫉妬か。
    くだらないな。


    じゃ、なくて。
    あんたみたいなヤツに呼ばれたくないってだけよ。


    それを嫉妬と呼ぶのだが?


    うるさい、黙れ。


    と、とにかく、かたづけわたしやります。
    ナディさん、エリスさんはコイユルさんのところ、いてください。


    あ、アキラ。


    …行っちゃったね?


    あーあ。


    だが、アキラの判断は最もだ。
    厄介事に巻き込まれたく…いや、もう巻き込まれてはいるがな。


    …。


    明日まで、精々、大人しくしていろ。
    コイユル。


    …う。


    診察だ。
    完全には治せなかったが、それでもお前を診る義務が俺にはある。


    …義務、ね。
    所詮、金が目的のくせして。


    お前が金の為になんでもやってきたのと同じだ。


    …。


    然う、なんでも、な。


    エリスを守ってくれた。


    …?


    エリス。


    お金、貰えなくても。
    ナディは私を守ってくれたよ。


    それは所詮、惚れた弱みと言うものだろうよ。


    ちょっと。


    惚れた弱み?


    気にしないでよろしい。


    …。


    …するなって。


    今は、しない。


    …おい。


    後で、教えてもらうから。


    …あのな。


    何にせよ、お人好しは死んでも治らんだろうがな。


    莫迦と一緒にするな、この藪医者。








    …ここ。


    …。


    
…ワワ?


    ん、いるよ…。


    …。


    …私と、ナディの赤ちゃん。


    えりす……なでぃ?


    そこら辺を説明すると長くなるから、勘弁ね。


    …しって、る。


    うん?


    なでぃ、えりす、かまどどり。
    だから。


    …カマドドリ、ね。


    仲良し夫婦の象徴?


    …まぁ、そうらしいけど。


    な、…よ……ふ……。


    …コイユル、話しずらい?


    …。


    少しずつ、慣れていけば良いと思うわよ。
    覚えようとする気があれば、いくらでも覚えられるから。
    ねぇ、エリス。


    うん。


    …。


    昔の言葉を忘れろ、なんて。


    私達は、言わないから。


    ……。


    …もう少し、触りたい?


    …?


    …良いよ。
    触ってあげて?
    きっと、喜んでるから。


    …。


    …お母さんの顔、か。


    えりす、
ママ…?


    うん…。


    なでぃ…。


    まぁ、あたしもそうなるかな。


    …。


    エリスのお腹の子は、あたしの子だから。


    …えりす。


    なぁに?


    たい…?


    …たい?


    たい…たい……うぅ。


    大切?


    …!


    うん…大切。


    …なでぃ。


    勿論、大切。
    子供も…エリスも。


    …。


    ふふ、ナディ…。


    …なに。


    寄りかかっても良い?


    疲れたのなら、


    寄りかかりたいの。
    だから、座って?


    …。


    ナディ。


    …しょーがないなぁ。


    抱っこの方が良い?


    …調子に乗るな?


    えへへ。


    ……。


    ほら、コイユルが呆れてるわよー…。


    …か、お。


    あ?


    
プカ?


    ……。


    ナディはすぐに赤くなるの。


    て、エリス。
    余計なコトは教えんでよろしい。


    …ね?


    ん…。


    エリス、


    わ。


    コイユル、あんたも。


    ……。


    たく、あんた達は。


    …ごめん?


    …。


    コイユル、あんたは?


    
…Panpachaway(パンパチャワイ)。


    うん、分かればよろしい。


    …。


    …ふふ。


    うん?


    ナディはいつもこうやって、優しく撫でてくれるんだよ。
    頭も…お腹も。


    ……。


    気持ち良い?


    …ん。


    だって、ナディ。
    良かったね。


    …まぁ、良いけど。


    ね、コイユル。


    …?


    ナディはね、いつも言うんだよ。
    待ちきれないって。


    …あ?


    私のこと抱っこして、お腹を撫でながら。
    いつも言うの。


    て、エリス。
    何言い出すのかな、あんたは。


    ナディはせっかちだから。


    エリス、それはせっかち言わない。
    つか、


    ん。


    いつもは言ってない。


    たまに?


    待ちきれない、とは言ってない。


    …楽しみ?


    …。


    ん…?


    …それくらい、言うでしょ。
    普通は。


    普通…?


    親なら…さ。


    …。


    ナディだけかと思った。


    んなわけ、あるかい。


    …えへ。


    …。


    …コイユル?


    ……。


    コイユル。


    ……わた、し。


    …。


    う…うぅぅ。


    …ナディ。


    エリス、こういう時はさ。


    あ…。


    …ぁ。


    抱き締めてあげれば良いと思うのよ。
    多分、だけど。


    …。


    …。


    …ま、あたしの腕のじゃ、あんた達二人は少し厳しいけどね。


    ナディ…。


    …。


    オーケイ?


    …ん、オーケイ。


    ……。


    よしよし。


    …えへへ。


    
……ママ。


    …。


    
タタ……。


    …こーら、あたしはお父さんじゃないぞ。


    ……。


    ま、今回だけは許してあげるけど。


    …優しいね。


    まぁ、ね。


    …大好き。


    お…。


    ……大好き、ナディ。


    うん…。





    ナディ、エリス。





    …あ?


    何があっても、出てくるな。


    どうしたの?


    何よ、急に。


    良いな。
    何があっても、だ。


    だから





    ドンッ





    …!


    今の音…。





    だめ…だめ…!!





    アキラ…!


    ナディ、今の…。


    …エリス。


    ナディ…。


    ここにいて。
    そして、コイユルを守って。


    え…あ。


    パルジファル。


    出るな、俺が行く。


    むしろ、あんたが出るな。


    何だと。


    邪魔。


    お前…。


    アキラは、あたしに任せて。


    待て。


    嫌だ。


    ナディ。


    …エリス。
    今回は


    銃…


    ……。


    持って、行くんだね。


    …うん。


    …。


    コイユルをお願いね…
ママ。


    …!


    いえっさ、は?


    …いや、聞けない。


    エリス。


    私も、行く。


    絶対に駄目。


    行く。


    駄目。
    あんたにはあんたの、やるべき事があるから。


    いや。


    ……。


    待って、待って、ナディ…。


    …大丈夫、すぐに戻って


    ……。


    て、パルジファル、あんた人の話を、


    アキラは俺の女だ。
    お前こそ、手出しするな。


    は、そう言うならどうしてあんたが!
    初めからアキラを


    愚図ついてる時間は無い。


    あ、こら。


    ナディ。


    …て、エリスも。


    行く。


    …。


    二人で、守るの。


    あたしは


    コイユルも…この子も。


    …。


    …。


    …分かった。
    けど、あたしの後ろにいて。
    絶対に、前に出ないこと。
    良い?


    …。


    約束出来なきゃ、連れて行かない。


    …。


    エリス。


    ……いえっさ。


    …よし。
    じゃあ…








    お前らか、うちの餓鬼を浚った女二人組ってのは。


    買っただけよ。


    買っただぁ?


    女が女を買っちゃいけないなんて、無いでしょ。


    は、ほざくならもっとマシなウソをほざけよ。


    へぇ。
    あんたみたいなマシじゃない野郎に、マシな事を言えって?


    てめぇ!


    そこにいた女は?


    あぁ?!


    女がいたでしょって言ってんの。


    …ナディ、さん。


    ああ、大丈夫そうね。


    ああ、あの黒人の女か!
    死んではいねぇよ、今はな!


    はいはい、そうみたいね。
    ところであの藪医者は?
    あたし達より先に出てきたハズだけど。


    かれ、なら…。


    ちょっとコイツで足を切っただけだからな!
    イモムシみたいに転がって、


    はいはい、吼えない吼えない。
    やかましいから。


    てめぇ!!


    まぁ、無事ならそれで良し。
    で、あんただけど。


    あぁぁ?!


    あの餓鬼をどうするって?


    あぁあ!!


    あーもう、いちいちうるさいなぁ。
    餓鬼よ、餓鬼。
    どうするって?


    ガキ買ったって言うなら!
    金出せ!


    あの子が持ってる。


    有り金全部出せって言ってんだよ!


    冗談。
    あんな病気持ちの餓鬼にそんな金出せるわけないでしょ。
    良い迷惑だわ、外れを引かされた気分よ。


    うるせぇ!!


    …。


    死にたくねぇなら早く出せ!おらぁ!!


    うーん…。


    とっととしろ!!


    …アル中か、ヤク中か、両方かってところか。


    あぁぁ?!


    ところであんた、あの餓鬼の父親?


    は…?!


    全然、似てないけど。


    んなわけねぇだろ!
    誰が、あんなあばずれ女のガキなんざ


    素直で結構。
    じゃ、そのあばずれな母親は?
    来てるの?


    さっきからがたがたうるせぇな!


    あんたの方がうるさい…


    へっへっ。


    …けど。


    そんなに死にてぇなら、殺してやるよ。
    後の女と一緒にな!


    それ、本物?


    てめぇのカラダで確かめろ、ビッチ!


    死にたくないんだけど。


    …ナディ。


    エリス。


    は、なんだ、良い女がいるじゃねぇか!
    殺す前に


    どうして腐った野郎ってのはそういうコトばっかりなんだか。
    ああ、腐ってるからか。


    うるせぇ…!!





    バン…ッ。





    ぐぁ…ッ!


    子供は、いるけど。
    あんたには返さない。


    …んだと、こら!!


    残念。
    銃、そんな手じゃもう握れないし。
    もっとも、そんな震えた手じゃ


    …うぉぉぉぉ!!





    バン、バン…!





    脳みそ、腐ってるのは分かったから。


    …がぁぁぁぁ。


    銃にナイフに。
    薬に酒に女に、賭博。
    そんなのばっかりに金、ばかばか使って。


    ……。


    もう一度言うけど。
    子供は返さない。


    ……。


    じゃ、おしまい。
    さっさと帰りなさい?
    足一本残してあるから…


    殺してやる…!!


    …。


    殺してやる!コロシてやる!!ころして


    …あーもう。
    この手の野郎は本当に…


    ガキ!
    どこだ!!
    さっさと出てこねぇとコロすぞ!!


    …あーあ、始まった。


    あのあばずれ女もコロシてやる!
    ゼッタイ、だ!!!


    …。


    エリス、駄目。


    …。


    …分かるけど、駄目。


    ……。


    そうか、コロされてもいいンだな!!
    親がアバズレだと、ガキもきたねぇメスガキだぜぇ!!
    俺にもアシひらいて、さんざ、よがりやがったもんなぁ!!


    …ッ!


    …最悪。


    ツっこまれて、あんあん、なきやがって!
    メスイヌが…!


    はぁ…。


    …エリス、駄目。


    なぁ、なぁ…あ?!


    エリス、止めなさい。


    …。


    エリス。


    …ゆるせない。


    分かるけど。
    でも、こんなの構っちゃ駄目。


    あ、ああぁ…ッ?!


    エリス、もう良いから。


    …はぁ。


    エリス…躰に、障るから。


    …。


    カラダが、カラダがこおるぅぁぁぁ…ッ!


    エリス、止めて。


    ……。


    …お願いだから。


    ……いえっ、さ。


    あ、あ、あ……。


    …。


    …。


    …はぁ。
    エリス。


    ナディ…。


    出発、今日するよ。


    え。


    いられないでしょ?
    明日まで。


    …。


    こんなに大きな騒ぎにするつもりはなかったんだけど。
    ま、無理な話だったかな。


    …ごめんなさい。


    あたしが大きくしちゃったから、しょーがない。
    つか話、通じなさそうだったし。


    ……ナディ。


    うん。
    アキラ。


    ……。


    ごめんね、アキラ。
    足は大丈夫?


    ……え。


    あたし達は





    待って!





    …。


    子供を、返してよ。
    返しなさいよ…!


    …やっと、出てきたわね。


    あの子はどこ?!
    どこなの?!


    さぁ、どこだが。
    知っててもあんたみたいな女には教えない。


    なんで、なんでよ!


    それ、自分に聞いた方が早いと思うけど。
    やってるのは何?酒?薬?それとも?


    うるさい!


    で、男にはまって子供を売ったとかさ。


    うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!


    ぅ…。


    …大丈夫、エリス。
    あれが母親の全てじゃない。


    …ナディ。


    エフェクティボ!
    どこなの?!


    …。


    いるんでしょ!
    ママよ、ママがきたのよ、エフェクティボ!!


    おかね……。


    …違う、エリス。


    エフェクティボ、ママを、ママをみごろしにするつもりなの!?
    つもりなのね?!


    ナディ…。


    …要は金づるってコトよ。
    ここまで露骨過ぎると吐き気も通り過ぎる。


    コイユルは…。


    どこなの、どこなのよぉぉ…!!


    …あーあ。
    これは駄目だわ。
    完全に男と同じ。


    コイユルのお母さんは…。


    あんたも、わたしを捨てるのね…!
    アイツみたいに、ワタシを…!!


    …。


    だれが、ダレがあんたみたいなゴミ、わざわざうんでやったと思ってるのよ…!!


    お母さんなのに、どうして…どうして…。


    …と。
    エリス、あんたはもうここにいない方が良い。
    中に入ってコイユルを…。


    …いや。


    あれはあたしがなんとかするから。


    いや。


    エリス。


    …あの人は、あの人がコイユルのお母さんなんでしょ。


    ま、産んだとは言ってるけどね。
    それだけよ、今は。


    ……。


    …あんたがそんな顔、しなくて良いの。


    だって…。


    …。


    だって、コイユルは…





    ……
ママ。





    …!


    …。


    あ…あ、あ、あぁぁ。


    
マ、マ…。


    あんた、あんたは…。


    
ママ、ママ、ママ…!


    あぁぁぁ、やぁぁっと見つけたわぁぁ。


    だめ、コイユル!


    待って、エリス。


    でも…!


    …エリス。


    でも、でもナディ…!


    母親が来ていたなら。
    なんとなく、こうなるとは思ってたから。


    え…。


    だから少し待って、エリス。


    ……。


    …大丈夫。
    あんたが思ってるようなこと、あたしがさせないから。
    絶対に。


    ……ナディ。


    
ママ、ごめんなさい…。


    ああ、いままでどこにいってたのよ、エフェクティボ…。


    
ちがうよ、ママ…わたしは、コイユルだよ…。
    タタが…



    ずぅっと、ずぅっと、まってたのよ。


    …ごめんなさい。
    でもママ、わたしは…



    ……。


    
マ…あ。


    まぁだ、そんなわけのわかンないコトバしゃべってンのねぇ!!!


    あ、あ……。


    しゃべっちゃダメだってなんど言わせンのよ、このガキはぁ!!


    ご、ごめんなさい、ごめんな…あ。


    あんたは!
    あんたはぁ!!


    
ごめんなさい、ママ、ごめんなさい…だか、ら、ぶたな…


    あんたはどうしていつもぉぉ!!!


    ごめんなさい、ママ、ごめんなさい…。


    ママをこまらせてばかりなのよ…!!


    ママ……ママぁ…。


    そうやって!
    あんたのカオみてると、イライラすんのよ!!
    どうしてわかンないのよ、あんたはぁ!!


    あ、あ、あ、あ……。


    あんたなんか、あんたなんかシねばいいのよ!!


    ……。


    あんたみたいなゴミ、ママはぁ…!!


    はい、そこまで。


    …はなしなさいよ。
    はなしなさいよぉ!!


    離すわけ、無いでしょ。


    ごめんなさい……ごめんなさい…ママ…。
    だから、だから、きらいにならないで…。



    だいっきらいよ、あんたなんか!
    だからあんたなんか、とっととくたばっちまえばいいのよ…!!


    エリス、コイユルを。


    うん…!


    ……ならない、で。
    ならないで…。


    コイユル、もう大丈夫…もう大丈夫だよ。


    うう…うぅぅ…。


    待ちなさいよ、まちなさいよぉぉ!!!
    それはわたしの…


    あんたが少し、待てば?


    だまれ、だまれだまれだまれだまれぇ…あが!


    あんたが黙れ。


    ぅあー、ああぅあーー。


    黙らないと。
    口ん中に突っ込んだまま撃つわよ。


    あぁぁぁ…。


    汚れるから、嫌なんだけど。


    うぅぅぅぅぅ…ッ。


    …て、言って分かるくらいなら、


    ぅぅぅゥゥ…ッ!!!


    苦労はしない、


    …がッ。


    か。


    ……ッ、……っ。


    で?
    もっと痛い目に遭いたい?
    今度は腹では済まさないけど。


    ……ッ…っ。


    ま、殺しはしないけどね。
    よ、と。


    …はぁ…がはッ…はぁ、はぁ…。


    あんたにはもう、子供はいない。
    あたし達が買ったから。
    金が欲しいならくれてやるわよ。


    ………。


    おーおー、人を犯罪者のような目で見てくれて。
    でも。


    う…あ…。


    …あたしに関しては間違っちゃいないかもね、それ。


    ………。


    ま、あんたみたいな駄目親に思われるのは癪だけど。


    ……な、さいよ。


    嫌だ。


    かえして、かえしてェ、かえしてよォ!


    だから、嫌だって。


    あれはわたしの


    子供?
    それとも金を持ってくるゴミ?


    エフェクティボ、エフェクティボ…!!


    …自分の子供の名前くらい!


    が…。


    ちゃんと、思い出しなさいよ!


    ………。


    あ。


    ……。


    あーあ…どうするかなぁ。


    ……ナディ、さん。


    あ。


    ……。


    ごめん、忘れてた。


    そのひとは…。


    まぁ、聞いてたとおりかな。


    …。


    さて、どうするかな…。





    ナディ。





    …て、どこに行ってたのよ、あんた。
    アキラが


    お前達が出てくれば十分に気が逸れる。


    は。
    何それ…


    …。


    …。


    …て、誰こいつら。


    片付けさせる。


    片付けぇ?


    殺してはいないようだな。


    まぁ、ね。


    …旦那。


    …どうするんで。


    放り投げて来い。


    …。


    …。


    …ま、良いけど。


    待って。


    …。


    エリス…コイユル。


    …。


    コイユル、あんたの


    ナディ。


    ……しょーがないなぁ。


    
……ママ。


    ……。


    
ママ…。


    …あんたが選びなさい。


    ……。


    あたし達と行くか…ママと残るか。
    それとも…。


    ……。


    …コイユル。


    ……。


    …ま、こんなのでも親だって事なのかね。


    …。


    …エリス、そんな顔しない。


    ナディ…


    …うん。


    …ナディ…ナディ…。


    よしよし。


    ……。


    で、どうする?
    あたし達は…


    …いく。


    ……。


    ……。


    …もう、わたしは、いないから。


    ……。


    ……。


    もう、ママのなか、わたし、いないから……だから。


    …そ。








    ...siete