いつものとおり、立ち寄った町で。
    いつものように、補給をしてる時。
    私は“それ”を知った。








    これ、と…これ。


    …。


    あと、これも必要かなぁ。


    …。


    ねぇ、エリス。
    エリス、は…?


    …。


    エリス。


    …なに?


    芋の缶詰、いる?


    うん、いる。


    よし。
    じゃあ、こっちは?


    とうもころし?


    そう、とうもころし。


    いつもかってるよ?


    まぁ、そうなんだけど。


    トマトは?


    いる?


    ナディのつくったトマトのスープ、すきだから。


    ほんと好きよね、あれ。
    そんなに好き?


    うん、すき。


    そっか。
    じゃ、これも足し。


    いつもどおり?


    たまには違ったのがいいかな、と思ったんだけど。


    たとえば?


    …これ、とか?


    …。


    あんたが作れば問題ないじゃない?


    …ナディが作るといつものびてる。


    仕方ないでしょ、それがあたしにとって普通だったんだもん。
    寧ろ、あの固さには吃驚したわ。


    …ふつうだとおもう。


    だから、あんたが作れば問題なし。


    わたし?


    あんたが茹でればとてもおいしい麺の出来上がり。


    ナディのトマトスープにいれるともっとおいしい?


    うん、すごくおいしい。


    すき?


    うん、好き。
    エリスは意外と料理がうまいと思うのよね。


    …いがい?


    一人の時じゃあんなにおいしいごはん、お金出さなきゃ食べられませんでした。


    そうだね。


    トマトのスープ、好きなくせに。


    あとソーセージもすきだよ。
    こげてなければ。


    …。


    ぶきよう?


    やかましい。
    で、どうする?
    こんなあたしの為に作ってくれる?


    しかたないから、つくってあげる。


    この、人が下手に出ればー。


    えへへ。


    まったく。
    あとは豆と、にんにくは…まだあったかな。


    ……。


    エリス、それも買う?


    …え?


    それ。
    今、見てるの。


    ……。


    さっきから真面目な顔して見てるから。


    …。


    あんたが新聞を読むなんて、ね。
    なになに、なんか面白い記事でも載ってた?


    …うん。


    どれどれ。


    あ。


    ん、ネズミ?
    あんた、ネズミ好きだったっけ?


    やっぱりおもしろくない。


    わ、なに。


    …。


    エリス、何よいきなり。

 
    もう、いいの。


    何よ、それ。


    なんでもない。


    なんでもない、て。


    なんでもないの。


    …。


    …。


    …ま、いいけど。
    それ、買わなくてもいいの?


    …。


    どうせだから買ってあげる。
    新聞に興味を持つのはいい事だと思うし。
    …毎日は無理だけど。


    ……。


    どうする?


    …いい。


    …。


    いらない。


    そっか。
    んじゃ、いいや。


    …。


    じゃ、あとは会計を済ませて、と。


    …。


    ねぇ、エリスー。


    …なぁに。


    あたしに見られたらまずい記事とか、載ってた?


    ……。


    なんて、ね。
    そんなの、ないと思うけ


    ないよ。


    …ん?


    ないの。


    ……まぁ、いいけど。
    会計してくるけど、来る?


    うん、いく。


    じゃ、おいで。


    いえっさ。








    あー、ひっさびさのあったかいシャワー気持ちよかったぁ。


    …。


    ね、エリス。
    あったかいシャワーはやっぱり…?


    …。


    エリス?


    …。


    どしたの?


    …。


    窓の外に何かあんの?


    …。


    んん…別に何もない、わね。


    ……ナディ。


    疲れた?


    …。


    …?


    はやかったね。


    え?


    シャワー。


    そうかな。
    いつもどおり、寧ろ、久々だったからゆっくりだったと思うけど。


    そっか。
    よかったね。


    …。


    もう、ねる?


    ねぇ、エリスさ。


    …?
    なぁに?


    なんかあった?


    なんかってなに?


    聞いてるのはあたし。


    …。


    なーんか、いつもと違うような気がするんだけど。


    おなじだよ?


    そうかなぁ。


    エリスはエリスだよ。


    そりゃそうだ。


    だから、いつもとおなじ。


    あたしが言っているのは。


    ……。


    様子がいつもと違うってこと。


    ……。


    どした?
    疲れてるだけならいいんだけど…。


    …いいんだけど?


    もし、何かあるんなら…


    …なにかってなに。


    ……。


    ……。


    …エリス。


    なぁに?


    具合でも悪い?


    ううん。


    …。


    なに…?


    …。


    …ナディ、なにしてるの?


    ……少し、熱い。


    …。


    少し熱がある。


    …ねつ?


    風邪でもひいたのかもしれない。


    …ひいてないよ。


    寒くはない?


    うん、へいき。


    …。


    …?


    …疲れ、かな。


    ……。


    なんにせよ、もう寝ないと。
    風邪でもなんでも疲れはよくない。
    治るもんも治らない。


    …。


    さ、ベッドに入って。


    …まだねむくない。


    だーめ。


    …。


    眠くなくても寝る。


    …ねむくないのに。


    エリス。


    ……ナディは?


    あたし?


    ナディもねるの?


    あたしは…


    …ナディがねるならねる。


    …。


    …ナディがねないなら、ねない。


    ……。


    ……。


    …手入れ、しようと思ったんだけど。


    …じゃあ、ねるまでまってる。


    …。


    …。


    …仕方ないなぁ。


    …。


    あたしも寝るから、あんたも寝る。
    いい?


    …いっしょならいいよ。


    ……。


    …。


    …風邪、だったら。
    別々の方がいいんだけどなぁ。


    …。


    仕方ない。


    …。


    でもちゃんと寝ること。
    いい?


    うん、いいよ。


    よし。
    んじゃ、入った入った。


    …。


    ほら。


    …ナディ。


    ん、なに。


    …だいて。


    ……は?


    …。


    エリス、今なんて…。


    …。


    エ、エリス…。


    …だきしめてほしかっただけ。


    抱き締め…。


    …。


    …あ、ああ。
    な、なんだ。


    …。


    エリスはお子ちゃまだからなぁ、うん。


    ……もう、ちがうよ。


    え?


    はやく、ナディ。


    え、なにを…。


    ねるんでしょ?


    あ、ああ、そうそう。
    寝よ寝よ。


    …。


    ちょっと狭いかなぁ。


    …これでいいよ。


    …。


    …。


    …え、と。
    電気、電気…と。


    …。


    …よし。
    さぁ、おやすみエリ


    …。


    ……。


    …。


    ……エリス。


    …ナディ。


    ……。


    だきしめて。


    ……うん。


    ……。


    ……これでいい?


    ん…。


    …。


    ……おやすみなさい、ナディ。


    うん、おやすみ…エリス。


    ……。








    …んん。


    ……。


    んー……。


    ……。


    …エリス、おきろー。


    …。


    エリスー。


    …。


    …ま、もう少し時間あるし。
    寝かしておこうかね。


    …。


    起こさないように……と。
    んーーーーーー……。


    ……。


    誰かがしがみついてくれたおかげで狭かったけど。
    まぁ車よりは、ね。


    ……。


    …よく寝てる。


    …。


    熱は……まぁ、大丈夫かな。


    ん…。


    ふふ、かわいい。
    こうしてると本当に子供みたいね、この子。


    ……。


    さぁて。
    お寝坊の子が起きるまで、昨日出来なかった手入れでもしよっかな。


    ……ナ、ディ。


    ん?


    ……。


    …起きた?


    …。


    まだ眠い?


    ……い。


    もう少しなら寝ててもいいわよ。


    …、い。


    ん、なに?


    …。


    ……エリス?


    …いたい。


    え、どこが?


    う、ぅぅ…。


    ちょ、ちょっとエリス、大丈夫?


    …。


    エリス、どこが痛いの?
    頭?おなか?それとも


    …おな、か。


    お腹…もしかして冷やした?


    …。


    …風邪?


    いたいよ…。


    あ。


    …いたい、いたいよ。


    エリス…!


    いたい…いたい…いたい…。


    …医者、医者に連れて行かないと!


    ……。


    エリス、立て…ううん!


    ……ディ。


    掴まれないかもしれないけど…。


    ……。


    布団、めくるわよ。
    いい?


    …、がう。


    え、やだ?


    …。


    でもそんな事言ってる場合じゃ…


    ちが、う。


    …違う?
    て、お腹が痛いんじゃないの?


    …。


    エリス?


    …いたい。


    ……だったら


    …ちが、よ…ナディ。


    ……。


    ちがう、の…。


    …めくるよ、エリス。
    抱えてでも連れて行くか……


    ……。


    ……。


    …く、ぅ。


    ……て、あんた。


    ……。


    いや、てか、なんで言わないのよ…。


    ……だ、て。


    …初めてじゃないんでしょうに。


    …。


    とりあえず…


    ……。


    …勝手に脱がすわけにもいかないし。
    エリス、動け


    …。


    …ない、わよね。
    え、と…どうしよう。


    …て。


    ……。


    して…。


    ……いや、でも。


    …いいから。


    ……。


    ナディ…。


    ……ええい、仕方ない。


    …。


    …下着、は。
    やっぱ替えないとだめよね…。


    …。


    …痛い?


    ん…。


    マテ茶がまだ残ってたはず…。


    …。


    ……敷布、どうするかな。


    …。


    …ま、いいや。
    今はそれよりもエリス、エリス…。


    …。


    ……ちょっとごめん。


    …。


    ……。


    ……ナディ?


    あ、や、なんでもない。
    え、と…。


    …。


    これは…ちょっとひどいかな。


    ……。


    ……それから。


    …ぁ。


    …!


    ……。


    ……はぁ。
    なんでもない、なんでもない…。


    …。


    ……分からないけど。
    まぁ、こんな…で。


    ……。


    あとは……。


    ……。



    ……よし。
    終わったよ、エリス。


    ……うん。


    えと。
    痛い、よね?


    …。


    ……うーん。


    ナディ…。


    …うん?


    て…。


    …て?


    さわって…。


    …。


    おなか……。


    …うん、分かった。


    ……。








    …。


    …。


    …少し、落ち着いた?


    ……すこし、いたい。


    …。


    …。


    …エリス、さ。


    …。


    今度はもう少し早く言ってほしいかな、て。


    …。


    あ、いや、別に言わなくてもいいんだけど。
    わざわざ知らせるもんでもないし…でも、今回みたいな事があったら大変だ、し…。


    …。


    ちゃんと自分で対処してくれれば、それで。
    あ、でもお腹が痛い時は言って欲しいかな。


    …たいしょ。


    初めてじゃないんでしょ?


    …ねぇ、ナディ。


    うん?


    どうしてちがでるの。


    …はい?


    どうして?


    いや、どうしてって。
    それは…て、ん?


    ん…?


    ちょっと、待った。


    …。


    エリス、あんたもしかして。


    …。


    ……初めて、なの?


    うん。


    いやでも…ええ?


    …。


    そういやあんたっていくつだっけ…?


    …ひとつ?


    歳。


    とし…?


    生まれて何年ってこと。


    …つくられてから?


    生まれてから。


    ……しらない。


    …。


    …。


    ……ま、それはいいとして。


    …いいの?


    …確かに。
    今までそんな素振り…と言うか、全然なかった!


    …。


    ……気付かないあたしもあたしだ。
    ずっと一緒にいるくせに.…。


    ナディ。


    …なに。


    どうして?


    本当に知らないの?


    …うん。


    …。


    …。


    …どこから説明したもんかな。


    …。


    えーとまぁ、なんだ。
    女だからよ。


    おんなだとなるの?


    そう。


    ナディも?


    そう、あたしも。


    あらくれものでも?


    関係ない、つかこら。


    …えへへ。


    とにかく、一ヶ月前後ぐらいの周期でなるの。


    どうしてなるの?


    …。


    ナディ?


    あんたは本を読んでるからそれくらい、知ってると思ってた。


    …。


    とても簡単に言えば子供を作るため。


    …こども。


    そう。


    …なると、できるの?


    まぁね。


    …そっか。


    まぁ本当に作るとなれば相手が必要だけど。


    …あいて。


    男。


    ……。


    …どうやって、なんて言わないでよ。


    …。


    …。


    ……ナディ。


    ん。


    おとこのひとじゃなきゃ、だめなの?


    …まぁ、ね。


    そう、なんだ…。


    …本に書いてなかった?


    ……。


    …て、何聞いてたんだ、あたし。


    …。


    エリス…?


    …あかちゃん、できるんだ。


    …。


    わたしでも…。


    …当たり前でしょ。
    人間なんだから。


    ……うん。


    …。


    …。


    …欲しいの?


    ……。


    …まぁ、欲しいのなら先ずは相手を探さないとね。


    だめなの?


    え?


    ナディじゃだめなの?


    あ、あたし…?


    ナディがいい。


    いや、と言うかなんでそこであたしが…。


    …だめなの?


    …。


    ナディ。


    だめと言うか…あたしは女だから。
    無理なのよ…どうやっても。


    ……。


    もしも、エリスが本当に子供が欲しいのなら。
    ちゃんとした人を探して、それで…


    ナディ。


    …なに。


    いらないよ。


    …。


    …ナディのじゃないなら、いらない。


    あたしのじゃない、なら……。


    ……ナディは。


    ん、なに…?


    ナディはほしい?


    …。


    ほしい…?


    あたしは……。


    …。


    …。


    …ナディ。


    別に、いらない。


    …。


    …エリスが、いるし。


    …。


    ほら、エリスはお子ちゃまだし?


    …もう、ちがうよ。


    え…。


    もう、ちがうの。


    …。


    …だから。


    ……エリス。


    …。


    …。


    …もしも、……なら。


    …?
    エリス?


    キス。


    …キス?


    しても、いい…?


    …おなか、痛いんでしょ。


    すこし…。


    …。


    …いい?


    痛いくせに…。


    …したい。


    …。


    ナディ…ん。


    ……すれば、いい。


    …。


    エリス…。


    ……いえっさ。





    ・





    多分、似たり寄ったりだったと思うわよ。


    …は?


    貴女と。


    ………。


    言ってなかったかしら?


    …聞いてない。


    そう。


    どういう事よ。


    計算すると、それくらいになるって事。


    …。


    確か、シュナイダー博士の元には十年ほどいた筈よ。


    …十年。


    渋い顔。


    …うるせ。
    で?


    博士が殺された年に賞金首にされて外に放り投げられた。


    …で、あたしと逢った。


    私に雇われて、ね。


    どうでもいい。


    ある意味、恩人よね。


    は。
    で、預けられた頃のエリスはどれくらいだったの。


    さぁ、詳しくは。


    …


    詳しくはローゼンバーグが知っていたと思うけど。


    ……。


    凄い顔。


    あいつの名前は今聞いても腹が立つ。


    エリス絡みだから余計なのよね。


    …で、大よそぐらいは分かんないの。


    そうね…大体、五歳から七歳くらいだったって話は少し聞いたけれど。


    五歳から、七歳…。


    つまりはそう言う事よ。


    …。


    そう言えば貴女は見た事があるのよね。
    あの子が創られた場所で…


    写真はもっと小さかったと思う。


    …となると。
    預けられた時は七歳ぐらいだったかもしれないわね。


    …なんでよ。


    造られた命が普通のそれよりも、小さいとしたら?


    …。


    …まぁ、あくまでも仮定に過ぎないのだけれどね。


    ……思い出しただけでも反吐が出る。


    でしょうね。


    …。


    でもあの子に普通の人間の年齢が当て嵌まるかどうか、分からないわ。


    …何が言いたいの。


    創られた存在、魔女。


    …。


    若しかしたら創られる過程で時間を短縮する為に


    あの子は人間だから。


    ……。


    もう、いい。
    大体分かった。


    …。


    同い年、同い年…か。
    ぴんと来ないなぁ。


    …ま、下に見えるわよね。
    貴女にしてみたら。


    …なーんか、引っ掛かる言い方ね。


    でも私から見れば同じ歳でもおかしくないと思うわよ。


    …上から目線かよ。


    まぁ、年上だし。


    そういうの、むかつく。


    別に上から目線で見てるわけじゃないわよ。
    貴女が勝手にそういう風に見てるだけ。


    ……。


    けれど突然、何?
    今更エリスの年齢の事なんて。


    別に。
    なんとなく気になったから。


    何となく、のわりには。
    予め準備されていた問いのように思えたけれど。


    別に、そんなんじゃないわよ。


    今更、歳なんて関係ないでしょう?


    ないわよ。


    …まぁ、確かに。
    自分よりずっと下だったら手が出し辛いかも知れないけれど。


    …なんか言った?


    いいえ?


    ……。


    …何も無かったようには見えないわね。
    どう見ても。


    ないものは、ない。


    …。


    仕事、行ってくる。
    エリスも頑張ってると思うし。


    ええ、頑張ってるわよ。
    あの子はいつだって貴女の為に。


    …。


    嘘は吐いて無いと思うわよ。


    …分かってる。


    けれど。
    私はつくづく、貴女達と縁があるのね。


    …。


    ま、うちとしては貴女達みたいな助っ人がいてくれると助かるけど。


    じゃあ取り分、増やしてくれてもいいと思う。


    キャリアが上がれば、ね。


    キャリアぁ?


    そう、キャリア。


    実力が大事でしょ。


    だから、少しは多めにしてあるわよ。


    あれで?


    そう、あれで。


    …もう、いい。


    一人の時よりは良いでしょう?


    あ?


    二人、だから。


    ……ふん。


    じゃ、せいぜい頑張って。


    言われなくても。








    彼女には幼さが、言葉や仕草の拙さも手伝って、多分に残っていた。
    だけど、今にして思えばそれらだけじゃなかったのだ。
    そう、その躰も。








    …。


    …ナディ?


    ん…。


    …どうしたの?


    別にどうもしないよ。


    …でも。


    しないから…。


    …ん。


    …。


    ナディ……。


    ん…。


    ……わたしのことだけ、おもって。
    ほかのことなんて…ん。


    …わかってる。


    …。


    エリス以外、いらないから…。


    …うれしい。


    …。


    は、ぁ…。


    ……。


    ナディ…。


    ……まだ。


    …?
    なに…


    ……。


    ナディ…あ。


    ……。


    まって、ナディ…。


    …どうして?


    だって、まだ…。


    …まだ、なに?


    ……。


    ちゃんと言わないと…。


    …ッ、あ…ッ。


    ……ほら、エリス。


    ナ、ディ…。


    …泣いても、だめ。


    ないてな、い……。


    …。


    ないてないよ…。


    …痛いくせに。


    く、ぅ…あああ…ッ。


    ……。


    …ナディ…、ナディッ!


    言って。


    あ…はぁ、ぅ…。


    …痛いって、言って。
    そしたら…。


    …いたく、ない。


    …。


    いたくない、よ…。


    止めたくせに。


    でも、いたくない…から。


    ……うそつき。


    だから、もっ……あぁぁぁぁ!!!


    …。


    あ、う、うぅぅ…ぁぁ。


    …ばか。


    ……。


    ばか。


    ……ナ、ディ。


    …ばかだから。


    …。


    簡単に付け上がる…なんでも許されると思って、すぐ…。


    …いいよ。


    ……。


    いいの…。


    …そんな、の。


    ナディだから…。


    ……だか、ら。


    すき…。


    …う。


    いたみすらも、いとしい…。


    ……ばか。


    いっしょ…。


    ……。


    ……なかよしふうふだから。


    ……あぁぁ。


    …。


    …。


    ……はやく。


    …。


    うごい、て…。


    …。


    ねぇ、はやく…。


    ……。


    ……こわして。


    …ッ!


    はやく…はや、く…。


    ……、い。


    あ、ぁぁぁ…。


    ……言われなくても。
    あたしが、あたしがエリスを…ッ!!


    あっ……ッ、ふ、ぁぁぁ…ッ!


    エリスは、あたしだけの……ッ!


    ナ、ディ…ッ、ナディ…ッ…!


    ……はぁ。


    あ、ああっ、ナディ、ナディィ…ッ!


    …。


    ……し、ぃ。


    …。


    も、と…ッ、……、が…!


    …エリス。


    …し…ほ…しぃ……ぉッ!


    エリスっ、エリス…ゥッ!!


    ふ、あぁ…ぁぁあぁぁ…ッ!


    すき、ねぇすきなの…ッ!
    ねぇ…ッ!


    し、ってる、しってるよ、ナディ…ッ!


    エリス、エリス、エリス……ッ!


    ……か、らッ!


    うぅぅ…ぅぅぅ…。


    あな…、の……ぁああッ!!


    ……エ、リ…。


    ナディ…ッ、ナディ、ナディぃ……ああぁぁぁあぁぁあぁ
…ッ!!!








    …。


    ……ん。


    …。


    ナディ…。


    ……。


    …どうしてそんなところにいるの?


    …。


    ねぇ、ナディ…。


    …ごめん、エリス。


    …。


    …。


    …はやく、もどってきて。


    …。


    おねがい、ナディ…。


    …。


    ナ…。


    …さびしい?


    …。


    言って。


    …さびしいよ、ナディ。
    だから…。


    …。


    ……おかえりなさい。


    …ただいま。


    ……。


    …ん。


    …やっぱり、ふたりがいい。


    …。


    ね…?


    …うん。


    えへへ…。


    …ふふ。


    …。


    …ねぇ、エリス。


    なぁに…。


    ……いや、やっぱりなんでもない。


    いって…?


    …。


    …ちゃんと、ききたい。


    ……あの、さ。


    ん…。


    ……。


    ……。


    ……。


    ……ナディ。


    だから、その…んッ?


    ……。


    エ、エリス、どこさわって…。


    …ナディがいつもさわってくれるところ。


    そ、そうじゃなくて…。


    …ちがうの?


    ち、ちがわないけど…ああ、待った待った!


    ……まつの?


    …。


    …かお、まっかだね。


    ……あんたがいきなりだから。


    いきなりじゃなくてもなるよ?


    ……。


    ナディ…。


    …エリ、ス。


    ……。


    …?


    ……わたしには、ない。


    え、なにが…?


    …これ。


    い…ッ


    ……どうして?


    て、てか…ッ。


    ……ナディといっしょじゃない。


    や、つか、…えぇ。


    ……。


    と、とりあえず離して…お願いだから。


    …。


    エリス。


    …いえっさ。


    ……あぁ、もう。


    ねぇ、ナディ。
    わたしには


    それ以上は言わんでいい。


    …。


    いいから。


    ……いえっさ。


    …あのね、エリス。


    ほんにかいてあったの。


    …え?


    ……おとなになると、て。


    ……。


    …。


    ……そんなの。


    …?


    個人差ってのがあるのよ。


    …こじんさ。


    そう。


    ……。


    大体…生理はもう、あるんだから。
    そんなのだっていつか…。


    …。


    …だから、気にしなくていいの。


    …でも。


    …。


    …ナディはきにしてる。


    え…。


    ……。


    あ、あたしは別に…。


    ……わたしが、いつまでたっても“こども”のようだから。


    そ、そんなことは…。


    ……ごめんね、ナディ。


    …!


    ごめんなさい…。


    …エリス。


    あ…。


    ……ごめん。


    …きにしてる?


    …。


    してる…?


    ……すこ、し。


    …。


    で、でも…。


    …ナディは、すなお。


    …。


    ……そんなところも、だいすき。


    …。


    …。


    …エリス、さ。


    うん…。


    ……こども、欲しい?


    …。


    …。


    …ナディのじゃないならいらないっていったよ。


    …。


    ほしくない。


    ……ありがとう。


    なんでありがとうなの?


    …。


    ナディ?


    ……だって。


    だって?


    ……嬉しいから。


    …。


    …。


    …うれしいとありがとうなんだ。


    ……うん。


    ありがとう、ナディ。


    …なんでありがとうなの。


    わたしもうれしいから。


    …。


    …おんなじ、だから。


    ……そっか。


    …。


    …エリス、さ。


    …。


    そんなに、焦らないでいいから…。


    あせる…?


    だから、その…。


    …でもはやくなりたい。


    …。


    ナディがきにしないでいいように。


    ……エリス。


    はやく…なれたらいいのに。


    …。


    …。


    …エリ


    ナディ。


    …?


    して、いい?


    …なにを?


    つづき。


    ……はい?


    だめ?


    ……。


    したい。


    わ…。


    いいよね?


    や、ま、待った、待って。


    まてない。


    ちょ、エリ…え、ええ。


    …だいすき。








    ……。


    …。


    ………あぁぁぁぁ。


    ナディはかわいい。


    うっるっせ。


    ほめてるのに。


    …いいから。


    ほめてるのに?


    褒められてる気がしない。


    ほめてるのに。


    いいって言ってる。


    いまは?


    …いまは?


    さっきまでは


    聞きたくない、なんとなく聞きたくない。


    …さっきまでは。


    ほんともういいから、やめて、ほんとやめて。


    あんなにせっきょくてきだったのにね?


    だーかーら!


    ひゃ?


    たく、この口は!


    …にゃー。


    にゃー、じゃないから!
    あーもう、このふにふにがいっそ憎たらしい!


    ……。


    …面白がってるでしょ、あんた。


    …?


    じゃなきゃ、


    …ナディはほめられるの、いやなの?


    いや、だから…。


    …わたしはうれしいよ?


    …。


    だって…あいされてるってわかるから。


    ………。


    ナディ…?


    ……もう、寝る。


    ねるの?


    寝る。


    …もう、おしまい?


    ……。


    おしまい?


    …どんだけするつもりなの。


    もっとたべてもいいのに。


    どんだけ食らわす気だ。


    おきのすむまで?


    …。


    …ん?


    …もう寝ないと明日が辛くなる。
    分かった?


    たいりょくはあっても?


    そう、あっても。
    …て、おい。


    きはすまなくても?


    寧ろ、あんたはどこまでやれば気が済むの。


    …。


    どうなのよ。


    きっと、すまないとおもう。


    …おい。


    でも。


    …でも、なによ。


    ……じかんはあるから。


    ……。


    あるよね?


    …うん、まぁ。


    だからきょうはおしまい。


    …こいつは。


    えへへ。


    ……。


    ん?


    ……もう、いいや。
    ねよ、エリス…。


    …。


    ……。


    …ねむい?


    すこし、ね…。


    ……。


    ……。


    ……ナディ。


    …そだ。
    おやすみ…。


    …。


    ……おでこじゃ、不満?


    ううん…。


    ……なら、よし。


    ……。


    ふぁ…。


    ……ねぇ、ナディ。


    んー…。


    もうすこし、おはなししたい。


    …おはなし?


    うん…。


    …んー。


    だめ?


    …仕方ないなぁ。
    でも途中で寝ちゃってもむくれないでよね…?


    うん。


    …で、なに?


    どうして、あかちゃんってできるの?


    ………あ?


    どうしてセックスするとできるの?


    ぐ…ッ


    …?


    …げほッ、げほ…ッ。


    …むせた?


    つか、いきな…ごほッ、な…げほッ。


    だいじょうぶ?


    だ…ごほっごほっ。


    …ナディ。


    …………あー。


    …。


    …エリス。


    …。


    …いきなり何を言い出すの、あんたは。


    …。


    つか、なんでこのタイミングで…。


    …。


    ……てか、さ。


    …うん。


    知ってるんじゃなかったの…?


    …。


    それなのに…。


    …おとこのひととおんなのひとがセックスするとあかちゃんができるのはしってるよ。


    ……う、わ。


    でもどうしてセックスするとできるの?


    …。


    わたしたちもセックスしてるのに、む。


    エリス。


    ……ナディ?


    そう、何度も耳元で言うな。


    …あかちゃん?


    じゃなくて!


    ……?


    だ、だから、その……セ、セ


    セックス?


    ……。


    ……してるのに?


    エリス!


    …。


    ……。


    …はずかしい?


    …。


    ナディ。


    …それも、あるけど。
    こういう状態で、あんたの口からそういう言葉が出てくると


    エリスがこどものようだから?


    …じゃなくて!


    あ。


    ……変な気分になってくる。


    へんな…?


    ……。


    ん、ん…。


    ……だから。


    ……おしまいじゃなかったの?


    エリスのせい…。


    ……たんじゅん?


    どうせ、単純だから…。


    …ふ。


    ………エリ


    でも、だめ。


    ………さっきは、


    おはなしするの。


    ……話よりも、


    だめ。


    ………。


    でも…


    …ん。


    …おはなしすんだら。
    いいよ…?


    あ、ぅ…。


    …じゃないと、だめ。


    ……なんじゃそりゃあぁ。


    まて。


    …犬か、あたしは。


    あかいわんこ?


    ……あぁぁ。


    うでまくら。


    …どうしても、だめ?


    いまは、だめ。


    ………。


    はやく?


    ……いえっさ。


    …。


    ……で?


    ナディはわかいね?


    うっせ!
    そんなコト言うと聞かないわよ。


    …やだ。


    う…。


    ……。


    だ、だから、そーいうコトをするな…。


    ね、どうしてできるの?


    ……。


    セックスすると。


    ……あんた、さぁ。


    うん。


    どこまで知ってて、どこから知らないの。


    どこまで?


    …知識、あると思ったら。
    どっか抜けてたりして。


    …。


    …ああもう、暫く恋愛小説禁止にしようかな。
    じゃないとあたしの心臓が


    ナディ。


    …あー?


    ナディもしらないの?


    ……。


    しらない?


    ……あー、エリス。


    ん。


    そ、そもそも生理がなんで起こるかと言うとね…。


    …?
    せいり…?


    何も躰の中から血を出すだけじゃないの。


    …。


    卵。


    …たまご?


    を、赤ちゃんとして育てる為に躰が準備をするの。


    …。


    …で。
    その卵が赤ちゃんにならなかった時に、その準備してたものは躰の外に出てしまうの。
    それが生理。


    …なんで?


    そういうもんなの。


    …そういうもの、なんだ。


    で。


    …。


    男と女の、その、セ、セ……
、は。


    …こえ、ちいさくなった。


    き、聞こえてるでしょ。


    …。


    …つか、わざとじゃないわよね?


    わざと?


    本当は知ってるのに…


    ……。


    …て。
    エリス、本当だったら


    しらないからきいたの。


    ……。


    …。


    …あーもう分かった。
    分かったわよ、もう。


    ……。


    …女には卵を生む機能がある。
    で、男には…その卵を子供にする為の種を作る機能があるの。


    たね…。


    だけど躰の外では…基本、卵と種は出逢わない。
    だから…。


    …セックス。


    ………どうするかは、知ってるでしょ。


    …。


    ……分かった?


    ……たね。


    ……。


    たまごじゃ、だめなの?


    …へ。


    たまごとたまごじゃ、だめなの?


    …だから女同士だと子供が出来ないの。


    ……。


    …出来たとしても。
    そもそも、どうやって中に…。


    …。


    …え、と。
    もう、いい…?


    ……。


    エリス…?


    ……。


    も、もしかして、ねむくなっ


    ナディ。


    わ…。


    …もう、がまんしないでいいよ。


    が、我慢って…。


    ……したくなっちゃったの。


    ……ッ!!


    ナディ…。


    ……。


    …あした、つらくなるかもしれないけど。


    そーいうこと、いうな。


    …ナディがいったんだよ?


    もう忘れた。


    …。


    …つらくなったら。
    あんたのせい。


    …わすれてな、ん。





    ・





    …。


    つぅかさぁ。


    …。


    もし、リリオに聞かれたらどうすんの?


    …。


    聞かれないとは限らないじゃないねぇ?


    …ナディ。


    あー?


    酒は止めたのではなかったのか。


    あー止めた、止めたわねー。
    嫌われるの、やだからねー。


    …。


    けど、さぁ。
    人間、飲みたい時ってあるじゃないねぇ?


    エリスは知ってるのか。


    エリスなら寝てる、はず。


    …黙ってきたのか。


    だって寝てる子は起こすなって昔から言うしー。


    …いいのか。


    だいじょーぶ、だいじょーぶ。
    適当なトコで帰るからー。


    何かあったのか。


    あると言えばあるし、ないと言えばないかなー。
    夫婦だか、恋人だか、なんでもそうだけど、まぁ、そんなもんじゃない?
    どんなに仲良しでも。


    ……。


    あー、けど…。


    …。


    ……あーーーーー。


    …あったんだな。


    ねぇ、リカルド。
    どうしよう。


    何がだ。


    エリスがさぁ。
    あれでこれで、しかも、あたしの…


    …。


    …つか、リカルドさぁ。


    …なんだ。


    リリオがもし、子供ってどう出来るのか聞いてきたらあんた、どう答えるー?


    ……。


    だってねぇ、お約束じゃない?
    そういうのって。


    聞かれた事は、無い。


    もしも、の話よ。
    もしも、の。


    …。


    あ、そっか。
    分かった、うん。


    …?


    本。
    あれでねぇ、仕入れられるとねぇ、結構、厄介よー?
    中途半端、と言うか、なんて言うか、ねぇ。


    ……。


    …あ、カラになっちゃった。
    ねぇリカルド、あんたが飲んでるのおいしそうねぇ。


    …。


    ちょっと


    駄目だ。


    まだ言い終わってないじゃーん。


    ……。


    ねぇ、ちょっと


    飲み過ぎだ。


    やだなぁ、そんなに飲んでないって。


    戻れ。


    どこによー。


    エリス。


    えー…。


    …どうなっても、知らんぞ。


    どうなっても?
    どうなるんだろ?


    嫌われても知らんぞ。


    う、それはやだ…。


    じゃあ戻


    エリス、エリスー……あー、もう。


    …兎に角、早く戻れ。
    騒ぎになる前に。


    むー、リカルドのけち。


    ……。


    お金、もう、そんなにないしなぁ…ちぇー。


    …良いから。
    エリスに気付かれないうちに戻れ。


    エリス、エリスねー……なんであんなにかわいいのかなぁ。


    ……。


    ねぇ、リカルド。
    なんでだと思う?


    知らん。


    あーあんたには分からないかもねぇ。
    分かっても、あげないけどー。
    ぜったい。


    ……。


    …あー。
    エリス、エリス…。


    お前は…。


    …男と女って、どこに違いがあるのかなぁ。
    同じ人間なのに…あー、やっぱりやだ、絶対やだ。


    ……。


    そういや、リカルドさぁ。


    …。


    人肌が恋しくなる事ってないのー?


    ………。


    や、ほらさー。
    いつだかあたしに子供には黒か白しかないとかって、教えてくれたじゃないー?


    忘れた。


    だから、昔は


    ナディ。


    あー?


    いい加減にしろ。
    早く戻れ。


    いいじゃん、教えてよ。
    そんなおっさんくさくてもあたしと夫婦に間違えられたくらいなんだからさー。
    それにしたってあん時は迷惑だったなぁ。


    …。


    まぁ、あたしはもうエリスのものだけどねー。
    あーあ、ざーんねん。


    …。


    で?
    どうなの?
    あるの、ならないの?


    …。


    ねー。


    …。


    無視は感じ悪いと思うなー。


    …。


    ちぇ、つまんないの。


    ……。


    あーあ…。


    ……ナディ。


    なーにー。


    …。


    人の事、呼んでおいてまた無





    「ナディ」





    ………し?


    ……。


    ナディ。


    エ、エリ…ス?


    …なにしてるの。


    な、何してるって…。


    どうしてリカルドといるの。


    や、別に、ただたまたま一緒になったと言うか…。


    …。


    ほ、ほら、あんたもリリオと久しぶりに会えて喜んでたじゃ


    ナディはリカルドとあえてうれしいの?


    あ、いや、そーいうわけで、は…ねぇ、リカルド?


    ……。


    あ。


    …俺を巻き込むな。


    ちょ、ちょっと、


    ナディ。


    は、はい…。


    おさけ、のんでたの。


    う…。


    のんでた。


    ……た、たまには、なぁ、とか。


    ……。


    と言うかエリス、一人で来たの?
    女の子がこんなところに一人で来たら危ないじゃ


    ナディも。


    や、あ、あたしは…。


    …。


    …ナディはリカルドがいればだいじょうぶなんだ。


    や、や、そーいうことじゃなくて!
    あ、あたしは


    ナディだっておんなのこだよ。


    や、やー…女の子、と言うか。


    ……。


    あ、あの、エリス…?


    はやくもどって。


    …へ。


    へやに。
    いますぐ、に。


    え、あ…。


    はやく。


    い、いだだだだ。


    …。


    も、戻る、戻るから、そんなに強く掴まないで、てか引っ張らな


    ナディ。


    は、はい、戻ります、今すぐ戻ります…だから!


    ……。








    …。


    …。


    …え、と。


    ナディ。


    う、うん?


    …。


    …あ、あのさ?


    …。


    とりあえず、どいてくれないかなぁ、なんて。


    いや。


    え、えー…。


    また、いなくなる。


    いなくなってなんか、いないでしょ?
    ほら。


    リカルドのところにいっちゃう。


    い、いや、今回はたまたまで。
    別に好き好んで一緒にいたわけじゃ…。


    でも、いた。


    そ、それは、その…ちょっと話をしようかなぁ、とか。


    はなしならわたしにすればいい。


    いや、でも


    でも、なに?


    い…。


    リカルドにははなせて。
    わたしにははなせないの?
    なんで?


    そ、それ…は。


    なんで。


    ……あ。


    …。


    ……エリス。


    …めがさめたら。
    ナディはいなかった。


    ……。


    ひとりなのは、いやなのに…。


    …うん。


    …いや、なの。


    ……ごめん。


    …。


    ……ん。


    ナディ…。


    …ま、って。


    ……。


    酒、飲んでるから…。


    …だから?


    嫌でしょ…?


    …。


    エリス…。


    ……おさけくさい。


    結構、飲んだから…。


    ……。


    ごめん、エリス。
    ごめんね。


    …。


    もう、飲まないから…。


    …そうじゃないよ。


    …。


    それもあるけど…そうじゃない。


    ……もう。


    …。


    ひとりで、寝かさないから…。


    …。


    エリ、んん。


    …。


    ……。


    ………くさい。


    …ごめんなさい。


    …。


    ……今日はもう寝よう?
    もう、どこにも行かな、あ…。


    …。


    ……エリ、ス。


    …。


    だめ、だって…。


    ……いや。


    エリス、怒ってるのな、ら…。


    ……。


    エリ…ス。


    ……リカルド、の。


    …?
    な、に…?


    ……あかちゃんなら、うめるんだよね。


    ……え。


    わたしも……ナディも。


    な、なにをいって…。


    …だから。
    ナディはわたしよりも


    …!
    エリス…!


    …ぁ。


    ……はぁ。


    ……。


    エリス。
    怒るよ。


    ……。


    何が楽しくてあいつの子なんか生まなきゃいけないのよ。
    冗談じゃない。


    ……。


    それに。
    あたしはあんたが……。


    ……ナディ。


    …なのに。
    なんで、そんな事を言うの。


    …だって。


    だって、じゃない。


    …。


    あたしもだけど。
    あんたがあいつの子を生むなんて……絶対に、嫌。


    …。


    そんなの、許さない。
    …赦せない。


    ……わかってるよ。


    なら…!


    ……。


    …なら、なんでそんな事を


    …。


    ……エリス。


    わたしのねがい…。


    …。


    ……ねぇ、ナディ。


    ん…。


    …わたしのこども、うんで。


    ……え?


    ……。


    ちょ、ちょっと…。


    …。


    そ、そんなの、できるわ…け…。


    ……いったよ。


    あ、う…。


    ……わたし、ひとじゃないから。


    だ、だめだって、言ったでしょ…。


    …だから、いまさら。


    ぁ…。


    ……ひとでなくなるくらい、なんでもないんだよ。


    …!


    ……ほんとう、は。


    エリス…!


    ……。


    ……離して。


    …いや。


    離して。


    いや。


    離して!


    やだ…!


    ……。


    ……。


    ……そんな顔、して。


    う…。


    そんな辛そうな顔をして。
    嘘、吐かないで。


    …つらくなんか、ないよ。


    平気なんかじゃ、ないでしょ。


    …。


    ……ないでしょ、エリス。


    …だって。
    だって、だって…。


    ……だって、なに。


    …もし、わたしたちにあかちゃんができたら。
    ナディはずっとわたしと…。


    エリス。


    …。


    …子供なんて出来なくたって。
    あたしはあんたの傍にいる。


    …。


    リカルドのところなんて、絶対に行かない。


    …。


    あたしはあんたの傍に、ずっと、いたいの。
    子供が出来ようが出来まいが、その想いは変わらない。
    ずっと、ずっと、変わらない。


    う……ぅ。


    ……。


    けど、ナディ、は…。


    ……あたしは、あんただけを愛してる。


    …。


    愛してるの。


    …。


    …だから。
    そんな悲しい嘘、吐かないで。


    …。


    もう、絶対に…。


    …。


    ……約束。


    …。


    ほら、エリス…?


    …う、ん。


    いえっさじゃないの?


    …。


    …。


    …。


    ……もう、泣かない。


    …いえ、っさ。


    それから。


    …。


    もう、今夜のような事は二度としない。


    …。


    …しない。


    ……ぜったいだよ。


    うん、約束する。


    ……。


    エリス…。


    ……リカルド、が。


    …。


    わたしがしらないナディを、しっているのは…。


    …うん。


    いや…いやだよ、ナディ。


    …。


    いやだよぉ…。


    …うん、そうだね。
    ごめん、エリス…。


    …。


    ……。


    …ナディ。


    ……もう、寝よう?


    …。


    今夜はもう、離さないから…だから。


    ……ぜったいだよ。


    ん…絶対。
    今夜だけじゃない…。


    ……ナディ。








   ...dos