Ich weine, rufe deinen Namen,

   Ich suche nach dich...



   ...Du bist maine.









   …。


   …。


   ……ぐ。


   …。


   う…ぁ…。


   …。


   ………エ、リス。


   …。


   エ…リ、ス……。


   ……あ。


   げほ…。


   …。


   …はぁ。


   …。


   ……とりあえず、どいて。


   …。


   …エリス。


   …。


   …。


   …うん。


   …。


   …。


   …で。


   …。


   今、あんたが何をしようとしてたのか…聞いても、良いわよね?


   …大丈夫なの。


   ま、未遂ですんだし。


   …。


   本気でやろうとしてたのか、分からないけど。


   …。


   本気だった?


   …。


   答えて。


   …本気だったって言ったら。
   怒るの…?


   …。


   …。


   …怒る、とは違うかな。


   怒らないの。


   あたしも鈍ったもんだ。


   …?


   完全に安心しきってる。
   危ないものはないって、心の底から思ってしまってる。


   …。


   あんたが、いるから。


   …。


   だから、分からなかった。
   …いや。


   …なに。


   あんたは、それを感じさせないから。
   分かろうにも、分からない。


   …。


   そうなるにはよっぽどの修羅場を幾つもくぐってきたか。
   あるいは最初から持ってないか。


   …。


   あんたの場合は…さて、どっちかな。


   …。


   …そんなにあたしが欲しいの。


   …。


   エリス。


   …欲しい。


   …。


   ナディが…欲しい。


   …そう。


   …。


   そんなに欲しいなら、あげるわよ。
   幾らでも。


   …。


   あんたの手だったら、構わない。


   …なんで。


   欲しいんでしょ。


   死んじゃうんだよ。
   今だって


   そうだね。
   でも、それがエリスの望む形なら。


   …。


   いつか、言ったでしょ。
   死ぬのは怖くない。


   …。


   怖いのは…あたしにとって、怖いことはただ一つ。


   …ナディは。


   あんたを失うのが、怖い。
   何よりも。


   ……知ってるよ。


   知ってるんかい。


   うん。


   …いつから?


   ……もう、ずっと前から。


   …。


   …。


   …ずっと前、ね。


   ……うん。


   なんか格好悪いなぁ。


   ……。


   それで、どうするの。


   …あ。


   簡単だと思うわよ、あんたの手なら。
   あたしの首を折るのなんて。


   ……。


   どうする?


   ……や。


   欲しいんでしょ。
   あげるわよ。
   あんたが貰ってくれるなら、あたしはそれで良い。


   だ、め…。


   あたしね、知ってるのよ。


   あ…あ…。


   あんたが…夜毎、あたしの首に触っていること。


   …ッ!


   あんたの手の、冷たい感覚が残ってる。
   気のせいなんかじゃ、なかった。


   ……。


   …どんなに温めてあげても。
   一向に、温まらない。


   …私は、魔女だから。


   でも生きてる。
   冷たい人間なんて、いない。


   私は人間じゃないよ。


   でも、生きてるには違いない。


   違う。
   私はただ、生かされてるだけ。


   そうだとしても、生きてる。
   あたしと。


   …違う。


   違わない。


   みんな、私じゃなくて魔女を見てる。
   私なんて見えてない。
   だからここにいるのは、私じゃない。
   私は魔女としてしか、


   …エリス。


   ぁ…。


   …もう、良い。


   ナ、ディ…。


   …さぁ。


   や…ッ。


   ……。


   …。


   …あーあ、残念。


   ナディ…。


   それで、良いのに。


   …どうし、て。


   …。


   ぅ…。


   …あんたはいつも、あたしを呼ぶ。
   抱かれてる時、ずっと。


   …。


   最初は…まぁ、熱に浮かされて、とか思ってたんだけど。
   あたしも似たようなもんだろうし…。


   …。


   …けど。
   泣きながらあたしを呼ぶあんたをずっと、見てたら…。


   …。


   …。


   …。


   …それは。
   自分を見てもらう為。
   エリスとして…見てもらう為。


   …。


   て、勝手に思っちゃってるんだけど…違ったら、ごめん?


   …ちがわ、ない。


   エリスはさ、あたしがあんたを魔女として見てると思ってる?
   思ってた?


   ……。


   思うように、言え。


   ……思ってない。


   本当に?


   …。


   …怒らないから。


   ………すこ、し。


   少し…?


   ……だってわたしは、まじょ…だから。


   知ってる。


   …だか、ら。


   ……。


   ごめんなさい…ごめんなさい、ナディ…。


   …いつか。


   ……。


   つか今はもう少し、二人でいたいんだけど。
   だめ?


   …だめ、じゃない。
   ずっと、いたい…いたいよ、ナディ。


   ん、ありがとう。


   …。


   ん、なぁに?


   ありがと、は…へん、だよ…。


   ん?


   …へん。


   ま、良いじゃない。
   言いたかったんだから…。


   ……ぁ。


   …ねぇ、エリス。


   ナディ…。


   …中に入っても、良い?


   …。


   エリスの中、に。


   …良いよ。
   けど…。


   …。


   …エリス
(わたし)を、見てくれなきゃ…いや。


   …。


   いや…。


   …他に何を見ろって言うのかな、この子は。


   …。


   もうずっとエリスしか見えてないのに。


   …。


   エリスだけしか、見えない。


   …もっと、言って。


   エリスしか見えない。


   もっと…。


   …いつだって、エリスだけだから。


   ……。


   エリスしかいらないのよ…あたしは。


   ……あぁぁ。








  Keine Drehung zurück. 
−還らざる道








   あら。


   …げ。


   久しぶりね。


   ブルーアイズ。


   エリス、元気そうね。


   うん、ブルーアイズも。


   …。


   何も逃げ出さなくても良いんじゃないかしら?
   ナディ。


   …別に逃げたわけじゃないわよ。


   またうちでバイト?


   …お陰さまで。
   支部長さまは相も変わらずお忙しそうで。


   ええ、おかげで毎日充実しているわ。


   …仕事人間め。


   有難う。


   何でもかんでも褒め言葉になんのね、あんたは。


   良い方向に受け取るのも、世の中をうまく渡るコツだから。


   あ、そう。


   貴女は無理そうだけど。
   ばか正直過ぎて。


   うるせ。


   やっぱり。


   だから、うるせ。


   …。


   エリス、ナディは相変わらずね?


   …。


   エリス?


   …何。


   う…。


   何、ブルーアイズ。


   い、いえ…。


   エリス、止めなさい。


   …。


   エリス。


   …私は何もしてないよ。


   ……。


   ナ、ディ?


   …悪いわね、ブルーアイズ。


   …ッ。


   エリス!


   ……。


   ……ナディ、これはどういう事なの。


   ちょっと、ね。
   色々と。


   色々って…。


   だから会いたくなかったのよ。


   ……何があったの。


   何も。
   ただ…やきもちやきなのよ、あたしの恋人は。


   けれど今までは…。


   …ごめん、ブルーアイズ。


   え…


   もう、あたし達のことは構わない方が良いわ。
   あんたの為にも。


   …それ、どういう意味なの。


   そういう意味。


   ナ


   ナディ。


   なに、エリス。


   …ナディ。


   だから、なぁに?


   ……。


   …エリス。
   ブルーアイズは知り合い…友達でしょ?


   …うん、そうだね。


   それだけ。
   でしょ?


   ……うん。


   じゃあ、ブルーアイズ。


   …待ちなさい。


   うん?


   …。


   大丈夫なの…?


   見れば、分かるでしょ。
   全然、問題なし。
   ねぇ、エリス。


   …大丈夫だよ。


   …。


   じゃあ、ブルーア


   ナディ。


   ん?


   首。


   …。


   痕が、あるわ。


   …見間違いでしょ。


   じゃあ何故、咄嗟に手で押さえたの。


   …別に。
   痒かったのよ。


   痒かったら、そんな手の当て方はしないわ。


   ……。


   ちゃんと話して。


   特別に話すことなんて、何もないわよ。


   …。


   …ナディ、行こう。


   うん。
   じゃあ…さよなら、ブルーアイズ。


   …ばいばい。


   ナディ…。
   エリス……。








  Das Wandern von Herzen. 
−さまよう心







   …。


   …。


   …エリス。


   ぁ…。


   …もう、限界かな。


   ちがう…。


   …良いわよ、無理しなくても。


   ぅ…。


   …頭、痛い?


   へい、き…。


   …嘘、つくな。


   ……。


   ……魔女は悪いもの。


   …ッ。


   そんなの、誰が決めたんだか…。


   ナディ、わたし…。


   あんたはこんなに、優しいのに。


   …やさしくなんか、ないよ。


   …。


   だって…だってわたし、ナディをころしたいとおもってる…。


   …。


   こんなにも……こんなにも!


   …うん。


   ころして…ずっと、じぶんのものにしたいって…。


   うん。


   わたしはやっぱりわるいまじょなんだ…ナディのそばにいてはいけないってわかってるのに、なのに…。


   駄目。


   …あ。


   離さないって言ったでしょ。


   でも、でも…!


   …殺したいのなら、殺せば良い。
   怖いものは、何もない。


   …うそ、だよ。


   エリスが失うのが一番怖いって、言ったと思うけど?


   ……。


   …あいつに首の痕、気付かれた。
   何かと言ってくると思う、けど。


   …いや。


   ん…。


   ほかのひとの、わたしいがいのなまえをよばないで。


   …だから、呼んでないじゃない。


   よんだよ…。


   …。


   ……このくちびる、で。


   …エリス。


   もう、よばないで。
   わたしいがいの、だれのなも。


   …。


   ……ききたくない。


   ねぇ、エリス。


   …。


   ……誰もいないところに、行こっか。


   だれも、いない…?


   そう、誰も。
   そこで二人で、二人だけで生きようよ。


   …。


   …いや?


   いや、じゃない…。


   …色々、あると思うけど。
   あんたがいれば、あたしはそれ良いから。


   ほんとう…?


   …本当。
   で、あんたは…?


   …わたしもだよ、ナディ。


   ん…じゃ、そうしよう。


   …。


   …まだ、痛む?


   ……へい、き。


   そうは見えない。


   …。


   …あたしに、分けてよ。


   ナディ、に…。


   …そう。


   …。


   エリス…。


   …あげない、よ。


   なんでよ。


   あげないの…。


   …ちぇ、残念。


   …。


   …今日は満月、か。
   ほらエリス、見て。
   月がきれいよ。


   …にあわない。


   なんだとぅ…。


   ……えへ。


   …。


   …。


   ……いつでも、良いけど。


   …?


   …あたしは、良いけど。
   でもね、エリス…。


   …。


   ……そのせいで、あんたが苦しむようだったら。
   やっぱり、死ぬのは嫌かな。


   …。


   ま、ただの自惚れだけどね…。


   ……ナディッ。


   わ…。


   ……ころしたい、ころしたよ。


   …。


   ころしたいくらい、すき…だいすき、だの。
   だから…だから…。


   …ありがと。


   あぁ…。


   ……エリス、愛してる。


   ナ、デ…ィ。








  Der Tanz von Narren.
−愚者の舞








   …。


   いつから、なの。


   …さぁ。


   ちゃんと答えなさい。


   それより言ったわよね、あたし。


   構うなって?


   …。


   それで?
   私が大人しく引き下がると思ってるのかしら?


   …そういうヤツよね、あんたって。
   お節介。


   分かってるじゃないの。


   …。


   その首、エリスが?


   さぁ。


   強く締められた痕。
   そう、強く…。


   …。


   ……あの子の力は人のそれとは違う。


   魔女だからね。


   そんな力で締められたら…。


   …。


   ナディ。


   …生きてるわよ、まだ。


   未だって…まさか。


   明日死ぬかもしれないし、ずっと先かもしれない。
   そんなもんでしょ。


   ナディ、貴女…。


   …ふ。


   何も面白く無いわ。


   思えばあの子には人を生き返らせる力があったな、て。
   改めて思っただけなんだけど?


   …!


   そういや、あんたにもあるんだっけね。


   …あれから使った事は無いけれどね。


   もう使えない、の間違いじゃないの。


   …。


   ま、どうでも良いけど。


   …ナディ。


   とりあえず、生きてるから。


   どうしてしまったと言うの。
   以前は


   どうもしてない。


   …。


   …。


   …。


   …あの旅をしてた時にさ。


   …?


   あたし、見たのよ。


   見た…?


   骨の山。
   ぞんざいに捨てられた子供の。


   ……。


   人間ってなんなの。
   創られた命の方がよっぽど心があるじゃない。


   …ナディ。


   あの子は自分が創られた存在で、魔女で、人間じゃないって。
   夜毎に泣くのよ、あたしの腕の中でさ。


   …。


   あの子のほうが、ずっと、優しいのに。


   …。


   あの子のほうが、ずぅっと。


   …けれど、人間は彼らのような者ばかりじゃないわ。
   貴女も知っているでしょう?


   …。


   あの旅で出会った人達は…


   ブルーアイズ。


   …。


   もう構わないで、二度と。


   …聞けないわ。


   あの子は気付いている。
   あまり時間がない。


   どうしてしまったと言うの。
   エリスも…貴女も。


   だから…別に、どうもしてないと思うけどね。


   …。


   ただ…頭が痛いって言うコトが多くなっただけよ。


   …それはエリスが?


   それから、この痕のコトなんだけど。


   …。


   セックスしてると、やられるのよ。
   特にあともう少しって時にさ。


   セ…。


   多分、そういうクセなのかもしれない。
   だから、気にしないで。


   ……。


   つか本当にあるもんなのね、そういうの。


   ……。


   …ん?


   …。


   もしかしてあんた、こういう話に免疫ないの?
   いい歳してるクセに。


   …貴女ね。


   あいつとはしてないの?
   ほら、ローゼンバーグ似の


   彼とはそういう関係ではないわ!


   ふぅん。


   …痕に関しては分かったわ。
   けど、他に関しては応じられない。


   …。


   貴女も、エリスも。
   私の、私達の


   来た。


   …え。





   …ナディ。





   エリス。


   エリス…。


   ……まだなの。


   ああ、ごめん。
   今行く。


   ……。


   だから、言ったのに。


   …私は最初から二人と話すつもりだったのよ。
   貴女が連れて来なかっただけでしょう。


   そうだっけ?


   ナディ。


   ん?


   まだ、なの。


   いや、もうお仕舞い。


   …。


   …もう、会わないから。


   ……うん。


   エリス。


   …。


   貴女は


   よばないで。


   …。


   わたしをよんでいいのは、ナディだけだから。


   …。


   それから。
   もう、ナディのなまえをよばないで。


   …。


   ナディはわたしのだから。
   あなたでもゆるさない、ゆるせないの。


   …貴女がナディを愛しているのは知ってる。
   同じようにナディも貴女を愛してるわ。
   二人が同性という事すらも超えて、そういう関係になったのだって理解してる。
   それを悪いなどと言うつもりはないし、寧ろ私は祝福したいと思っているの。


   …。


   ねぇ、エリス。
   貴女もナディも、私の


   よばないでっていったのに。


   …聞けないわ。
   友達、だから。


   そっか。
   しにたいんだ。


   …っ。


   なら、いいよ。
   ころしてあげるね?


   …殺されてなんかあげないわ。


   ……。


   忘れたの?
   私も魔女なのよ、エリス。


   …だから?


   …。


   しってるよ。
   もう、ないんでしょ?


   …いいえ。


   …。


   それでも私は魔女だから。
   簡単には殺されやしない。


   …かんたんだよ。


   …。


   ひとなんて、かんたんに


   エリス、だめ。


   …。


   だめ。


   …どうして?
   かばうの?
   ともだちだから?


   あんたが殺して良いのはあたしだけ。
   他を殺すのは許さない。


   …でも


   あんたはあたし以外に呼ばれるの、嫌なんでしょ?


   …うん。


   でもって、あたしの名前を他の人が呼ぶのも嫌?


   いや。


   それと、同じ。


   …おんなじ?


   そう、同じ。
   分かる?


   ……。


   あんたがあたし以外を殺すのなんて、嫌。


   ……ナディ。


   聞いてくれない?


   …わかった。


   うん。


   けどナディ…


   …最期だから許してよ、エリス。


   …。


   ブルーアイズ。


   放ってなんか、おけない。
   おける筈、無いじゃないの。


   ごめん。
   さよなら。


   ナディ!


   …エリス。


   ……。


   待って、エリス。


   …。


   …。


   ナディ…!!
   エリス…!!








  Die verlorene zittern.
−揺るがなきもの









   …あの子には。
   魔女の血が混ざっているの。


   …。


   聞いた話なのだけれどね。


   …そうか。


   驚かないの?


   …お前はどうだったんだ。


   私は…然うね。
   当時はあまり驚かなかったわね。


   当時?


   興味、無かったのよ。
   興味があったのは…。


   …。


   …自分の、魔女の力。


   …。


   いつか、話したでしょう?


   …ああ。
   それで、ナディに魔女の血がってのは本当なのか。


   らしいわ。


   …村から出た魔女もいたと聞いた。
   そいつらの子孫なのか、ナディは。


   いいえ。


   …?


   ナディのそれは彼女達のものじゃないの。


   …どういう事だ。


   禁忌。


   …禁忌?


   死に掛けた者を、己の血を与えて蘇生させた。
   力を使うだけでは無く、ね。


   ……。


   旧大陸から来た、こちらの人間に言わせれば「侵略者」との戦争をしてた頃の話よ。
   もうずっと昔の話。


   …。


   本当かどうかすらも、怪しい話。


   信じてなかったんだな。


   ええ、当時は。


   …。


   村を、家族を、人間に焼かれたナディを一時期、私達の保護の下に置いた事があったらしいわ。
   私自身、詳しくは覚えていないのだけれど…けれど、その頃のナディは全てを失って冷たい目をしていたのだけは覚えてる。


   …ナディの血は


   魔女が人間に介入する事は禁じられていた。
   ましてや、人間に自らの血を与えて蘇生させるなど。


   …。


   その人間は…恐らく、魔女の血ね。
   長く、生きる事になった。老いがゆっくり進むようになって。


   …魔女の力はあったのか。


   …。


   …あったんだな。


   女、だったのよ。


   …。


   何故、助けたのかは分からない。
   そして血を与えられた者はその血を残した、ナディに続くものとして。
   それを私達は見過ごすわけにはいかなかった。


   村を出た魔女にも同じ事をしたのか。


   …村を離れれば自然と力を失っていく。
   いずれは普通の人間と変わらないようになるの。
   けれど。


   …。


   …血を分けた魔女は、並の魔女ではなかった。
   そう…。


   ……。


   ……議長。


   …。


   これは本当かどうか分からないけれど、残した子は…その魔女が産んだ。


   生んだ?


   …俄かには信じられない事だけれど。


   魔女にはそんな力もあるのか。


   …さぁ。
   分からないわ。


   ……。


   けれど、残された子に魔女の力が発現する事は無かった。
   その子が…


   …ナディ、なのか。


   ……最も、全く信憑性は無いわ。
   計算が全然合わないもの。


   …何故、保護した。


   同胞の血を持った子だったから…或いは。


   ……。


   保護されていた頃の記憶は一切、ナディには無い筈よ。
   外に放つ時、消されたそうだから。


   記憶をか。


   ええ。
   そのせいで、村に居た頃の記憶も酷く曖昧になってしまった。
   焼かれた、と言う記憶だけ残して。


   ……。


   本当の名前すらも。


   …だから「名無し」か。


   かも知れないわね。


   …。


   …。


   …。


   …エリス、は。


   …。


   あの子の力は弱まらない。
   寧ろ…。


   …。


   …強まっている。
   自我を、失いかねないくらいに…いえ、若しかしたら、もう。


   …。


   ナディは…エリスの傍から離れないわ。
   何を言っても。


   …。


   冷たく…然う、死んだような目をしていたのが嘘のように、強い目をして。
   賞金稼ぎになってもあんな目をした事がなかった。
   そう、エリスと出逢うまでは。


   …エリス。


   いつか、エリスが言っていたわ。
   旅をしているナディの目は輝いている、私はそれが大好きだ、と。


   …。


   けれどそうさせているのは…紛れも無く、エリスの存在。


   ああ、そうだな…。


   …。


   …。


   …このままだとあの子達は。


   離すべきなのか。


   …分からないわ。
   でも…。


   …。


   ……このままだと、ナディが。


   ……。


   けれど離したら、エリスの心は…。


   …それはナディもだろう。


   ……。


   …ブルーアイズ。


   リカルド、この間会った二人は…全てを捨てるような目をしていたわ。
   この世界のもの、全て。


   …。


   それは決して、揺るぐ事無き意志のように…。


   ……。








  Entschädigung des Schicksals. 
−運命の代償








   …。


   …。


   …わたしを、ころしにきたの?


   …。


   それとも、ナディをうばいにきたの?


   …。


   でもあげないし、ころされてもあげない。


   …エリス。


   あなたはわたしかもしれないけど。
   けど、わたしはあなたじゃないの。


   …。


   ナディもあなたのひとじゃない。
   だからもう、みないで。


   …。


   あなたのひとはとっくに、しんじゃったから。
   にんげんに、やかれて。


   …。


   もう、いないんだよ。


   …アクリャ。


   ナディはそんななまえじゃないから。
   ナディは…わたしだけのナディだから。


   …。


   ナディは、わたしにひとをころすなっていうの。
   あたしいがい、ころすなって。


   …。


   だから、ころさないよ。
   ナディがいやがるから。


   …侵食され始めている。


   そうだよ。
   わたしはナディにおかされているの。


   …魔女の血に、力に。


   わたしはまじょだから。


   …。


   ナディはそれでもいいっていってくれた。
   エリスがエリスなら、それだけでいいって。


   …。


   わたしは…わたしは、ナディのものだから。
   ナディがいてくれれば、わたしは…まじょじゃない、わたしになれるの。
   はじめて、なれたの。


   …。


   だから。
   だれにもあげない。
   ナディはわたしだけのひと。
   もしもナディをうばうというのなら…。


   …。


   ナディを、ころす。


   …貴女の心は其れを良しとするのですか。


   どうして?


   ……。


   ナディいがいのにんげんはころさない。
   やくそく、したから。


   …。


   もう、ほうっておいて。
   あなたがおもってるようなことは、しないよ。


   …本当は殺したいのでしょう。


   …。


   ナディ、を。


   …よばないで。


   ナディを殺して。
   永遠に自分のものしてしまいたいが為に。


   かってによばないで。


   ナディの命を喰らって、その魂を閉じ込める。
   未来永劫、終わる事無き闇の歪に。


   よばないで…ッ。


   命を喰らう魔女、エリス。
   私は貴女を…放置する事は出来ません。


   ころされたいの。
   ねぇ。


   其の力は…いつか、この世を喰らうでしょう。
   然う、貴女すらも。


   ナディとやくそくしたの、したのに。
   ナディと、ナディと、ナディと…!


   ……エリス、どうして。


   あぁ…あぁァ…ッ


   ……。


   …あなたに、わたしはころせないよ。


   …。


   はんぶんになった“ち”で。
   わたしは、ころせない。


   …貴女こそ半分になった命で、私が殺せると?


   …。


   …。


   …ナディが、いれば。
   わたしとナディのいのちは、ひとつだから。


   …。


   あなたとは、ちがうんだよ。


   …。


   …そっか。
   あなたはにんげんじゃ、ないから。


   …。


   ころしても、うそつきにはならないんだ…ッ。


   …。


   …ばいばい、える。


   く……。





   エリス…ッ!





   …ナディ。


   こんなところで何をしているの。


   ……わかんない。


   分からないって。


   …うん。


   …。


   ナディ…。


   …帰ろう、エリス。


   ん…。


   …こんなに冷たくなって。


   あたためて。


   …。


   …あたためて。


   うん…。


   ……。


   …エリス?


   ……あたま、いたい。


   …。


   ……。


   …仕方ないなぁ。


   ナディ…?


   …ほら。


   なに?


   おんぶ。
   してあげる。


   …。


   されたくない?


   …ううん、してほしい。


   じゃ、早く。


   いえっさ…。


   ……よいしょ、と。
   じゃ、行くよ。


   …おもくない?


   少し。


   …。


   ……あんたは、もう少し重くなった方が良いのよ。


   そうなの…?


   …そう。
   ま、そんな甲斐性、ないんだけどね…。


   …いいよ。


   ん…?


   このままで…いいよ。


   …。


   ……いいの。


   …いえっさ。








  Der Höhepunkt der Dämmerung. 
−黄昏の頂








   世界って、思っているより広いもんじゃないわよね。


   …。


   旅してた頃は、それなりに広く感じたもんだったけど。


   …。


   色んなトコに行ったっけ。
   二人で。


   …。


   で?
   次はあんたの番ってこと?


   …ああ。


   リリオは置いてきたの?


   …。


   元気?


   …ああ。


   そ。
   一寸会いたかったな。


   …。


   どうしてこう、居場所が知られるのかな。
   躰に発信機でも付けられてるのかって話。


   ナディ。


   殺されるわよ?


   …。


   最近、ご機嫌ナナメなのよね。
   あたし以外の人に対して。


   …。


   あいつに何を吹き込まれたのか、知らないけど。
   あたし達には…つか、あたしにはもう、関わらない方が良い。


   …。


   惚れてんでしょ?
   あたしに。


   …。


   冗談よ。


   …エリスは、どうしたんだ。


   あの子ならお昼寝中。
   寝てる時間の方が多いのよ、最近は。


   そうじゃない。
   以前のエリスはそうじゃなかっただろう。


   変わらないわよ。
   お子ちゃまのままで。


   …。


   いつか、あんたが言ったじゃない。
   子供には黒か白しかないって。


   …。


   そう、黒しか白しかないのよ。
   混ざることがない…。


   …お前は、それで良いのか。


   うん。
   あたしはエリスといられればそれで良いから。


   …。


   ずっと、欲しかったから。


   …エリスがか。


   まぁ、簡単に言えばそうなるけど。


   …。


   ずっと、欲しかった。
   叶うわけないって思いながらも、捨てられなかった。
   必要とする人に、必要とされたかった。
   ずっと。


   …。


   まさかエリスとそうなるとは思わなかったけどね。
   最初は。


   …。


   だから、気持ちは変わらない。
   一生。


   …殺されたとしてもか。


   殺されても気持ちって残るのかな。


   …。


   残ったら良いな。
   エリスの中で。


   ……ナディ。


   何よ、その顔。


   俺は


   それとも何、連れ出そうって?
   良いわよ、やってみれば。


   …。


   ま、全力で抵抗するけど。


   そんなつもりは無い。


   あ、そう。
   ま、本当にしたら…リカルド、あんたでも本当に殺されるから。
   そんな事になったら、リリオに二度と会えない。


   …会うつもりは無いのだろう。


   あんたの事を言っているのよ、リカルド。


   ナディ。


   正直、今のあの子は不安定すぎてね。
   リリオにも…何をするか、分からない。


   魔女の力のせいか。


   …。


   答えろ、ナディ。


   もう、会うつもりはないから。


   ナ


   大丈夫。
   世界は、このままよ。
   このまま、何事もなく、過ぎていくから。


   何を言っている。


   あんたのコトは嫌いじゃなかった。
   エリスと逢わなかったら…もしかしたら。


   ナディ。


   さよなら。
   もう二度と、あんたとは会わない。


   ナディ…!





   …ッ!




   …!
   リ


   が…ッ。


   ……つぅ。


   ナ、ディ…。


   …だから言ったでしょ、リカルド。


   ……、で。


   ぐぅぅ…。


   さわらないで。


   う……ぉぉッ!


   ナディに、さわるな。


   エリス…。


   …ナディ、いたい?


   ……少し、ね。


   でもナディのせいだから。


   …。


   このひとを、かばおうとしたから。


   …約束、したでしょ?
   あたし以外は…


   ころさないよ。
   ころさないけど…。


   ぐ、あぁぁ…ッ。


   …。


   エリス、やめて。


   どうして?
   このひとのこと、やっぱりすきだから?


   やっぱりってなんだ、やっぱりって。


   やっぱりは、やっぱりだよ?


   あたしの気持ちはエリスが一番知ってるでしょ。


   しってるよ。
   けど、こわいの。


   どうして。


   だってナディ、だれにでもやさしいから。


   本当に優しくしたいのはあんただけよ。


   しってる。
   けど。


   ……ぉぉぉぁぁッ。


   やっぱり、いやだから。


   エリス。


   ずっと、いやだったの。
   ずっと、ずっと。


   が…ッ、が…ッ。


   このひとの、ナディをみるめが…ずっと!!


   ……エ、リ


   よばないで。


   …。


   わたしをよんでいいのは、


   エリス!


   …ナディ。


   エリス。


   ……ナディ。


   …。


   ん…。


   ……。


   ……。


   …まだ、分からない?


   まだ、わからない…。


   …しょうがないなぁ。


   もっと……。


   …。


   ん……ふ。


   ……。


   ……。


   ナディ…エリ、ス…。


   …あんたは分かったでしょ。
   あたし達にはもう、関わらないで。


   …おまえ、たち…は…。


   リリオに伝えて。
   元気でね、て。


   …リリ、オ。


   そう、リリオよ…エリス。
   分かるでしょ…?


   ……うん。
   でも、それより…。


   ……帰ってから、ゆっくりね。


   …いまが、いい。


   …。


   …。


   ……しょうがないなぁ。


   ナディ…。


   でもあいつにあんたの躰見せるの、いやだから。


   …。


   …帰ってから。
   オーケイ、相棒…?


   ……オーケイ、ナディ。


   それ、で………。








  Grüner Strudel. 
ー緑の渦








   エリス。


   …。


   エリスー。


   …。


   エリス、どこにいるの?


   …ここ。


   て、どこよ。


   ここだよ。


   見えない。


   みつけて。


   と、言われてもなぁ。


   ここにいるから。


   …ここに、ね。


   ナディがみつけてくれるまで、まってる。


   じゃあ…もしも見つけるのを諦めたら、どうする?


   …あきらめないよ。


   分からないわよ?


   ナディはわたしをみつけてくれる。
   あのときとおなじように。


   …。


   だから…また、みつけて。


   …さっさと出てくれば良いだけの話なのに。


   …。


   しょーがない、頑張って見つけるか。


   …うん。


   んー……。


   …。


   一面の、緑。
   さて、どうするかな。


   …。


   ねぇ、エリス。


   …なぁに?


   昔読んだ絵本の事、覚えてる?


   えほん?


   そ、絵本。
   どっかの町の朝市で買ってあげたでしょ?


   …。


   あんたのお気に入りの絵本。


   …。


   何よ、忘れちゃったの?
   読んでって、散々せびったくせに。


   …かまどどり。


   思い出した?


   ううん、ちゃんとおぼえてるよ。


   ほんとかなぁ。


   …いまでも、だいじなほんだから。


   …。


   いまでも…。


   …あたし達はさ、エリス。


   うん…。


   カマドドリになれたと思う?


   …。


   なれてない?


   …なれたら、うれしい。


   てコトは、なれてないんかい。


   …。


   あたしは…なれたと思ってたんだけど。
   なーんだ、あたしの


   なれたっていってもいいの?


   …。


   いいの、ナディ…。


   …ばぁか。
   最初に仲良し夫婦って言い出したのはどこのどいつだ。


   …。


   ほら、だぁれ?


   …エリス。


   …。


   …?
   ナディ…?


   ……正解。


   あ…。


   やっと、見つけた。


   …ナディ。


   見つけたよ、エリス。


   おそい…。


   …なんだとぅ。


   えへへ…。


   …たく。


   ナディ。


   …ん?


   ん…。


   ……。


   …だきしめて。


   あたしにも転がれって?


   …だめ?


   ううん、望むところ。


   ……。


   …。


   …ナディ。


   ……こうすると、さ。


   …。


   緑の匂いが、ますます濃くなるなぁ…。


   …みどりのにおい?


   そう…緑の匂い。
   むせてしまうくらい…。


   …。


   こんな沢山の緑、あたしの村にはなかったかな…。


   …いや?


   じゃないけど、慣れない…。


   ……。


   ここだけ、緑が溢れてて…。


   …うん。


   ……。


   …ねぇ、ナディ。


   ん…?


   …いのち。


   …。


   いのちのにおい…。


   …ああ、そっか。


   …。


   そうなんだ…。


   …ここ。


   ここ…?


   ……ここ。


   ……。


   ここにも…。


   ……そっか。


   おどろかないの…?


   …今更。


   …。


   驚かない。


   …つまんない。


   おい。


   …えへ。


   ま、少しは驚いたけどね…。


   …。


   ……エリス。


   きもち、わるくない…?


   …なんで?


   だって…。


   …ばか。


   ……。


   仲良し夫婦なんだから。
   嬉しいと思っても、気持ち悪いなんて思わない。


   …。


   …思わない。


   ……よかった。


   …。


   …。


   …もう少し、こうしてよっか。


   うん…。








  Die endolose Liebe. 
−終わりなき愛








   …これが貴女の望んだ世界なのですか。


   …。


   貴女と…彼女だけが、居た世界。
   他の存在を否定する世界。


   ……ナディ。


   そして最期にはあの子すら…。


   なでぃ…なでぃ…。


   …愛しき者の命すら。


   ああ…。


   ……矢張り人とは相容れてはならぬ存在なのでしょう、私達は。


   …なでぃ。


   ……。


   わたしたちの、あかちゃん……。


   …。


   あぁ…あぁぁ…あぁぁぁあぁぁぁぁ。


   ……終わりにしましょう、エリス。


   …ぁぁぁぁ。


   そして…もう、二度と。





   ………、す。





   …?


   えり…す…。


   な、でぃ…?


   …ナディ。


   どこ、どこ…?


   ……ここに、いるよ。


   わからないよ、どこにいるの…。


   …えりす。


   あ……。


   …みつけた?


   みつけた…。


   …よかった。


   どこに、いってたの…。


   …どこにも、いってないよ。
   ずっと、あんたのそばに…


   …うそ。


   …。


   いなかったよ…ずっと、ずっと、いっしょだってやくそくしたのに。


   …だから。


   ずっと、ずっと、さがしてたのに…。


   …。


   …ナディ。


   なぁに、エリス…。


   …あのね。


   ああ、そうだ…。


   …なに?


   おなか、すいたってさ。


   おなか…?


   …ミルクの時間。


   …。


   …ほら、早く行ってあげないと。


   でも、でも…


   …エリス。


   あ…。


   ……あんたがいないと。


   ……うん。


   それに、さ…。


   …うん?


   あたしも…ね。


   …。


   …。


   …くいしんぼ。


   やかましい…。


   ……えへへ。


   …あと。


   ん…。


   …久しぶりに、したい。


   …。


   なによ。


   …珍しい、から。


   ばぁか。
   あたしが、どれだけ…。


   …。


   …あんたが、欲しかったか。


   ……うん、知ってるよ。


   さ、行こっか…?


   …いえっさ、ナディ。


   ………。


   ごめんね。


   ……アクリャ。


   ばあちゃんにも謝らないと。


   ……。


   でも、エリスは…あたしが連れて行くから。
   一人にしないって決めてるから…。


   …。


   世界はもう、手遅れかもしれないけど…。


   ……。


   あたし達はそれでも。
   後悔、してない。


   …。


   ああ、でも。
   もしかしたらまだ、間に合うかもしれない。
   多分、だけど。


   …。


   ……だって。


   …。


   緑が、この子が生んだ緑が…


   …。


   世界に、満ち溢れている…。


   …。


   ほら、エリス。


   …ん。


   あたしとあんたが一緒にいた世界…。


   …。


   こんなにもきれいだったんだねぇ…。


   …ナディと、見てるから。


   …。


   …だから、だよ。


   そっか…。


   ……うん。








  Der Anfang von einer Neuen Welt. −新たな世界の始まり








   支部長。


   うん?


   ここの収支の計算についてなのですが…。


   …ああ。
   不備があるようね。


   矢張り、然うですよね。


   もう一度、やり直させて。
   こんな事では今後、困るわ。


   はい、分かりました。


   …。


   支部長?


   …ねぇ、ベックマン。


   は、はい。


   今日は天気が良いわね。


   …は?


   少し、外に出てくるわ。
   留守の間、頼むわね。


   ……。


   ベックマン。


   …はい、了解しました。








   …。


   パパ。


   …なんだ、リリオ。


   見てて。


   …。


   それ…!


   …。


   んー…。


   …。


   ……と。
   どうだった?


   ああ、良いな。


   上手になってる?


   ああ。


   ふふ、よかった。


   …。


   私のブーメラン。


   …?


   あの人たちにも、見てほしいなぁ。


   ……。


   ねぇ、パパ。
   今頃、どこら辺にいるのかな。


   …さぁ、分からないな。


   会いたいなぁ。


   …リリオ。


   うん?


   あいつらは、今でも。


   …。


   この空の下の、どこかで…。








   あーーーーー。


   …おなか、すいた?


   違うっつの。


   じゃあ、なに?


   今日もいい天気だなぁ、って。


   …。


   なに。


   にあわない。


   うっせ。


   ふふ。


   今日のごはん、おいしく作らないと許さない。


   うん、わかった。


   絶対、よ。


   ん、ぜったい。


   …。


   …ねぇ。


   んー。


   きょうも、たかいね。


   そうねぇ。


   とどかないね。


   怖いし?


   ふふ。


   でも、ま。


   …?


   届かないから、どこまでも目指すのよ。


   …。


   あんたと一緒に、さ。


   ナディといっしょに?


   そ。


   …そっか。
   うん、そうだね。


   じゃ、今日はどこまで行こうかね。
   相棒?


   どこまでも。


   お。


   ナディといっしょなら、


   一緒なら?


   どこまでだって、いけるから。








   『いえっさ!』









  Die fortsetzende Zukunft. 
−続いてゆく未来