………。


   …。


   …あ、あの。


   ん?
   なぁに、榛名。


   …。


   榛名?


   お、おねえさまのて、は。


   私の手?


   は、はい。


   私の手が、なに?
   …あ、若しかして熱かった?
   ごめんね。


   い、いえ、いえ、ちがいます。


   お…。


   お、おねえさまの、ては。
   どうして、そんなに、おおきいんですか?


   ああ。
   確かに大きいね。


   はい。


   実はさ、此処に居る戦艦の中で一番、大きいんだ。
   私の手。


   こんごうおねえさまよりもですか?


   うん、然う。


   …すごい。


   はは、別に凄くないよ。
   たまたま、だよ。


   ……。


   …ん、榛名?


   は、はるなは。


   うん。


   ひえいおねえさまのて、だいすきです…。


   …え。


   だ、だから。
   はるなのて、はなさないで、ください…。
   ぎゅって、しててください…。


   …。


   …あ。


   うん、分かった。
   榛名の手、離さない。


   お、おねえさま…。


   …榛名の手は、可愛いね。


   あ、あう……。


   然うだなぁ…私の手が大きいのは。
   榛名の可愛い手を守る為なのかも。


   え…?


   はは、なんてね。
   榛名も大きくなるよ、屹度。
   金剛型の三番艦だもの。


   は、はるなは、おおきくなりません…。


   それは、困るなぁ。
   艦娘だし。


   ……。


   でも、然うだね。
   私の手よりは大きくならないかも。


   …おねえさま。


   だから…ずっと、守ろう。
   ずっと、この手を…。
















  L o v e  w i l l  G r o w















   榛名は、比叡お姉さまの事が、大好きです。








   ねぇ、榛名。


   は、はい、お姉さま。


   榛名は夏祭り、行くの?


   夏祭り、ですか?


   うん、夏祭り。
   聞いてない?


   い、いえ、聞いています。
   今年から再開されると言うお話でした。


   まぁ、続くかどうかは分からないんだけどね。
   で、行く?


   榛名は…。


   行かないの?


   …行きたい、です。


   そっか。


   あ、あの、比叡お姉さまは…


   金剛お姉さまは行くかなぁ。


   え。


   一緒に行きたいなぁ。


   …そう、ですよね。


   そしたら、榛名も一緒に行くでしょ?


   …はい、ご一緒したいです。


   霧島はどうかなぁ。


   …どうでしょう。
   でも、金剛お姉さまや比叡お姉さまが行くなら行くと思います。


   そっかな。
   じゃ、四人で行けたら良いね。


   …はい、そうですね。


   夏祭り、夏祭りかぁ。


   ……。


   赤城さんと加賀さんも行くのかなぁ。


   ……。


   ね、榛名。
   赤城さん、加賀さんが来てから本当に柔らかくなったよね。


   ……。


   前の赤城さんだったらお祭りなんて、行かなそうだけど。
   今の赤城さんなら、行くかも。
   加賀さんと一緒に。


   ……。


   榛名?
   聞いてる?榛名?


   ……。


   榛名―?
   おーい、聞こえてるー?


   …はい、聞こえてます。


   …。


   …それで。
   何でしょうか?


   聞いてないじゃない、それ。


   …ごめんなさい、お姉さま。


   んー、良いよ。


   ……ごめんなさい。


   怒ってないから。
   ね、榛名。


   ……。


   …?
   榛名…?


   ……榛名は、大丈夫です。


   え…え。


   ……。


   ど、どうしたの?
   お腹、痛い?


   ……。


   榛名、榛名?
   どうしたの?


   はい…榛名は、大丈夫…です。


   いやいや、大丈夫そうに見えないって。


   あ…。


   榛名。


   …う。


   どうしたの、榛名?


   ……。


   ん?


   ……榛名、は。


   うん。


   …榛名は、お祭り、行きたいです。


   へ?


   ……行きたい、です。


   な、泣くほど?


   こ、これは、違うんです…。


   でも


   ごめんなさい、なんでもないんです、ごめんなさい…。


   …でも、なぁ。


   ……ごめん、なさい。


   …えと。
   謝らないで、榛名。
   榛名は悪い事、してないんだから。


   ……でも。


   うん、分かった。
   お祭り。行こう、皆で。
   ね、榛名。


   ……。


   ね。


   ……。


   …て、あれ。
   あれぇ…。


   ……。


   う、うーん…。


   ……。


   え、えと。


   …。


   榛名!


   …!
   は、はい…!


   お祭り!一緒に!行こう!


   は、はい、比叡お姉さま!


   うん!
   楽しみだね!


   は、はい、楽しみです…!


   榛名!!


   は、はい…!
   …え。


   ……。


   お、お姉さま…。


   …榛名は、さ。


   は、はい…。


   …もう少し、我儘言って良いと思うよ。


   は、榛名は、そんな…。


   私じゃ、駄目かも知れないけど。
   でも、頑張るから。


   …だめ、なんて…。


   お祭り、絶対に行こうね、榛名。


   ……はい、お姉さま。








   …。


   ……。


   …はぁ。
   いつまで然うしているつもりなの。


   …。


   比叡姉さんと餡蜜食べに行って。
   嬉しくて、楽しかったのではないの。


   …。


   お祭り、誘われたのでしょう。
   なら、良いと思うけど。


   …皆、で。


   まぁ、然うでしょうね。
   比叡姉さんだし。


   ……。


   二人で行きたいと、言えば良かったじゃない。


   …言えない。


   …。


   …霧島には、分からない。


   分からないわよ。
   言えなくて、そうやってぐずぐずしてる榛名の気持ちなんか。


   …。


   比叡姉さんはああいう方だから。
   はっきり、きっちり、すっぱりと。
   言わないと、いつまで経っても、伝わらないわよ。


   …分かってる。


   気付いて貰おうなんて。


   分かってるの。


   ……。


   …だけど、榛名は。


   いつまでも然うしていられると、気が滅入るわ。


   …霧島はどうしてそんなにきついの。


   きつくしてるつもりは無いわ。
   だけど今日の榛名は…一段と、いらっとするの。


   ……。


   比叡姉さん、心配してたわよ。


   …。


   榛名。


   …二人が良いって、思ってしまったの。


   まぁ、普通は思うでしょうね。


   …そんな榛名が、嫌で。


   はぁ、なんで?


   …だって。
   金剛お姉さまも…霧島の事だって、榛名は。


   …。


   榛名は……。


   …はぁぁぁぁ。
   あのねぇ。


   …う。


   好きと一口に言っても種類があるでしょう。
   榛名が比叡姉さんに対して抱いている「好き」と、金剛お姉さまと私に向けられている「好き」。
   明らかに違うものだわ。


   ……。


   聞くけど。
   赤城さんと加賀さんの事、どう思っているの。


   …え。


   あの新婚夫婦の事。


   ……それ、は。


   自分と比叡姉さんを重ねて、見て。
   羨望の気持ちを抱いた、或は、抱いている。


   …ッ。


   そして、そこに金剛お姉さまと私の姿は無い。


   ……。


   つまりは…仕方の無い事なのよ、それは。


   …きりしま。


   私には未だ、分からないけれど。
   ああ、勿論、金剛お姉さまも比叡姉さんも、榛名の事だって、好きだけれど。


   …若しも、伝えたら。


   …。


   …ちゃんと、伝わるかな。


   それは伝えてみないと、分からないわよ。


   …。


   だけど、比叡姉さんの事だから。
   一所懸命に、考えて呉れると思うわよ。


   …。


   分かってるでしょう、比叡姉さんの性格は。
   誰よりも、見てるんだから。


   …霧島。


   何。


   ……榛名、頑張ります。


   ええ、頑張って。








   Hey、比叡。


   …。


   折角の紅茶が冷めてしまいマスヨ。


   …。


   うーん…これは聞こえていませんネ。


   …榛名はどうして泣いたんだろう。


   What?


   ……餡蜜、美味しかったんだけどなぁ。


   …。


   うーん……。


   比叡。


   …は!


   榛名の事を考えているんデスネ?


   あ、いえ、その…。


   比叡、先ずは紅茶を。
   冷めてしまう前に。


   あ、はい…頂きます。


   間宮さんの餡蜜は美味しかったデスカ?


   はい、とっても!
   間宮さんの餡蜜、榛名はとっても大好きなんです!


   知ってマスヨ。
   榛名はいつも、美味しそうに嬉しそうに食べてマスカラ。


   然うなんです!
   …でも。


   でも?


   だから…もっと喜んで呉れると思っていたのに。


   …。


   …うーん。
   なんでかなぁ……うーん。


   比叡。


   あ、はい、お姉さま。


   部屋替えを、するネ。


   へ。


   私と霧島、比叡と榛名。


   え、え?


   そうと決まれば善は急げ、デース。


   で、でも、お姉さま!
   部屋替えなら一昨日したばかりですよ!?


   と言うわけで、比叡は隣の部屋に行くネ。


   ちょ、お姉さま?!


   急げデスヨ、比叡。


   ま、待って下さい!そんな急に!言われましても!


   気になるのなら。


   …うぐ。


   ちゃんと話しなサイ。
   OK?


   ……金剛お姉さまぁ。


   比叡は私の可愛い妹デス。
   榛名も私の可愛い妹デス。
   だから、ネ?


   ね?と言われましても…折角、久しぶりに同じ部屋になれたのに…。


   榛名の事、泣かせたのは比叡ネ?


   …う。


   All right?


   ……オーライです、お姉さま。


   うん、比叡は良い子デース。


   …でも、こんな急に。


   No problem!
   霧島にはもう、言ってありマスカラ。


   え。


   知らないのは比叡と榛名だけデスヨ。


   …えぇぇ。


   比叡。


   …はい。


   ちゃんと話すのヨ、榛名と。


   ……はい、お姉さま。








   ……。


   ……。


   …え、えぇと。


   ……。


   そういうわけだから、うん、宜しくね。
   榛名。


   ……。


   や、でも、いきなりだよねぇ。
   部屋替え、一昨日したばかりなのにね。


   …。


   然う言えば提督には許可を貰っているのかなぁ。
   ねぇ、榛名。


   …。


   ま、まぁ、霧島あたりが貰ってそうだけど。
   抜け目、無いし。


   …。


   え、えと…うちの提督ってさ、部屋割りに関しては緩やかだよね。
   秩序さえ守れば、って言うだけで。


   …。


   でも、戦艦である私達が空母寮、駆逐艦の子達や軽巡、重巡と…となると、流石にかなぁ?
   ね、榛名。榛名はどう…


   ……。


   …榛名。


   ……ごめんなさい、お姉さま。


   …。


   榛名は、大丈夫です。
   大丈夫、ですから…。


   ……。


   …だから。


   榛名。


   …はい、お姉さま。


   ごめん。


   …え。


   泣かせてしまって、ごめん。


   そ、そんな…。


   私は…鈍いから、どうして榛名が泣いてしまったのか、分からない。
   だからそれも、ごめん。


   ……。


   ねぇ、榛名。
   若しも怒っているのなら、言って。
   若しも悲しいと思っているのなら、言って。
   若しも…私に何か、思う事があるのなら。


   …おねえさまに、おもうこと。


   私に言いたい事があるのなら、言って。
   何でも、聞くから。


   …なんでも。


   私は…頼りない姉かも知れない。
   と言うか、頼りないと思う。
   金剛お姉さまのように、


   そ、そんな事…ッ!


   は、榛名?


   お姉さまは!
   比叡お姉さまは…!


   う、うん…。


   榛名にとって…榛名にとっては……とても…とても…。


   は、榛名…。


   ……。


   榛名…その、ごめん。
   だから、泣かないで。
   私は、榛名を泣かせたいわけじゃない。
   泣かせたくない。


   ……榛名、は。


   …。


   榛名は…お姉さまのその温かさが、大好きです。


   榛名…。


   真っ直ぐで…少し、不器用で…金剛お姉さまの事が大好きで…私と霧島には優しくて…。


   …霧島にはよく、もっとしっかりして下さいって怒られているけど。


   戦いになると、誰よりも勇敢で…凛々しくて。


   そ、そうかなぁ…霧島には「ひえぇ」とか情けない声出すなって言われたりしてるけど。


   …榛名を、庇って呉れて。
   守って、呉れて…。


   それは、然うだよ。


   …え。


   榛名は私の妹だから。


   …。


   ねぇ、榛名。
   私、決めている事があるんだ。
   聞いて呉れるかな。


   は、はい、なんでしょう…。


   もう、独りにはしないから。


   え…。


   あの頃のようにはもう、ならないから。


   あ。


   もう、二度と。
   榛名を独りにしない。


   あ、ああ……。


   多分、金剛お姉さまや霧島も然う思っていると思うけど。
   ううん、絶対思ってる。


   …あぁぁ。


   だから…その、もっと、甘えて呉れても良いと言うかね?
   金剛お姉さまみたいには出来ないと思う…と言うか、出来ないけど。


   …。


   でも!
   私、頑張るから!
   だから、ね!


   ……。


   …あ、あれ。
   あれ…。


   ……。


   は、榛名…榛名…。


   …聞いて。


   え、なに。


   …聞いて欲しいことが、あるんです。


   なに、榛名。
   なんでも言って。
   なんでも聞くから。


   …。


   私に、出来る事なら


   お姉さまにしか、出来ない事です…。


   私にしか…?
   うん、分かった。


   …いえ、出来ないかも知れません。


   え、然うなの。


   …でも、比叡お姉さまにしか言えないことです。


   う、うん、分かった。
   じゃ、来い。


   ……。


   …て、あれ。


   ……榛名は。


   う、うん。


   榛名は。


   お、おう。


   お姉さまが、好きです。


   ……へ。


   比叡お姉さまが、大好きです。


   ……。


   …榛名は、お姉さまと。


   うん、私も好きだよ。


   ……え。


   榛名の事。


   …。


   ね。


   …………。


   …お、おぉ?


   ……。


   榛名?
   榛名??


   ……そういうところも、大好きです。
   大好き、なんです…。


   え、えと、えぇと……。


   ……でも、そうじゃないんです。


   榛名、ごめん…ごめん。


   ……こまらせてしまって、ごめんなさい。


   榛名…榛名…。


   …赤城さんと、加賀さんのように。


   え…。


   なりたいんです…。


   赤城さんと、加賀さんのように…?
   榛名が…?


   ……。


   え、えと、榛名、空母になりたいの…?


   …。


   …え、ええと。
   改装すれば、なれる、かな…いや、無理、だよな…で、でも…。


   契りを、交わしたいんです。


   …契り?
   契りぃぃ…?!


   …。


   だ、誰と?!
   榛名、そんな人が


   比叡お姉さまです。


   …へ、私?


   榛名は、お姉さまと…。


   私、と…?


   赤城さんと、加賀さんのように…なりたいんです。


   ……はい?


   契りを、交わして…あの二人のよう、に。


   ………は、い?


   …お姉さまが、好きです。
   だから、榛名は…お姉さま、と…。


   ……え、と。


   ……。


   私、と…契り、を……赤城さん、と、加賀さんの、ような…………あの二人は、夫婦で……つまり、私と榛名が………。


   ……。


   ………えぇぇぇぇ!?


   …。


   あ、いや、は、榛名…?
   そ、それって…え、えぇぇ???


   ……ごめん、なさい。


   や、その、謝る事じゃない、けど。
   で、でも、なんで、私…?


   …。


   …あ、私が好きだから、か。
   と言うか、榛名の、好きって…つまり、その……その。


   ……お慕い、してます。
   ずっと、お慕いしてました…。


   ……ひえぇぇぇぇ。


   ……。


   は、榛名、が……。


   …聞いて、呉れて。


   ……わたし、を?
   や、でも…。


   ありがとう…ございました……。


   …あ。


   そして……困らせてしまって、ごめんなさい。


   あ、いや…そのぅ、榛名?
   私は…


   …ッ。


   あ。


   ………。


   榛名、榛名、どこへ行くの!
   待って、榛名…!








   それ、で。


   …はい。


   比叡姉さんは何をしているのでしょうか。


   あ、いや…その。


   何故、榛名を追いかけないで、何故、此処に?


   き、霧島、何故を二回言っちゃってるよ。
   め、珍しいね。


   わざとです。
   強調しているのが、分かりませんか。


   …はい、ごめんなさい。


   それで。
   何故?


   い、いや、追いかけようとしたんだよ。


   追いかけようと、した?


   榛名が飛び出して行って、だから私も直ぐに追いかけようとした。
   でも。


   でも、なんですか。


   その……あの。


   はっきりしませんね。


   き、霧島、眼鏡の位置直さないで。
   恐い、すっごい、怖い。


   ……。


   だ、だから、そのぅ……足の指を、ぶつけて。


   は?


   …ドアの角に右足の小指を思い切りぶつけて、そのまますっ転んで、顔から床に突っ込んで。


   ……。


   それで……その。


   …。


   あ、で、でも、起き上がって榛名が行ったと思う方へは行ったんだよ。
   で、探したんだけど…その、見つからなくて。


   本当に、ちゃんと、探したのですか。


   さ、探したよ。


   榛名が行きそうなところ、全て?


   う、うん…。


   …。


   …探したんだ。
   だけど…。


   …だけど?


   ……私、お姉さま失格かも知れない。


   …どう意味ですか。


   榛名が行きそうなところ……考えてみたらあまり、知らなくて。


   …。


   ……。


   今更、ですね。


   …う。


   そもそも比叡姉さんは金剛お姉さまの事ばかり見ていますから。


   ……はい。


   それでも榛名は比叡姉さんの事を見ていたんです。
   誰よりも、近くで。


   …然うなの。


   然うですよ。


   ……。


   これ以上は私の口から言うべきでは無いので、言いませんが。
   比叡姉さんは少し、いやかなり、鈍すぎなんです。


   …はい、すみません。


   私に謝ったところで、事態は収拾しません。
   榛名は依然として、何処かに行ったままです。


   ……。


   若しかしたら…戻ってこない可能性すら、あります。


   …!
   そ、そんなの…!


   そんなの、何ですか。


   …そんなの、駄目だよ。


   何が駄目なんですか。


   …榛名は。
   榛名は……。


   …。


   ……泣い、て。


   比叡姉さん。


   ……。


   比叡姉さんが今、すべき事。
   もっと、しっかり、考えて下さい。


   ……。


   私や金剛お姉さまを頼るだけでなく。
   比叡姉さんにしか出来ない事を…もっとよく、考えて下さい。


   ……私にしか。


   で、なければ…私は小一時間ほど、比叡姉さんに小言を言い続けるかも知れません。
   その時は勿論、正座をして頂きます。


   ひ、ひええぇぇ……。


   どうしますか。


   え、ええと…。


   …そこで本当に考えますか。


   ……ええ、と。





   比叡。





   こ、金剛お姉さま…。


   比叡らしくないデスネ。


   へ?


   比叡は頭で考えるより先に躰が動くものだと思ってマシタ。


   からだ、が…。


   比叡、今貴女がすべきコトはなんデスカ?
   何よりも優先して、すべきコトは。


   ……私の、すべき事。


   Yes。


   ………あ。


   Make sense?


   お姉さま!霧島!!


   なに、比叡。


   声が大きいです。


   私!榛名をもう一度!探してきます!!


   OK。
   行ってらっしゃい、比叡。


   二人で帰ってくるまで、戻ってくるのは禁止です。


   気合!入れて!!行きます!!!








   ……。


   ……。


   …其処で何をしているのですか。


   …。


   此処は……。


   …。


   …。


   ……。


   …私は部屋に戻りますが。
   貴女はどうしますか。


   …。


   お茶ぐらいは、淹れますが。


   …いいので、しょうか。


   何がですか。


   その…おじゃま、しても。


   構いません。


   でも…


   貴女が嫌だと言うのなら、無理にとは言いません。
   それでは。


   あ…。


   …。


   …いき、ます。


   然うですか。


   ……あの。


   何ですか。


   …ありがとう、ございます。


   お礼を言われる事はしていません。
   …立てますか。


   …はい、だいじょうぶです。








   榛名さん、ですか…?


   はい!
   見掛ませんでしたか?!


   ごめんなさい、綾波は……敷波、敷波はどう?


   あたし?
   あたしも、見てないなぁ。
   と言うか綾波と一緒にいたじゃん。


   …だよね。
   ごめんなさい、比叡さん…綾波たちは見かけてません。


   然うですか…うん、有難う御座います!


   あ、いえ…。


   でも、どうしたんですか?
   榛名さん、いつも比叡さんと一緒にいるのに。


   え。


   し、敷波。


   え、だってさぁ。
   なんか、いつも一緒にいるような感じじゃん?


   ……。


   ご、ごめんなさい。
   もう、敷波ったら。


   む。


   ………。


   あの…大丈夫ですか?


   …あ、はい、私は大丈夫です。
   気にしないで下さい。


   でも…。


   …姉妹喧嘩、とか?


   …!


   あ、いや……そういうわけじゃ。


   敷波…!


   だって比叡さんが榛名さんを探してることなんて滅多にないくらい、榛名さんって比叡さんと一緒にいるじゃん。
   榛名さんが比叡さんを探してることはあっても、さ。
   だから…


   ……。


   え、えと…敷波、もう止めて。


   …喧嘩じゃないんです。
   でも…その、ちょっと色々ありまして。


   本当にごめんなさい。
   …敷波のばか、にぶちん。


   えぇ、なんでよー…。








   ただいま、戻りました。


   お帰りなさい、加賀さん。
   急にふらっと何処かへ行ってしまうから…?


   ……。


   …?
   榛名、さん…?


   ……。


   加賀さん…?


   拾いました。


   拾った?


   はい。
   空母寮の脇、人が通らぬような場所で蹲っていたので。


   そんな所で…。


   ……。


   …加賀さんはどうしてそんな所に?


   気配がしたので。


   気配…ですか。


   ……。


   まさか戦艦の方だとは思いませんでしたが。


   …榛名さんはどうしてそんな所に?


   ……ごめんな、さい。


   え?


   …ごめんなさい…ごめんなさい…。


   …ええ、と。
   加賀さんは何か聞いていますか?


   いいえ、何も。
   何も言わなかったので。


   聞かないで、此処まで?


   ええ。


   …放っておけなかったのですか?


   然ういうわけでは無いけれど。


   じゃあ…どういうわけで?


   其処に居たから、声を掛けただけです。


   …では榛名さんが勝手に付いて来たと?


   いえ、其処に居られても仕方無いと思ったので。


   …と言う事は、加賀さんが連れてきたのですよね?


   然うとも言えます。


   …いや、然うとしか。


   ……。


   …なんだか。
   猫の子を拾ってきてしまったような、そんな趣を感じますね。


   猫の子、ですか。


   ……。


   あの、榛名さん。
   とりあえず、どうしますか?


   …。


   金剛さん達は恐らく、知りませんよね?
   榛名さんが此処に来ている事は。


   ……。


   えと…何か、あったのですか。
   空母寮に、来るなんて。


   …。


   空母の誰かに用事でもあったのですか。
   若しも然うならば、呼んできますが…。


   ……。


   …うーん。


   赤城さん。


   あ、はい、加賀さん。


   これを。


   それは…間宮さんの羊羹?


   はい。


   でも、どうして?


   赤城さんと一緒に食べたくなったので。


   …急に?


   ええ。


   餡蜜、食べたのに?


   別腹、と言うのでしょう?
   人の子は。


   それは…意味合いがちょっと違うと思います。


   然うなのですか?


   …多分、ですけど。


   お茶を淹れます。
   待っていて下さい。


   …加賀さん。


   はい。


   …お願いだから、黙って何処かへ行かないで。


   …。


   ……昨夜、加賀さんは高い熱を出したんです。


   …然うでしたね。


   …。


   けれど…。


   私が、どんな気持ちになったか。


   …赤城さん。


   ……。


   ……。


   ……お願い、行かないで。


   …分かりました。


   …。


   …赤城さん、とりあえず今は離して頂けますか。
   これだと…お茶が淹れられません。


   ……。


   …それで。
   貴女は、どうしますか。


   …。


   間宮さんの羊羹、要りませんか。
   切り分ける都合があるから、答えて呉れると良いのだけれど。


   …はるなが、いただいでも。
   いいのでしょうか…。


   …。


   ……はるなが、ここにいても。
   ほんとう、に…。


   赤城さん。


   …放り出せませんよね、流石に。


   ……。


   どうしますか。


   ……いただき、ます。


   では、そのように。








   榛名さん、ですか?
   此方には来てないと思いますが…姉さんは、見掛けましたか?


   吾輩は見てないぞ。


   …然う、ですか。


   どうかしたんですか?


   そういや比叡、いつも榛名がくっついておるのに、どうして今日は居ないのじゃ?


   ……。


   もう、姉さん。
   然ういう事は真っ直ぐに聞いては駄目ですよ。


   ?
   何故じゃ?


   ごめんなさい、比叡さん。


   あ、…うん、大丈夫です。
   気にしないで下さい。


   分かった。
   かくれんぼか、かくれんぼなんだな?
   そうなんだな?


   …え、と。


   もう、姉さんったら。
   そんな事言う口は、こうです。


   むぐぅ。


   兎に角、有難う御座います。
   他、行ってみます。


   あ、比叡さん。


   むぐ、むぐぅぅ。








   榛名?
   見てないよ。ねぇ、日向。


   …ああ、見てないな。
   此方には来てないと思うが…。


   ……然うですか。


   あーなになにぃ、喧嘩でもしたの?


   伊勢、不躾だぞ。


   や、喧嘩ってわけじゃないですけど…ね。


   だってさ、日向。
   榛名っていっつも、比叡にべったりじゃない?


   然うだとしても、行き成り聞くのは不躾だろう。


   …ええ、と。


   で、比叡。
   榛名とどうかしたの?


   伊勢。


   …あ、うん。
   ちょっと、はい。


   良かったら聞いてあげるけど。
   ねぇ、日向。


   伊勢、好奇心で首を突っ込むのは止めた方が良い。
   比叡が迷惑だろう。


   あー…。


   然うかなぁ。
   だって、話した方が楽になるって言うじゃない?


   然うだが…時と場合にも依るだろう。
   無理にでも吐かせるつもりか。


   ……。


   ねぇねぇ、比叡。


   だから、伊勢。


   伊勢、日向。


   なになに。


   …比叡、無理はしないで良いぞ。


   榛名ってそんなに私と一緒に居るかなぁ、と。


   居るね。
   ねぇ、日向。


   …然うだな、居るな。


   それは、いつも?


   いつも、は、無理じゃない?
   艦隊編成の都合もあるし。


   だが、大抵は一緒に居るな。
   と言うより、榛名が君の後ろにくっついてきている…と言った方が、正しいかも知れない。


   くっついて…。


   でもにこにこしてるよね、榛名って。
   比叡と一緒に居ると。


   ああ、然うだな。
   いつも笑っているな。


   ……いつも。


   相当、比叡の事が好きなんだと思うなぁ!
   比叡は全然、気付いてないみたいだけど!
   ね、日向。


   …伊勢、それは。


   ………。


   だって、好きじゃなきゃくっついて回らないじゃない?


   …君は少し、黙った方が良さそうだ。


   ……。


   うーー。


   …すまない、比叡。
   力になれないどころか、伊勢が余計な事を言ってしまって。








   やっぱり、美味しいですね。


   はい。


   ……。


   別腹…でしたね。


   はい。


   ……。


   でも…黙って何処かに行かないで下さいね。


   約束します。


   ……あ、の。


   加賀さん、あの。


   お茶のお代わり、如何ですか。


   …えと。


   あ、はい、頂きます。
   有難う御座います、加賀さん。


   どういたしまして。
   榛名さん。


   あ…はい。


   間宮さんの羊羹、あまり好きではありませんか…?


   ついでに淹れますが。
   どうしますか。


   え、えと…。


   加賀さん、もう一切れ…良いですか。


   勿論です、赤城さん。


   ……う。


   榛名さんも、どうぞ遠慮しないで下さいね。


   お茶、飲んでいないようですね。
   淹れ直しましょうか。


   あ、あの…!


   はい、何でしょう?


   何でしょうか。


   あ、赤城さんと加賀さんは…ふ、夫婦なのですよね。


   あ…え、と、はい。


   然うですが…それが何か。


   ふ、夫婦って…どんな感じなのでしょうか。


   どんな感じ…ですか?


   …どう、と言われても。
   夫婦は夫婦です。


   …榛名、は。


   …?


   …。


   ……お二人が、羨ましいです。


   羨ましい…私達が?


   何故?


   ……。


   榛名さん?


   …。


   …ごめんなさい。
   榛名、お二人のお邪魔をしてますね…。


   そんな事は。
   ねぇ、加賀さん。


   邪魔だとは思っていません。


   ……。


   榛名さん、どうかされたのですか。


   赤城さん、お茶を。


   ……榛名、好きな人が居るんです。


   有難う御座います、加賀さん。
   好きな人、ですか。


   熱いので気を付けて下さい。


   …傍に居られるだけで良いって、思っていたんです。


   はい、気を付けますね。
   傍に居られるだけで良い…ですか。


   …。


   …はい。
   でも、榛名は……それだけでは、足りなくなってしまって。


   ……。


   ……。


   ……困らせて、しまいました。


   …。


   本当に?


   …え。


   加賀さん?


   相手は本当に困ってしまったのですか。


   ……。


   加賀さん、それはどう意味ですか?


   好意を向けられて果たして困るものなのでしょうか。


   ……でも、お姉さまは。
   あ…。


   お姉さま…金剛さん?


   喧しい二番艦の可能性もありますね。


   や、やかましくなんてありません…!
   比叡お姉さまは…!


   …。


   …。


   ……あ。


   …。


   …。


   あ、あの……その。


   然う言えば、今日は比叡さんと一緒では無いのですね。


   静かだと思いました。


   比叡お姉さまは喧しくなんて、ありません…。
   比叡お姉さまは優しくて、真っ直ぐで、不器用で、嘘が下手で……。


   …。


   …。


   榛名は……。


   …榛名さんは比叡さんの事が好きなのですか。


   ……。


   ……榛名、は。


   …。


   ならば、その想いをちゃんと告げたらどうかしら。


   …!


   加賀さん。


   違いますか。


   …。


   違いません、けど…。


   きちんと告げるべきだと私は思います。
   そこまで想っているのならば。


   ……。


   …然うですね。
   加賀さんの言う通りです。


   …。


   ……じゃ、ないんです。


   え?


   …。


   …赤城さんと、加賀さんのようには、いかないんです。
   出逢ったその日に契りを交わしたお二人のようには…


   それは、


   然うでしょうね。


   …。


   …榛名さんと比叡さんは、


   赤城さんと私では無いのだから。


   ……。


   …けれど。


   そんなに想うなら、ちゃんと告げるべきだわ。


   ……告げたんです。


   …。


   …。


   …好きです、って。
   でも……お姉さま、は。








   キミ、そんなとこで何してんの。


   ……うぅぅ。


   ここ、空母寮なんやけど。


   …龍驤さん。


   戦艦が空母寮に来るなんて珍しいな。
   誰ぞに用でもあるの。


   ……榛名、を。


   そういや、いつもちまちまとくっついてる妹が居ないみたいやけど。
   髪が長い方の。


   …龍驤さぁぁぁぁん!!!


   わ、なに…ッ!


   榛名を、榛名をぉぉぉ!


   は、榛名がなんやねん…ッ!


   榛名を、見ませんでしたかぁぁぁ…ッ!!


   見てないわ…っ!
   ウチはたった今、任務からも戻ってきたばかりで…


   見つからないんです…ッ!
   皆、見てないって…ッ!


   し、知らんがなぁぁ…ッ!


   このままだと私、霧島に、霧島にぃぃ…ッ!!


   と、とりあえず、離れ…


   はーるーーなーーーーー!!


   やかましいわ、ぼけぇぇ…ッ!!!


   はーるーーなーー!!どーこーーー!!








   …!


   …?
   外が…。


   何やら、騒がしいですね。


   ……あの、声。


   あの、加賀さん。
   最後の一切れ、なんですが…。


   どうぞ、赤城さん。


   ……若しかして、お姉さまが。


   い、いえ、最後なので加賀さんこそどうぞ…。


   いいえ、赤城さん。
   どうぞ。


   ……榛名を、探して。


   でも加賀さんが買ってきて呉れたのですし…。


   赤城さんと食べる為に買ってきたのですから。
   最後の一切れは赤城さん、どうぞ。


   ……どう、しよう。


   でもそれだと私、食い意地張ってるみたいじゃないですか…。


   然うですか?
   私は然う思いませんが。


   ……比叡お姉さま。


   然うですよ…だから、これは加賀さんが。


   私はとても好ましいと思っていますが。


   ……。


   …好ましいって。


   たくさん食べる赤城さんはとても好ましいです。


   …これ、以上。


   も、もう、加賀さんはいつも然う言って…。


   どうぞ、赤城さん。


   ……でも。


   然うです、はんぶんこ、はんぶんこにしましょう。


   はんぶんこ、ですか。


   ………お姉さま、ごめんなさい。


   はい。
   はんぶんこ、です。


   …。


   …榛名は、悪い子です。


   ね、加賀さん。
   はんぶんこにしましょう?


   …分かりました。
   では、





   赤城、加賀、居るかぁ!!





   榛名…!


   …っ。


   やっと!見つけた!


   ……。


   榛名?


   …は、榛名は。


   うん。


   …榛名では、ありません。
   人違いです…。


   え?


   …お姉さまの、人違いです。


   然うなの…!?


   はい…然う、です。


   え、えええええ……。


   んなわけあるかい、このぼけども…!!!


   …ぴゃッ。


   痛い…ッ!!


   どっかからどう見ても榛名やろが…!
   大体、自分の事榛名って言うてるし、比叡の事はお姉さまって言うてるやろ…!!


   …あ、う。


   う、ううう……。


   ともあれ、ウチはもう行くで!
   赤城!加賀!!邪魔したな!
   たく、任務から帰ってきた早々!
   何やねん、全く…!








   ……。


   ……。


   …あの、榛名?


   ……。


   ええ、と…。


   …。


   …なんて、赤城さんの後ろに隠れてるの?


   ……隠れてません。


   じゃ、じゃあ、なんで赤城さんの後ろに居るの…?


   ……。


   や、だからって、なんで加賀さんの後ろに移動するの…。


   …お姉さま。


   う、うん。


   …どうして、榛名を探しに来たんですか。


   いや、それは…。


   …霧島に、言われたんですね。


   え、いや、その…。


   ……然う、なんですね。


   ……。


   …嘘が、本当に。


   違うよ。


   …。


   確かに霧島にも言われたけど、違うよ。


   ……でも。


   榛名、帰ろう?
   ね?


   ……。


   赤城さん、加賀さん。
   榛名と一緒に居て呉れて、本当に有難う御座います。


   …帰りません。


   榛名?


   ……榛名は、帰りません。


   …どうして。


   ………。


   でも榛名、此処は空母寮で、もっと言えば赤城さんと加賀さんの部屋で。
   榛名の部屋は…。


   ……。


   …榛名。


   ……榛名は、お姉さまを困らせました。


   そんな事…!


   ……だから、帰れません。


   私は!困ってなんか!!ない!!!


   あ…。


   加賀さん、後ろすみません!!!


   …。


   赤城さん、すみません!


   …あ、やだ。


   やっと、捕まえた!


   お、お姉さま…。


   榛名!


   は、はい。


   私、ずっと分かってなかった!


   え。


   榛名がずっと、私の傍に居た事!
   ずっと、分かってなかった!!
   ごめん!!


   そ、それは…だって、榛名が。


   こんな鈍い姉で、榛名はもう、嫌になったかも知れないけど…!


   そ、そんな事は…。


   榛名…!


   は、はい…!


   ……。


   …お、お姉さま?


   帰ろう…榛名。


   …。


   …帰ろう?


   ……でも。


   榛名の気持ち…ちゃんと、考えたいんだ。


   …。


   その…困ってなんか、ないから。
   そ、そりゃ、少し…いや、かなり吃驚はしたけど……その、困ってはいないから。


   比叡、お姉さま……。


   …榛名。
   私は、その……ふ、夫婦、とか、良く分かってないけど。
   でも…その、榛名の事は好きだし……その、傍に居て欲しいって、その…思う、から。
   だから…そのぅ。


   ……。


   え、と……私と、帰ろう?


   ………。


   …だ、だめ?


   ……ごめんなさい、お姉さま。


   あ、ああ…。


   …ごめんなさい、赤城さん、加賀さん。
   榛名、お二人にいっぱいご迷惑を掛けてしまいました…。


   …榛名?


   お姉さま…榛名、お姉さまと帰ります。


   !
   榛名…!


   …ぴゃッ?


   榛名!榛名ぁ!!


   お、おおおお姉さま…ッ。


   良かった、良かったよぅ……。


   ……!


   …?
   榛名…?


   ……。


   榛名ぁぁぁぁぁ…!!!








   こ、こうそくせんかんはるな、ほんじつちゃくにんしました.…。


   …。


   あ、あの…。


   待ってたよ、榛名!


   あ…。


   私は、比叡。
   分かる?


   …え、と。
   おねえさま…ですよね。


   うん、然うだよ。


   …あの、ひえいおねえさま。


   うん、なに?


   その、こんごうおねえさまときりしまは…。


   遠征に行ってるんだ。
   帰りは明日になる予定で。


   …そう、なんですか。


   本当は三人で迎えたかったんだけど。
   ごめんね、榛名。


   い、いいえ…はるなは、だいじょうぶです。


   ほんとに?


   ひえいおねえさまがおむかえしてくれて…はるな、うれしいです。


   そっか。
   へへ、良かった。


   …あ。


   じゃ、行こうか。


   …え。


   部屋に。
   榛名は私達と一緒だよ。


   は、はい。


   と、言ってもお姉さま達は居ないから。
   今日は、私と二人なんだけどね。


   はるな、ひえいおねえさまとごいっしょでうれしいです。


   はは、私も嬉しいな。
   やっと、四人揃ったから。


   …。


   ん、なに?
   どした?


   あの、おねえさま…。


   ん?


   ……。


   榛名?


   …い、いえ。
   はるなは、だいじょうぶです…。


   ……。


   …。


   ねぇ、榛名。


   は、はい、おねえさま。


   手、繋ごうか。


   え。


   はい。


   え、え…あ。


   へへ、繋いじゃった。


   ……。


   私さ、霧島に良く怒られたりするんだー。
   もっとしっかりしろって。


   そ、そうなんですか。


   うん、然うなの。


   ……。


   金剛お姉さまみたいに、振る舞えないし。
   少しでも近づけるようにって、頑張ってはいるんだけど…。


   おねえさま…。


   ねぇ、榛名。


   …はい。


   頼りにならないかも知れないけど。
   私、頑張るから。


   …。


   何かあったら、言って。
   直ぐに。


   なにか、あったら…。


   榛名の為なら、私は、頑張れるから。


   …!


   なんて。
   霧島には内緒ね?
   多分、怒られちゃうから。


   ……。


   ん、良かった。
   然うだ、部屋に行く前にちょっとお散歩しよっか。
   案内も兼ねて。


   …ありがとう、ございます。


   どう、いたしまして。


   ……。


   ……。


   …?
   おねえさま…?


   やっぱり、嬉しいな!


   ひゃ……。


   榛名が!来て呉れて!嬉しい!!


   お、おおおねえさま……。


   榛名!


   は、はい…!!


   これから、宜しくね。
   ずっと、ずぅっと!宜しくね。


   こ、こちらこそ、よろしくおねがいします…。


   うん!


   ……お、おねえさま。


   なに、榛名?


   あの……くるしい、です。


   あ、ごめん。


   …い、いえ。


   …。


   …。


   榛名。


   …はい、おねえさま。


   榛名


   はい、おねえさま。


   ふふ、榛名。


   おねえさま。


   あー、やっぱり嬉しい!
   嬉しいな!!


   …はるな、も。
   すごく、すごく…。









   …しあわせ、です。


   うん?


   ……おねえさま。


   榛名、気が付いた?


   ……。


   榛名。


   …?


   良かった、気が付いたんだね。


   ……!


   私の事、分かる?


   …あ、あの。


   分からない…?


   …ひえい、おねえさまです。


   うん、然う。
   良かった。


   あ、あの…榛名…。


   いきなり、気を失ったんだよ。
   すっごく、心配した。


   ……。


   んー、日が暮れてきちゃった。
   お姉さまと霧島、待ってて呉れてるかな。
   呉れてるよね。


   …ごめんなさい、お姉さま。


   ううん、良いんだよ。


   でも…。


   良いんだって。


   …。


   赤城さんと加賀さんにはちゃんと、お礼言ってきたから。
   心配しないで良いよ。


   …は、い。


   …。


   …。


   …ほら榛名、見て。
   夕焼けが綺麗だ。


   …。


   海から見るのと、陸から見るの。
   同じ筈なのに何処か、違うよね。
   なんでかなぁ。


   …。


   海からだとこうやってゆっくり見てる暇が無いから、かなぁ。
   ねぇ、榛名。榛名はどう思う?


   …あの、お姉さま。


   ん。


   ……榛名、自分で歩けます。
   だから…。


   やーだ。


   え。


   下ろさないよー。


   で、でも…。


   ……。


   お、お姉さま…。


   …榛名は、さ。


   は、はい…。


   私のどこが、好きなの?


   え…。


   どこが好きなのかなぁって。


   そ、それは……。


   …時々、思い出すんだ。


   …え。


   あの頃の私。


   あの、ころ…?


   あの戦で最初に、たった一人で、沈んだ。
   然う、誰よりも先に。


   あ…。


   戦艦だった時間も、短くて。


   ……。


   私は…今でも。
   ちゃんと戦えているのか、分からない。


   そ、そんな事…!


   いつ、見捨てられるのか。
   いつ、要らないとされるか。
   どんなに頑張っても、


   榛名は…ッ。


   …。


   榛名は、榛名はお姉さまが大好きです…。


   …榛名。


   お姉さまの笑った顔が好き…お姉さまの不器用なところが好き…お姉さまの真っ直ぐな眼差しが好き……。


   …。


   …お姉さまの柔らかい手が好き…お姉さまの温かい背中が好き……おひさまみたいな心が、好き…。


   …。


   ……大好き、なんです。


   ……榛名。


   お姉さまは榛名の…誰よりも、大切な人です…。


   ……本当に私なんかで、良いのかな。


   お姉さまじゃなきゃ、駄目なんです…。


   …。


   …お姉さまを、愛しているんです。


   ……私は。


   …。


   …私も、榛名の事が好きだよ。


   おねえ、さま……。


   …。


   ……。


   …あの、さ。
   若しも、若しも、ね…?


   …はい。


   えと、赤城さんと加賀さんみたいに…私達も、その、夫婦になったら。


   ……。


   榛名は私の事……なんて、呼ぶの?


   ……え。


   あ、いや、夫婦、だし…お姉さま、は、変かなぁって。


   ………。


   や、べ、別にお姉さまでも良いんだけど…。


   …若しも、なれるなら。


   …。


   ……。


   …え、えと。
   試しに名前で呼んでみてよ。


   …名前、ですか。


   うん、名前。
   勿論、お姉さまは無しでね。


   ……。


   え、えと。
   赤城さんと加賀さんみたいにさん付けでも良いから。


   …。


   …。


   ……ひ。


   う、うん。


   ………。


   …。


   ……ひえい、さん。


   …ッ。


   ……。


   あ、あー………。


   ……。


   …ぐえ。


   ……榛名、死んでしまいそうです。


   え、な、なんで…。


   ……。


   …うん、私も。


   ………。


   ……。


   ……お姉さま。


   なに、榛名……。


   ……大好き、です。


   うん…ありがとう、榛名。


   ……赤城さんと加賀さんのようには、なれなくても。


   …。


   お姉さまのお傍に居る事が出来るのなら、榛名はそれだけで…。


   …私、頭悪いから。


   …。


   でも、頑張るよ。


   ……。


   頑張るから、だから、榛名。


   …はい。


   傍に、居て欲しい。


   …。


   …夫婦とか、未だ分からないけど。


   ……はい。


   それでも…。


   …お傍に、居させて下さい。


   ……。


   ……ずっと、お傍に。


   …ありがとう、榛名。








   ……。


   ……。


   …嵐の様、でしたね。


   …相変わらず、騒がしい事です。


   …。


   …。


   …でも少し、可笑しかったです。


   …然うですか?


   はい。


   …然う。


   …。


   …。


   榛名さん、結局羊羹食べませんでしたね。


   然うですね。


   …。


   …。


   ……ふふ。


   …可笑しい、ですか?


   はい、とても。


   …あの二人は。


   気になりますか?


   いえ、特段。


   …然う?


   はい。
   赤城さんは気になりますか?


   然うね…少しだけ。


   …少しだけ、ですか。


   はい、少しだけ。
   …ね。


   ……。


   …私達は夫婦、なのですね。


   …ええ。


   皆に然う、思われているのですね。


   …然うみたいですね。


   ふふ…ふふ。


   …楽しそうですね。


   と言うより、嬉しいんです。


   …。


   …榛名さんの想い、叶うと良いですね。


   さぁ、どうでしょう。


   …もう、加賀さんったら。


   ですが。


   …ん。


   赤城さんが然う、願うなら。
   私も然う、願う事にするわ。


   ……もう、素直じゃない。


   然うかしら。


   …然うですよ。


   ……。


   ん…加賀さん。


   …静かに、なりました。


   ……ええ。


   ……。


   …今日はもう、何処にも行かないで下さい。


   …行きません。
   行くのなら…赤城さんと一緒に。


   …絶対、ですよ。


   はい…絶対、です。


   ん……。


   ……。


   ……ふふ。


   …可笑しい?


   ……羊羹の味が、したので。


   …ああ。


   貴女との口付けはいつも、甘いけれど…。


   ……。


   ね……もっと、深く口付けたら。
   もっと、するかしら…。


   …試してみますか。


   はい…是非。


   ……。


   …加賀さん。


   ……赤城さん。


   …ん、…ふ…。


   ……。


   …ぁ、……んん。


   ………。


   …ふ、ぁ……ん、……。


   ……。


   …かが、さん。


   ……どう、でしたか。


   …した、けれど。


   けれど…?


   ……やっぱり、あなたのほうがあまいなって。


   …。


   ……ね、かがさん。


   …なに。


   ………もっと、してください。


   …あなたのきが、すむまで。








   ...the second