パ ラ ソ ル さ し て






   1




   『…まぁ、と言うわけ』


   …そう。


   『あれ、どうでも良かった?』


   …いいえ。
   わざわざ知らせてくれてありがとう。


   『んー…ありがとうって、声じゃないなぁ』


   …そう、かしら。


   『うん』


   ……。


   『え、なぁに?まさか自分だけ知らなかった、みたいな感じになっちゃった?』


   …そういうわけでは無いわよ。
   ただ、私はもう離れた人間だから。


   『…そう言う言い方、らしくないなぁ?』


   ……とにかく。
   ありがとう。


   『お礼、言われるような事はしてないよ』


   でも、そのままだと確実に風邪をひかせてしまっていただろうし、
   ご家族の方にも心配させてしまっただろうから。


   『そもそも私があの子を放っておくと思う?』


   …ふふ、そうね。


   『はは、そうそう』


   ……ねぇ。


   『ん?』


   離れてしまうと本当に分からなくなってしまうものなのね…。


   『………』


   …でも、気持ちだけはここに生きているから。
   だから…


   『…うん』


   ……貴女は。


   『私?』


   …淋しいと思わないの?


   『…珍しいね?』


   …そう?


   『何となく』


   …そう、かもね。


   『私はあまり思わないんだ』


   …そう。


   『でも。
   淋しいとは違うけどそれなりに思うことはあるよ、たまにね。』


   …。


   『……あの、さ?』


   …うん。


   『あの頃はね、実は由乃ちゃんも構いたかったんだ』


   …見てて分かった。


   『え、本当?』


   ええ。


   『流石、付き合い6年間?』


   ふふ…そうね、リリアンを6年間過ごす中でなんだかんだ言いながらも一番関わったような気がするし。
   それこそ姉妹以上に。


   『ま、良くしたよね、喧嘩は』


   …ええ、本当に。
   大抵は私のお節介から始まって。


   『私が鬱陶しがって?』


   ええ。


   『…でも今の私があるのは貴女のおかげでもあるんだよなぁ』


   …。


   『なんて。へへ』


   ……。


   『…ま、そんなわけで由乃ちゃんとも遊びたかったわけよ』


   …うん。


   『けど…あそこんちはあんなだったから』


   分かる。
   江利子も凄く可愛がっていたから。


   『でしょ?付け入る隙、無かったんだよねぇ』


   ……。


   『…だからって貴女が隙だらけだった、ってわけじゃないわよ?』


   …本当に?


   『だって可愛がっていたでしょう?』


   ……。


   『違うの?』


   …いいえ、違わない。


   『でしょう?』


   ……ええ。


   『でもさ、貴女のところは面白かったからどうしても構いたくてね』


   …ありがとう。


   『あれ?』


   そのおかげで。
   私の孫は風邪をひかなくて済んだし、多分、ある程度は救われたと思うから。


   『救うだなんて。そんな大層なコトじゃないって』


   …いいえ、それでも貴女が居てくれて良かったわ。


   『私だけじゃないよ』


   貴女のお友達も。


   『……』


   …今日は本当にありがとう。
   知らせてくれて。


   『……あの、さ』


   …なに。


   『なんか、変だよ』


   …なにが。


   『らしくない』


   …。


   『どうした?なんか、あった?』


   …あったとしたら今、ね。


   『…え』


   ううん、何でもない。


   『……蓉子、さ』


   ごめんなさい。
   大学のレジメの途中だから。


   『…そか』


   …じゃあ。


   『あの、さ』


   …うん?


   『携帯、なんだ』


   …けいたい?


   『電話』


   そう、買ったの?


   『大学生らしいでしょや?』


   今時、大学生じゃなくても持ってるわよ。


   『蓉子も?』


   …私?


   『もしかしてもう、持ってるの』


   …ええ、一応。


   『ええ…』


   …ショック?


   『つまんない』


   …。


   『教えてくれれば良いのに』


   …教えるって。


   『江利子は知ってるの?』


   …ええ、この間一緒にご飯を食べた時に。


   『ご飯、食べたの?』


   ええ。


   『……』


   聖…?


   『…別に良いけど』


   …ごめんなさい。


   『…なんで?』


   ただ、電話を掛ける程の用が無くて…だから


   『蓉子、さ』


   ……。


   『私だって電話掛けるの、結構緊張したんだよ』


   ……聖が?


   『だって蓉子、大した用事も無く掛けたら迷惑するかな、て。
   …忙しいだろうから』


   …。


   『……だから、言葉は悪いけど、今回の事は』


   …それ以上は言わないで。


   『…ごめん』


   …でも迷惑だなんて思わないから。


   『…本当?』


   ええ。


   『そっか…私もだよ』


   …。


   『…』


   …そろそろ、切るわね?


   『あ、うん…あ、待った』


   うん?


   『番号、教えてよ』


   …。


   『携帯の。あとアドレスとか』


   …ああ、そうね。


   『…気乗り、してない』


   聖。


   『…なに』


   貴女の番号を今、教えて。


   『へ?』


   この電話を切ったら、掛けなおすから。


   『あ…』


   ね?


   『分かった!んじゃ…』


   …うん…うん。
   確認するわね…


   『…うん、ばっちり合ってる。
   でもってアドレスは…』


   …今度、会えないかしら。


   『え?』


   後で掛けなおした時に、会う話が出来れば…て。
   アドレスはその時に…。


   『…』


   …メールより、直接話して決めたいわ。


   『…でもレジメは大丈夫?』


   大丈夫、終わらせてから掛けるから。


   『…流石です』


   遅くならないようにするから。


   『ん、分かった。待ってる』


   じゃあ…また後で。


   『うん、後で』


   …じゃ。


   『…蓉子』


   …ん?


   『待ってる、ね』


   ……うん。






   2




   『こちら…留守番電話サービスです。只今電話に出ることが出来ません…』



   『…蓉子です。ごめんなさい、急な用事が入ってしまって今日は行けなくなりました。
   出来れば日を改めて後日と言う事にしたいので、用事が済み次第また連絡します。
   折角久しぶりに会えると思っていたのに…ごめんなさい』








   『蓉子』


   ああ聖、丁度良かった。
   今から


   『どうして今日、来なかったの?』


   …え。


   『ずっと待ってたのに』


   待ってた…?


   『そうだよ。指定された場所、時間で。
   私にしては珍しく遅刻もしないで、しかも一寸早めに行っちゃったりもしてさ』


   …。


   『聞いているの、蓉子』


   あ、ああ、ごめんなさい。
   聞いているわ。


   『で?何で来なかったの?蓉子とあろうものがすっぽかし?それとも私なんかに会ってる暇なんてやっぱり無かった?』


   ま、待って、聖。


   『着信があったから何かあったのかと思って携帯に電話しても繋がらないし、待っててもやっぱり来ないし…!』


   聞いて、聖。
   私、貴女の携帯の留守番サービスに…


   『…ずっと待ってた、待ってるのに』


   …?


   『……』


   待ってる…て。
   未だ、居るの?


   『………』


   …!


   『……帰るよ、もう』


   聖…!


   『…兎に角、無事で良かった。じゃあ…』


   聖、待って、切らないで…!!


   『……』


   今から行くわ、行くから…!!


   『…もう、良いよ』


   聖、行くわ!私行くから!
   待ってて、お願いだから待ってて…!


   『……待つのは、いやだ』


   絶対に行く!
   行くから…!
   待ってて、待ってて…!








   …。


   聖…!


   ……。


   はぁ…はぁ…。


   …良く、来れたね。


   …聖。


   …でも良かった。


   聖、傘は…。


   今日、降るなんて言ったっけ…。


   ……。


   ああ、梅雨だもんねぇ…。


   聖、これを使って。


   …。


   二本、持ってきたから。


   …要らない。


   でも濡れちゃうわ。


   もう濡れてるよ。


   …。


   だから、入れて。


   え。


   蓉子の傘に。


   二人だと


   入れて。


   …分かったわ。


   ……。


   …ねぇ、聖。


   ……今日、どうして来なかったの。


   今日は…。


   ……楽しみにしてた。
   莫迦みたいに。


   え…。


   ……本当、何浮かれてたんだろうね。
   他の女の子とご飯食べるくらいなら、何とも無いのに。


   …。


   ……蓉子と久しぶりに会うだけなのに、なぁ。


   ……。


   …とりあえず、帰ろうか。
   こんな格好じゃ、ごはん、食べに行けない。


   …ええ。


   …ああ、そっちじゃないよ。


   え?


   こっち。


   …?


   言ってなかったっけね。
   私、一人で暮らしてるんだ。
   アパートに。


   そうなの?


   うん。
   その辺のコト、今日話そうと思ったんけど…。


   ……ごめんなさい。


   ……。


   留守番電話なんかじゃなくて、直接話せば良かった。


   …留守番?


   携帯のサービスであるでしょう?


   …あんの?


   ……聖?


   ………えーと。
   どこに?


   ………。


   いや、普段はメールとか辞書代わりとかにしか使わないから。


   …やっぱり、ちゃんと話せば良かったわね。


   留守番電話………ああ、なんだ。
   なんだ…はは、ははは。


   聖。


   ………ああ、もう、格好悪い。


   ……。


   格好、悪いなぁ…。


   …?
   聖…?


   ……。


   聖?
   聖、どうしたの?


   ……何かおかしくなっちゃった。


   何かって……あ。


   …うん、なに?


   貴女…。


   ……てかさ。
   今日、少し寒くない…?


   ねぇ、聖。


   んー…?


   貴女の部屋、ここから遠いの?


   んー……普通?


   普通って。
   じゃあ私の家とだったら?


   …蓉子んちの方が近いかなぁ。
   でも大して…


   …。


   でも、なんで?


   聖、明日大学は何時限から?


   …明日は


   いいえ、そんな事は良いわ。


   …へ?


   聖、うちに来て。


   ………はい?


   良いから。
   さぁ。


   え、ちょ、蓉子…?


   タクシーは…!






   3




   …。


   ああ、聖。
   出た?


   …うん。
   きもち、よかった。


   温まった?


   うん。
   …え、と、私の服は?


   服は洗濯してから乾燥機に入れるから。
   乾くまでは少し小さいかもしれないけれど、私の部屋着で我慢して。
   下着は新しいのだから。


   …良いの?


   何が?


   私が着ても。


   …良いわよ。


   ……。


   …ええ、と。
   着替えたら、ご飯にするから。


   …うん。


   大きめの服だから大丈夫だとは思うけど…。


   …うん、へーき。


   そう。


   …しょ、と。


   …。


   …んー。


   …着替えた?
   開けても良い?


   うん…。


   あ、タオルは貰うわ。


   …はい。


   …。


   なに…?


   …やっぱり、丈が足りてないわね。


   …そんなこと、無いよ。


   貴女、手足が長いから。


   …そうかなぁ。
   蓉子の手足だってキレイだと思うけどなぁ…。


   …。


   …なに?


   …いいえ。


   ……。


   じゃあ、こっちに来て。


   どこ?


   …付いて来て?


   うん、ついてく。


   ……。


   ……。


   …。


   ここ…。


   …あのね、聖。


   うん。


   …これ、ね。
   作ってみたの。


   …これ、なに?


   かきたまうどん。


   …かきたまうどん。


   とろみをつけて、卵を散らしてあるの。
   体が温まるのよ。


   へぇ…。


   今日は両親の帰りが遅いのよ。
   だから、と言うわけではないのだけど。


   …。


   口に合わなかったらごめんなさい。
   でも体は温まるから。


   …。


   七味、使うのならこれ。


   ……。


   聖?
   大丈夫?


   …ちょっと頭の中がぼんやりする。


   …。


   …とりあえず、座って。
   ね?


   うん…。


   寒くない?


   うん、へーき…。
   たべても、いい?


   え、ええ、どうぞ。


   …えと、いただきます。


   お水、要る?
   お茶の方が良いかしら。


   …。


   そうそう、熱いから火傷しないように気をつけてね。


   ……あ。


   私、小さい頃に


   ねぇ、蓉子…。


   …ん?


   うどん、おいしい。


   …そ?


   外で食べるよりずっと、おいしい…。


   …良かった。


   これ、かきたまうどんって言うんだ…。


   あんかけの中に溶き卵を落とすの。
   普通のより冷めにくいし、何より、体が温まるのよ。


   …はじめてたべた。


   うちの、風邪をひいた時の定番なの。


   …へぇ。


   さて、と。


   蓉子。


   うん?


   蓉子は食べないの…?


   私は


   一緒に食べよう…?


   でも聖の分しか


   …一人より、蓉子と一緒が良いよ。


   ……。


   …あつ。


   ああ、気をつけて。


   ……うん。


   聖。


   …ん。


   顔、少し赤いみたい。
   寒くない?


   …だいじょーぶ。


   …。


   な、に…。


   ……やっぱり少し熱い。
   微熱があるのかも知れない。


   ……。


   雨に濡れたから。


   …これじゃあの日の祐巳ちゃんみたいだねぇ。


   でも貴女と貴女の友達のおかげで祐巳ちゃんは風邪をひかなかったのでしょう?


   …多分、ね。


   ありがとう。


   ……。


   貴女がリリアンにいてくれて良かった。


   …あぁ。


   祐巳ちゃんにとって貴女の存在は…。


   …よーこ。


   …。


   お茶、貰っても良いかな…?


   …ええ。
   直ぐに淹れるわね。






   4




   …。


   …。


   …ふぅ。


   …。


   ごちそうさま。
   ありがとう、おいしかった…。


   …うん。


   …。


   …。


   …服。


   まだ、かかるから…。


   …そっか。


   …。


   …あの、さ。


   なに…。


   …ここまで厄介になっておいてなんだけど。


   厄介じゃない。


   え…。


   …私が好きでやったコトだから。


   あ、うん…。


   寧ろ、ありがた迷惑だったでしょう…?


   …そんなこと、ない。


   ……。


   …ぜったい、に。


   …うん。


   それに…


   …?


   私は蓉子を…連れて行くつもりだった。


   …つれて?


   自分の部屋に。
   若しも蓉子が本当に来たら…。


   ……。


   …だから、良いのよ。


   ……。


   …けど、さ。


   …ん。


   来てくれて…良かった。


   …聖。


   本当に…。


   聖。


   ……。


   顔が赤い。
   やっぱり熱が出てきたんだわ。


   …ん。


   今夜は…


   服が乾いたら…帰るよ。


   …。


   帰るから…。


   泊まっていって。


   …。


   気兼ねするかも知れないけど、大丈夫だから。


   …くれるの。


   私のベッドでは慣れないだろうけど、けど。


   …そばに、いてくれるの。


   …っ


   そばに……いて。


   ……聖。


   …よーこ。


   いる、いるから…。


   ……あぁ。


   あ…。


   ……。


   聖…!






   5




   ……はぁ。


   …。


   よーこ…。


   …大丈夫。


   …よーこ。


   大丈夫よ…。


   はぁ…。


   ……38度8分。
   大分高い…。


   ……よぉ、こ。


   何か、飲む?


   ……いい。


   じゃあ喉が渇いたら言って?
   ね…?


   …う、ん。


   …。


   ……よーこ。


   うん…?


   ……。


   …一晩眠れば。
   明日は屹度、大丈夫。


   はぁ…。


   …もしも、熱が下がらなかったら。
   お医者さんに…


   …やだ。


   私も行くから。


   やだ…。


   …。


   医者は…。


   でもお薬を貰えば


   よーこがいれば…それで、いい。


   ……。


   よーこ…よーこ…。


   聖…、聖…。


   ……。


   …今夜は傍にいるから。
   少しでも良い、眠って…?


   ……う、ん。


   …。


   …はぁ…。


   …。


   …どこ、いくの。


   いつでも飲めるように、お水を持ってきておくの。
   そうだ、確かお父さんのスポーツドリンクが…


   いかないで。


   …。


   いかないで、よーこ。


   ……聖。


   そばにいるって、いった…。


   ええ、だからその為に


   ひとりに、しないで…。


   あ…。


   …しないで。


   分かった、分かったから…。


   ……。


   横になって…お願いだから。


   …そばに、いて。


   ……。


   い、て……。


   いる…いるわ、聖…。








   ……うぅ。


   眠れないのね…。


   ……。


   ひどい汗…。


   よぉ…こ…。


   …大丈夫、大丈夫よ。


   て…。


   …?


   て、を…。


   ……ええ。


   …。


   繋いでいるから。


   ……。


   屹度、繋いでいるから…。


   ……はぁ。


   だから、目を瞑って…。






   6




   ……。


   …。


   …。


   …?


   よ…こ…。


   …目が覚めた?


   ……わたし、は。


   覚えてない…?


   ……いや。


   高熱を出したのよ。


   ……。


   今も多分、完全には下がっていないと思うわ。


   …蓉子は?


   私…?


   ずっと…そう、してたの?


   …。


   …ようこ。


   …いいえ。


   …。


   両親が帰ってきて…母に説明をしたから。
   ごめんなさい…。


   ……ううん。


   …何か飲む?


   うん…。


   起きられる…?


   …なんとか。


   大丈夫…?


   …ん。


   コップより、ペットボトルの方が良いと思ったから。


   …うん、ありがと。


   ……。


   ……はぁ。
   味がしないや…。


   …熱で味覚が鈍っているのね。


   かなぁ…。


   …さ、もう一度眠って。


   ……よーこ。


   ん?


   …弓子さん。


   …?
   お友達…?


   いや、友達が下宿させてもらっている人の名前…。
   私、駅まで送っていったんだ…。


   …そのゆみこさんがどうかした?


   仲直り、出来たかなぁ…。


   ……その人、誰かと喧嘩したの?


   祐巳ちゃんはきっと…。


   …。


   祥子は…言葉が足りないだけなんだよね、いつも…。


   …ええ、そうね。


   祐巳ちゃんは、あんなかわいいんだから…だから祥子は、すごいかわいくてしかたがなくて、さ…。


   …。


   だから、あのふたりは…。


   …ええ、大丈夫よ。
   “絶対”に。


   …。


   だって。
   祐巳ちゃんは祥子を助けてくれたもの。


   ……たすけ?


   そう。
   私では出来ない事をあの子は…。


   …。


   …私は屹度、一生、祥子の姉だけれど。
   だけど私では…


   ようこ。


   ……ありがとう、聖。
   聖が祐巳ちゃんを助けてくれたから…あの子は、立ち直れた。


   …。


   本当は私が…私はあの子の大姉なのに…私はあの子の姉なのに。
   何も…何も出来なかった…。


   …。


   ……聖。
   貴女が…


   蓉子がいてくれて…よかった。


   …。


   蓉子がいてくれたから…。


   …。


   …それに。
   祐巳ちゃんを助けたのは…私だけじゃ、ない。


   …


   山百合会は…そういう人がいっぱい集まるところだから。


   …。


   ようこだってしってる、でしょう?


   ……うん。


   よーこ…。


   …。


   …今度、ごはんたべにいこう。


   …。


   今度…必ず…。


   …うん。
   うん…。






   7




   …そっか、そうだったんだ。


   ごめんなさい…。


   いや、それは蓉子のせいじゃないから。


   …けれど。
   約束したのに。


   蓉子のした事は、正しいよ。


   …。


   大体、留守電を知らなかった私も悪いしねぇ。


   …雨の中、待たせてしまったわ。
   熱まで出してしまって…。


   でも蓉子のおかげで助かった。
   大変だったんじゃない?
   小母さまへの弁解。


   ……。


   ん?


   …とうとう人まで拾ってきた、と笑いながら言われたわ。
   まぁ、拾ってきたのが貴女だったからでしょうけど…。


   これがどこの馬の骨か分からない男だったら大変だったね?


   …。


   でもさ。
   てーと何、人以外は拾って帰ったことがあるの?


   …主に小動物、とか。


   へぇ…へぇ。
   それは初耳だぁ。


   …結局うちでは飼えなかったから、里親を探したのだけどね。


   それも蓉子が?


   …ええ。


   ほぉ、それはそれは。


   …。


   子供の頃から世話好きだったんだ。
   ま、人の性質なんてそう変わるもんじゃないか。


   …。


   蓉子?


   もっと早く、私が連絡をしていたら…。


   …。


   …聖は雨の中で


   祥子の傍に居たんでしょう?


   …。


   確かに祐巳ちゃんは祥子を助けた。
   その祐巳ちゃんを…まぁ、蓉子曰く、私が助けた。
   でも、さ。


   …。


   祥子の泣く声を聞いて、適切な処置を施したのは蓉子だよ。


   …。


   蓉子だから、蓉子にしか、出来なかった事だよ。


   …でも私は


   でも、は無しだ。
   私は本当の事を言ってるんだから。


   …。


   蓉子は。
   紅薔薇姉妹のお姉さまのまま、なんだ。


   …。


   曰く、一生ね?


   ……うん。


   私には真似出来ないなぁ。


   …そんな事無いわよ。
   聖は…。


   生徒の居る時間に学校に乗り込んで、職員室でかつての薔薇さまの威厳と信頼を掲げて後輩を呼び出すなんて、さ?


   ……。


   あら。


   …だから、それは。


   …蓉子は。
   祥子と、それから祐巳ちゃんを、包み込む存在なんだ。


   …。


   だから祥子は蓉子を頼った、頼れた。
   大事な人を亡くして、そして祐巳ちゃんに見捨てられたと思い込んで、どうして良いか分からなくなっていた時に。


   …。


   そうでしょう?
   “蓉子さん”。


   …聖は。


   うん?


   いつからそんなになってしまったのかしら…。


   あっれぇ、なーんか引っ掛かる言い方だわねぇ。


   ……だって。


   蓉子のおかげ、に決まってるじゃないの。


   …私の?


   じゃなきゃ、こんなに蓉子のこと、気になってるわけ無いもの。


   ……そう。


   あら、伝わらなかった?


   ……?


   私ね、蓉子のこと気になってるって言ったのよ。


   ……え。


   蓉子は鈍感なんだよねぇ、自分に対する人の気持ちに。
   気は回るくせにさぁ。


   ちょ、一寸待って。
   聖、貴女何を言っているの?


   …でも、そっか。
   祥子のお祖母さま、亡くなったんだ。


   聖…!


   ん?


   …。


   …祥子はもう、大丈夫かな。
   屹度、大丈夫だね。
   祐巳ちゃんが傍に居るから。


   ……ええ、


   私が蓉子を貰っても。


   ……!


   蓉子。


   せ、聖、私は…


   この後、何か予定ある?


   な、ないけど…。


   じゃ、コーヒーなんてどう?
   食後の後には、さ。


   え、ええ…。


   蓉子さんはどのチェーン店が好みかしら?


   …。


   それとも一寸したオサレなお店の方が良いかしら。


   …。


   でも私、そういう店知らないんだけどね。
   もしも行きたいなら蓉子さんが案内してくれると助かるかな。


   …。


   てか、蓉子ってばなにげに苦いの苦手だからねぇ。
   コーヒーじゃない方が良いのかな?


   …。


   よーこ。


   …え、なに?


   聞いてる?


   え、と…コーヒーを飲むのでしょう?


   うん、そのつもり。
   でも蓉子さんは大丈夫かなって話。


   …大丈夫よ。


   店はどこでも?


   ええ、聖に任せるわ…。


   そ。
   んじゃあ…あそこにしよっかな。
   近いし。


   …。


   ちなみにココアもあるよ。


   …コーヒーでも平気よ。


   あ、今度はちゃんと聞いてた?


   …。


   ねぇ、蓉子さ。


   …なに。


   ありがとう。


   …?


   約束、改めて守ってくれて。
   ごはん、おいしかった。


   …。


   …蓉子のそういう真面目さ、好きだよ。


   …っ


   いや、も、って言った方が良いかも。


   聖…。


   あまり深く考えないで良いよ。
   …いや、本音は考えては欲しいけど。


   …。


   答えは……ま、待ってるよ。
   待つのは苦手だけど…。


   …。


   さぁ、行こう。
   奢るよ。


   …。


   蓉子。


   わ、私…。


   …。


   私は…。


   …続きは私の部屋で聞くよ。


   あ…。


   なんてねー。
   さ、行こう行こう。


   …。


   さて、私はいつもので良いから。
   蓉子は…


   …の部屋で。


   ん、なぁに?


   …今、聖の部屋に行きたいわ。


   ……はい?


   せ、聖の部屋でコーヒーを…。


   …え、と。


   …。


   それは誘ってるってとっても良いのかしら、蓉子さん。


   さ、誘って…?!


   そうともとれるってコトだよ。


   わ、わたしはちゃんと話がしたいから…だから。


   …ふふ。


   …。


   本当。
   好きだなぁ。


   ……。


   あらら、顔が大変?


   …。


   …ね、蓉子。
   うちにくる?


   ……。


   おいで?


   ……う、ん。


   ん、りょーかい。
   んじゃ聖さんの特製コーヒーをご馳走してあげましょう。
   蓉子さま。


   …。






   8




   ほい、ミルクと砂糖たっぷりコーヒー。


   …。


   て、砂糖はそんなに入れてないけどね。


   …ありがとう。


   で。
   続きって何かしら?


   ……。


   あり?


   ……。


   はは、そんな顔しないでよ。


   …。


   あーまぁ、なんだね。
   続きと言っても私からはあれ以上の事は無いってのが本当のところなんだけど。


   ……聖は。


   うん。


   祐巳ちゃんに頼りにされてたわよね。
   高等部時代から。


   …うん?


   だっていつも私じゃなくて聖なんだもの。


   と言うかさ、それは私がよく構ってたからじゃないかな。
   由乃ちゃんに出来ない分まで。


   …。


   それにほれ、紅薔薇さまはいつも忙しそうにしていらっさったから。


   …誰のせいかしら。


   てかさ、蓉子だって祐巳ちゃんに頼りにされてたじゃない。


   …どこら辺が。


   どこら辺って。


   …。


   いやいや、てかさ?
   まさかこんな話をする為に来たの?


   …。


   だとしたら。
   なんか、なぁ。


   ……。


   蓉子。


   …だっていきなり言うから。


   …。


   聖がいきなり言うから。


   …だめだった?


   …。


   と言うかね、何されたって文句言えないと思うんだけど。
   どうかね?


   …え。


   だってそうでしょう?
   私、蓉子のこと好きだし。


   ま、待って、何を…。


   何って。
   ねぇ。


   せ、聖


   答え、聞いてからの方が良いんだけど。


   あ…。


   …ま、いっか。


   や、やだ…。


   …。


   聖、待って…。


   …待てない。


   ぁ…。


   …。


   せ…ぃ。


   ……ふ。


   …?


   ははは。


   …。


   しないって。
   本気にした?


   …。


   ごめんごめん。
   だってあんまりにも蓉子がむくれてるから。


   …。


   祐巳ちゃんは蓉子のこと、大好きだから。
   私にやきもちやく必要なんて無いって。


   ……。


   ね、蓉…。


   …。


   あ、あれ…。


   …。


   よ、蓉子?


   …ば、か。


   ご、ごめんって。


   …。


   あ、あぁ。


   …聖なんて嫌い。


   あ。


   嫌い。


   や、や、ごめんなさい。
   ごめんなさい。


   …。


   蓉子、ごめん。
   ごめん。


   …。


   あ、ほら、祥子。
   祥子だって蓉子の事、大好きじゃん?


   …。


   あ、あー…。


   …人が真剣に考えているのに。


   すみません。
   でも蓉子がいきなり祐巳ちゃんの話をするから。


   …。


   私はリリアンに残ってるから。
   仕方ない、と言うかね?


   …分かってるわよ。


   これからもあるかも知れないし。


   そうね。


   でもそしたら蓉子にも話すから。
   ね?


   …いいわよ。


   いやいや、そう言わず。


   いいわよ、ばか。


   ば…。


   …。


   ……はぁ。


   …。


   不貞腐れてる蓉子は子供みたいだねぇ。


   …聖だってそうでしょ。


   うん、そうだね。


   …。


   蓉子。


   …。


   蓉子は一生、紅薔薇姉妹のお姉さまなのは分かった。
   十分、分かった。


   …。


   でもさ。
   少しでも良いよ、私の事を考えて。


   …。


   割り込もうってわけじゃない。
   だけど。


   …。


   蓉子、好きよ。


   …。


   好きなの、蓉子が。


   …。


   …まぁ、ね。
   いきなりだから吃驚した…と言うか、するとは思っていたけど。


   …。


   けど、冗談なんかじゃない。


   …。


   雨に濡れて熱出した時、蓉子んちに連れて行ってくれて、ごはんも作ってくれて、ずっと傍に居てくれたでしょう?
   もうね、凄く嬉しかったんだ。


   …。


   だ、だから、その…。


   聖のばか。


   ……あー。


   …。


   え、と。
   帰りは送っていきますね、はい。


   …私、祐巳ちゃんにも嫉妬してたの。


   は…?


   ああもう、ばかばかしくなってきちゃったわ。  


   …え、と。
   蓉子が祐巳ちゃんに?


   ええ、そうよ。


   …なんで?


   だって私ではどうしようもなかったんですもの。
   何を言ったって、祥子の心に届かなかった。


   …そんな事無いと思うけど。


   そんな事、あるわよ。
   祥子は食欲を無くすほど落ち込んでいたのに、祐巳ちゃんに逢ったら…無くしていた食欲まで取り戻したのよ。
   あの子は本当に凄い子だわ。


   …ふぅん。
   ま、祥子が祐巳ちゃん大好きなのは知ってるけど。


   それに私が嫉妬までしてしまったんですもの。


   …しかも珍しく凹んだりもして?


   ええ。


   …でもさぁ。


   うん?


   その下地を作ったのは蓉子じゃん。


   下地?


   そうだよ。
   祥子を妹にしたのは蓉子じゃんか。


   そうだけど。


   だから祥子は祐巳ちゃんと出逢えたんじゃないの。


   そんなのは分からないわね。
   私の妹にならなくても祥子は祐巳ちゃんを見つけ出していたかも知れない。
   そして生徒会の人間としてではなく


   それこそ、分かんないよ。
   若しかしたら祥子は一生、気難しく生きていく道を進んでいたかも知れない。
   笑うこともしないで。


   …。


   だから現状を考えなよ。
   私が思うに、祥子と祐巳ちゃんの今があるのは蓉子のおかげ。


   私はそこまで大それた人間じゃない。


   確か祥子っていっぱい習い事してたんだよね。
   高等部に入った頃は。


   ええ、そう。
   毎日だって言っていたわ。


   でも全部やめた。


   ええ。


   その切欠を作ったのは蓉子。
   でしょう?


   …まぁ、そうなのかしらね。


   面向かって「全部やめてきた」って言われた、って言ってたじゃない。
   しかも照れくさそうに。


   …そうだったかしら。


   私にはそう見えた。
   おまけに厄介払いが出来た、とも思ってた。
   あの時は。


   …。


   けど、そうはならなかったんだけどね。


   …お節介、したものね。
   時には山百合会の仕事にも手が付かないで。


   その節は色々とお世話になりまして。


   …。


   あ、そういう真面目な顔は無しの方向で。


   …軽いわね。


   軽くは無いよ。
   彼女は今でも、心の中に居るから。
   多分、一生消えない。


   …。


   でも蓉子が好きなんだ。


   …何よ、それ。


   蓉子は…彼女とは違う場所に居る。
   当たり前のように。


   …。


   蓉子が一生、紅薔薇姉妹のお姉さまでも良いんだ。


   それじゃあ貴女の居場所なんて、出来ないわ。


   それは…困るなぁ。


   聖は私をどう見てるの。


   どうって?


   紅薔薇さま?
   紅薔薇姉妹の大姉?
   それとも


   水野蓉子。


   …。


   そう、見てるけど。


   …そう。


   …まぁ、答えは今でなくても


   聖。


   ん……ん?


   ……。


   よ、蓉子、い、今…。


   コーヒー、冷めてしまったわね。


   は…。


   …でも、甘いわ。


   ……淹れ直そうか。


   聖のを頂戴。


   え…あ。


   ……苦い。


   ブラックだし。
   おまけに冷めてるから…と言うか、


   うん。


   …あの、蓉子。
   今、その…


   聖。


   え、なに?


   また、ご飯食べに行きましょう。


   …。


   約束。


   あ、ああ、うん。
   約束。


   いつ頃が良いかしらね。


   私は蓉子と逢えるのならいつでも。


   そう。
   じゃ、今週末。


   分かった。
   …え、今週末?


   都合悪い?


   いや、平気だけど…。


   何?


   そんな直ぐに…。


   いつでも良いって言ったじゃない。


   そうだけど。


   ただ逢うだけでも良いの。


   あ、そっか。
   …て。


   うん?


   本当に?


   嘘なんて言った覚え、無いけれど。


   それって逢いたいと言う意味でとっても良いの?


   そう、とってくれたのなら。


   …!


   コーヒー、ありがとう。
   今度は…


   …蓉子!


   ….。


   蓉子…。


   …私、まだ答えを出していないけれど。


   うん…。


   …。


   …。


   …今度は。


   …ん。


   熱いコーヒーが飲みたいわ。
   貴女の淹れた…






   9




   祥子と祐巳ちゃんを見かけたよ。


   そう。


   雨降って地固まる、て雰囲気だったなぁ。


   それは何より。


   あの後、祥子とは?


   お礼の電話を貰ったわ。


   祐巳ちゃんは?


   同じく電話を貰ったわね。


   お礼の?


   そう。


   流石紅薔薇姉妹。
   律儀。


   ありがとう。


   どういたしまして。


   私ね、あの日はコンビニで食料を買い込んだのよ。


   コンビニで?
   それはまた何で?


   予想通りに行くと思ったから。


   祥子が食欲を取り戻す?


   ええ。
   何となく、あの家は食べるものなんて無さそうだったから。


   食べに行くとかって話は出なかったの?


   さぁ?


   と、言うと。


   何も聞かず、様子も知らず、勝手に買い物に行ったから。


   へぇ。
   流石ですね。


   伊達に祥子の姉をやってたわけじゃないわ。


   やっぱ真似出来ないなぁ。


   あら、分からないわよ。
   もしも志摩子が


   うちはどーやら丸く治まってるみたいだから。


   白薔薇姉妹は初めだけなのよね。


   うん?


   波風、立つの。


   そーかなぁ。


   まぁ、貴女のお姉さまは何もかも分かった上で、笑って受け流していたけれど。


   …はは、確かに。
   あの方には一生、頭が上がりません。


   と、言っても。
   私もお姉さまには一生、敵わないと思うけれど。


   そんなもんなのかな。


   多分、ね。


   …ところで。


   うん?


   コーヒー、どう?


   美味しいわ。


   ん、良かった。


   ねぇ、聖。


   ん?


   私、貴女のこと好きよ。


   …え。


   だって親友ですもの。


   …あぁ、そっち。


   どっちが良かった?


   …そりゃあ、さ。


   聖。


   …んー?


   これからも宜しくね。


   あ、う…ん。


   ん?


   ……まぁ、いっか。


   良いの?


   …へ。


   貴女っていつからそんなに気長になったの?


   い、いつからって…。


   好きよ、聖。


   …ありがとう。


   親友としてだけではなく、ね。


   ………え。


   本当の事を言うとリリアンに居た頃から好きだったの。


   え…え。


   ああ、本当に美味しい。
   聖って高等部時代からコーヒー淹れるの、上手だったわよね。


   ちょ、一寸待った。


   ん?


   蓉子、今何て…何て、言ったの?


   さぁ、何てでしょうね…。






   10




   あ、蓉子さま!
   お姉さま、蓉子さまが!


   祐巳、そんなに大きな声を出さなくても分かっているわ。


   ごきげんよう、二人とも。


   ごきげんよう、蓉子さま!


   ごきげんよう、お姉さま。


   元気そうね。


   はい!


   はい、お姉さまも。


   はぁ〜〜い。


   …れ、聖さま?


   聖さま、どうしてお姉さまと?


   さて、何ででしょう。
   と言うか蓉子とは友達だったんだもん、一緒に居たっておかしくないでしょ?


   まぁ、そうですけど。


   蓉子さま、今日はどうされたんですか?
   急にリリアンに来るなんて


   来てはいけなかった?


   いいえいいえ!
   お会い出来て嬉しいです!


   ありがと。
   私も嬉しいわ。


   えへへ。


   祥子。


   はい。


   もう、大丈夫そうね。


   …はい、お姉さま。


   うん、良かった良かった。


   ぎゃ…!


   聖さま、急に何をなさるんですの?!


   感触と反応チェックかな。
   うんうん、変わりないようで良かった。


   や、止めて下さい、聖さま!


   祐巳から離れてください、聖さま。
   さもないと…。








   ああ、楽しかったー。


   もう、聖は。


   あはは。


   …。


   …やきもち?


   いいえ。


   …ちぇ。


   ……。


   ん…。


   …だめ?


   じゃない。
   寧ろ、したいなって思ったからすっごい嬉しい。


   …そう。


   …。


   …。


   …良い天気だ。


   …これから本格的に暑くなるわ。


   そうだね。
   夏休み、どこか行く?


   …海、とか?


   暑そうだなぁ。


   じゃあ、山?


   とりあえず、うちに来ない?


   …何よ、それ。


   美味しいコーヒー、淹れるよ?


   当然よ。


   厳しいなぁ。


   …あ。


   うん?


   綺麗なパラソル。


   …そうなの?


   そうよ。
   聖はそういうのに疎いから。


   傘は傘じゃん?


   日傘、よ。


   ふぅん。


   …綺麗な白だわ。


   それって私の事?


   ばか。


   …へへ。


   …。


   暑く、なるかな。
   今年も。


   …ええ、そうかも知れないわね。