★★★『美少女妖怪調伏伝 ぬばたま』★★★
はじめに注意事項です。このレビュー内には表現の都合上、ゲーム内容に関してのネタバレなどが含まれている
可能性があります。ゲームをプレイ中、及び未プレイの方は、ゲームを最低一度は攻略(エンディングまで到達) した
後で、このレビューを読むことをお薦めします(勿論、未プレイの方でも大丈夫なよう、ネタバレ的要素は極力排除
しているつもりですが、排除が万全とは言えません)。以上の件、閲覧前に何卒ご理解ご了承下さい。
●− Review 序章 −●
さて、今回の空白期間は何のエロゲを補完してレビューを埋めるとしますか、ね。
北国に秋が訪れた10月上旬。私は今年何度目になるか解らない台詞を呟きつつ、新作までの間を埋めるエロゲを購入
する為、例の如くの情報収集に勤しんでいました。まあ、大体の原因は9月購入予定のエロゲが軒並み延期した弊害ですが。
とは言え、どんな形であれ、コンスタントなレビューを満足に書けないようではサイトの沽券にも関わりますし、何より
私自身が納得いきません。で、今回は珍しく各メーカーさんのサイトまで足を運び、購入検討作品の体験版をDLして遊んだ
上で候補を絞り込む、と言う試みに挑戦。そして、最終的に残ったのが本作「美少女妖怪調伏伝
ぬばたま」だったのです。
さて、実は本作、数ヶ月ほど前に私が好む馬鹿ゲー系列のノリを持つ作品、と言う話を聞き、製品情報を見にOHPへ飛んだ
ことがありました。その際、見た目を始め全体的な胡散臭さ(誉め言葉)ぶりに少々興味を引かれたのですが、例の如く検討の
タイミングを逸してしまい、そのまま忘却の彼方へ追いやられていたのです。
で、今回のエロゲ検討中に再度本作が浮上し、気になって体験版をDLしてみると私的に大当り&ほぼ即決(苦笑)。
何だかんだで根が馬鹿ゲー好きなので、比較が始まるとこの手の作品を率先的に選んでしまうのは良くも悪くも私の個性。
まあ、こういう感性と異端な様も私らしいよなあ、と苦笑いしつつ、そのまま本作を購入したのですが……閑話休題。
ああ、これは実に良い馬鹿ゲーですね。
裏を返せば馬鹿ゲー以外の特筆点に乏しい作品でしたが、私的には馬鹿ゲーであることが重要でしたし、何よりそれを
求めて購入していたので全然問題なし。正当派な不条理系の笑いがほとんどでしたが、最初から最後まで何の心配もなく
遊ぶことが出来ましたし、何より常に楽しく笑わせて頂きました。正直、ゲーム内容そのものの完成度は平凡と言っても良い
程度でしたが、そのぶん馬鹿ゲー&不条理系の会話に専念しつつ遊ぶことが出来た点は面白かった、と好意的に解釈して
良いと思われます。何よりもエロゲに対してエンタティメントを求める私にとっては久々のスマッシュヒット。
要所で馬鹿笑い出来る、と言う内容ではありませんが、和風ファンタジーらしからぬ演出の数々は実に面白かったですね。
ただ、その反面、妖怪の擬人(女性)化エロゲーというフレーズはそれだけで人を選ぶ内容であることは事実。
何せ「自称」馬鹿ゲースキーの私が高評価、と言うだけで、既に一般受けが悪いエロゲであることは間違い有りません。
……地味に酷い言い方かも知れませんが、これは紛れもない事実です(苦笑)。
そもそもメインヒロインが「全て妖怪」と言う時点で一般的なエロゲからは完全に逸脱していたことは言うまでもなく……。
それでは、個々の見解に行ってみましょう。
定式幕(本作は市村座仕様)は本来、歌舞伎で使われる幕のはずですが……ゲーム性です。
ゲームジャンルはADVですが、ぶっちゃけゲーム性と言えるほどのゲーム性はありません。選択肢は分岐選択(二者
択一)のみで使われ、攻略には一切関係なし。実際、散々二者択一する割にEDは1種類だけですし、勿論ヒロインとの個別
Endなどは存在しません。ちなみに道中の選択肢は分かり易い一定の法則があるので、本能の赴くままに行動すれば自分
好みの展開を堪能できます。なお、1プレイ時間は約4時間程のお手軽系。難易度に関しては、先述したように皆無です。
で、一応の世界観は和風系作品に分類されます。昔の日本(恐らく平安時代をベースにし、江戸時代の風俗を混ぜる)を
モチーフにし、有名な日本妖怪達が跋扈する空想(幻想)の時代を描いた物語でしたが、時代背景は兎も角、実際の言動は
かなり支離滅裂。何より、もの凄い勢いで破綻していましたし(苦笑)。
勿論それが馬鹿ゲーのお約束&魅力でもあるのですが、まず何よりも本作は時代考証が無茶苦茶。オーパーツ大歓迎。
各種時代考証を無視した台詞や道具が乱舞し、それに対するツッコミが何も入らない時点で、本作の開き直りっぷりが
伝わってきました。そもそも本作の世界にアフロでホモでハッテンバが出て来ること自体、根本的に間違ってますし(苦笑)。
多少良識がある人、整合性を重視するゲームを好む人であればこの時点で投げ出すこと請け合いですが、私のように
不条理系のノリを好む立場としては、こう言う展開を見せつけられると逆に惚れ惚れ。この手の「固定概念」を根本的に崩壊
させているゲームは個人的に笑いのツボですし、狙って作りつつも、真面目に作ってある雰囲気を漂わせていたのは見事。
ちなみに、本作は最近流行の擬人化ゲーでもあります。と言うよりも純粋な人間ヒロインが居ません。
要は各種日本妖怪をこれでもかと言うぐらい歪曲して(希にその通りに)擬人女性化し、物語に絡ませていたのですが、
それ自体は意外なほど魅力的であり、楽しかったです。正直遊ぶ前は若干の抵抗があったのですが、いざ遊んでみると
キャラそのものの魅力に加え、妖怪の特徴を上手く絡めていた演出は上手かったですね。一見すると色物ですし、中身も
色物と言えばその通りなのですが、根底の描写が間違っていない故に、基礎部分が破綻していなかった点は秀逸でした。
ただ、お世辞にも一般受けするような内容と言えないのは事実。私的に面白さは保証しますが、私の感性はかなり特異。
何より、物語よりも笑いや不条理が前面に出ている為、洒落の解る人がそのノリを楽しむには最高の作品と言えますが、
客観的に見るともの凄く変な作品です(苦笑)。そもそもヒロインが全員UMAみたいなものですし……。
ちなみにエロ方面は古き時代のDOSゲーに近い「エロゲーらしい展開のえちぃ」が多いので、そういうのが好きな人は是非。
良くも悪くも師匠のインパクトが……ストーリーです。
昔々のそのまた昔。夜な夜な妖怪達が都の大路を闊歩しては、人様にご迷惑をお掛けしているという。
当初は「よくあること」と無視を決め込んでいた時の為政者も、被害が大きくなるに連れ、ようやく重い腰を上げ、
妖怪の群れから都を守護せよ、と言う号を発令。各地の寺社仏閣を駆け抜けた末、最終的に主人公がその任に選ばれた。
主人公の名は名は榊 手津真。未だ青年でありながらも、退魔法においては比肩する者がないと言われる若者である。
必殺の退魔術を携え、主人公は都へと向かうのだった……。
と言う設定で物語は幕を開けますが、微妙に違う方向性に進むので、あまり気にしなくても良いですね(苦笑)。
まあ、正直に言えば深く考えたら負け、な展開。笑いと不条理を優先している作品はその「勢い」もひとつの魅力ですし。
や、ライターさんの名誉のために書きますが、決して悪いシナリオではありません。むしろ最初から最後までハイテンション
で書き上げた物語は誉めるべきだと思いますし、何も考えずに楽しく遊べる作品を好む私には最高にマッチした作品でした。
でも馬鹿ゲー。
個人的には妖怪もさることながら、時代的にあり得ない言動をごく自然に絡めていた様が特に面白かったですね。
ちなみに笑いの質に関しては不条理&随所に入るオーパーツ系の展開が中心ですが、純粋にテキストで笑わせた類の
印象も受けました。逆に最近流行のパロディ要素は少なめでしたが、妖怪自体がパロディと言う説もあるので微妙なところ。
後は妖怪関連の基礎知識を持っている&師匠の言動に笑えればより一層本作を楽しめることと思われます。
で、そのシナリオですが、要約すれば道行く先で妖怪を見つけ、えちぃをするだけ。……本当にそれだけ(苦笑)。
ただ総勢39体にも及ぶ個性的かつ魅力的なキャラとの絡みは実に楽しかったです。反面、シリアス系の要素はほぼ
皆無だったので、物語に起伏を求める人には少々向かない作品だと思われますが……良い話は沢山ありましたけど、ね。
ちなみに、シングルエンドではありますが、特定の法則に従えば可愛いルートとイイ年頃ルートを堪能できます。混合も可。
兎に角、何も考えずに遊べたという面では個人的に最高の作品でした。特に私みたいな頭の弱い人間は、何も気負わず
単純に笑えるゲームが一番性に合っていますし、本作にはそんな私を満足させるだけの魅力がありました。師匠素敵すぎ。
あと、少々特筆しておきたいのがエロ関連。ひとつひとつの尺は短めですが、ヒロイン39キャラと致すことが出来るので、
地味にヤリゲーと言うか正当派のエロゲーだったりします。ただ、調伏と言う割に和姦が多めだったのは少々意外でしたね。
概ね双方が合意してからのえちぃだった点は個人的に楽な展開でしたが、肩すかしと感じる人もいるかも知れません。
もっとも、客観的に見ると、馬鹿ゲーのノリや雰囲気が好きな人以外には魅力に乏しい作品と言えるでしょう。
不快な部分もなく、楽しく遊べたことは事実ですが、広い層にお薦め出来るかと言えば正直お薦め出来ませんね(苦笑)。
勿論、言うまでもなくシリアスな展開などは皆無に等しいので、感動とか深い物語を求めてはいけません。一応、念の為。
……あと、パッケージやエンドムービーが超絶にネタバレしているのはもう少し考えて欲しかったかな、と思ってみたり。
大物妖怪のシルエットは微妙にバレバレだったような……CGです。
本作の原画担当は明音氏。私的には初見の方でしたが、良い意味で個性的な原画だったと思われます。正直、パッと
見た限り、画力の方はもう一歩と言う印象でしたが、じゃあ下手なのか、と言えば答えは否。地味に魅力的な原画でした。
まあ、差分が少なかったり背景が手抜きだったりロリ比率が高すぎたりと、全体的に何もかもが後一息、と言う感は否め
なかったものの、何だかんだであれだけのヒロイン(人外=妖怪キャラ全39名)を描き上げた点は素直に誉めたいですね。
これで更に絵が良ければ最高でしたが、俗に言う「味のある絵」と言う面で見ると充分魅力的な原画だったと思われます。
あ、でも背景はかなり手抜きっぽかったですね。元の実写画像に効果を加えただけ、みたいな。
メインとも言える妖怪擬人化(女性化)に関しては若干間違った知識が身に付く可能性があるものの、地味に原典忠実だっ
たりするので、妖怪の名前や特徴を覚えるには面白い、と言うか用途を間違えなければかなり参考になる印象を受けました。
個人的に初めて聞いた妖怪も居たのですが、良くも悪くもそのインパクト故、多少の知識は身に付いたと思います(苦笑)。
ちなみに、CG回想モードには各種妖怪の注釈が付いているので、それを読むとより一層、本作を楽しめると思われます。
ただ、今まで散々語ったように、ゲームの性質上、真っ当な人間ヒロインは「居ない」ので注意が必要です。
逆に言えば人外ヒロインが好きな人には理想的な作品かも知れません。……とは言え、見た目は人と大差ないケースが
殆どですし、見た目の割に人外プレイ(体位など)がほとんど無いので、双方あまり気にせず楽しめるとは思われますが……。
マニュアルぐらい作れよ……システムです。
ゲームジャンルがADVと言うことで特に複雑なシステムはありませんでした。が、しかし、中身は微妙に微妙でした。
既読未読関係なく吹っ飛ばすスキップに加え、そもそもマニュアルが無い(オンライン、紙媒体両方)と言う散々な仕様。
まあ、パッケージ裏面がマニュアル代用だったり、行く先々でチュートリアルが書いてあったりしましたが、そう言う問題では
ありません。個人的にマニュアルの同封は必要最低条件の行為だと考えているので、この点に関しては論外でしたね。
……余談ですが、道案内の看板を見た際に初めてページ切り替えに気が付いた人も多数居たと思われますし(苦笑)。
と言う訳で、どう贔屓目に見ても安っぽいシステムという印象は拭えませんでした。古くて地味と言うか何というか。
そもそも最近の作品としては珍しく、解像度が640×480だったところにそこはかとない不安と不満を感じましたし……。
ただ、そのぶんCPU使用率はかなり大人しめ。
静音快適にプレイが出来た点は個人的に嬉しかった&誉めて良いと思われます。一度不正エラーで落ちましたが(苦笑)。
あ、あと、CG回想モードがエロ絵専用だったため、ノーマルの絵が見られないらしい仕様は少々残念でした、ね。
やる気のない歌だなオイ……音楽です。
和風(昔日本風味)の世界観ということで、多少なりとも和を感じさせる曲を期待していたのですが、その点に関しては
意外なほど良い雰囲気が出ていたと思われます。正直、音楽そのものはかなり貧弱……と言うか安っぽく感じた音色が多か
ったものの、不思議と印象に残った曲が多かったのは本当に不思議でした(苦笑)。良い意味でシンプルな音だった、かな。
C.V.に関しては及第点かそれ以上。キャラの数が多いので、一人二役が当たり前な雰囲気こそあったものの、声の使い
分けや演技に関してはどのキャラも外観相応で良かったですね。まあ、一番楽しそうなのは師匠の声優さんでしたが(苦笑)。
や、勿論、それ以外の声優さんもなかなか健闘していたことは言うまでもありませんけど……。
ただ、少々不味かったのが擬音、効果音の類。
一番酷かったのは射精音(そもそも射精音なんてほとんど無い……)ですが、それ以外の効果音もかなり萎え萎え。
山彦のエコーだけは演出的に大変笑わせて頂きましたが、それ以外はギャグとして楽しむ方が精神衛生上よろしいかと。
……あ、そうそう。一応歌もありましたが、敢えて語らない方向で。……聴き方によっては一級の電波ソングでした、はい。
やー、面白かったと言うか、大変楽しく笑わせて頂きました。
やっぱり私にはこの手の馬鹿ゲー、と言うより何も考えずに遊べる系の作品が性に合っているんだな、と改めて痛感。
客観的な視点から見ると評価が低くなる作品だと思われますが、主観的には実に私らしい好評価になったと思います。
こういう作品を遊べるのもエロゲならではと言えますし、本来もっと話題になってもおかしくない作品だと思うのですが……。
さて、結論です。
まず私としては不条理系な馬鹿ゲーと言う認識の元、楽しく遊べた作品でした。ただ、人によっては馬鹿ゲーと言うよりも
お気軽系(ライトコメディ)の作品に分類される可能性があるので、万人への笑いを保証することは出来ませんし、正直この手
の破綻系、不条理系の笑いは波長が合わずに滑ってしまえば何も楽しめません。強いて言えば固定概念が崩壊する系の
演出が好きな人にはお薦め出来る作品だと思われます。あと、女性化妖怪と×××したい人にもお勧めです(苦笑)。
で、特にお薦め出来ない理由は無いのですが、見た目が合わない人は中身も合わない作品なので、明確なゲーム性や
ストーリーを求める人には不向きな作品ですね。上記のお薦め要素に沿わない人は特に購入する価値が無いと思われます。
基準としては師匠・ザ・サクセスを見て吹き出すか引くかですね。後者であれば確実にお薦めしません。
個人的な事情もあり、馬鹿ゲーという印象を前面に押し出してしまいましたが、実際はお手軽に楽しめるエロゲーとしても
秀逸な作品だったと思われます。全体的な古さこそ感じたものの、エロシーンへの切り替えや説得ぶりなどは古き良き時代の
エロゲーらしい「エロゲー」でしたし、和風昔話的なファンタジーの世界観も新鮮で良かったですね。
正直、今の時代にこう言う荒削りの意欲作は珍しいですよ。ハナから購入層を絞っているあたりが特に(苦笑)。
メーカーの利益的には辛いと思いますが、自分としては、こう言うメーカーさん独特のセンスを高く評価したいな、と。
さて、今回はこの辺で筆を置かせて貰います。長文に最後までお付き合い頂き、有り難うございました。
縁があれば、次のレビューでお会いしましょう(^^)/〜
OS=日本語版Windows98SE/Me/2000/XPが動作する環境
CPU=PentiumIII-500MHz(推奨PentiumIII-1GHz)以上
メモリ=128MB(推奨512MB)以上
HDD=空き容量15MB(推奨2GB)以上
解像度=640×480:フルカラー表示が可能であること
DVD-ROM=等倍(実装必須)以上
音源=PCM
DirectX=Ver8.1以降
「原画:明音」
「シナリオ:おたすけまん小太郎」
「音楽:GOU」
「音声:有り(Full−但し主人公を除く) アニメ:なし」
「発売日:2005年08月26日」
「価格:9240円(税込)」
「初回特典:なし」
「年齢制限:18禁」
「メディア:DVD」
「Ver:1.10(修正パッチ適用済み)」
注:2003年1月から点数形式を変更しました(50→100点満点)