第十九話 盗まれたバスタータンク

 

 

 

「あら?」
 昨日は散々だったわね、と思いながら登校した麗華は廊下に人だかりができているのを見つけた。
 首を傾げながら人だかりの中心を見ようとする麗華だが、その正体を知って一瞬のうちに身を強張らせた。
 学校新聞なのだろう。A3サイズの紙が四枚張られている。それだけならよくある光景なのだが……
「謎のロボット堂々激写!」
 太いマジックの文字が一番上で踊っている。その下にはブレイカーマシンの写真と共に様々なコメントが書かれている。
 やはり現実世界での戦闘回数の関係か、フラッシュブレイカー絡みの写真が多い。スターローダーからコメットフライヤーまでの大盤振る舞いだ。
 更にはホンの昨日のナイトブレイカーの写真まである。ご丁寧にも夢魔にトドメを刺したところも望遠レンズでバッチリ写真に収められていた。
「ほ〜ら、サキぃ〜 見てよこれぇ。撮るの苦労したんだからぁ……」
「あぅ〜」
 聞き覚えのある声に首を伸ばすと美咲がうめいていた。その隣では丸眼鏡の少女が彼女の肩を抱きながら写真を一枚一枚指さして解説しているようだ。
「あぅあぅ。」
「あ〜あ、声が出ないほど感心してるのね。でもすごいわよねぇ。平和を守る謎のロボット、ってところかしら?」
「う〜」
 美咲のうめいている理由を知っている麗華は他人の振りをした。できることなら自分も美咲同様に頭をかかえて呻きたい気分だった。
「あれ?」
 人だかりの中に見知った顔を見つけたのだろう。ふとそんな声が聞こえた。
「何やってるんだ、お前ら?」
 もう一つ聞き慣れた声。
(あら、珍しい。)
 謙治と隼人が並んで歩いてくる姿に、麗華はふとそんな感想を抱いた。返事代わりに例の学校新聞を視線で示す。
 同時に振り向いた顔が、同時に強張る。いや、表情に出しているのは謙治だけで、隼人は無表情を装っているが、驚愕の色は隠せない。
(どうする?)
(どうします?)
(…………)
 アイコンタクトで二、三言。
「……そろそろ始業時間ね。」
 麗華の言葉を引き金に、三人がそれぞれ自分の教室に足を向ける。少し遅れて予鈴がなった。そのときになって人だかりもガヤガヤと自分の教室に行く。
「さ、あたしたちも行くわよ。」
 法子はまだあうあう呻いている美咲を引きずっていった。

「これは素晴らしい。」
「小鳥遊さん……」
 そして放課後、コピーで白黒になった学校新聞を見て感嘆の小鳥遊であった。麗華のため息混じりのツッコミにも、おや? どうしたんですか? と言わんばかりの顔だ。
「いや、でもしかし驚きました。」
「麗華ちゃん、どうしよぉ〜」
 まだショックが抜け切れていないのか、動揺しまくりの美咲。が、麗華は気にした様子もなく、少しさめた目で少女を見ている。
「落ち着きなさい。ブレイカーマシンと私たちを結びつけるものは無いわ。現に美咲も高橋さんに何も聞かれていないのでしょ?」
「う、うん……」
「なら大丈夫よ。そのかわり、今度からリアライズする際はまわりに気をつけること。いいわね?」
「う、うん……」
 なんて話していると、溜まり場になってしまった保健室のドアが開く。慌てた様子が無いので、怪我人とかいうわけではなさそうだ。
「おう、橘いるか?」
 なんか不機嫌そうに(まあ大抵そんな表情をしているが)隼人が入ってきた。そして美咲の姿を認めると、近くに寄って耳元に口を近づける。
(おい。例のやつ、今日あたり頼めるか?)
「え? 例の……って?」
 小声の隼人に対し、美咲は気にした様子もなく普通の声で話す。
(あんまりでかい声で言うな! ほら…… 和美の退院が明日だから……)
「ああっ! 隼人くんのうちにお掃除に行く話だね!」
 美咲の何気ない一言に、その場の全員が凍り付いた。
「い、今、なんて……?」
「ま、まさか……」
「ほう! それは興味深い!」
「おっさん…… どうやら命が惜しくないようだな。」
 最近、この手の気疲れが多い。それでもなんだかんだで美咲に頼ってしまうのが隼人の弱いところだ。
「? どうしたのみんな?
 行こうよ隼人くん。あ、そうだ、せっかくだから晩御飯も作ってあげるよ。何か嫌いなものあったっけ?」
「あ、いや…… 嫌いな物は無いが……」
「ふ〜ん、そういうのボク好きだな。じゃあ何作っても大丈夫だね。何にしようかなぁ……」
 頭の中で献立を組み立てている美咲のマイペースぶりに驚き+呆れている間に少女は隼人の手を引っぱっていく。
「それじゃあねぇ。」
 通学カバンを持っている方の手を振り、保健室を出ていく。ドアが閉まった。沈黙が訪れる。
「……なんかあそこまで天然だとからかい甲斐がないわね。」
 結構ひどいことを言っているが、少なくとも馬鹿にしている様子はない。
「ま、隼人のことだから美咲をどうこうするようなことはないでしょうし。
 それよりも謙治、ちょっと相談。」
「はい?」
 相変わらずこの部屋のコンピュータ相手に何かしている謙治の所まで椅子を運ぶ。つられて小鳥遊も麗華の背後に移動する。
 謙治の目の前のディスプレイでは装甲車を思わせるマシンのワイヤフレームが描かれていた。その手を止めて麗華を振り返る。
「なんでしょうか?」
「フェニックスブレイカーのこと。」
 言うとすぐさま謙治の手がキーボード上を滑り、鳥型のマシンの映像にかわる。
「え〜と、もしかして攻撃力不足を相談したかったんですか?」
「……あんたって下らないところで勘がいいわね。」
「はあ……」
「でもその通りよ。このままじゃいずれ足手まといになりそうだから……」
「ま、その辺は見解の相違ですので、なんとも言えませんが、そのことに関してはプラスアルファも含めて色々考えてはいました。」
「プラスアルファ?」
「謙治君。もしかしてさっきの……」
 小鳥遊の指摘に謙治は「ばれましたか」とニヤッと笑みを浮かべた。
(この顔しているときはアテになるんだけどね……)
「え? 神楽崎さん、何か言いました?」
「いいえ。で、秀才君の今度の悪巧みは何かしら?」
 ちょっと意地悪めいた口調で言う麗華に謙治は苦笑した。その目には謙治の能力を信頼した上での期待の光が見えるからだ。
「僕の調べたところ、フェニックスブレイカーは攻撃能力はまだまだ余裕があります。ただ、高速飛行のシステムにエネルギーを多く喰われております。
 根本的な解決法というならば、神楽崎さんの精神レベルの増強と言いたいところですが、一朝一夕できるものではないので……
 そこで今回僕の考えた方法というのが、フェニックスブレイカーの飛行補助及びエネルギー供給システムです。」
 謙治がマウスを動かすと、現在の画面からさっきの装甲車らしき画面に戻る。
「これがブースタータンクです。飛行形態のブースタージェットにも変形可能。単独でもそれなりの戦闘力を持っていますが、フェニックスブレイカーの属性に合わせて設計してあるため、合体することにより攻撃力・防御力などを拡張させることができます。」
「へぇ〜」
 心底感心したような麗華に、謙治はちょっと困ったような表情をする。
「……なんですけど、まだ完璧じゃ無いんです。増幅システムの方はいいのですが、ブースタータンク自体の武装の方がまだ調整を終えてないので……」
 それを聞くと小さくため息をついてから、麗華は笑みを浮かべた。その笑みの眩しさに謙治は思わずドギマギする。
「それでこそ謙治ね。」
「はぁ……」
 何がなにやらサッパリ分からない。
「ん? ああ、なんかいつもあんたの作る物って未完成品ばかりでしょ?」
「そういうわけでも……」
 ちょっと傷ついたような顔を見せるが、気にした様子もなく、手をヒラヒラ振る。
「別に悪い意味じゃないわよ。今のところ、必要なときには必ず間に合っているじゃない。だから頑張ってちょうだい、また。」
「あ…… はい。」
 言われたことが一瞬分からなかったのか、言葉を詰まらせるが、すぐに理解しちょっと嬉しそうな表情をする。
(まったく……)
 気付かぬうちに、謙治の表情を見るのを楽しんでいるようになっていた。普段冷静のように見えても――噂を聞いた限りでもそんな感じだ――実はそうでもないことを知っているからかもしれない。それとも別な要因があるのかも…… でもその可能性を麗華は最初から却下した。
 もしそうだとしても自分が納得していない以上は考慮に入れない方だ。
 いずれ変わるかもしれない関係だけど、麗華は今の雰囲気が気に入っていた。たとえ夢魔という危険と立ち向かっていたとしても。
 いつも明るいが、その裏に暗い悲しみが見え隠れする美咲。自分と向き合いながら戦っている謙治。戦う理由、護りたいものを探している隼人。
 そういえば自分は何故戦うのだろう? たまに麗華は考えることがある。
 謙治のような知識もない。隼人のような技もなければ美咲のような強さもない。だからこそ足手まといになりたくなかった。自分――フェニックスブレイカーの攻撃が効かなくなってきているのは前々から気付いていた。
 自分の攻撃力の無さのせいで大事な友達を助けられないなんて耐えられない。
 そんな思いを知ってか知らずか謙治は何か秘策を考えてくれた。単なる趣味の延長なのかもしれないが、麗華はとても嬉しかった。表には絶対出さないが。
(これでみんなとまだ一緒にいれる……)
 そう内心で呟いた。
「大丈夫ですよ。」
 少し沈み込んでいたんだろう。小鳥遊がそう声をかけた。心を読まれたとドキッとするが、すぐに気を取り直していつものクールビューティになる。
「小鳥遊さん。なんのことかしら?」
「あ、いえ、そんな感じがしたもので……」
「そう……」
「あ〜 一般論ですけど、人のつながりに理由なんて必要ありませんよ。」
「悪いわね、小鳥遊さん。気を使わせて。
 ……たまに考えちゃうのよ。」
 小鳥遊はそれを聞くと、さっきので気を良くして一心不乱にコンピュータに向かう謙治に視線を向ける。
「しかし…… 謙治君はコンピュータに向かっていると実に生き生きしていますねぇ。」
「そうね、コンピュータを取ったら干からびちゃうんじゃない?」
 ははは、と小鳥遊が笑おうとしたとき、不意に謙治が椅子ごと振り返った。開いた口を慌てておさえる。
「あれ? どうしたんですか?
 あ、それより小鳥遊博士、なんか妙なアラートが出ているんですが……」
「妙なアラート…… ああ、思い出しました。
 ……そうですか。そこまでレベルが上がりましたか。
 申し訳ありませんが麗華さん、謙治君。夢幻界にちょっと出動してくれませんか?」
 唐突な内容に思わず二人は顔を見合わせる。その様子を雰囲気で感じたのか、口調も変えずに説明を続ける。
「人間というのは大なり小なり心にモヤモヤしたものを持っております。そういうモヤモヤが時折澱みのように溜まってしまうことがあります。
 そういう澱みも大抵は拡散するのですが、ある程度の大きさになってしまうと逆にそのまま大きく育ってしまうのです。
 そして最終的には夢魔レベルの澱みになってしまうわけです。今ならブレイカーマシンの攻撃で簡単に拡散できるので、やれる内にやっておきたいわけです。」
「なるほど。それなら私たち二人で充分ですわね。」
 麗華は謙治の方にチラリと視線を送る。謙治もそれに応えるように頷いた。二人揃って保健室の奥に行き、別々のベッドに横たわる。
「なんか懐かしいわね。夢幻界に行くのも。」
「そう言われるとそうですね。」
「ま、いいわ。行くわよ。」
「はい。」
『ドリーム・ダイブ!』
 額にかざしたドリームティアが光を放つと、二人の精神は夢幻界へと旅立っていった。

「ふふふふ〜ん♪」
 鼻歌混じりで楽しそうにはたきを振るう美咲に、隼人は妙な感覚を受けていた。
(こいつはいつもどうしてこうなんだ?)
 とても不思議だ。いきなり自分の中に踏み込んできた。その自由奔放さに振り回されることもある。でも決して不快ではない。
 さらにその小さな体の中に深い悲しみを秘めている。でも決して表には出さない。
 いつもニコニコしている。その強さはどこにあるんだろう?
「あ〜 隼人くん。サボっちゃダメだよ。」
 手際よく掃除を進めているため、隼人が手を止めると、そこで進行が滞ってしまう。
「わりい、ちょっと考え事してた。」
「しょうがないなぁ…… うん、キリがいいから休憩にしよう。ちょっと待って、お茶いれてくるから。」
 トテトテトテ〜 という擬音が聞こえてきそうな感じで台所に向う美咲。ちなみに台所は真っ先に手が入ったのでピカピカだ。しかしその惨状に美咲が憤慨したのは言うまでもない。
 さしたる時間もかからず湯飲みを二つ持ってくる。戸棚の奥に押し込まれていた賞味期限ギリギリの封を切っていなかったお茶だ。
「ふぅ…… うまいな。」
 つい先程まで湯飲みとして使うのは衛生上危険きわまりなかった物をコトリとテーブルに置く。特に日本茶党というわけではないが、こういう茶を飲む雰囲気は嫌いじゃない。なんとなくお茶請けが欲しいのだが、この家は大胆なリストラ策の真っ最中でそのようなものに恵まれる余裕はない。
 しかたなく、年頃の少年少女が向かい合わせでズズズと茶をすする光景となるのだ。
「俺が言うのもなんだが…… お前、怖いとか危ないとか思わないのか?」
「何が?」
 まるで分かってないように首を傾げる美咲。
「いや…… その、な? 男の家に二人っきりでいるっていうのが……」
 口ごもりながら言う隼人を美咲が上目遣いで見つめる。
「もしかして…… 変なこと考えてる?」
 少女にはちょっと珍しい据わったような視線を向ける。さすがの隼人もこの手の攻撃には慣れていないのか、思わず取り乱してしまう。
「あ、阿呆。飽くまでも一般論だ、一般論。
 俺は別に……」
「大丈夫。隼人くんとなら安心だもん。」
「…………」
 屈託のない笑顔で真っ正面からそう言われ、返す言葉もない。
「うん、そろそろお掃除再開しよ。」
「あ、ああ…… そうだな。」

「ホントに久しぶりね……」
「そうですね。」
 夢幻界は前来たときと同じように広く、静かな空間だった。
「あれね。」
 麗華の視線の先に何かモヤモヤとした濃い霧のようなものが存在していた。それはゆっくりとだが収束しているように見えた。
「ふ〜む…… 確かに夢魔と比べると弱い感じがしますね。でも悪さをしないうちに叩いておくべきですか。」
「そうね。いくわよ、謙治。」
「はい。」
 二人が胸の前にドリームティアを構える。
『ブレイカーマシン、リアライズ!』
 赤の閃光が走り、その中から炎をまとった鳥型のマシンが現れる。
「え……?」
 謙治は不思議そうに自分のドリームティアを見つめる。バスタータンクはリアライズされていない。
「ブレイカーマシン、リアライズ!
 ……リアライズ! リアライズ!」
「ちょっと謙治! どうしたのよ!」
「そ、そんな……」
 全くの予想外のことに呆然自失となる謙治。麗華もその姿に声をかけられない。
 が、気を取り直したように眼鏡を定位置に戻すと、上空のフェニックスブレイカーを見上げる。
「……すみません。あの澱みの方はお願いします。僕は一度戻りますので。」
 言うだけ言って、謙治が手を振ると、その姿が夢幻界から消えた。
「しょうがないわね。ま、あれなら私一人でもなんとかなるかしら……
 ヒートパルサー!」

「おや?」
 保健室で待機していた小鳥遊はディスプレイ上に奇妙なエラーメッセージを見つけた。
 ――File not Found
 ――File not Found
 メッセージ自体は別に珍しくも何ともない。ただ、ドリームリアライザー絡みでこの手のエラーは見たこと無い。
「……フェニックスブレイカーはリアライズされている、と。バスタータンクが出てきてないとは……?」
 奥のベッドで誰かが起きあがる気配がする。白いカーテンが開くと、靴を履くのももどかしいように謙治が飛び出してくる。
「ちょっとすみません!」
 小鳥遊を言葉でどかすと、端末にとりつきキーを叩く。
 画面が素早く変わり、ブレイカーマシンのワイヤーフレームが描かる。フェニックスブレイカーとバスタータンクのところが空欄になっている。
 リアライズの際のデータは、研究所のドリームリアライザーから転送されるのだが、そのデータはまるで意志を持っているかのように削除やコピーを受け付けない。それ故に破損してもバックアップデータを使うことができないのだが……
「バスタータンクのデータが!」
「どういうことだ、謙治君。」
「バスタータンクのデータが消失…… いえ、移動させられています。
 ……もしかしてハッキング?」
「まさか!
 ……いえ、でも確かに研究所のプロテクトは完璧とは言えませんが……」
 でもそれ以前に企業のコンピュータと違って、研究所のは外部に知られている性質のものではない。さらにブレイカーマシン自体が世間に知られていないのだ。もし仮にこのハッキングが意図的なものなら、それは研究所とブレイカーマシン、最悪の場合、美咲たちとの関係が夢魔がわに看破されていることになる。
「急いでデータの流出先を追跡しないと……
 僕、先に研究所に行ってます!」
 一目散に保健室を出ていく謙治。そんな姿を珍しそうに小鳥遊は見ていた。
 彼の足音が聞こえなくなったころ、また保健室の奥のベッドで誰かが身を起こす気配がする。
 夢幻界から帰ってきた麗華が、白のカーテンを開いて顔を出す。室内に小鳥遊しかいないのを見ると、小さく肩をすくめる。
「で、結局なにがあったの?」
 そして小鳥遊の隣の、さっきまで謙治が座っていた椅子に腰をおろす。
 何があったかまでは分からないが、何かあったことは分かっているようだ。
「それより、『澱み』はどうなりました?」
「え? ああ…… 簡単だったわ。必殺技を使わなくても倒せたわよ。
 で、何があったの?」
「簡単に言うと…… バスタータンクが盗まれたようです。」
「大変……じゃないの、それって?」
 小鳥遊の口調がのほほんとしたものなので、事の重大さに今一つ実感がわかない。
「……ちょっと待って! あんな大きな物が簡単に無くなるものなの?!」
「飽くまでもブレイカーマシンはコンピュータ上のデータとして扱われています。
 謙治君の話だとハッキングの可能性があるそうです。」
「そう……」
 コンピュータに詳しくない麗華としては生返事しかできない。それでも謙治の肩越しに色々見ている分、美咲や隼人ほど機械音痴ではないが。
 落ち着いた様子でお茶を飲んでいた小鳥遊が思いだしたようにポツリと呟いた。
「全く関係ないですが、謙治君が麗華さんを待たなかったなんて珍しいですね。」
 言われた言葉を最初は理解できなかったのだが、不意にその意味に気付いて、思わず麗華はお茶を吹き出しそうになる。そんなことをしたら美少女が台無しだ。
「ちょ、ちょっと小鳥遊さん!」
「……まさか気づいてないとは言わないでしょう?」
「…………」
 唐突な事を言われて口篭もる麗華。間が悪いのか、お茶を一口飲んで湯飲みを置く。
「まあ、ね。でも私は……」
「あ、いえいえ。そういう意味で言ったわけじゃないんですが……
 ただ、あなたが少し皆さんより引いた位置にいるのかな? とも思いまして。」
「…………」
 今度は完全に沈黙してしまう。ちょっとばかり図星だった。
「やっぱりそうでしたか…… 外見上はともかく、心からのわがままをあまり言わないような気がしていたもので……
 先ほどの話じゃありませんが、いいんですよ。一緒にいることに理由なんか必要ありません。」
「そう…… ね。
 考え過ぎなのかも知れないけど、今までずっと『神楽崎家のお嬢様』で見られていたから、親しくしようとしている人がいると、どうしても下心があるように見えて……
 美咲たちがそんなこと考えているわけないのにね。」
 その整った顔に暗い影が落ちる。口には出さないけど、色々あったのだろう。
 それでもその凛とした表情を崩すことはない。いや、崩せないのだ。何があっても。「神楽崎家のお嬢様」としては。
「私、今の場所を失いたくない……
 一緒に笑える子が、からかう相手が、悪態をつける相手が……
 そんな…… そんな、今まで欲しくても手に入らなかった場所が……」
 俯いた麗華の細い肩が小さく震える。
「え〜と…… 私は先に戻ります。気が向いたら後で来て下さい。
 それと、ハンカチを置いておきます。洗っておりますので衛生面には問題が無いはずです。」
 では、と小鳥遊が保健室を出ていった。その後のことは誰も知らない……

(うわっ…… これってもしかして、「男の子の機密書類」ってやつなのかな……?)
 隼人の部屋の戸棚の裏に何冊かの本を発見した美咲は恐る恐る写真満載の本を開く。
 中には表紙から予想されるように、その手の写真が……
(う〜ん、隼人くんもこういう女の人の方がいいのかなぁ……)
 写真の中の人と自分のスタイルを比べてちょっとため息をついてしまう。
「お〜い、橘。こっちの方は……」
 声に呼ばれて振りかえる。戸口に立った隼人とバッタリ目が合った。
 沈黙。
 隼人の視線が美咲の手の中のモノに落ちる。
 つられて美咲も同じモノに目を戻した。
 再び沈黙。
「あ! そ、それは! ま、待て橘!」
 サッ、ササッ。
 二人の間で素早い攻防が行われる。隼人の方がリーチは長いが、速度は美咲の方が上だ。更にいえば隼人は美咲相手なので思い切った攻撃ができない面もある。
「た、頼むから返してくれ!」
 サッ、ササッ。
「隼人くんも普通の人でちょっと安心したよ……」
 サッ、ササッ。
 よく分からない安心をする美咲と、焦りまくりの隼人。
 とにかく今日の大神家は平和だった。

「それで謙治、分かったの?」
 地下室に降りてくるなり麗華が謙治の背中に声をかける。
「あ、神楽崎さん…… え〜と、そういえば……」
 今の今まで忘れていたような謙治に麗華はちょっと皮肉めいた口調になる。
「そうね、レディを置き去りにした罪は重いわね。いつか返してもらうわよ。」
「は、はあ……」
「で? どうなったの?」
「あ、はい。」
 またモニターに向き直った謙治がキーを叩く。すぐさまモニタが文字で一杯になる。
 まあ、どうせ謙治が説明するでしょう。と麗華は特に文字を見ようとしない。
「僕の予想通りハッキングでした。しかし侵入方法は鮮やかながら、痕跡を消すような行動をとっておりません。
 ハッキングにはさほど詳しくないですが、すぐに逆探知できました。今、電話番号を検索中です。」
 ディスプレイ上でピコピコとSDキャラのブレイカーマシン動き回っている。それがいきなり中央に集まってSDナイトブレイカーに合体した。
「あ、検索が終了したようです。」
 ちょっと呆然とする麗華。
「……ねえ、謙治。」
「はい?」
「誰作ったの、これ。」
「あ、僕ですよ。前に暇な時に……
 え〜と、番号はPHSか。それなら発信源を突き止めるのは楽ですね。」
「…………」
 さっき考えた事を一瞬後悔しかける麗華であった。そんな彼女の様子にも気付かず、に追跡を続ける。
「え〜と…… あれ? どこかで見かけた事ある住所ですねぇ……」
「ん? 分かったの?」
「ええ…… でもどこか思い出せなくて。」
 ヒョイ、身を乗り出してディスプレイを覗き込む。サラサラとした髪が謙治の鼻をくすぐるのだが、麗華は気付いていない。ドキドキしている謙治。だが、そんな彼の様子にも気づかずに住所を思い出そうとする。
「あら、これ和美ちゃんがいた病院よ。」
 元の位置に戻る麗華に、ホッとした半分残念半分の表情で彼女の言葉を反芻する。
「病院?」
「ええ、そうよ。間違い無いわ。」
 スッと麗華が立ちあがる。謙治は立ちあがらない。
「……なにやってんのよ、謙治。」
「え?」
「行くんでしょ? というか、行かないの? 病院。」
「あ…… そうでした。」
 麗華は呆れたように、そしてちょっと嬉しそうにため息をつく。
「あんたらしくないわね。いつもみたいな自信たっぷりの秀才君になってちょうだい。」
「は、はあ……」
 そんな会話をしながら、二人は病院に向かった。

 ついたはいいが、手がかりは何もない。看護婦とかに聞くわけにもいかず、ロビーをウロチョロしていて奇異の目で見られたりしていた。
「あれ? どうしたんですか、お二人して。」
 聞き覚えのある声に振り向くと隼人の妹、和美がいた。明日退院なのだが、前に隼人に言われたように少し歩いて体力をつけようとしているようだ。しかしそのことを二人は知らない。
「あら、和美ちゃん…… そうだ、ちょうどいいところに。」
「え?」
「あ、そうか。すみません、和美ちゃん。この病院でコンピュータを使っている人いませんか?」
「はい?」
 合点のいかない和美に二人がかりでなんとか事情を説明する。当然、ブレイカーマシンの事を話すことはできないので、相当苦しい説明になったが。
「ええと…… なんかよく分かりませんけど、もしかして良くんのことかな?」
『良くん?』
 二人で声をハモらせていると、物音に気づいたように和美が後ろを振り返る。
「あ、噂をすれば……」
 車輪の軋むような音を立てながら車椅子がやってくる。そこには和美と同い年くらいの少年。膝にノートパソコンを置き、眼鏡をかけてちょっと神経質そうな……
(なんか謙治のミニチュアみたいね。)
(そうですか?)
「あ、そうだ、良くん。看護婦さん探していたよ。またリハビリさぼったんでしょ?」
「ああ、いいんですよ。どうせ僕の足は治らないんです。無駄な努力してもしょうがないでしょう。」
「そんな……」
 カチン。
 その年齢に似合わない醒めた口調に麗華が何か言い出そうとするが、それを謙治が押しとどめる。
「良くん、でしたっけ?」
「誰ですか、あなたは?」
 ともすれば慇懃無礼な口調。年相応では決してない。そんな少年の姿に、ふと謙治は過去の昔を重ねてしまう。
(そうなんだよな。僕も少し前までは頭の中で考えた通りに物事が進むと思っていた……)
 だからこそ、と意を決して謙治は少年に一歩踏み出した。
「バスタータンク。」
 謙治がポツリと呟く言葉に少年はピクッと反応する。その態度に少年がデータを持ち出したことを確信した。
「君が持ち出したデータです。」
「な、なんのことで……」
 少年が慌てたように言うのを遮って言葉を続ける。
「信じるかどうかは別ですが、あのデータは『本物』です。さらに言えばコピーしたつもりでしょうが、あのデータはコピーも削除も受け付けません。
 つまり、君のところにあのデータがある限り、バスタータンクは二度と現れないでしょう。」
「…………」
 沈黙があたりを包み込む。いや、先ほどから周囲がざわめいていた。
 気づくと時間にしては外が薄暗くなっていて。待合室にいる人たちが外を指差して口々に何かを言っている。
「あ! 麗華さん、謙治さん、あれ!」
 和美がその騒ぎの正体を指し示した。
 煙、いや霧だろうか? それにしては妙に黒っぽいし、妙に狭い範囲に存在したし、しかも風に流されるような様子がない。そしてそれはジワジワと病院の方に近づいているように見えた。
「何か分からないけど…… 行った方がいいわね。」
「そうですね。」
「悪いわね、和美ちゃん。ちょっと急用。」
「あ、はい。……お気をつけて。」
 拝むように手を合わせて謝る麗華と一瞬外の霧のようなものを見た和美。クルリと振り返って麗華は待合室を後にする。すぐ追いかけようとした謙治だが、ふと足を止める。
 疑問符を浮かべる和美ではなく、まだ黙りこくっている少年に視線を向ける。
「一つだけ言っておきますが……」
 言っていいものかちょっと悩んでから言葉を続ける。
「バスタータンクは、いえ、ブレイカーマシンには自分の可能性を否定した人間には絶対使えません。」
「!」
 相手の反応を待たずに謙治は駆け出した。

「謙治はどうするの? バスタータンクはまだ戻ってきてないんでしょ?」
「まあ、一応ブースタータンクも動くようには作ってますから。」
「やっぱり美咲たちにも連絡したほうがいいかしら?」
「僕の予想ですが、あれはおそらく夢幻界で見た『澱み』と同じようなものでしょう。ただ、雰囲気としてはちょっと濃いようですが、二人でも何とかなると思いますが。」
「……そうね。ま、苦戦するようだったら呼びましょ。じゃ、行くわよ。
 ブレイカーマシン、リアライズ! カモン! フェニックスブレイカー!」
「ブースタータンク、リアライズ!」

「ふ〜ん、ちゃんと動いているのね。」
「そんな……」
 ブースタータンクはキャタピラの音を響かせながらその「澱み」と思われるものに向かっていく。ふと思いついて、麗華はその巨大な装甲車の上にフェニックスブレイカーを着地させる。
「結構しっかりしているものね。」
「あのー……」
「あら? 謙治じゃなかったかしら? フェニックスブレイカーは飛行能力にエネルギーを取られているって。」
「そうは言いましたけど……」
「ま、いいわ。」
 ふわりとフェニックスブレイカーが舞い上がる。
「お喋りの時間はおしまい。さっさと片付けるわよ。ヒートパルサー!」
 麗華の放った熱線は黒い霧を簡単に貫く。しかし、何も効果を及ぼしていないようだ。はたから見ると熱線が飲み込まれたかのように見える。ただ、熱線が通過したところの空気が膨張して若干吹き散らしたようだが効果は薄い。
「じゃあ、僕もやってみましょう。ブースターキャノン!」
 ブースタータンクの主砲が火を吹く。しかし、霧状の相手にはあんまり効いていないようだ。
「……さ、秀才君。シンキングタイムよ。」
「そうですねぇ……」
 相手があまり動きを見せない霧状のもの、と油断したのだろう。いきなり黒い霧は凝縮すると漆黒の球体になってブースタータンクの真正面から衝突してくる。不意をつかれたせいか、反応するまもなくブースタータンクが宙に浮かされた。
「謙治!」
「なんの! チェンジ、ブースタージェット!」
 空中で無理やり変形する。ただですら空力よりもパワーで飛ぶ機体なので、これまた無理やりに体勢を立て直した。
「固まっているなら! いけっ、ブースターキャノン!」
 意気込んで攻撃するが、ブースタージェットはうんともすんとも言わない。少し遅れてコクピット内のあちこちに警告灯がつく。
「しまった…… 今のショックで不完全な武器回路に負荷がかかりすぎたか……」
「ということはなに? そっちの武器は使えなくなったってこと?」
「そういうことですね。」

 実のことを言えば良は最近出没している謎のロボットたちの大ファンだった。
 特に戦車から変形するロボットが一番のお気に入りだった。
 することのない病院での生活。コンピュータで遊んでいるうちに他のコンピュータに侵入することを覚えてしまった。なにせ時間だけはあった。ゲームのつもりであちこちのコンピュータに入ってみた。
 そしてほんの数日前。それなりにガードは固かったけど、何かの研究所のコンピュータに進入できた。そこには様々な──それこそ、今話題の謎のロボットたちのデータや怪物のデータがあった。そう、彼の大好きなロボットのデータも。
 今まで眺めるだけで済ませていたが、たまらなくなってデータをコピーしたのだ。何も問題がない、と思っていた。けど……

「どうしたの、良くん?」
「和美さん…… 僕は間違っていたんでしょうか……?」
 唐突な質問に和美が首を傾げる。
「う〜ん。なんのことか分からないけど…… 『正しい』とか『間違っている』とかは結果で決まるんだろうけど、やったときは『正しい』と思ってやっているんじゃないかな?
 それとも良くんは始めから結果まですべて分かる? あたしは分からないし、お兄ちゃんもよく『やってみなけりゃ分からない』って言ってるし。」
「…………」
 和美は何かに気づいたような顔をすると、不意に口調に真剣なものが混じる。
「良くん…… 失敗することは怖いけど、失敗するから人間じゃないかな? 失敗を恐れたら何もできなくなっちゃうよ。きっと……」
「そう…… ですね。そうなんですよね。」

「謙治。どうする? フェニックスブレイカー一機でなんとかできると思う?」
 戦闘中なのに麗華の声は何かを楽しんでいるようだった。
「そうですねぇ…… アレをやってみるしかないですね。」
「でも…… でしょ?」
「ええ。まだ試してもいないので失敗するかも知れません。
 ま、失敗したらしたで、おとなしく橘さんと大神君を呼びましょう。」
 そんな適当にも聞こえるセリフに麗華は小さく笑みを浮かべた。
「今まで聞いたジョークの中でも最高ね。じゃ、やってみましょう。」
「はい。それでは……
 
プログラムナンバー101。フェニックスフォートレス、スタンバイ!
 フェニックスブレイカーがブースタージェットの上で停止して脚部を折りたたむ。ブースタージェットの上部が展開し、フェニックスブレイカーがちょうど収まるスペースが現れた。
 ブースタージェットから細い光線が何条か伸び、位置を固定。そしてお互いに引き寄せられるように二機が合体する。次の瞬間、ブースタータンクのエネルギーがフェニックスブレイカーに注ぎ込まれた。
「! なにこれ謙治! エネルギーレベルがいきなり数倍に跳ね上がったわよ!」
「そりゃそうです。そういう風に設計したわけですから。」
 驚く麗華に謙治はどこ吹く風だ。
「相手の解析が終了しました。凝縮を行うようですが、本質的にはあの『澱み』に近いものと思われます。
 殲滅するよりは拡散させて自然消滅を狙った方がエネルギーのロスが少ないでしょう。」
「なるほどね……」
 この間にも黒い球体が体当たりを仕掛けてくるが、そんなものを避けるのには苦はない。
「要するに散らしてから吹き飛ばせばいいの?」
「そうですね。そんな感じです。」
「じゃあ、これでどうかしら?
 バードウェイブ!」
 上のフェニックスブレイカーが口を開くと同時にブースタータンクからも共鳴板が開き、今までを倍する高周波が放たれる。
 その波動は球体を包み込む。球体は一瞬震えたかと思うと、霞むようにその姿が霧状に変化する。
「今です! 高温で周囲の空気を爆発的に膨張させれば『澱み』を拡散できるはずです。」
「……いいのね?」
「ええ、たぶん……」
 自信の無さではなく、別の理由で言葉を濁した謙治に、その裏の意味も理解して麗華はうなずいた。
「エネルギー全開!」
 フェニックスフォートレスが炎の尾を引きながら急上昇をかける。眼下にまた集結しようとしている霧に狙いを定める。
「これでおしまいよ!」
 高高度から一気に急降下をする。その全体が炎に包まれる。炎が白色になったあたりで翼を畳み回転を始めた。
 熱気が周囲の空気を膨張させ、一気に広がる。固まりかけた霧が起きた風に流される。
バースト・トルネード・ブレイクッ!!
 まさに巨大竜巻のように暴風をまき散らしながら、灼熱の槍が「澱み」を貫いた。
 貫かれた霧は一瞬にして消滅。周りに漂う部分もほぼ同時に蒸発してしまう。
 フェニックスフォートレスが空中で反転し、再び上空で体制を立て直した頃には、拡散させるどころか「澱み」は完全に消滅していた。
「ちょっとやりすぎたかしら……?」
 苦笑していると、コクピット内でレッドアラートが鳴り響いた。
 フェニックスブレイカー自体に問題はない。しかし、ブースタータンクが機体強度を超える高温でほとんどのシステムがダウンしていた。そして……
「謙治! しっかりしなさい!」
 ブースタータンクのパイロット。つまり謙治の生体状態にも障害が出ていた。
「ははは…… ちょっと設計ミスったようです。なんとかなるかなぁ、とは思ったんですが……」
「あんたなら分かってたんじゃないの?!」
「まあ…… そうですねぇ。でも他に方法が思い付かなくて…… すみません、いい加減気が遠く……」
 不意に声が途切れると、ブースタータンクが消滅する。ということは……
「謙治ぃ!!」
 悲鳴じみた声をあげて、麗華は落下する謙治を追いかけるように急降下した。

「ホントに馬鹿ね。謙治……」
 寝ているのか、気を失っているのか。麗華の膝を枕に横たわる謙治は規則的な呼吸を続けている。とりあえず問題はないようだ。
「まったく、心臓に悪いじゃない……」
 西の空が赤く染まってきた。
 涼しくなってきた風が頬をなでる。
「いいことなのか、悪いことなのか……
 昔の謙治ならあんな無茶、絶対やらないわよね。」
 呼ぼうと思えばいつものリムジンを呼ぶこともできるのだが、なんとなくそんな気分ではなかった。
 長い髪が風に吹かれて流れた。慌てて手でおさえる。汗が冷えてきたのか、麗華が小さく身を震わせた。
 平和そうに目を閉じている謙治の顔を見て、はぁと大きくため息をつく。
「いつになったら目が覚めるのかしら……」

 

 

 

 

次回予告

小鳥遊「ナイトブレイカーは我々の戦力の中で最強のものです。しかし、大きな欠点もあります。
 四機のブレイカーマシンが合体したものですから、一人でも欠けると使えないわけです。
 恐れていたことが起きました。現れた夢魔はナイトブレイカーでなくては倒せないようです。
 しかし、一人の少女の優しさがこんな結果を生むとは……
 我々は敗北してしまうのでしょうか? ……いえ、私は信じます。あの子たちの力を。

 夢の勇者ナイトブレイカー第二十話
『大ピンチ! ナイトブレイカー合体不能?!』(前編)

 望んだ夢というのを一度は見てみたいものです。」

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