− 第八章 −

 

「グリフォン! take a JOKER(切り札を使うぞ)!」
 そう言いながらジェラードは白衣の胸ポケットからトランプのJOKERのカードを取り出し、コンソールのスロットに挿入した。
〈OK! JOKERを確認しました。
 リミッター解除。出力全開。
 シルバーグリフォンスーパーモード!
 ……って言えばよろしいんですよね。〉
「つまらんこと言うなぁ。こういうのは雰囲気ってもんが大事だろうが。」
〈そういうものでしょうか…… それよりプログラム通り、小惑星の到達予想ポイントに向かいます。〉
「はいはい。」
〈反重力エンジン始動。出力一二〇%まで上昇します。〉
 グリフォンには通常のイオンジェットエンジンとこの反重力エンジンが搭載されている。 反重力エンジンは名前こそ反重力となっているが、実際は船の周囲に重力点を設定し、そこへ向かって「落下」するものである。
 普通のエンジンでは慣性の法則によりその加速度に等しいGが船内にかかるが、反重力エンジンはGを全く発生させないので普通では考えられない加速度で航行しても船内の人間に影響を及ぼすことはない。
 しかし、重力自体に干渉するため惑星の近くではその星の重力バランスを崩すので使用することができない。月の引力によって地球上の海水が移動することを考えればすぐわかることだろう。
 グリフォンは普通の船では考えられない速力で動き始めた。
〈このままですと、例の小惑星が大気圏に突入する一時間ほど前に迎撃ポイントに到着すると思われます。〉
「……つーことは……あと半日は余裕があるわけだな…… よし、軽くメシにして休憩にしておこう。リーナ、すまないが食べるものの用意をしてくれ。」
「は、はい……」
 そう答える少女の声には何となくハリがなかった。その目はコンソールのスクリーンを見つめ、口を開きながらもキーを打ち続ける。
「……ふむ。やっぱ…… 心配だよなあ…… けどなあよく言うでしょ『腹が減っては戦はできぬ』って…… よーく考えりゃ全く関係ねえな。」
 そんなジェラードの言いぐさにふとリーナの顔に笑みが浮かぶ。
「でもな、いま一所懸命にキーを叩いてもしようがないでしょ。一応、グリフォンだって物理法則にのっとったモノなんだから、時間を消費しないと動けないんだから。」
 ぶっきらぼうな口調の中にもなんとかリーナを元気づけようと努力するジェラードであった。
「……そうですね。結果も出ていないのにクヨクヨしても始まりませんから……」
 そして一転して表情を明るくするとスッと立ち上がっておどけ気味に敬礼をして、
「ただ今よりアイリーナ=コーシャルダンは皆さんの身体と心の健康のためにおいしい料理を作ってまいります。」
 そう言って晴れやかな笑顔を残し、リーナはコクピットルームを出て行った。

「いやぁ、健気だねえ。」
 カイルが感心したような声をあげる。
「実にいい娘だ。」
 そう言って一人頷いて、チラッとヒューイの方に目を向ける。
「さしずめ次のセリフは『ヒューイにはもったいない』っていうところか?」
「おお、冴えてるじゃねえか。」
〈まあ、冴えているかどうかは抜きにしても、私には結構お似合いのカップルにみえますが……〉
 グリフォンまで無責任なことを言い出す。
「やかましい!」
 会話のお題目にあがっている人物が苛立ちを隠さずに声をはりあげた。
「なんだ…… リーナのことが嫌いなのか? ……かわいそうに、リーナもこんなつまらん男に惹かれるとは……
 私がもっと街などに連れ出して世の男達を見せてやればよかった……
 あの娘の保護者の身でありながら…… ああ、リーナよ許してくれ……」
 ジェラードが悲観を絵に描いたような表情で切々と悲しみにくれる。ただ、顔の造作と淡々とした口調ののせいか何となくあまり悲しそうに見えない。
「で…… 楽しいか? ジェラード。」
 さめた目でジェラードを睨む。その目を見てすぐにいつものとぼけたような顔に戻る。
「まあ、そこそこ。
 ……さて、と。とりあえず端的に言えばお前らにできる仕事は当分ない、と思うので自由にしていていいよ。」
 あっけらかんとそう言うと、ジェラードは再びコンソールに向きなおり、無言でキーを叩き始める。
 しばらく二人はその様子を見ていたが、長年のつきあいってやつで、今のジェラードには話しかけるだけ無駄と悟っているのでジェラードの邪魔にならないようにコクピットルームを去っていった。

 今度はジェラードが一人残される形になった。黙々とキーを叩いていたが、ジェラードは二人が出て行ったのを横目で見て、ふと、その手を休める。
「……まいったね……」
〈はい……〉
 ジェラードとグリフォンが揃ってため息をつく。
 メインスクリーンが切り替わった。小惑星の映像が映っている。さっきカイルの見たものとは微妙に違っていた。
「ったく、宇宙軍も面倒なことをしてくれる…… こっちの苦労ってもんを考えてくれよな……」
〈しょうがありません。向こうはこちらのことを知らないのですから。〉
 画面の中の小惑星はさっきと比べて一部が欠けていた。
 ワープ機関の関係で宇宙軍の例の海賊討伐艦隊は惑星バーンの恒星系の近くにワープアウトしていた。
 それから海賊の基地の小惑星に向けて航行していたのだが、すでにその時にはジェラード達が内部の掃討を終えていた。その後、基地の自壊シークエンスが発動し、小惑星はバーンの衝突コースにのることになった。
 グリフォンはすぐに帰還する予定だったので双方から離れる軌道に入り、しかも短距離ながらもワープをかけたため、小惑星から大きく離れることになった。だから、もともと小惑星に向かっていた宇宙軍の方が先に小惑星に接近したのは誰のせいでもない。
 そこで宇宙軍は無謀にも小惑星に攻撃をしかけ、破壊またはコースの変更をしようとしたのだが相手が大きすぎてなにも効果が得られなかった。それで止せばいいものを巡洋艦を2隻空にしてそのジェネレーターを暴走させ小惑星に体当たりさせたのだ。
 普通の艦につんである核融合ジェネレーターは悪くいうとゆっくり爆発する水爆のようなものである。それを一気に爆発させ破壊かコースを変更させよう…… 確かにアイデアはいいが今回は相手が悪かった。
 巡洋艦二隻分の水爆は小惑星を破壊するまでには至らなかったが、その表面を大きく抉った。しかし、小惑星の自壊シークエンスはこのような状況も考慮されていたらしく、生き残っているバーニアをふかし、軌道を再び衝突コースに戻した。
 宇宙軍の行ったことは小惑星の質量を減少させ、スピードを増加させ、衝突までの時間を縮めただけであった。
「……でこのままだと……?」
〈このままですと…… 確実に間に合わないことになります。〉
「だろうなあ……」
 苛立ちを隠せないでジェラードは頭をかいた。指でコツコツとコンソールをたたく。
「ただ…… それは…… 慣性制御装置の能力を考えた上での値だろ……
 慣性制御装置の限界を越えてまで減速をすれば…… ギリギリってところじゃねえか?」
 宇宙空間では加速に要した時間と同等の時間をかけて減速しなければならない。つまり航行する場合は減速の時間も考慮しなくてはならないのである。
〈そうですが…… たとえ私でも慣性制御装置の限界を越えた加減速をするとGがかかることになります。〉
 今回の状況では恒星系の内部で減速を開始することになる。近くに惑星のような巨大質量がある場合、反重力エンジンを使用することはできない。いや、使用は可能だが、エンジンの生み出す重力が惑星同士の重力バランスを崩すため、系全体に悪影響を及ぼすことになる。
 反重力エンジンが使用できないとなるともう一つのイオンジェットエンジンを使用しなければならない。出力は違えども他の艦に搭載してあるものと原理的には一緒なので、重力に影響を及ぼすことはないが、その加速力と等価のGがその艦内にかかることになる。
 そのGを人間の耐えられるレベルまで低下させるための慣性制御装置というものが存在するが、それにも限界がある。たとえ高性能の装置があるとはいえ、その全てを軽減させることはグリフォンでも不可能である。
 高重力に対する訓練を受けているヒューイやカイルならともかく、ジェラードやリーナには艦内にかかるGに耐えられない可能性が高い。
「私はともかく…… 問題はリーナか……」
〈博士も十分に問題です。私の計算では五G程度の加速度が数分間続くと思われます。また、瞬間的には一五G程度までになる可能性があります。〉
 五Gというと簡単にいえば体重の四倍の重さが身体にのっかるようなものである。
「直前になったらリーナを降ろすか……」
〈それがいいと思います。〉
「とりあえず、コースの変更をしておいてくれ。」
〈わかりました。〉
 スクリーンに現在のグリフォンの状況が表示される。反重力エンジンが再び始動し、グリフォンの方向を僅かに変化させる。
「……そういやあ、エネルギーは保つか?」
〈と、いいますと。〉
「だって、あれを使う予定だろ? あれは大飯喰らいだからなあ。」
〈これからはしばらくは慣性航行をしますから、その間にできるだけ貯めておきますが…… やはり減速の際のエネルギー消費によりますね……〉
「ふむ……」
 難しい顔をしていると、コンソールの一角が軽やかな電子音を奏でる。艦内用の通信機の音である。
「リーナかな……
 私だ。どうした?」
『博士、食事の支度ができましたので、リビングにお越し下さい。』
 スピーカーからリーナの聞いていて心地よい声が流れる。
「わかった。すぐ行く。」
 そう短く言うとジェラードは席を立った。
「……なにか起きたらすぐに言えよ。」
〈はい。〉
 ジェラードはコクピットルームを後にした。

 リビングに入るとすでに食事は始まっていた。何枚かの大皿にのった料理が半分以上消失していた。
「あのなあ……」
 呆れた様子でジェラードが顔に手をあてる。その視線の先には口一杯に料理を詰め込んでいるヒューイとカイルの姿があった。
「お前らには主賓を待とうという礼儀はないのか?」
 誰が主賓だか。
「礼儀ねえ……」
 口に食べ物を頬張ったままヒューイが答える。しばらくモゴモゴして、口の中のものを飲み込んだ。
「礼儀ならいちばん大切なのを守ってるぜ。」
「そのココロは?」
 ヒューイとカイルが一瞬目を見合わせる。二人同時に口を開いた。
『おいしい料理は冷めないうちに食べる!』
「そりゃ結構なこって。」
「でもよ、作ってくれた人に対する最大の礼儀だと思わねえか。」
 カイルが再び取り皿に料理を取る。その一皿分でジェラードやリーナならおなか一杯になるほどの量である。
「……でしょうなあ。
 ま、いいや。私の分が無くならない内に食べてしまいましょう。」
 ジェラードがリーナから皿を受け取り、自分の食べる分を取り分けた。しばらく食器の鳴る音だけで無言のまま、皆がリーナの手料理を楽しんでいた。
 少しして、ジェラードが食後のコーヒーを飲みながらため息ををつく。それをリーナが不思議そうな顔で見ている。
「……あいつら見てどう思う?」
「……ヒューイさん達ですか……?
 ええ、よく食べられるな、と。」
「あいつらを見ていると…… 自分が拒食症にでもなったかと錯覚することがある。」
 別にジェラードが全然食べないわけではない。多少、食の細いところはあるが、人並には食べていると本人は自負している。
 それ以上に二人の食事量が常軌をいっしているだけである。
「そうでしょうか……?」
「毎食毎食、目の前であれだけ食われてみろ。自分の方が病気だと思っちまうぞ。」
「でも…… たくさん食べられることは健康な証拠です。」
 リーナはそう言って微笑んだ。
「そうかねえ……」
 ジェラードがヒューイとカイルの方に目を向ける。ある意味幸せそうな顔で食事をしている二人を見てまたため息をつく。
「……ま、どう見ても健康そうだね……」

「さーて、」
 なめたようにきれいな皿をテーブルにおいて、カイルは大きく伸びをした。テーブルの上の皿はカイルの持っていたもの同様になっていた。その隣でヒューイも皿をおく。
「もうちょっと食べたいところが…… これから忙しくなりそうだからこれだけで我慢しとくか。」
「それだけ食べれば十分だろ。」
 ジェラードが憮然とした表情をする。
「最近、育ち盛りでよお。」
「二五の男が不気味なことを言うんじゃねえ。」
 こんなつまらないことで、リビングが不自然なアメリカのドラマのように笑いで包まれる。
 ひとしきり笑いが続くと、リーナが食器を片付けるために立ち上がる。ヒューイが手伝おうとこれまた席を立つ。二人がキッチンに消えると、そっちから皿を洗う音が聞こえてきた。ヒューイが戻ってこないところを見ると皿洗いも手伝う気らしい。
「若いねえ。」
 年寄りじみた言い方でジェラードが口を開く。これでお茶をすすり始めたら立派に爺さんである。
「年は同じじゃねえか……
 ところでよお……」
 カイルが急に声をひそめた。キッチンに聞こえないような声に。食事中、ずっとテーブルの下でまどろんでいたスコッチがそれを聞きつけてさっきまでリーナが座っていた席に飛び乗る。
「おめえ、なに隠してんだ。」
「別に、何も。」
 ジェラードの即答にカイルがニヤリと笑う。
「やっぱりな。で、何があったんだ。」
「何もないって言ってるでしょうが。」
 口調は全く変わらない。しかし、ジェラードは内心、ちょっとばかり焦った。
「いーや。だいたいすぐに『別に』と言い返したのが怪しい。きっと、そう聞かれることを予想してたんだろ。
 普段のおめえならしばらく考えてから返事するだろうが。やましいことが多いからなあ。」
「う……」
 ジェラードの旗色が悪くなってきた。
「ほーら、やっぱり。」
 カイルが勝ちほこった顔をする。
「……今一つ笑い事じゃないんだが……
 とりあえず内緒にしておいてくれ、特にリーナにはな。」
「おう。」
「ひらたく言うと、宇宙軍が馬鹿やって予定が狂った。」
「?」
「あと……」
 チラッとアームバンドの時計を見る。
「九時間程度だ……」
「何が?」
 カイルの緊迫感の無い声にジェラードは力が抜けたかのようにテーブルにつっぷす。疲れたように状況の変化を説明した。
「急げばいいじゃん。」
「そんなに簡単にいくものか。」
「そうですよカイルさん。宇宙船は加速に必要な時間と同等の時間がかかるのですから。」
 エプロンをたたみながらリーナがヒューイとリビングに戻ってくる。
「あ!」
 予想外のことに思わず立ち上がろうとして、足でも滑らしたのだろう。ジェラードは椅子ごと後ろに倒れた。後頭部を打つ鈍い音が聞こえた。
「博士! 大丈夫ですか?」
 慌ててリーナが駆けつける。
「頭を打っただけだ…… ところで、どこから話を聞いていた?」
「聞くつもりはありませんでしたが…… 確か…… 『ひらたく言うと』のところあたりだと思いましたが……」
「そうか…… それはしょうがないですねえ……
 と、それより誰か起こしてくれ。」
 床に転がったままのジェラードがそう情けなさそうに言った。それをカイルが片手で椅子ごと持ち上げてジェラードは再び元の位置に落ち着く。
「あんがと。
 さて…… 状況が解っているなら、今後のグリフォンの行動も予想できるだろ。」
「飽くまでも推測の範囲内ですが……」
 ジェラードに問われたリーナが視線を宙にさまよわせ、頭の中で計算を始める。しばらくして口を開いた。
「減速率を上昇しなければ間に合わないことになります。」
 リーナの顔に緊張が走る。
「結果だけ申しますと、緩衝制御装置の限界を越える加速度が船内にかかることになります。」
「そこまで推測できたなら話は早い。
 リーナ、減速間際になったらグリフォンを降りろ。」
「いやです。」
 少女にしては珍しく厳しい口調だった。そのライトブラウンの瞳には揺るぎようのない決意の光が見える。
「たとえ無力であっても…… 自分だけ安全なところで見ているなんて、私には耐えられません。」
 その言葉にジェラードはため息をつく。それから無言で白衣の裾からスタンブレードを抜いた。リーナが驚愕の表情を見せる。
「それじゃあ、強行手段をとるしかありませんね…… 性格はわかってますからそう言うとは思いましたが。」
 スタンブレードのスイッチを入れる。低いハム音とともに、高圧電流の刃が形成される。その刃先がリーナの方を向いた。
「お、おい。ジェラード……」
「黙ってろ!」
 ジェラードの一喝がヒューイとカイルの動きを止めた。
「私も…… こういう手は好きじゃないんです。できれば自分で『降ります』って言ってくれた方が嬉しいんだけどね。
 私はリーナには怪我をしてもらいたくないんです。」
 穏やかなそのジェラードの言葉にリーナは首を振る。
「リーナの言いたいこともわかります。でも、それはきれいごとに過ぎません。そして、きれいごとだけでは人間、生きていけないのです。わかるでしょう? 無理をしたって損をするだけです。」
「私は…… 私は人間ではありませんから……」
 リーナが寂しそうに目を伏せた。リーナはジェラードの作った人工生命体である。そのことがいつもリーナを苦しめていた。
「リーナ……」
 少女の言葉にジェラードの表情が一変する。右手を軽く振り握っていたスタンブレードを虚空に消す。そして泣き出しそうな顔のリーナに近づき、その細い肩に手をかけた。
「すまん…… お前にそんなこと言わせるつもりはなかったのだが……」
 リーナよりも悲しそうな瞳でジェラードが口を開く。
「けどな、リーナがどう思っていようと、その人間らしい心を持っている限りはお前は人間です。それ以上でもそれ以下でもありません。だからそんな悲しいことを言わないで下さい。」
 ジェラードの言葉には不思議に重みがあった。彼自身にそんな体験があったのかどうかは定かではないが、リーナに言い聞かせているのと同時に自分にも言い聞かせているようにも聞こえた。
「はい…… で、でも……」
「もういい……
 とりあえず着替えてこい。普段着よりはさっきの服の方が加速度に耐えられる。」
「それじゃあ……」
 リーナが顔をあげた。ジェラードの顔には寂しげな笑みがうかんでいた。しかしそれはすぐに消え、無理に作ったような笑顔に変わる。
「しょうがありません、そこまで覚悟しているなら。
 しかし、これだけは言っておきますが私の計算だと少なくとも五G近くのGがかかるはずです。並大抵のものではありませんから、それを肝に命じておいて下さい。」
「はい!」
 真剣な表情で返事をする。その表情もまたかわいかったりするのだ。
「……五Gか、結構なものだな……」
「そうか? 俺はそんなに気にならねえがな。要は気合いの問題だぜ。」
「お前みたいな化け物と一緒にするな。」
「ひでえなヒューイ。おめえだってちょっと体を鍛えれば俺みたいになれるぜ。」
「ならなくていい……」
 さっきまで話に入れなかったヒューイとカイルがここぞとばかりに漫才めいたやりとりをする。それが何となくシリアスになった空気を和ませた。
 全員がそれなりに息をつく。
 小惑星衝突まであと八時間。

 

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