第十七話 宿命の邂逅
大神隼人は花屋のバイトをしている。元々は病気の妹の入院費の足しにでもなれば、と始めたバイトの一つだった。それ以外にも新聞配達や深夜の道路工事、警備会社のアルバイト等々していた。が、その妹の手術が意外と早く済んだ上に手術費もほとんど請求されなかったので、無理にバイトを重ねる必要が無くなったのだ。
「でも悪いわねえ、隼人君。」
「いえ、店長にはなにかと御世話になりましたから。」
「イヤだわ隼人君。冴子さん、て呼んでちょうだい。」
「…………」
放課後から閉店までの数時間、しかも出られるときだけのバイトでも雇ってくれたのが、この花屋の店主の遠野冴子だった。
で、彼女からの強い要請もあり、今もここのバイトだけは続けている。冴子としては無愛想ながらもハンサムな隼人がいるだけで客寄せになる、ということで十分バイト代以上の価値はあるのだ。当然、隼人の家の事情を知っての上である。
「それで、ね。隼人君?」
「はい?」
「今日は店主同士の集まりみたいのがあってね、早くに店じまいするの。だから……」
「分かりました。では今日は帰らせて頂きます。」
「あ、待って待って。」
年齢不詳の美女は適当に並んでいる花を二、三輪取ると手早く花束にする。ニッコリと大輪の花のような笑みを浮かべると、それを少年に手渡す。
「妹さんのところに行くんでしょ? 持って行ってあげなさい。」
「いえ、でも……」
「女の子っていうのはね、たとえお兄さんからだとしても、男の人からもらうお花は嬉しいものなのよ。」
「そういう、ものですか?」
「そうなの。隼人君も気になる女の子がいるなら、適当な理由をつけてお花をプレゼントすることね。」
「は、はあ……」
言われるままに花束を受け取ると、隼人はつけていたエプロンを外し、花屋を出た。
背後でシャッターの閉じる音がする。
「……いつもより早いが、いいか。」
呟くと隼人は歩き出した。
「俺だ。和美、入るぞ。」
いつもはバイトが終わってからきている妹への見舞いなのだが、別に気にした様子も無くノックし、ドアを開けようとした。が、
「あ、ああ! 待ってお兄ちゃん! い、今着替えてるの!」
という妹の悲鳴じみた声に隼人はその手を止める。妹とはいえ、年頃の娘の着替えの最中を覗くほど非常識ではない。声の質に若干の違和感も感じたけど、気にせずに待とうとする。
「……?」
病室の中から一瞬だけ二人分の気配を感じたような気がした。看護婦か、とも思ったけど、すぐに気配が一人分になってしまう。
しばらく中からゴソゴソ音がしたかと思うと、再び妹の声が聞こえてくる。
「あ、いいよ。お兄ちゃん、入っても。」
ちょっと、声に演技らしきものが混じっているような気がしたが、これも気にせずに隼人はドアを開けた。
諸処の事情で一人部屋の病室の中には和美一人しかいない。が、何となく隼人は違和感めいたものを感じていた。
中途半端に出された椅子。飲みかけの紅茶のカップに食べかけのチーズケーキ。まだ半ラウンドほどケーキが大皿の上に残っている。ヒョイ、とフォークでチーズケーキを口に運ぶ。甘さを抑えてあるため、甘いものが苦手な方な隼人でも食べやすい味である。
(どこかで食べたことあるような……)
誰かが見舞いに来ていたのだろう。妹の友人という可能性もあるが、手作りと思われるケーキを持ってこれるだろうか。しかも入るときの和美の慌てよう。もしまだ中にいるとするならば、隼人の前で気配を消していることになる。そうなると……
隼人は椅子を引き寄せ腰掛けると、おそらく隠れていると思われるベッドの下に向かって声をかける。
「橘、怒らないから出てこい。」
しばらく間があって、ゴソゴソと小柄な少女がベッドの下から姿を現す。
「ええと…… あの、ね。」
「ダメ! お兄ちゃん、美咲お姉ちゃんを怒らないで!」
曖昧な笑みを浮かべる美咲と、それをかばうように腕を広げる和美に隼人は困ったような表情をする。
「あー、質問その一。いつから和美の見舞いに来ているんだ?」
「夏休み明けたくらいから……」
消え入りそうな声が帰ってくる。それを聞いて思わず隼人は顔に手を当てた。二人とも黙っていたとはいえ、全く気づかなかった自分が情けなかった。
「じゃあ、もう一つ。なんで俺に黙っていたんだ?」
「だって…… 隼人くんに気を使わせたくなかったから……」
上目遣いで見つめてくる美咲に返す言葉も思いつかず、少女の頭にポンと手を置き、疲れたように肩を落とす。
「そーか、そーか。俺に気を使わせないように、か。
考えすぎだ、橘。俺は和美の見舞いに行くな、なんて一言も口にしてない。それに和美が喜んでいるなら、逆にこっちが礼を言わなければならない。
……すまないな橘。感謝している。」
「え? えへへへ……」
照れくさいのか、顔を赤くして後頭部をかくふりを美咲。不意に思い出したように隼人はもう片手に持っていた花束を少女に差し出す。
「貰い物で悪いが、これをやろう。」
「え、いいの?
うわぁ、きれい…… ありがとう、隼人くん。」
「すまんな和美。本当はお前に持ってきたつもりだったんだが。今度、新しくもらってくるからな。」
心底嬉しそうな美咲から何となく目をそらし、妹の方を見る。和美はそんな兄の様子に小さく期待するような笑みを浮かべ、更にあることに気づいて心の中でニヤリ笑みを浮かべる。
「ううん、和美はいいよ。それよりもお兄ちゃん、あれは何の花なの?」
「ん? あれか?」
花屋でバイトしている縁もあってか、隼人はそれなりに花には詳しかった。言われてみれば貰った花が何の花か確認していなかった。
「ええとな、これはパンジーの花だな。」
「へ〜 そうなんだ。隼人くん、物知り〜」
美咲の感嘆の声にも小さく肩をすくめただけだが、次の和美の言葉が彼を追いつめる。
「ねえねぇ、花言葉は?」
「パンジーか、確か…… あぁっ!!」
「あっれ〜 ねえねえ、お兄ちゃんお兄ちゃん、なんなの〜?」
急に大声を出す隼人とニヤニヤ笑いを消さない和美に、美咲は不思議そうに兄妹のやりとりを見ている。
隼人は観念した。
「……『私を想って下さい』、だ。
い、いいか、勘違いする……」
そして慌てて言い繕おうとするが、それよりも美咲の反応の方が顕著だった。
いきなり顔を真っ赤にすると、香りを楽しむために胸に抱いていた花束をギュッと握りしめる。
「え、えっと…… あの、ね。その……」
恥ずかしそうにモジモジする少女にかける言葉も思いつかず黙っていると、いきなり美咲は病室のポットを掴んだ。
「あ、あの…… お湯もらって来るね!
隼人くんも何か飲むでしょ!」
バタン、とドアの開閉の音も荒々しく、美咲は病室から飛び出していった。何となく耳を澄ますと外で怒ったような声と、謝っているような声が交互に聞こえてきた。
ひとしきり状況を思い返し、外の様子を想像してから、ゆっくりと隼人は和美を振り返る。そして冗談抜きに据わったような目で妹を睨み付けた。
「和美。」
「あ、あの…… お兄ちゃん?」
「どういうつもりだ。」
「だって……」
自分の思った以上に隼人が怒っていると思って、気の毒なくらい和美はうなだれてしまった。事実、強く言いすぎたかと思って隼人は口調を和らげる。
「ともかく、ああいう誤解を招くような発言は止めてくれ。」
「お兄ちゃん…… 美咲お姉ちゃんのことキライなの?」
隼人の返答に一瞬どころか二、三瞬の間が空く。
「…………そういう問題じゃなくて。」
「スキなの? キライなの?」
思った以上の真剣な表情をした妹に隼人は言葉を失った。しばらくして、やっとのことで口を開く。
「……嫌いじゃない。」
隼人の返事に和美の表情がパッと明るくなる。
「だが、好きかどうかまでは分からん。だいたい、そういう風に考えたことも無い。
橘は俺にとっては…… そう、仲間だ。それに、借りもあるからな。」
「ふ〜ん。
……それで思い出したけど、お兄ちゃん、何やってるの?」
「何、って…… 俺は一応、真面目に学校に行っているつもりだが?」
「そうじゃなくて、」
和美の口調が問いつめるようなものに変わる。
「最近、変な怪物が出たでしょ。あれってお兄ちゃんと何か関係があるんじゃないの?」
「……う〜ん。」
唐突と言えば唐突だし、どういう展開でそういう発想になるのか理解不能だが、この場合、隼人は唸ることしかできなかった。
秘密にしなければならない理由もないが、かと言って軽々しく口にできることでもない。そう思って言葉を濁していると、救いの神か美咲がドアが開いて病室に入ってきた。
「隼人くん、紅茶とコーヒーあるけど、どっち飲む?」
「ん? ……ああ、じゃあ紅茶にしよう。あと、そのチーズケーキももらえるか?」
「うん!」
いそいそとティーパックを紙コップにいれ、お湯を注ぐ。自家製のチーズケーキを適当な大きさに切り分け、差し出す。
「はい♪」
美咲が入ってきたおかげで和美の追求も止まった。さすがに兄が何かやっていることは予想できても、同じことに美咲まで関わっているとは想像できなかったのだろう。
(すまんな、橘。)
(ううん。ボクも立ち聞きしてたし……)
(まあ…… ほめられたことじゃないが、今回はいいとしよう。)
隼人の耳は、美咲が病室の前でずっと立っていたのを知っていた。で、話がヤバそうな方向に行こうとしたのを察知して、美咲が入ってきたのも分かっていた。ちなみにその前のヤバそうな話の時にはまだいなかったので隼人は内心ホッとしている。
「そういえば、身体の具合はどうだ?」
更に話題を変えようとする隼人。
「あ、そうそう。そのことなんだけど……
実は! 先生が来週には退院してもいい、って言ってたの。」
「へぇ! ホントか?」
「良かったね、和美ちゃん。」
思いがけない朗報に喜びを隠せない隼人。しかし、喜ぶ兄に妹は冷たかった。
「でもお兄ちゃん。ちゃんと掃除はしてあるんでしょうねぇ?」
「あ?」
「いい? もし、和美が帰ってきて家の中が汚かったら承知しないからね。」
「い……」
美咲が隼人の耳元に口を寄せる。
(ねぇねぇ、今度掃除に行こうか?)
(……それってマズくないか?)
(どうして?)
(いや、いい。……今度頼むわ。)
(うん!)
「あぁ〜 何かお兄ちゃんと美咲お姉ちゃん、怪しいんだぁ〜」
「馬鹿なこと言ってないで、もうすぐ退院なんだから準備をちゃんとしとけ。
学校にも行かなきゃならないんだろ?」
「忘れてた……」
「そうだろう。人のことより、自分の心配をしろ。いいな?」
「は〜い。」
不意に、病室にさす日光の変化に気づいた。改めて太陽の角度を見る。
「……そろそろ面会時間も終わりだな。俺……達は帰るから、おとなしくしているんだぞ。それと、退院が近いなら少しずつ身体を動かすようにしておけ。」
「うん、分かった、お兄ちゃん。」
妹の返事に満足すると、隼人は美咲を連れて病室を出ようとする。
「それじゃあねぇ。和美ちゃん、バイバーイ。また来るからね。」
「お姉ちゃん、バイバーイ。」
「優しい、お兄ちゃんなんだね。」
病院からの帰り道、研究所に向かう道すがら、美咲が呟いた。
「あ、阿呆。いきなり変なこと言うな。」
照れ隠しも含めて、少し強めの口調になって少女の方を振り返る。が、目を伏せた横顔が寂しそうに見えて、それ以上何も言えなくなる。
「……なんだ、まだそれ持っているのか。」
さすがに話題を変えようと、さっきあげた花のことを持ち出す。美咲の手には大事そうに花束が握られていた。そのことを指摘されると、さっきのことを思い出したのか、美咲の頬に朱がさす。
「だってぇ…… 嘘でもあんなこと言われたの初めてなんだもん…… それに……」
「あ〜 その、橘。」
「なに?」
「いや、その…… な?」
嘘でも、なんて表現には不思議と抵抗があった。そうではないと否定したいところなのだが、否定するとまたややこしくなりそうで、うまい言葉が思いつかない。どうにかして穏便にすますための言葉選びに苦心していると、何か鋭い気配を感じた。
殺気とは違うが、力強い「闘気」というべきものがヒシヒシと感じられる。
「? どうしたの?」
「この気が感じられないのか。」
「あ……」
その気配は道の向こうから感じられる。しかもそれは美咲達の方に近づいてくる。
反射的にそばの少女を背にかばい、気配の主が現れるのを待つ。
隼人と同じくらいの長身の若者が通りの向こうから歩いてくる。
その男は全身を黒で固めていた。しかし、重さは感じられず、まるで自分固有の色であるかのように「黒」を着こなしていた。
髪も瞳も美咲たちと同色だが、浅黒い肌の色と整った顔立ちは日本人とは違う雰囲気を漂わせている。
リラックスしているように見えるが、足運びにも目配りにも隙の一つもうかがうことができない。鋭い気を放っているのに、鋭すぎるために普通の人にはまるで察知できないのだ。陳腐な言葉だが、「達人」である美咲と隼人だから感じることができたのだ。
隼人は素早く美咲を隠すことができて、内心ホッとしていた。自分だけならともかく、どう見てもそう見えない美咲の反応を見られたら美咲もただ者でないことが相手に分かってしまう。
それに、何か分からないが、どうも遠くからの姿を見ただけで、隼人にはその黒い男とはどうもソリが合わないような気がしていた。そして少女を背にかばうことが最善の行動だと心が判断していた。
「…………」
「…………」
視線も交差させず、二人の若者がすれ違う。
と、男の足が止まった。
「貴様、ただ者では無いな。」
「そう思うか。」
男は手首にブレスレットのようなものをつけていた。その中央には「透明な黒」の水晶質のものが光を反射していた。
(こいつか…… 神楽崎と田島が戦ったバロンとかいう奴は……
なるほど、確かに強そうな奴だ。)
「ああ、強い奴は匂いで分かる。俺と同じ匂いがするからな。
俺の名はバロン。お前は?」
ここまで堂々としてると、逆に清々しく感じる。しかし、それとは正反対に隼人の心の中には「敵意」とよべるくらいの感情が湧き始めていた。
「……俺は大神隼人。」
「ハヤト、か。
で、唐突で悪いが、お前らは『フラッシュブレイカーのパイロット』を知らんか?」
「ああ?」
背後の美咲が声を上げそうになったので、ワザと大声を出す。
「と、まあ…… いきなり聞かれても分からんか。レイカとケンジが俺と大差ない年の奴らだったから、適当に声をかけてみたが…… やはり無理があったか……」
ブツブツ呟くが、ハッと顔を上げる。
「いや、失礼した。そちらの可愛い彼女と仲良くな。」
「ふぇ?」
さっきのことをまだ引きずっているのか、花束を胸元に引き寄せ、美咲が頬を赤らめる。バロンと名乗った男はその動きに何となく目が行ってしまった。
不意にバロンの表情が険しくなる。
(まずいな……)
普段のボケボケした雰囲気に隠れがちだが、実際は美咲も相当の実力者である。見る人が見ればそのことが分からないはずがない。
「おい待てよ。バロンとか言ったな?」
「ああ、それが?」
バロンの視線が美咲から隼人に戻る。
「俺の答えがまだ終わってないぜ。」
「答え?」
背後の少女の制止の声も聞かずに、普段は制服の袖に隠しているブレスレットを表に出す。男の表情に驚きと、そして何かを期待するようなものが浮かぶ。
「ああ。お前さんの期待する奴じゃなくて申し訳ないが、俺がウルフブレイカーのパイロットだ。」
「ほお…… お前が、か。」
最初から確信していたような口調が返ってくる。そう言うバロンの興味はすでに美咲から離れていた。
「ああ。で、どうする? 俺たちと戦いたかったんだろう?」
「ん? ああ、それはそうなのだが……」
不意にバロンが言葉を詰まらせる。
「お前の仲間のレイカとケンジに機体が壊されたままで修理中だ。素手でやり合っても構わないと言えば構わないのだが…… 後ろの可愛い彼女を巻き込みたくはないだろう?」
「…………」
可愛いはともかく、彼女、というところに引っかかるものは感じたが、それはそれで平穏無事に終わらせそうな雰囲気がして、あいまいにうなずく。
「ま、それはいいとして。
ハヤト、一つ聞きたいのだがいいか?」
「あん?」
「レイカとケンジには聞く暇が無かったのだが…… フラッシュブレイカーのパイロットはどんな男だ? 探すときの手がかりにしたい。」
「…………」
突拍子もない質問に、驚くと同時に吹き出しそうになった。背後の少女が複雑な表情をしているのは見なくても分かった。
「……俺が素直に教えると思ったか?」
後ろの奴だけどな。
後半の言葉は心の中だけで、勿体ぶった言い方でバロンを焦らす。しかし相手も予想していたのか、何も動揺した様子もない。
「まあ、ヒントだけ教えてやるか。俺と素手でもタメはれる奴だぜ。」
後ろのチビだけどな。
「まあ、そうだろう……」
そこでバロンは何とも面倒くさそうな顔をする。
「正直、一日足を棒にして歩き回って、目にとまったのがハヤト、お前だけだ。……こんな調子で見つかるのか?」
「さあな。まあ、がんばれ。」
言うだけ言うと、隼人は美咲の手をつかんで、やや強引に引っ張っていく。
「あ……」
美咲が何かを言いかけるが、気にせずにズンズン歩いていく。とにかくこの場から離れることが先だ。
「じゃあな。もしやり合いたいなら言ってくれ。俺もそういうことは嫌いじゃない。」
「ああ、分かったハヤト。」
スタスタスタ……
「…………」
バロンからだいぶ離れた。その姿も曲がり角の向こうへと消えていった。その時になって、隼人は引っ張っている手に何も抵抗がないのに気がついた。
軽く後ろを振り返ると、顔を伏せた美咲が隼人の手の引くまま、おとなしくついてきている。
不意に隼人は自分が「もしかしたら俺は結構強引に見えることをしているのか?」と不安になってしまった。
握っている手。自分よりもずっと小さく、柔らかい手。同じく格闘技をやっているはずなのに、美咲の手はまさに「女の子」のそれだ。
「隼人くん?」
美咲の声に反射的に手を離して、身体ごと少女を振り返る。
「どうした?」
一瞬、声が裏返りそうになる。コホンと咳払いして、少女の言葉を待った。
「…………」
美咲は一瞬考えて、おそらく一番聞きたかったこととは違う質問を口にする。
「え〜と…… ねえ、どうしてボクのこと、隠そうとしたの?」
「ん? ああ……
それはな、何となく……」
「何となく?」
あいつが気に入らない。理由はわからないが。それにお前を見せたくなかった。
そんな理由が隼人の頭の中に渦巻く。
が、実際に出てきた言葉は、
「面白そうだったからだ。」
「ん? 何面白そうなことやってんの?」
壁に手をつきながら、ゆっくりと地下の研究所の階段を降りてくる麗華。その視線の先には疲れたように背中を丸め、マウスを手にしている謙治がいる。
「ああ…… 神楽崎さん……」
声をかけた麗華もかけられた謙治も同様に疲れた声を出す。
二人とも昨晩のシャドウブレイカーとの戦闘で疲労していた。一晩寝たくらいで回復するものでもなく、二人とも寝坊と遅刻をしそうになり、授業中も睡魔に襲われ、やっと放課後を迎えたのだ。
で、小鳥遊に帰りに研究所に必ず寄るように言われたのだが、職員会議がどうだかでなかなか帰ってこない。
それで暇を持て余しかけた謙治が地下に降りていって、その後を麗華が追ってきたのだ。
「ほほぉ…… で、うちの秀才君は今度は何を企んでいるのかしら?」
手近な椅子を引き寄せて腰掛ける麗華。
「企んでいるとは人聞きの悪い……」
滑らかにキーボードの上を指が走ると、装甲車のような物体と大型の航空機のワイヤーフレームが表示される。
「ん?」
麗華が何かに気づいたように声を上げるが、それを遮って謙治が説明を始める。
「今、カイザージェットの強化パーツを考え中なんですよ。」
「カイザーの?」
夢幻界の火竜であるカイザーはカイザージェットと名付けられた航空機に力を封じ込め、美咲たちブレイカーマシンの強力な仲間となっていた。しかし、ピンチの美咲を救うため、故障中のスターローダーに部品を提供し、その機能を停止したと同時にカイザーの意識はまた夢幻界に散ってしまった。
未だに戻るどころか、その気配すらないが、誰もがカイザーが帰還することを疑っていない。そういうわけで謙治は逆にカイザーの意識がないのをいいことに大幅な改造を計画中だったのだ。
「ええ、でも……」
疲れたように息を吐く。
「なんか疲れて頭がまわりません。」
「やれやれ…… 困ったものね……」
語尾がいきなりの電子音に切り裂かれた。謙治の前のモニターに赤い文字が走る。
「夢魔の反応!
……もうすぐ現実世界に現れます!」
と、謙治の言葉が終わった瞬間、ゾワリという表現しづらい感触と共に、空間が震えるのを感じた。
現実世界への夢魔の出現は精神的エネルギーが放出される。常人ならともかく、基礎精神力の高い人間にとってはある程度の衝撃に感じられる。すでに近いことを経験済みの二人はすかさずドリームティアを構え、目に見えない精神力のバリアを張る。
「……橘さんと大神君を探します。」
「そうね……」
本当はすぐにでも出動したいところなのだが、ブレイカーマシンの修復もすんでいない上に、昨日の疲労が重くのしかかっていた。普通の生活ならともかく、精神力を限界まで酷使するブレイカーマシンによる戦闘ができるはずもない。
「気をつけて、二人とも……」
麗華が小さく呟いた。
きゃう。
病室のベッドの上で和美が小さく悲鳴をあげた。キュッと目を閉じて額に手をあてる。
「まただ…… またこの感じ……」
いきなり都市の上空に巨大な六角柱が揺らぎと共に現れた。
揺らぎに合わせて震えているようだったが、すぐに宙の一点に張り付いたように動きを止める。
ざわめきが街を包んだ。数日前の怪鳥のことを憶えている人間の中で賢明な者はその場所から離れようとする。しかしTV越しに見ていていたり、好奇心に目を輝かす者は動かずに謎の物体の動向をうかがっていた。
予告も無しに六角柱の一面がパタンと開いた。開いた奥には長方形状に並んだ穴がある。
そしてそこから先端の丸まった棒状の物が穴と同じだけ放たれる。それは我々の認識ではロケット弾を想像させる物だ。そして効果もその認識とほぼ同一だった。
高温を伴わなかったが、その物体は命中したビルの一角を巻き込んで爆発した。崩れた元ビルのがれきが街に降る。
その時になって事態の異常さに気づいた一般市民たちが逃げ出す。
他人を押しのけ、自分だけでも助かろうという醜い人間模様が繰り広げられているさなか、一人の少女がその様子をつまらなそうに眺めていた。
「ったく…… サキが見たら怒るわね、きっと。あー、やだやだ。」
丸い眼鏡をかけた少女が、壁にもたれ腕を組んでいる。背中にはデイバッグ。腰にもウェストポーチをつけ、首からは大きめのカメラを下げている。
「しかし毎日張ってた甲斐があったわ。」
指でファインダーを作ると、空中に浮かぶ物体を捉える。
大ざっぱに距離と周囲の暗さを計算すると、首から下げたカメラを構える。続けざまにシャッターを切ると素早くフィルムを交換し、位置をかえて再びシャッターを切る。
「まずはこんなものね。」
使い終わったフィルムをウェストポーチに戻すと、その中から新品を取り出して、ポケットに放り込む。周囲からはだいぶ人影が減っている。
「そろそろマズいわね…… でもまた出るかな、あのロボット……」
そう呟くと少女――法子は走り出した。
「ブレイカーマシン、リアライズ!」
少女の声が響くと、ドリームティアから光が溢れる。その中から一機のロボットが虚空から現れた。
「……一機?」
フラッシュブレイカーに乗り込んだ美咲は違和感に気づいて視線を下に向ける。
「隼人くん……?」
そこにはブレイカーマシンを出さずに、考え事をしているようにあごに手をかけている隼人がいる。美咲の呼びかけで初めて気づいたように顔を上げる。
「ん? ああ……
……わりぃ、橘。先に行っててくれ。俺は少し気になることがある。」
「うん、分かった!
コメットフライヤー、リアライズ!」
飛行ユニットを喚び出すと、それに跳び乗ってフラッシュブレイカーは夢魔の方へ飛び去っていく。
「さて……」
隼人は美咲の後ろ姿を確認すると小さく呟く。
「もしも俺があいつだったら……」
「来たか……」
嬉しそうな声がバロンの口からもれる。
その視線の先には白い翼に乗ったフラッシュブレイカーがいる。
街が見下ろせる高台から、バロンは腕を組んで空間に浮いた夢魔と白いロボットの姿を眺めている。
「戦いの邪魔をするのは無粋だと思うが、なんならあの程度の奴、俺が倒してもいい。
それよりも…… 俺はフラッシュブレイカー、お前と戦いたいのだ!」
キッ、と表情を引き締めると左腕を正面にのばす。手首についたクリスタルが黒い光を投げかけた。
「来たれ闇の翼……」
クリスタルを胸元に引き寄せる。
「スカイシャドウ!」
「見つけたぜ!
ブレイカーマシン、リアライズ!」
バロンの声にもう一人別の声が重なる。
「なに!?」
バロンの喚んだ漆黒の戦闘機が彼の姿を内部に取り込んだ瞬間、真青の狼が襲いかかってきた。飛び上がる寸前を狙われて、身動きがとれなくなる。
「貴様…… ウルフブレイカー! ハヤトなのか!」
「まあな。」
コクピットの中でニヤリと隼人が笑みを浮かべる。
「悪いが、あいつの邪魔はさせねえぜ。」
「なるほど…… 通りたければ俺の屍を乗り越えて行け、ということか。」
「できるかな?」
その言葉を合図に戦いの火蓋が切られた。
スカイシャドウが人型に変形する。手と足、背中のジェットを駆使して、ウルフブレイカーの下から逃れる。
「大した自信だが、空を自由に飛べる相手にどう戦う? あんまり俺をガッカリさせないでくれよ。」
「ふむ…… 確かに俺もそのことを考えていた。で、結論だが、やっぱり勝ち目は薄いと思う。」
「ほぉ……」
意外に弱気に聞こえる発言にバロンが気を削がれたような声を出す。
「で、考えたんだが……」
ウルフブレイカーが身を低くする。危険を感じたのか、シャドウブレイカーが高度を上げる。しかし、それ以上に敏捷に隼人は動いた。
「シェイプシフト!
チェンジ! ウェアビーストッ!」
半獣半人の姿に変形したウルフブレイカーが残像を残すほどの速度で跳躍した。
反応の遅れたバロンの背後に現れると、鋭い爪を必要最小限の動作だけで背中に突き刺した。
「くっ!」
隼人の意図とその結果を知って、バロンが一言うなる。
ウルフブレイカーの爪はシャドウブレイカーの背中のジェットを貫いていた。いきなり機能を停止するほどではないが、出力は相当落ちていた。これでは高速飛行はできない。
二機が揃って地面に落下する。シャドウブレイカーは寸前でジェットを噴射して軟着陸をするが、ウルフブレイカーはやや傾いた落ち方をする。
「地面に引きずり下ろせば互角以上の勝負ができるな、と思ったんだ。
チッ…… 膝を少し痛めたか。」
「なるほど……」
少し嬉しそうな響きを含んだ声が返ってくる。
「俺は飛行能力、貴様は高速移動能力。これならほぼ条件は同じだな……
行くぞ、ハヤト。勝負だ!」
シャドウブレイカーは両手のナイフを展開させると、エネルギーの節約のために人型に変形し直したウルフブレイカーに躍りかかった。
「クリスタル・シューター!」
フラッシュブレイカーの銃がビームの光条でミサイルをなぎ払った。炎を伴わない爆発が夕闇迫る街の空に広がった。
そんなことにめげる神経も無いのだろうから、夢魔は自分のミサイルが破壊されても気にした様子もなく更にミサイルを撃ち続ける。しかもフラッシュブレイカーを狙っているのではなく、適当にあちらこちらに撃っているので余計始末に悪い。
今のところ最初の一撃以降、街に落ちたミサイルはないが、美咲とて無限に戦い続けるわけではない。
六角柱の一面がまた開き、ミサイルが発射される。ミサイルを迎撃するのが精一杯で、夢魔本体に攻撃するのもままならない。
スターブレイカーになれれば何とかできそうなのだが、合体時間中は何もできない。その間のミサイルは放たれるままだ。
「どうしよう……」
『合体して戦うしかありませんね。』
「謙治くん!」
通信装置から研究所にいる謙治の声が聞こえてくる。
『スターローダーとコメットフライヤーで時間稼ぎをします。
……ギリギリのタイミングかも知れませんが、このままでは埒があきません。』
「分かったよ……
スターローダー!」
「スターローダーを喚んだか。
あれが倒されるのも時間の問題だな。」
「よそ見をする暇があるのか?」
振るわれた拳をバロンは一歩引くだけで避け、続けざまにきた回し蹴りをブロックする。いつの間にか武器を使わない格闘戦にもつれ込んでいた。
動きも技もほぼ互角。戦闘は膠着状態に陥っていた。空にスターローダーが走る光の道が描かれた。
天空に光の道が現れる。そこから夢幻界から召喚された白い車両がかけてくる。その軌道は夢魔に重なっていた。
スターローダーが夢魔を跳ね飛ばした。一瞬落下しかけ、ゆっくりと元の高度に戻ろうとする。その隙に合体体勢に入る。
手足を折り畳んだフラッシュブレイカーがコアになってスターローダーに合体する。
体勢を立て直した夢魔がまたミサイルを発射しようとする。コメットフライヤーがローターを飛ばすと夢魔に一撃を加える。元々コメットフライヤー単体でで発射するようになっていないので、反動で大きくバランスを崩してしまった。
「流星合体、スターブレイカー!」
「いけない! コメットフライヤー合体時のタイムロスが予想以上に大きい!」
「どういうこと、謙治!」
「空中で合体したスターブレイカーは空を飛べません。しかも飛行ユニットであるコメットフライヤーも無理な攻撃で態勢を崩してしまいました。
地面に激突、ということにはなりませんが、このままですと再び戦闘態勢をとるまでの時間がかかりすぎます!」
「それじゃあ……」
落下しながら美咲は夢魔がミサイルを放ったのを見た。しかも三面が開いて大量のミサイルが吐き出される。
「スターキャノン!」
空を貫くように次々にビームを放つが、不安定な空中ではその全てを叩き落とせない。遅れてコメットフライヤーが背部に合体する。もう一度狙いをつけたビームを逃れて空の彼方へと消えていったものもあった。。
「あぁ〜 ふたつ外しちゃったぁ〜っ!」
一瞬間合いが開いたとき、隼人は夜空に光る二つの光点に気付いた。今までの戦況は戦いのさなかに横目で見ていたので、だいたいの見当がつく。
(まあ、仕方がない。後は人がいないところに落ちるのを期待するしかないか。)
と、再び戦いに集中しようとして敵に振り返った瞬間、閃くものがあった。
今の場所、ここから見える街、脳裏に描かれた地図、そして光点の移動方向。
「!」
更に動物的な勘が光点の移動を予測する。自機の状態は度外視して、移動速度を算定する。
(膝さえ何ともなければ……)
多少なら活動していても再生能力が働く。しかし、シャドウブレイカーとの戦闘ではそのような余裕がなく、しかも仮に修復されても手足にかかる負担であっと言う間に帳消しとなる。
(だからどうした!)
「シェイプシフトッ!
チェンジ! ウェアビーストッ!」
変形したウルフブレイカーがシャドウブレイカーに背中を向けて走り出した。
美咲が撃ち漏らした二発のミサイルは、隼人の妹が入院している病院に向かっていた。
この場で腕のニードルショットを撃てば隼人を仕留めるのは容易い。
しかしバロンはその行為をしなかった。
自分との戦いのさなかに背中を見せた理由が気になったからだった。戦ってみた感触では隼人は逃げ出すような性格ではない。それ故に、自分との戦い以上に注意を喚起させるような存在が気になったのだ。
その間にもウルフブレイカーの姿は遠くなっていく。
(そうだ。)
ウルフブレイカーの膝の状態なら、あの高速移動は一歩間違えれば自殺行為である。
「…………」
機体の状態をチェック。シャドウブレイカーでは飛行不能だが、スカイシャドウなら飛行できる。
「よし……
チェンジ、スカイシャドウ!」
漆黒の翼が夜空に舞い上がった。
(間に合え!)
遠くに見える白い建物が徐々に大きくなっていく。ミサイルの接近を知って遅ればせながら避難の準備をしていたのだろう。慌ただしく人の動く気配を感じた。
そして…… その最上階の窓の一つに見知った姿を見つける。
その少女は期待するように何かを信頼するように近づく光点を見つめていた。
「和美! そこから離れろっ!」
叫んでも届かないはずの声に、少女は隼人の方を向いた。そしてそのまま数歩下がる。
(ミサイル!)
一発はまだしばらく着弾に時間がかかるが、もう一発はもはや目前である。叩き落とす手段を考える。
ブリザードストームでは病院や和美に被害が出る。空中で弾き飛ばすにはもう距離がない。そして、それ以外の攻撃オプションは一つを除いて思いつかなかった。しかもそれも時間との戦いであった。
この時になって、一瞬膝が引きつるような感覚がして、前につんのめりそうになる。
「負けるかぁっ!」
レッドサインがコクピット内に点灯するし、同調している隼人にも同じ痛みが伝わってくる。しかし、今一歩でも足を進めるのを惜しめばそれだけで全てがお終いにでもなるかのように隼人は、ウルフブレイカーは走り続けた。
やっとの思いで病院の壁にたどり着く。着弾地点はちょうど和美のいる位置だ。そして、振り返ってガードする暇もなくミサイルが命中した。
「…………!」
悲鳴もあげられないほどの激痛と衝撃が隼人を襲った。消えかける意識を必死に繋ぎ止めながら四肢を踏ん張る。このまま倒れれば和美を傷つけてしまうことになる。
(もう一発……)
しかし、背部装甲が全壊し中枢にまで被害が出ていたウルフブレイカーはわずかに手の先を動かす程度で、全く隼人の意志に反応しなかった。
(くそっ。う、動け……)
痛みで拡散しそうな意識の隅で夢魔のミサイルが近づいてくるのが見えた。
(あいつも…… どうにかしないと……)
直後。
何かの射出音。それのすぐ後に爆発音と衝撃が降ってきた。薄れかけた意識がまたよみがえる。
「貸し…… 一つかな?」
声が聞こえる。そしてその声を最後に隼人は気を失った。
シャドウブレイカーは動きを止めたウルフブレイカーを病院から引き剥がすと、地面に下ろす。パイロットの隼人が意識を失っているために、ウルフブレイカーが消失するのも時間の問題だろう。
「さて……」
このままウルフブレイカーと戦うのは無理だし、向こうではすでに夢魔がいなくなっていた。おそらくスターブレイカーが倒したのだろう。
うつ伏せに倒れているウルフブレイカーに目を落としたとき、シャドウブレイカーの足下に一筋のビームが穴を穿った。
「隼人くんから離れて!」
美咲の声がシャドウブレイカーに聞こえてきた。
「は……?」
バロンは自分でも間抜けだと思う声を出していた。
コメットフライヤーに乗ったフラッシュブレイカーが銃を手にシャドウブレイカーを狙っていた。安定性の悪い飛行ユニットの上であることを考えると射撃の腕は大したものである。
が、そんなことよりバロンはただただ呆然としていた。今の今までフラッシュブレイカーのパイロットを男だとばっかり思っていた。
あの正々堂々とした戦い方、鋭い格闘技、どこまでも諦めない心の強さ。並大抵の相手ではないと思って戦うのを楽しみにしていたのだが……
「お前…… フラッシュブレイカーのパイロットなのか?」
質問というより確認に近かっただろうその言葉に少女の声が返ってくる。
「そうだよ! ボクの名前は橘美咲。ボクが相手になるから、隼人くんから離れて!」
「…………」
戦う気が失せた、というわけではないが、どうもこの場は戦うような雰囲気でなくなっていた。
ウルフブレイカーとの戦闘による消耗も少なくない。しばらく考えをまとめ、シャドウブレイカーはゆっくりと腕を上げた。
「動かないで!」
「それはこっちのセリフだ。今俺がこいつに一発撃ち込めばどうなるか分かっているだろう?」
「くっ……」
「立場が分かったなら、武器を消してゆっくり降りてこい。」
美咲はバロンの言葉に従った……
次回予告
小鳥遊「美咲さんがいなくなってしまいました。どうやらバロンに連れ去られたようです。
隼人君、無理をしなければいいのですが。今回のことは相当責任に感じているようです。
これが単なる仲間に対する思いなのか、別なものもあるのか。
不謹慎ながら、そんなことを考えてしまいました。
でもね、隼人君。私は彼に会ったことがありませんが、君たちの話を聞いている限り…… いや、止めときましょう。
夢の勇者ナイトブレイカー第十八話
『囚われの姫君』
夢を見るのは人間だけの特権でしょうか?」