オリジナルブレイブサーガSS
「ラストガーディアン購買部繁盛記」

 

 

 この万能戦艦「ラストガーディアン」内にも購買はある。
 それこそ消しゴム一個とか、そんなものまで外に買い出しに行くのは不毛である。なにせ「ラストガーディアン」は戦艦であり、その時間のほとんどを空中で過ごしているからだ。
 だから購買には“普段使いそうな物”が置かれていることになっている。

 

「すみませーん、小麦粉ありますか?」
「あ、美咲さん、いらっしゃい。ケーキ作りっすかね? それならアメリカ産のWWの良いのが入ってるっすよ。」
「うわ、ホントだ。いつもありがとうね。」
「いえいえ、毎度ありっす〜」

「すみません、紅茶置いてますか? いつもの切らせてしまって……」
「フェアリスさん、いらっしゃいっす。
 キームンのファーストフラッシュとベルガモットオイルでいいっすか?」
「え? あ、はい…… 願ったり叶ったりなんですけど…… どうしてあるんですか?」
「ふふふふふ…… それは秘密っす。」

「すまん。酒は置いてあるかな?」
「あ、慎之介さん。今日もいい男っすね〜 これなんかどうっすか?」
「……! こ、これは“まぼろし”の黒箱?! あの幻の銘酒が何故ここに!」
「そりゃぁ、慎之介さんに喜んで貰うためっす。」

「やぁ、おねーさん。今日もペッピンやなぁ。」
「いえいえ〜 音彦さんもハンサムさんっすよ。」
「ほな、バラの花束でも貰おうかな?」
「今日もナンパっすか?」
「そうや。
 さ、君の美しさには負けるけど、この花受け取ってくれや。」
「はい、どうも〜 3300円になるっす。」
「……なんやて?」

「は〜い。」
「レミィさん、どうも。今日は何が入り用っすか?」
「ん〜 レーダー用のトランスがいかれちゃって…… さすがに規格外品使ってると寿命が短いのよねぇ。」
「これなんかどうっすか?」
「え? ちょっと待って! なんでこれがあるのよ! これ地球の企業じゃ作ってないし、作っている所だってギルダークの襲撃で……」
「(人差し指を立てて)蛇の道は蛇っす。」

「こんにちは〜 ボクの頼んでいた物来ました?」
「はい、ほのかさん、“スラスト”っすね(にやり)」
「あれ? なんか違う…… って、これG1のスラスト?!」
「あれ〜 おっかしいっすねぇ。アイアンハイドもラチェットもあるんすけど、これは復刻版も出るからそんなに珍しくないっすよね。」
「……! これ! もしかしてブリッツウィング?! うそー! オメガスプリームまであるの?! なんでなんで?!」
「なんででしょうねぇ(にやり)」
「あ〜 これはスクランブルシリーズの最高傑作とも言われるブレタキングっ!!!!
 ううっ、お金足りないよぉ〜(涙)」

「すみません、石鹸ございますか?」
「あら麗華さん。そのスベスベのお肌の秘訣はこのエルメスの石鹸っすか?」
「そういうわけじゃありませんが…… でもいつも助かりますわ。なかなか手に入らないものでして。」
「いえいえ、あたしはこれが仕事っすから。
 ……あ、そうっす。あとでカイザードラゴン君に来てくれるよう言ってもらえませんすかね?」
「カイザー? ええ、よろしいですけど……」

 

「そんなわけで、カイザードラゴン君。君に重要な指名を伝えるっす(ビシッ)」
〈いえ、一応どのような用件かは見当がついておりますが。〉
「むぅ、面白くないっすねぇ。まぁいいっす。行くっす。」
〈……その、一つ聞いてもよろしいでしょうか?〉
「なんすか?」
〈その格好は一体……?〉
 万能戦艦「ラストガーディアン」の甲板上。等身大のカイザードラゴンと向き合っていた彼女は帽子に黒いスーツにサングラスという一昔前のギャングのような格好をしていた。
「これは正式な“取引”の姿っす。さぁ、つべこべ言わずに大きくなるっす。」
〈しかし何故私が……〉
「あ、そういうこと言っていいすか? 麗華さんのご愛用の品って、高級ブランド品ばかりで手に入れるの大変なんすよ〜」
 今一つ信憑性のない口調だが、それを確認する術もない。更にいえば、カイザードラゴンの「主人」である麗華が日常生活品を購買に頼っているのは否めない。
〈……むむむ。これも麗華様の為。仕方がございません。〉
 自分にそう言い聞かせると、カイザードラゴンは赤光を放ち20mの大きさに再リアライズした。
〈チェンジ、カイザージェット!〉
 一声叫ぶと、巨大なドラゴンからジェット機へと姿を変える。
「ささ、急ぐっすよ。」
 彼女がコクピットに乗ると、爆音を上げてカイザージェットは蒼穹へ吸い込まれていった。

「あら?」
 いわゆる「紅茶同好会」でテーブルを囲み、アールグレイを味わっていると、麗華の腕のブレスレットが僅かに光を放った。
「…………」
 同席していたメイアがどこか遠くを見るような目をしてから、視線を戻す。
「どうやらカイザードラゴンさんがどこかへ出かけたようですね。」
「そうね。」
 カイザードラゴンは麗華のドリームティアを媒介として実体化している。詳しい場所とかはともかく、ある程度の行動は把握できるのだ。
「全く、何をしているのやら……」
 自分の与り知らぬ所で勝手に動いているのが寂しくもあるが、ちょっと嬉しくもあったりする。

 ついたのはコンテナが立ち並ぶ港の一角だった。
〈あの……〉
 さすがに目立つので、いつも通り(?)の等身大または20pになろうとしたカイザードラゴンなのだが、それは彼女に止められている。
「あのですね、カイザードラゴン君。取引というのはハッタリが肝心っす。相手がか弱い女性一人と思われたら舐められてしまうっす。」
〈はぁ……〉
 そんな話をしていると、向こうから大きなコンテナを積んだトレーラーを先導した黒塗りの車がやってくる。
 車から彼女と同じように黒いスーツの男達が降りてくる。天を突くようなカイザードラゴンの巨体に一瞬驚いたような顔をするが、そこは「プロ」なのだろう。持っていたアタッシュケースから書類を取りだし、彼女に渡す。
 真剣にその書類に目を通す彼女。双方の間ではすでにカイザードラゴンはオブジェ程度にしか気にされてない。
(こう、私、何か浮いておりますなぁ……)
 カイザードラゴンが空を眺めている間にも“取引”は進んでいく。
 書類――目録を確認した彼女は手に持っていたアタッシュケースを黒服の男に渡す。お互いにコンテナの中身も、ケースの中身も確信しないところを見ると、相当の信用があるらしい。
 最後に握手を交わしたところで、不意に彼女がカイザードラゴンを振り返る。
「そんなわけでカイザードラゴン君。あのコンテナ運んで欲しいっす。」
〈はぁ……〉
 普通サイズのカイザードラゴンで一抱えに出来そうな程の大きなコンテナ。それをよいしょ、とばかりに持ち上げ、一度下に置く。
 それを確認すると、黒服たちは車に戻ってトレーラーを引き連れ帰っていった。
「ささ、お客さんの大事な大事な商品すから、大事に運ぶっすよ。」
〈……かしこまりました。〉
 なんか、何言っても負けそうな気がして、カイザードラゴンは再びコンテナを持ち上げた。このままでは帰れないので、ブースタータンクを召喚。彼女がブースタータンクに乗ったのを確認すると、背中に背負ってブースターモードに。カイザージェットとは速度が違うのと、壊れ物が入っているのもあって来たときの倍以上の時間をかけて「ラストガーディアン」に帰還した。

 

「あ〜 艦長艦長! 艦長にお似合いのセクシーダダ〜ンな水着、たった今入荷したっすよ!
 これで男どもの視線も釘付け、もうメロメロっすよ!」
「…………は?」
「これさえ着ればニブチンのあの人のハートもしっかりゲット間違いないっす!」
「ニブチン…… あの人…… しっかりゲット……(ちょっと目が虚ろ)」
「そうっす! ささ、どうっすか?」
「……ま、まぁ。使う機会が無いかもしれないけど、一応貰っておくわ。
 あ、それと万年筆のインク、あるかしら?」
「はい、艦長ご愛用のファーバーカステルのは常備してるっす。あとペン先もありますんで、御用命の際はいつでもどーぞっす〜」

 

 そんなわけで、購買には“普段使いそうな物”が常時置かれていることになっている。
 ……いや、嘘だろ。
「そんなことないっすよ! ちゃんと皆さんの欲しい物を用意してるっすよ。」
 というか、名前無いの?
「うふふふふ…… それは乙女のひ・み・つっす。あたしのことは“マッコイ姉さん”とか“フェイスウーマン”とか呼んで欲しいっす☆」