オリジナルブレイブサーガSS
「鬼は…… 誰?」
(3Dイラスト:緋水氏)

 

 

「パトロール中の大地(だいち)さんより緊急連絡。
 トリニティを発見。迎撃を開始。増援を求めています!」
「敵の解析急いで!」
 ナビゲーターのメイアの声を皮切りに、ブリッジが緊張に包まれる。
「解析終了しました。敵はヒューマノイド型20m級3体。現在ランドガイアンになって戦闘中です。
 武装は大型の棍棒のようです。……映像入ります。」
 同じくオペレーターのシャルロットがコンソールが操作すると、今ランドガイアンが戦っている相手がメインスクリーンに投影させる。
『…………』
 一部の人間を除いて、ブリッジ内のほとんどが絶句した。
「そういう時期だったわね……」
 ため息混じりに艦長――綾摩律子(あやま りつこ)が呟く。
「とりあえず、現時点ですぐに出撃できる機体は?」
「はい。ヴォルネスとセイバークルーザーを向かわせました。もうすぐ接敵いたします。」
 緊迫した雰囲気なのだが、どうしても「敵」のせいで緊迫感が削がれてしまう。メイアとシャルロットはよく分かってないらしい。その辺のギャップが更にやる気を削いでしまう。

「くっ!」
 片手剣ランドブレイカーを構え「敵」に斬りつけるランドガイアンこと道原(みちはら)大地。
 相手の外見は思わず苦笑が漏れるのだが、その見かけに関わらず戦闘能力は高い。剛腕で振り回す棍棒――いや“金棒”はランドブレイカーで受け止めるのは難しいだろう。
「……というか、なんで鬼?」
 そう、敵はまさに“鬼”であった。小さいアフロのような髪。腰に虎の腰巻きをつけただけの筋骨隆々の身体。その象徴とも言える頭の角。そして無駄にごつごつした棍棒を振り回している。しかも3体の鬼はそれぞれ赤・青・黒とカラフルな肌をしていた。
 赤鬼の金棒を避けると、背後から来た青鬼を蹴り飛ばしながら横の黒鬼をランドイレイザーで牽制。3体の連携が巧みなのでなかなか活路が見いだせない。
(もう少し粘れば……)
 ラストガーディアンには連絡したから、もうすぐ援軍が来るだろう。
 と、空の彼方から一筋の火線が金棒を振りかぶった赤鬼に突き刺さる。
「遅れてすまない!」
 セイバークルーザーの上にヴォルネスが乗って駆けつけてきた。
「咲也(さくや)さん! 志狼(しろう)!」
「おう、俺たちが来たからには任せておけ、ってーの!」
 ヴォルネスが飛び降りると、セイバークルーザーが一度セイバージェットとクロノクルーザーに分離してから、合体してクロノカイザーになった。
 3体の勇者ロボが揃い踏みする。
 と、敵も含めてその中では一体だけヴォルネスが小さかった。
「しゃーねー、ヴォルネス。筋肉痛合体行くぞ!」
「あ、ああ…… ライガードっ!!」
 御剣(みつるぎ)志狼の物言いにちょっと戸惑いながらも、ヴォルネスがライオン型サポートメカのライガードを召喚し、ヴォルライガーへと雷獣合体する。
「……志狼の事もあるから、さっさと決めるぞ!」
『おおっ!』
 草薙(くさなぎ)咲也のかけ声に3体がそれぞれの鬼へと斬りかかった。

「……攻撃効果率ほぼ0! ほとんど効いてないようです!」
「戦闘が開始して90秒が経過。志狼さんの筋肉痛危険水準を突破しています。」
 メイアとシャルロットの声がブリッジに流れる。
「まずいわね……」
 後者はともかく、攻撃が効かないのであればいずれはやられてしまう。
「私の予想ですが、おそらく“概念”を備えた敵なのかと。」
「……概念、ですか?」
 そばに控えていた小鳥遊一樹(たかなし かずき)心理学博士の言葉に律子が振り返る。
「極端な例ですが、“鬼”を退治する話…… それこそ桃太郎になら倒すことが出来る、そんな感じの“概念”かもしれません。」
「桃太郎を用意しないとダメ、ということですか?」
 高橋英樹かしら? と戦闘中ながらも訳の分からないことが脳裏に浮かぶ律子。
「さすがにそれは無理ですが、それ以外に鬼に効くような物があれば……」
「大地のピンチか! ワイも出るで!」
 ブリッジに西山音彦(にしやま おとひこ)が入ってくる。ナンパなだけじゃなく(笑)友情にも厚い音彦が自分も出ることだけを告げ、了承も得ずに飛び出そうとした。
「待ってください!」
 そこに一人の少女が現れた。

「音彦さんが今出られても、状況は変わらないと思われます。」
 その少女――白衣に伊達眼鏡を装着した空山(そらやま)リオーネは異様なオーラをまとって立っていた。ちなみにいつ現れたかは誰も知らない。
「空山さん……?」
 やや呆れた声の艦長の言葉をズバッと訂正する。
「い〜え、違います!
 この姿の時は艦内の平和を守る正義の美少女科学者、マッディ・リオリオと呼んで下さい!」
「艦内、って意外と狭いわね……」
「自分から美少女、って言うのを初めて見たような気がします。」
「マッディ、ってなんかヤバぁないか?」
 律子・小鳥遊・音彦がそれぞれの感想を述べる。
「こんなこともあろうかと!」
 決めゼリフなのか、無い胸(マテ)を張ってからビシッとメインスクリーンを指さす。
 すると画面が切り替わって、山と積まれた落花生を剥いているロボットの姿が映し出された。おそらくは格納庫の光景なのだろう。
『……?』
 天然風味のメイアやシャルロットはともかく、ブリッジにいた全員がその映像に何か違和感を憶えた。
 いや、剥いているロボットは某ロードチームなので、人間大になれるから別におかしくは……
『……!』
 その前を一人の少女が横切り、その皮むきの様子を見ているようだ。
 ロードショベルが自分のショベルアームに満載になったピーナッツを見せると、少女がグッと親指を立てる。
 少女の大きさを基準とするならば、そのピーナッツは30センチ以上あることになる。
 驚いて声が出ないでいるとリオーネ(自称マッディ・リオリオ)は似合わない含み笑いを浮かべる。
「これぞマッコイ姉さんに調達してもらった、特殊な爆裂落花生を、私が作った特殊肥料で10倍以上の大きさまでさせた物。これならあの“鬼”にも効果があるはずです!」
 ……なんか色々と不穏な単語を聞いたような気がする。それ以前に「特殊」とつければ何でもいいのか?
「そして、それの発射装置兼特殊ブースターももうすぐ完成予定なのです。
 アースパンツァー?」
 画面に向かって問いかけると映像が切り替わる。そこには捻り鉢巻きをして、あぐらをかきながら何かをトンカチでトテカントテカンしているアースパンツァー(45.3m)がいた。
『おう! 俺に任せときな! もうすぐ完成だぜ。』
 指先でトンカチを回して余裕たっぷりのアースパンツァー。このラストガーディアン内でも一、二を争うほどの整備達者なだけある。……何か間違っているような気もするが。
『よし、できた! おぅ、野郎ども。さっさと装填しやがれ!』
 pi-!
 べらんめい口調のアースパンツァーに弾かれたように、ロードチームがその完成した装備にピーナッツを装填していく。
 そのランドセル状の装備には筒状の物とブースターらしき物に翼、そして何故か柊(ひいらぎ)の葉がステビライザーのように生えていた。
「さぁ音彦さん。出番ですよ。」
「なぁ、リオーネちゃん?」
「マッディ・リオリオです。」
「……その、マッディ・リオリオちゃん?」
「はい?」
 呼び方を直されると、にっこりと笑顔を浮かべるマッディ・リオリオ。それだけでナンパスキーな音彦は落ちそうになるが、そこをグッと堪えて自分の存在を賭けて言葉を続ける。
「なんで…… ワイ?」
 正直メッチャ格好悪い。百歩譲って柊の葉に目をつぶったとしても、今の様子を見る限り豆鉄砲である。効果があるなしを別としても恥ずかしいというか情けない。
「そりゃぁ……」
 極上の笑顔を浮かべるマッディ・リオリオ。
「音彦さん以外に、あんなアホみたいな兵器を使ってくれる人がいないからです。というか、適任者?」
 ああ、その可愛く小首を傾げる疑問形がよけー腹立つわ。
「西山君。あの特殊装備を使って、急いで応援に行って。」
 なぁ艦長。すまんがこっち向いて言うてくれへん? どー見ても笑い堪えてるようにしか見えへんのやけど。
「ビーンシューター、カタパルトに準備しました。ソニックガイアン発進準備願います。」
 メイアさん…… 頼むから素で言わんでくれ……
 無言のプレッシャー&好奇心に押されて、涙を流しながら音彦は発進カタパルトまで走っていった。

「ソニックバイク!」
 自分専用のビークルを呼び出すと、どこからともなくサイドカー付きの大型バイクがやってくる。
吸収合体、ガイ・ソニック!
 ソニックバイクが変形したロボットに入り込むように同化すると、鋼の身体が自分の物と化す。
ソニックライナーっ!!
 
光速合体、ソニィィィック、ガイアァァァァン!!
 格好いいバンクシーンを交えてソニックガイアンに合体するが、その後を考えるとどうも気が重い。
 いつの間に作られたのか知らないが、カタパルトに足を乗せて直立。
『ビーンシューター装着。』
 壁からできたての「ソレ」が出てきて、背中に乗せられる。まさにあつらえたように――いや、実際にあつらえたのだが――ピッタリと接続された「ソレ」を見ると、最初から自分が出るのが決定稿だったのかと邪推してしまう。
『ビーンソニック、発進願います。』
「やめい、その言い方!」
 あふれる涙を堪えながら反論してみるが、心底真面目なシャルロットの声は揺るぎもしない。
『ビーンソニック、発進願います。』
「ワイはそーゆー星の元に生まれたんかい……
 西山音彦、ソニックガイアン出るでぇっ!!」
 勢いよく放たれるカタパルト。発進のGを堪えながら、ふとラストガーディアンの方を振り返ると自分が出たカタパルトのところにゴムのような物が揺れていた。
 ……見なかったことにする。

 戦場では3体とも“鬼”に攻撃が効かず苦戦していた。
 必殺技を放っても倒せるかどうか分からず、防戦一方になっていた。
「ちっ…… ヴォルライガー、何分経った?」
「そろそろ5分になる。」
「このまま長引けば明後日まで響くか?!」
 戦闘力の高いヴォルライガーではあるが、唯一にして最大の欠点が合体すると乗り手である志狼が死ヌ程の筋肉痛になってしまう、ということだ。合体時間とその度合いは比例するので、なおさら早く敵を倒したいところだ。
「いけぇっ!!」
 ライガーブレードを振るうが、それがガッチリと黒鬼の金棒で受け止められてしまう。焦りからかライガーブレードを折ってしまうことを一瞬恐れ、らしくない隙を作ってしまった。
「志狼!」
「しまっ……!」
 振り上げられる金棒。体勢が悪く、ライガーブレードで受けきれなそうだ。
「待て待て待てぇ〜っ!!」
 と、声とともに空からいきなり豆が降ってきた。
(おそらく)巨大なピーナッツが黒鬼に突き刺さると、何故かそれが爆発。今までと違って苦痛に顔を歪め二、三歩後退する。
 太陽をバックに雄々しく降りてきたのは……!


……背中に柊を生やしたソニックガイアン。


「…………」


「…………」


 数秒間、戦場に沈黙が広がる。
 誰か動くとしたら自分だろうなぁ、とランドガイアンがソニックガイアンに近づくと、とても温かい目をしながらポン、と肩を叩いた。
「なんや大地、その哀れみながらも自分は友達や、ゆー目は!」
「だってなぁ……」
「だってなぁ、やない! ワイだってなぁ……
 くぅ〜 こうなったらケガレ役でもええわ! かっこええとこ見せたるわ!」
 開き直ったのか、ビーンシューター(笑)を構えて、一撃与えた黒鬼に更に一連射。
 豆を全身に食らった黒鬼はその場に倒れ消滅する。
「一つ!」
 自分たちを滅ぼせる武器を持ったソニックガイアンを警戒し、二体同時に襲いかかってくる。
「遅い!」
 赤鬼をビーンシューターで足止めした間に、ランドセルの柊の葉を掴む。
ヒイラギカッターッ!
 投げられた柊の葉が青鬼の目に張り付いて視界を遮る。ソニックガイアンは腕を交差しわずかに屈むと、背中のランドセルが開いた。
イワシミサイル!
 発射された(謎の薬で)巨大化したイワシにロケットをつけた物が一度左右に広がってから、マクロスばりの板野サーカスで青鬼へと集中する。爆発の煙にまかれた青鬼が地に伏す。
「二つ!」
 しかし赤鬼は先の2体よりも動きが速かった。
「……3倍か!」
 角付きだし(ぼそ)
 目の前から赤鬼が消失する。素早く後ろを振り返るよりも先に金棒が振るわれた。寸前で避けたものの、金棒はランドセルに打撃を与えていた。過負荷により煙を吹き出したランドセルを強制排除。
 直後、ランドセルが爆発し、爆風に押されソニックガイアンが倒れた。

「なんてこと! あんなはずかs…… いえ、唯一の対抗手段が……」
「大丈夫です艦長。まだ最後の秘策があります。
 こんな事もあろうかと!」
 また無い胸(公式データ78)を張ってマッディ・リオリオがビシッとまたスクリーンを指さす。
 すると画面が切り替わって、こういう光景が見えた。

 バーニングダッシャーをコンロ代わりに、巨大な鍋を使って料理をしているレイバー&サイザー。

『…………』
 シュールだ。
 あまりにもシュールだ。
 何を調理しているのか、とか、鍋をどうやって調達したか、とか、2体のサイズに合わせた割烹着はどこから用意したのか、とか色々ツッコミどころはある。しかし、その疑問を解消しようと口を開く前に、マッディ・リオリオが説明を開始した。
「今最終兵器を調理中です。しばしお待ちを……」

『雫(しずく)、味を見てくれ。』
『どれ…… ん、もう少し醤油だ兄貴。』
『おう。』
 サイザーが醤油を鍋の上で一回し、小皿(飽くまでも彼らのサイズにとって)で味を見る。
『……よし。』
『ご飯が炊きあがったよ〜』
『炊きあがりました……』
 向こうでスターブレイカーが釜から炊き立てのご飯をしゃもじで移していた。その隣でトライガーディオンが合わせ酢を加えている。合わせ酢を入れ終わると、団扇に持ち替えてパタパタと扇ぎながらスターブレイカーがご飯をしゃもじで切る。
 秋沢飛鳥(あきざわ あすか)と雫の兄弟、橘美咲(たちばな みさき)に神崎(かんざき)三姉妹の次女月乃(つきの)と、艦内でも料理自慢が何かを作っている。
『よし、具はオッケーだ。』
『こっちも準備いいよ。』
 スターブレイカーとトライガーディオンの2体で巻きすだれの上に海苔、そして薄く伸ばした酢飯を乗せる。敢えて言ってはいないが、それぞれが20m級ロボに相応しい、ややそれと比べてもややオーバースケールの物である。
 レイバーソードを包丁に持ち替えて、ふんわり焼いた厚焼き卵を細く切り、サイザーが煮たかんぴょう・椎茸、そしてキュウリや桜でんぶを酢飯の上に細くのせていく。
『よいしょ、よいしょ……』
 スターブレイカーが端から巻きすだれを巻いていく。力を絶妙に加えながら隙間無く巻いていくと、断面が綺麗な太巻きが完成した。
『完成〜』
『完成です……』
 少女二人が出来た太巻きを高々と掲げた。

「……何が?」
「恵方巻きです。」
 呆れたような律子の声にこれでもか、と自慢げな笑みを浮かべるマッディ・リオリオ。
 ……ちなみに昔裏三次元にいたのだが、そこに節分の習慣があったかどうか不明である。
「…………」
 もうどうとでもなれ、と思っているのか、目だけでコンソールの二人に合図を送る。
「クロノフィールドによるコーティング開始。」
「50…… 80…… コーティング終了。」
 ちなみにクロノカイザー他に使われている時空間システムの応用で、コーティングした物体の時間を擬似的に凍結させ、破損や劣化を防ぐためのものである。
「フルアーマーブースターカタパルトスタンバイ。」
「スタンバイ。」
 メイアの後を追うようにシャルロットが復唱する。
「“恵方巻き”セット。」
「“恵方巻き”ロック完了。」
 遠くから無駄にグオングオンと音が聞こえてくる。
「ソニックガイアン、これから“恵方巻き”を射出します。」
「軸線を合わせてコネクトをして下さい。」
『またか! またワイなのか!』
 涙に濡れた叫び声が返ってくる。
「ソニックガイアン用に作られているので、他の機体ではコネクト不可能です。」
「これ以上長引かせると、志狼さんの筋肉痛が4日目に突入します。」
 それでもメイアとシャルロットの口調は淡々として変わらない。
『もうええわ! はよぉ射出してくれ!』
「了解。カタパルトスタンバイ。」
 そこでメイアが律子を振り返る。
 精神的疲労はえらく溜まっていたが、それでも艦長の威厳をもって立ち上がり、ビシッと腕を振った。
「射出!」
「了解! “恵方巻き”……」
 メイアとシャルロットがお互いを見てタイミングをはかる。二人が小さく頷いた。
シュート!
 二人同時にレバーを引くと艦の外でゴウン、と衝撃と共にこの戦いの「勝利の鍵」が撃ち出された。

「よし、コネクトまでの時間を稼ぐぞ。咲也さん、志狼行くぞ!」
 どこか嬉しそうな大地の声。巻き込まれてはたまらん、と後の二人もランドガイアンに続く。
「……ワイは孤独や。」
 一人残されたソニックガイアン――音彦は寂しく呟いた。
 豆鉄砲からの呪縛が解かれたと思ったら次は太巻きである。
「……ヒーローっちゅうのは孤独やなぁ。」
 空中戦を得意とするためにレーダーの精度は高い。そのレーダーに高速で飛来する物体が捉えられる。
「ええい、こうなったら汚れた英雄でもええわい!」
 太巻き一つにえらい言いようである。
 空中に上がり、恵方巻きが向かう方向に飛行する。自分のそばを黒い物体が通り過ぎたのを確認すると、フルパワーでそれを追いかける。
 ターゲットスコープに「それ」が見えた。
 上下と左右のマークが一つになるように機体を制御。位置を固定すると一気にブースターを噴かした。
恵方巻きぃぃぃぃ、コネクトぉぉぉぉぉっ!!
 狙い違わず恵方巻きがソニックガイアンの右腕に装着される。クロノ粒子のコーティングが剥がれ、光の尾が伸びた。

 速度の速い赤鬼を3体で包囲し、包囲網から逃がさないようにする。
 空に光の筋が見えたとき、鬼の対応を他の2体に任せ、クロノカイザーが距離を開けた。
 ヴォルライガーとランドガイアンが鬼を前後から挟み、一気に接近する。
ガイア、フィニィィィッシュっ!!
轟雷、ざぁぁぁぁんっ!!
 2体の必殺技が炸裂した。効かないまでもその衝撃に赤鬼の動きが一瞬止まる。
「今だ! エンドフィィィィィィルド!
 クロノカイザーがクロノソードを抜くと、柄の文字盤が高速回転して時空間を歪め相手の動きを止めるエンドフィールドが発生する。
 通常攻撃は効かなくても、捕縛技はまだ効くようだ。
「今だ音彦!」
「おおっ!!


 恵方巻きぃぃぃぃぃぃっ、クラァァァァッシュッッ!!


 空から大地に突き刺すようにソニックガイアン(with恵方巻き)が落下してくる。その着地地点は赤鬼だ。
 その恐るべき力でエンドフィールドを破った赤鬼だが、すでに破滅をもたらす物は眼前だった。
 それでもがっしりと金棒で恵方巻きを受け止める赤鬼。力が拮抗して、周囲にその余波が広がる。
うぉぉぉぉぉぉっ! 消えろぉぉぉぉぉぉっ!!!
 ブースターを全開にして押し込む音彦。
 それぞれが相反する物なのか、赤鬼と恵方巻きは対消滅しながら光と化していく。
 一度消滅が始まると、後は堰を切ったかのように赤鬼を浸食していった。
 光がおさまった後、何故か知らないがボロボロになったソニックガイアンが膝をついていただけだった。
「鬼は外、や……」
 疲れ切った声で音彦が呟いた。
 ここだけ見ればちょっと格好いいかも知れない。

「凄いよ音彦くん!」
「音彦さん、格好良かったです。」
「なかなかやるな、音彦。」
 戻ってきた時には沢山の歓声に包まれていた。
 しかし何か虚しい。
(豆と恵方巻きで得た勝利ってもなぁ……)
 久しぶりに女の子に囲まれた音彦だが、心中複雑であった。

 

オマケ

「え〜 違うの〜?」
 エリス=ベル。通称エリィは心底不思議そうに首を傾げた。
「少しはおかしいと思わなかったのか?」
 大神隼人(おおがみ はやと)は目の前の山を作った美咲に呆れたような目を向けた。
「え〜と、ボクもこの恵方巻きの習慣は良く知らなかったし、エリィちゃんが自信たっぷりに言ってたから、てっきり……」
「エリィ……」
 筋肉痛で苦しい息の下、志狼がジト目でエリィを睨む。
「あは、あはははははは……」
 さすがに引っ込みがつかないので、乾いた笑いを浮かべるしかない。
「どこをどう聞いたら『節分の日には歳の数だけ恵方巻きを食べる』って話になるんだ?」
「え、えぇと、その……」
 おそらくクルー全員分と思われる太巻きの山に冷や汗をダラダラ流すエリィ。と、何か思いついたのか、ピン、と指を立てる。
「ここは、今日のヒーロー音彦君に……」
 おお、と全員の視線が音彦に注がれる。
「も……」
『も?』
もう、節分はコリゴリや〜っ!!
 ソニックバイクを召喚すると、音彦は涙を流しながら逃げ出した。

教訓;
 異世界の、しかも外国人の言う日本文化は信用してはいけない。
 

 

オマケ2

『歳の数か……』
 某神様ズが真剣に悩んでいた。