オリジナルブレイブサーガSS
「超人伝説(謎)」

※ 注意!
 ネタがベタベタです。ある物を知らないとサッパリ分からないのですが、それによる損失に関して一切責任取らないわよ☆

 

「ん? 外出か?」
「うん。ボク、今日は第2級待機だから。」
「そうか。……しかし、それは?」
「あ、うん。ボクが免許持ってる、って言ったら謙治(けんじ)くんが。」
「なるほど。しかし、どんなに気を付けても事故に巻き込まれることはあるからな。気を付けるんだ。」
「はい、分かりました。どうもありがとうございます。」
「うむ、良い返事だ。……それと、決して艦内では乗り回さないように。」
「うん。じゃあ、いってきま〜す。」

 万能戦艦「ラストガーディアン」の通路を1台のバイクを押して歩いていたのは橘美咲(たちばな みさき)
 花の高校2年生17歳なのだが、見かけはどう見ても中学生。身長と年齢で統計をとったら相対的最下位間違いなしという悲しい事実からは目をそらしている。
 彼女が押しているのは1台のバイクである。
 オリジナルの物なのか、既製のバイクでは無さそうだった。
「あれ? 美咲ちゃんもお出か……」
 出口として解放された格納庫のスロープ前で靴をトントンさせていた神崎花乃(かんざき はなの)が美咲の押しているバイクを見て言葉を失う。
「えぇ?! こ、これ、あれじゃないの?!」
 興奮したようにバイクをペタペタ触る花乃。
「あれ、って?」
 一方美咲はなぜ彼女が興奮しているのかサッパリ分からずに首を傾げる。
「美咲ちゃん!」
 ガッと両肩を掴む花乃。ちなみに彼女は中2で美咲よりも3歳年下だが身長はすでに上だったりする。
「サンライズデパートに行きたいんだけど、乗っけてくれませんか!」
「ん? いいよ。あ、ちょっと待って。」
 あっさり答えると――ちなみに美咲はすでに免許をもって1年経っているのでタンデムでも問題はない――スタンドを立てて、ブレスレットをはめた左腕に僅かに力を込める。
 ぽん、と音まではしないが、まさにそんな感じで美咲の手の間にヘルメットが現れた。美咲はドリームリアライザーというシステムを介して、自らの精神力を物体に変換させることが出来るのだ。おそらくはハンドルに引っかけたヘルメットも同じように作った物だろう。
「はい、ちゃんとかぶってね。」
「わ。」
 戦闘時は確かに巨大ロボを召喚している姿を見ているが、普通の身の回りの品を出してるのはあまり見かけないからやっぱり驚きである。
「……ということは、これも?」
「うん。謙治くんが用意してくれたんだ。」
「謙治君かぁ。……随分凝ってるよね。」
 美咲のチームメイトの名前を出されてちょっと納得の花乃。
 花乃に神代沙希(かみしろ さき)や空山(そらやま)ほのかたちのようにアニメ(特にロボットアニメ)が好きな通称「オタ同盟」ですら田島(たじま)謙治は一目置いている。
 知識の深さは言うに及ばず、その知識を生かして実際に戦闘ロボの設計までしているし、趣味でこういう物まで作っていれば…… と。
(……あれまで出来たら尊敬しちゃうんだけどなぁ。)
 そう思いながらも、TVの中でしか見たこと無いバイクの後ろにまたがり、美咲の腰にしっかりしがみつく。
「れっつごーっ!」
 花乃の号令一発、美咲の駆るバイクは「ラストガーディアン」を飛び出していった。

「…………」
 いつものように厳しい顔をして歩いている神崎慎之介(しんのすけ)
 艦内でトップクラスの剣士で、風紀委員も務める慎之介であるが、妹を溺愛することで有名だったりする。
 今日も末の妹の花乃が一人で外出したのを気に病んでいる。
 ガードコマンダーを持ち歩いているから連絡がとれないこともないのだが、先ほどもバイクを押していた美咲に言ったとおり、事故やそれこそ事件に巻き込まれたらそれどころではない。
 それにもしも……
「くっ……」
 思わず手の木刀を握りしめる。木製とはいえ、頑丈な柄がミシミシと音を立てる。
(花乃まであのような馬の骨を近づけるにはっ!!)
 花乃の姉、そして慎之介の妹である雪乃(ゆきの)には自他(一人を除く)共に認める恋人の草薙咲也(くさなぎ さくや)がいる。これが凡庸な男で、雪乃のためにならないような輩なら即刻叩き斬るだけなのだが、“馬の骨”にしては実に立派で慎之介の一撃を受けても折れぬ強さもある。
(外には危険がいっぱいであるからな。)
 本人はどう思っているか不明だが、花乃はどこに出しても恥ずかしくない美少女である。それが一人で不用心に(慎之介主観)街に出かけるとは……
(私もついて行くべきだったか……)
 買い物に行く、とは言っていたので、さすがの慎之介でも年頃の女の子の買い物、となるとついていくのも躊躇われる。
(過保護だ、というのは分かっているつもりなのだが……)
 神崎家の両親は8年ほど前に不幸な事件で亡くなっている。それ以来3人の妹達の親代わりとして守っていたからなのだろう、とは思うのだが、一度染みついた物はなかなか抜けない。
(困った物だ……)
 やきもきしながら艦内を巡回する慎之介。
 今日の厳しさは2割り増しだったとか。

「花乃ちゃんは何しに行くのーっ?」
「限定品が今日発売なんですよー ちょ〜っと出遅れて心配だったんですけど、美咲ちゃんがいて助かりましたーっ!」
「うん、それは良かったよーっ!」
「美咲ちゃんはーっ?」
 やや混みつつある幹線道路を、車の間をすり抜けるように走る美咲のバイク。制限速度ピッタリながら、花乃の動きも考えながらの巧みな体重移動にハンドルテクニックで危なげなところはどこにもない。
 ただ、ちょっと足が地面につかないのか、止まるときは素早くスタンドを立てているのが彼女らしいというか何というか。
「ボクは特に用は無いんだけどーっ、たまには走るのもいいかなーって!」
「なるほどーっ!」
 程なくサンライズデパートに到着。バスではこれほど早くは着かなかったろう。開店前のデパートにはすでに人が並んでいた。
「結構並んでるな〜」
 気持ち肩を落とす花乃だが、バイクを止めて降りて最後尾に並ぶ。
「ギリギリかなぁ……」
 どうやら数量限定なのか、心持ち不安げな花乃。バスで行ってたら間違いなく間に合わなかったのだろうが……

「お、おい、アレ見ろ。アレ。」
「マジか? 誰が作ったんだ?」
「……くっ、近くに行って見てぇ〜」
「しかし限定品が……」
「俺は行くっ!」

「……あれ? なんか人が減ってるね。」
「あはははははは……」
 二人の乗ってきたバイクを間近で見ようと堪えきれずに列を離れる人が幾人も。そのおかげで随分と前に移動できた。降って湧いた幸運に思わず花乃は乾いた笑いを上げる。
「でもなんか男の人ばかりだね。何に並んでるんだろ?」
「う〜ん、こればっかりは趣味の品だから。」
「難しいんだね。」
「……え〜と、ちょっとお願いが。」
「ん? 何?」
 ゴソゴソと持っていたポシェットから印刷した紙を取り出す。
「これが今日欲しい物なんですけど、美咲ちゃんにも確保をお願いしたいんです。」
 周囲にいるのは普段はともかく、こういう状況では百戦錬磨の戦士達である。思い入れはともかく、か弱い女の子の身の花乃としては、今のポジションでも一瞬の油断で逃してしまう可能性がある。
「うん、分かったよ。おもちゃ屋さん所だよね?」
「ええ、お願いします。」
 離している間にも刻々と時間は迫る。
 熱気どころか殺気まで感じられる空気。デパート側の手際が悪かったせいか、整理券も配られずにまさに早い者勝ち。
 そして待ちに待った開店の時間だ。
 行列が後ろから押されて歪む。
 自動ドアのスイッチが入れられた瞬間。普段そんなに走ること無いだろ? みたいな勢いで行列を作っていた「大きなお友達」が走り出した。
「うわぁっ!」
 後ろからの波に押されて列からはじき飛ばされた花乃。どうにか入り直したものの、スタートダッシュに失敗し大きなタイムロスだ。
(美咲ちゃんは……?)
 花乃は見るどころでは無かったのだが、美咲はその小柄な体躯と優れた運動神経をフルに活用し、一気に人混みを抜けていた。エレベーターとエスカレーターが混むのと、玩具売場の位置から階段を使用するのが一番速いと瞬時に判断して素早く駆け上がる。

「ふへ〜」
 どうにか5Fの玩具売場に到着した花乃。
 さすがにワゴンの中の限定品は姿を消していた。
「あ、花乃ちゃん。」
 声に振り返ると、いつもの笑顔の美咲が両手に幾つかの箱を抱えていた。
「これでいいのかな?」
「美咲ちゃんっ!!」
 またガシッと両肩を掴む。それでも加減しているのか、手に持った箱は落とさない程度の勢いだ。
「一生ついてきますっ!」
「……え?」
 一人一つ限定、ってことなので、二つずつ紙に書いてあった物を取ってきた美咲。予想もしてなかった収穫だ。
「沙希ちゃんもほのかちゃんの分もゲット出来たよ〜」
 感動に目の幅涙を流す。
 バイクで来たので、配送を頼む――無論送り先は「ラストガーディアン」ではない。ダミーの住所があって、そこに送るとすぐとは言わないが、艦に送られることになる――と、適当にあちこち冷やかしてから昼食を取り帰路に……
「よーよー嬢ちゃん達、可愛いネェ〜」
「俺たちとイイトコ行かない〜」
 絵に描いた不良が二人の前に立ちはだかった。
 見かけ中学生&リアル中学生に声をかけるとはちょっと特殊な趣味の持ち主かも知れない。まぁ見る目は確か、というか100人にアンケートをとって99人が納得するような容貌ではあるのだが。
(ん〜 困ったなぁ。お兄ちゃんがいたらこんな奴ら……)
「あっ、」
「どうしたの?」
 よく現状を理解してない美咲が首を傾げる。どういう相手かは知らないが、あんまり良い人間でないことは理解できる。何か狼藉でも働くのなら話は早いのだが。
「え〜と、お断りします。咲也君並みに格好良くて、紳士的なら少しは考えたんだけど、全然基準に達してないから。」
「何だとゴラァっ!」
 怒って花乃に掴みかかろうとした不良だが、その時閃光が走った。
 その手首を掴んで軽く捻り上げる。痛みで動きが止まった瞬間、美咲の前蹴りが炸裂した。
 まさに一瞬の出来事で、兄の動きを見慣れている花乃でどうにか分かったくらいだ。
「え〜と、悪い人?」
「うん、悪い人。」
「分かった。」
 そして美咲が以下略。

「ディメンションディストーション(時空湾曲)発生を確認!」
「……たまに思うけど、何かある時っていつも同じフレーズから始まるわね。」
 艦長である綾摩律子(あやま りつこ)の言葉に、ナビゲータのメイアが僅かに苦笑しながらも、観測結果を報告する。
「大量のロボット兵が街に投下されています。地形から勇者ロボによる迎撃は困難です!」
「白兵戦が出来る人やロボをすぐさま派遣して!」
「了解!」

(街には花乃が……!)
 艦内に鳴り響いた緊急警報に不埒者を説教していた慎之介が走り出す。しかしここからでは現場の街までは遠い。何か足になる物は……
「ちょっと来い!」
〈おおっ?!〉
 尻尾を掴まれた鋼の竜が驚いた声を上げる。
 妹補正のかかった慎之介にはトンを越えるカイザードラゴンの重量だろうが何の障害にもならない。
〈おおおおおおおおおっ?!〉
 カイザードラゴンを引きずったまま格納庫の出口に向かう慎之介。少し前に同じように走る一人の少年が見えた。
「デカブツ! ちょうどいいところに……」
 後ろから聞こえる音に振り返った大神隼人(おおがみ はやと)は強制的に移動させられているカイザードラゴンに一瞬表情を歪めたものの、すぐさま首根っこを掴む。
「街まで飛べ!」
「大神、私が先だ。街には花乃が行ってる。」
「俺もだ。橘が……」
〈……私の意志は?〉
 最近自分の意見が尽く無視されているような気がして、ちょっと寂しいカイザードラゴン。
 それでも事態が事態なので、2mサイズのままジェット形態に変形すると、背中に乗るように促す。
〈参ります!〉
「「急げ!」」
 ちょっとでも手を抜いたら破壊されそうな声に一瞬身を震わせながらもジェットを吹かそうとして……
「ちょっと待って下さい!」
 二人と一機の所に謙治が走ってきた。手には3個のトランクを持っている。
「これを持っていって下さい! きっと役に立つはずです。」
「……分かった。持っていこう。」
 慎之介がトランクをカイザージェットのカーゴに放り込むと、再度発進体勢を取るカイザージェット。
〈参ります!〉
 ジェットを吹かすと、二人を乗せたままカイザージェットは蒼穹へと消えて…… 行くと常人(?)には辛いのでそこそこの低空飛行をしていった。

「とぉっ!」
 空から大量に降ってきたロボット兵に一人奮戦している美咲。
 棍を召喚して戦っているのだが、相手の装甲が硬くなかなか倒せない。花乃もガードコマンダーからガードフェンダーを取り出して撃っているが、関節部などの装甲の薄いところを狙わないと効果は無い。
「うわっ!」
 ロボット兵の殴りつけた腕を棍でガードするものの、ウェイトが無いためにガードごと吹き飛ばされる。
 壁に叩きつけられ、一瞬呼吸が止まる。すぐに立ち上がり駆け出すが、不利なのは変わりない。美咲や花乃が戦っていることで周囲の避難は出来ているが、このままでは……
 あまり当たらないガードフェンダーによる援護を諦めると、乗ってきたバイクに向かって花乃は走った。
(お願いします。謙治君が思った以上のマニアであってください。単なるバイクだけ作って満足するようなキャラじゃ無いと私は信じています!)
 バイクのタンク部分の黄色いマークに手を乗せる。
「美咲ちゃんがピンチなんです。助けてっ!!」

「うわぁっ!」
 また吹き飛ばされて地面に倒れる美咲。棍からも手を離してしまって、拾おうとしたところにロボット兵が迫っていた。
 そこに誰も乗っていないバイクが自走して体当たりをかけた。
 ――battle mode
 バイクがいきなり起きあがると、人型に変形してロボット兵に強烈なパンチを喰らわせた。
 ひしゃげながら殴り飛ばされると、その場で機能停止するロボット兵。
 更にロボット兵が固まっている方に手に持った前輪を向けると、前輪が回転してそこから無数のエネルギー弾が発射される。
「いっけーっ!!」
 花乃の声援にバイクロボが次々にロボット兵を粉砕していく。
 排除すべき敵を察知したのか、次々とロボット兵が花乃たちのいる区画に集まってくる。敵の数は100を超えた。とてもじゃないがこれだけの敵を相手にするのは無理だ。
 それでも心折れずに戦い続ける2人と1機であった。

「こっちだ。」
 木刀でロボット兵を薙ぎ払いながら走る慎之介。
 その超人ぷりに驚きながらも遅れてロボット兵を殴り飛ばしながら隼人が後を追う。
〈慎之介様の勘は鋭くございますから。〉
 とフォローを入れるカイザードラゴンだが、おそらくは妹補正なのだろう、と解釈していた。
「……見えた!」
 妹たちが苦戦しているのを見て、慎之介の速度は更に上がった。

「敵が多すぎる〜」
 ガードフェンダーを撃ちまくる花乃。敵が多くて外れることはないのだが、あんまり効いてない。美咲もバイクロボも必死に戦っているが、多勢に無勢、という言葉が身に染みてくる。
「神明流秘剣……」
「え?」
 聞こえないはずの声が聞こえて一瞬自分の耳を疑う花乃。
 目の前でロボット兵が拳を振り上げているが、もう怖くはなかった。
「牙狼閃っ!!」
 その名の如く、狼の牙の鋭さを持った一撃がロボット兵を真っ二つに斬り裂く。
「大丈夫か花乃。」
「お兄ちゃん!」
 木刀で合金製のロボを斬り捨てたのはまさに神崎慎之介その人であった。
「無事でなによりだ。……ふむ、橘には感謝しないとな。」
「うん!」
「でもまずはあの機械人形を片付けねばな。隠れていろ。」
 それだけ言い放つと、適当なロボット兵の集団に目を留める。数はおおよそ30。
「御影神明流、神崎慎之介。参る!」

「一つ!」
 まず手近なロボット兵を斬り捨てる。単なる木刀なのだが、速度と込められた「気」の鋭さが合金製の装甲を易々と斬り裂く。
「二つ…… 三つ!」
 敵の間を走り抜けながら、徐々に足と木刀の速度が上がっていく。
 28体目を斬り捨てたところで、木刀から嫌な響きを感じだ。
(もうもたないか……)
 いい加減、敵の装甲と慎之介の力に木刀が悲鳴を上げていた。
「29!」
 更に響きは大きくなった。
「30!」
 その叫びと共に木刀が砕け散った。
「拙いな……」
 さすがに無手でこのような敵を相手するのは辛い。何でもいい。何か剣があれば……

「大丈夫か。……美咲。」
 ちょっと迷って名前で呼ぶ隼人。
「うん、隼人くん、ありがとう。」
「いいからお前は少し休んでいろ。」
 少し疲れの見える美咲を強引に花乃に押し付けると、隼人はロボット兵に向かっていく。
〈私も加勢致しますぞ!〉
 カイザードラゴンも持っていたトランクを地面に置くと、戦いの場に飛び込んでいく。炎はあまり効かないかも知れないが、強靱な爪と尾の破壊力は敵を粉砕するのに十分である。

「美咲ちゃん、大丈夫?」
「うん、ボクもすぐ戻るよ。」
「でも……」
 棍は効果が薄かったし、素手ではとても倒せない。何か武器が……
 ふと花乃はカイザードラゴンが置いていったトランクに気がついた。その表面には見覚えのあるロゴ。
「……! まさか!」
 とりあえず一番小さなトランクを開ける。中には金属製のベルトと携帯電話。他には何も入っていない。
 と、二人のすぐ側にバイクロボが殴り飛ばされてきた。
 どうやらホイールからのエネルギー弾も切れて素手で戦っていたようだが、ロボット兵に囲まれて苦戦しているらしい。
 ――vehicle mode
 ショックでバイク形態に戻る。そこで花乃は閃いた。
「美咲ちゃん!」
 座って休んでいる美咲を立たせると、その金属製のベルトに携帯電話を差し込んだ物を巻く。ちなみにチェックしたがサウンドギミックだけだった。
「え? なになに?」
 バックルに当たる携帯電話の表面からチップ状の物を抜くと、バイクに駆け寄る。
 右のハンドルにチップを差し込んで一気に引き抜いた。
 ――ready
 引き抜いたハンドルの先に赤い光が伸びると、それは一本のビームソードになった。
「これ!」
 出来たビームソードを美咲に渡すと、軽く振って具合を確かめてから美咲はまた戦いに戻っていった。ビームソードを振るうと赤い刃がロボット兵の装甲を容易く斬り裂く。返す刀で背後から迫ったロボット兵の頭部を突き刺し機能停止させた。
「次、お兄ちゃん!」

 妹の声に呼ばれてくると、別のトランクから取り出した、さっきとデザインの違うベルトを無理矢理腰に巻かれる。
「花乃! 一体何の真似だ!」
「いいから!」
 更にトランクから×の形をした謎の物を取り出す。
 同じくベルトのバックルのところから、×の刻印の入ったチップを抜くと、さっきの物体に差し込む。
 ――ready
 ×の一本から黄色い光が伸びる。それは瞬く間に逆手で構えるタイプのビームソードとなった。
「はい。」
「……なるほど。次は大神を呼べばいいのだな。」
「うん、お願い!」
 妹に肯くと慎之介は再び戦場に戻っていった。

「大神! 一度下がれ!」
 慎之介の声に隼人は手近のロボット兵を他のロボット兵を巻き込むように蹴飛ばしすと距離を開けた。
「隼人くん!」
 てに赤いビームソードを構えた美咲がその間に割り込んで敵を斬り裂く。
「花乃ちゃんの所へ!」
「分かった。」
 言われて戻ると、最後のトランクから美咲と同じデザイン――サイズは若干大きいが――のベルトを用意していた花乃が待っていた。
 有無を言わせずに腰にベルトを巻いて、トランクからデジカメを取り出した。
「……なんだそれは。」
 あの二人のようにビームソードを渡されても困るが、デジカメで何をするんだ、と言わんばかりの視線を向けるが、花乃は気にした様子も無くバックルに手をかける。
 ――ready
 レンズを覆い隠すように美咲のと同型のチップをはめると、デジカメの片方が展開してグリップになりナックルへと姿を変えていた。
「……良く分からんな。」
 知らない人には分からない、という素直な感想を述べながらも、ナックルを装着して隼人は敵陣に飛び込んでいった。

 武器を装備した3人は敵を次々と撃破していく。カイザードラゴンは火器能力が高いが、下手に撃つと巻き込みそうなので、花乃の護衛に回っている。
 美咲も隼人も「ラストガーディアン」内では達人の域に達しているが、艦内で五指に入る剣士の慎之介には敵わない。
 疾風のように駆け抜けるだけで敵が切り刻まれていく。
 慎之介の撃破数は二人を足して倍にした物よりも更に多い。
 逆手に構えるのは苦手なようだが、それでも…… と。
 凄腕なのは知っていたが、ここまでの本気は見たことがない。
「……凄いね。」
「ああ……」
 100体どころか2〜300はいたロボット兵もあらかた片づいた。
 最後の1体は一番弱そうな花乃に襲いかかろうとしたが、カイザードラゴンを突破できない内に慎之介に斬られて真っ二つにされた。
「さっすがお兄ちゃん!」
 喜んで駆け寄ろうとした花乃だが、鋭い表情の慎之介に止められる。
 美咲と隼人の二人もまだ構えを解いていない。
〈上です!〉
 カイザードラゴンのレーダーが上空から落下する物体を捉えた。

 3体のロボットがそれぞれの前に降りてきた。
 美咲の前には剣と盾を構えたアルマジロを模したような人型のロボ。隼人の前にはワニを模した人型の重装甲ロボ。慎之介の前には鞭を構えたムカデを模した人型のロボだ。
「気を付けろ! さっきのとは全然違うぞ!」
 慎之介の声が飛ぶ前に、それぞれの敵ロボの強さは肌に感じられていた。
 美咲の振るうビームソードを巧みに盾で受けるアルマジロロボ。装甲が硬く、生半可な打撃は通らない上に振るわれる腕は必殺の威力があるワニロボ。鞭を振るい慎之介を近づけさせないムカデロボ。
 それぞれ浅い当たりでは傷つけることが出来ない。

「う〜っ!」
 動きが早すぎてガードフェンダーでの援護は出来ないし、カイザードラゴンも手出しできないレベルの戦いだ。
 というか、迂闊に割り込んで邪魔になっては困る。3人とも攻撃力はともかく、生身の人間なので一撃でも受けたらアウトなのだ。慎之介は耐えそうな気はするが、というのは敢えて口にしない。
 どうやらこちらからの攻撃があまり効いていないようだ。さっきまでの敵とはまず防御力が違うらしい。何か手は……
「ってあるじゃない! みんなー 聞いてーっ!!」
 花乃の叫びが戦場に響いた。

 ワニロボのパンチをかわしながら相手の隙を探す。
 大振りな相手だけに外した後の隙は大きい。しかし、その隙にしとめられなかったらこちらがまずい。
(上か……)
 向こうの方が上背があるので、振り下ろしになる。上さえ取れれば勝機が……?
(やってみるか。)
 相手のスカした右腕の上に乗る。それを追いかけるように下から左腕が突き上げてくるが、体勢が悪く思った通りに速度はない。
(よし。)
 左の拳の上に乗ると、突き上げられる勢いを乗せ、近くの建物の壁に向かって大きく飛んだ。
「携帯電話のエンターキーを押してーっ!!」
 そのとき花乃の声が聞こえた。内容は分かったが、それで一体どうなるのか。
 しかし、今自分が使っているデジカメから変形したナックルの件もあるし、やってみる価値はあるのかもしれない。
 壁を蹴って落下しながらベルトの携帯を開いてエンターキー。
 ――exceed charge
 電子音と共に右手のナックルに光が集まる。
「いい加減に落ちろ!」
 いきなりの動きの変化に敵を見失ったワニロボの胸めがけてナックルを振り下ろす。
 落下速度を交えた拳が突き刺さった。その衝撃に地面に押しつけられるワニロボの周りに円と線を組み合わせた図形が描かれた。そのまま胸の装甲に大穴を空けられたワニロボが沈黙する。
「……やっぱり訳分からん。」
 衝撃の反動で痺れた手を振ると、隼人は一人呟いた。

「それとーっ! 携帯電話を開いて106エンターでビームガンになるから使って下さいーっ!!」
 素早くその言葉に反応して、ベルトの携帯電話を外して106エンターと入力する美咲。
 ――burst mode
 開いて少し曲げた携帯電話が銃のような形になった。すかさずアルマジロロボに向かって引き金を絞る。
 放たれたエネルギー弾が盾の表面で弾け、衝撃がアルマジロロボを揺さぶった。
「今だっ!」
 一気に接近すると、ビームソードで盾をついてガードを開かせ、至近距離で更に3連射。アルマジロロボの表面で爆発が起きると、剣と盾を落とした敵ロボが吹き飛ぶ。
 すかさず携帯電話をベルトに戻してエンターキー。
 ――exceed charge
 ビームソードの光が強くなると、まずは下からすくうようにソードを振った。余剰エネルギーが衝撃波となって進み、敵を捕縛。その間に駆け寄って袈裟斬りから水平斬り。
 アルマジロロボの背後の謎のマークが光ると、4つに分かれたアルマジロロボが倒れて動きを止めた。
「ふぅ、やっと倒せたよ。」
 美咲は額の汗を拭った。

「そのような魂の無い攻撃で神明流を破れると思うな!」
 その軌道を見切った慎之介は、迫る鞭を紙一重でかわしながらビームソードで鞭を断ち切る。
 鞭を失ったムカデロボだが、逆手に別の鞭を出して振るってくる。
「……面倒な。」
 鞭はともかく、逃げ足が速くなかなか捉えられない。
(あの秘剣は一瞬の溜めが必要だからな……)
 絶え間なく振るわれる鞭にいささか手詰まりな慎之介。
「お兄ちゃん! エンター押して引き金引いたら、相手の動き止めることが出来るよ!」
 原理は分からないが、妹の言うことだから間違いは無いのだろう。
 もう一度敵の鞭を斬り飛ばしながら、左手で携帯電話を捻ってエンターキー。
 ――exceed charge
 ビームソードの黄色い光が強くなる。
「こうか?」
 ムカデロボに狙いをつけて、グリップのトリガーを引くと一筋の光線が発射される。それが命中すると、網のような光線が敵を捕縛した。
 体勢を低くした慎之介がビームソードを構えた。
「神明流秘剣が一つ――」
 駆けだした慎之介。その姿が敵の眼前で忽然と消える。
 次の瞬間、敵の真後ろに剣を振り抜いた格好で残心の構えを取る。
「――瞬閃斬。」
 ×の字に切り裂かれたムカデロボがその場に崩れ落ちる。
「御影神明流に敵なし。」

 戦いが終わって、周囲には動く敵は無い。
 手にしていた武器やベルト、更にトランクやバイクまでサラサラと風化したように消えていく。
 まかりなりにもリアライザーによって現実化されたものであり、決して変sゲフンゲフン、いずれは消えてしまうのだ。
「怪我はないか?」
 一応この場で最年長の慎之介が〈あ、あの私は……?〉皆の無事を確認する。転がったり、壁に叩きつけられたりと多少の打ち身や擦り傷はあるが、美咲も隼人も大きな怪我はない。
 無論、というか慎之介には埃がつくどころか汗の一筋もかいていない。
「ラストガーディアン、応答願います。」
 ガードコマンダーで連絡を入れようとする花乃だが、雑音が混じって通信が届かないようだ。
「……って、通信妨害?!」
「あ、あれ見て!」
 美咲が指さしたロボットの残骸がブルブル震えながらうぞぞぞぞ…… と一塊りに集まっていく。そして絡み合い、溶けながら集合していって巨大な人型となった。サンライズデパート前の広場に20m程の巨大ロボット兵が現れた。
 たとえ真剣を持った慎之介でもこの巨大な敵には――いや勝てるかもしれないけど――歯が立たないだろう。美咲も隼人も戦闘の疲労で、ブレイカーマシンをリアライズさせられるか、させたとしてもまともに戦えるか怪しい。
「こうなったら私が……」
 ガードコマンダーを構え、ダッシュタイガーを呼び出そうとして……
 チョンチョン。
 巨大ロボット兵の肩をつつく者がいた。
 いかに眼前の人間ども踏みつぶそうかと思考していたロボット兵は煩そうにつつく手を払う。
 チョンチョン。
 しつこく肩をつつく手――否、爪の主を振り返ったロボット兵が驚きで(?)動きを止めた。
〈最近、ふと思うのですが、たまに自分の存在を見失ってしまうことがございます。
 私は飽くまでも戦う火竜でありまして、ボケ役でも、解説役でも無いのでございます。〉
 20mの大きさに再リアライズしたカイザードラゴンはブースタータンクも召喚し、全ての武器の準備をすでに終えていた。
〈ここはやはり名誉挽回、ということで……
 ドラゴン・バーストッ!!
 全砲門が開くと、それまでの鬱憤(?)を晴らすかのように無数の砲弾やミサイルに炎がロボット兵に襲いかかる。爆発の炎と煙が収まるとすでに立つので精一杯な程ボロボロにされた敵ロボット。
〈お覚悟!
 カイザー・コロナ・ブレスターッ!!
 胸のエンブレムから放たれた熱線が、ロボット兵を融かすどころか蒸発させてしまった。
 こうして「ラストガーディアン」から別部隊が送られてくる前に、一人の超人の活躍であらかた片づいてしまった。
「お兄ちゃん、帰ろ♪」
「うむ。」
 腕に抱きつくようにぶら下がる妹に、さすがの慎之介も僅かに頬が緩む。
「……隼人くん、帰ろ♪」
「…………」
 花乃の真似をして隼人の腕にぶら下がる美咲。振り払うことも出来ず、その状況を甘受することも出来ず、隼人はいつものようにそっぽを向くだけだった。
〈最近、出番の割に影が薄うございます。〉
 1体残されたカイザードラゴンがはらはら涙を落としていた。

 

 オマケ。

「やっぱりあれかな? あれかな?」
「きっと変形するですよー!」
 ほのかと沙希が格納庫の片隅にあった黒いサイドカーを前に目を輝かせていた。