オリジナルブレイブサーガSS
「一発ネタ〜つまりは“飛び道具”」
 

 

「ディメンションディストーション反応発生!」
「発生箇所の特定を急いで!」
 異世界からの侵略者、トリニティから人類を護る最後の盾・万能戦艦「ラストガーディアン」の平凡(?)な日常。
「はい!」
 ナビゲータのメイアがコンソールに指を走らせると、メインスクリーンの一部に地図が映し出されて、次々と切り替わる。最後に光点が地球上の一点で点滅した。
「え……?」
 艦長の綾摩律子(あやま りつこ)が驚きと戸惑いの声を上げる。
「発生地点は95%の確率で、チリ中央部プラスマイナス10キロの範囲です。」
 アクアワードに待機している「ラストガーディアン」からは見事に地球の反対側だ。
「発生レベルはC。ただし多数の発生を確認できます。」
 ジャッカー電撃隊の頃のライダーのように世界のあちこちで仲間が戦っているわけでもなく、大抵は日本周辺での戦闘が多かったため、戦力たる勇者は皆艦に収納されていた。
「至急、足の速い勇者の派遣準備を。」
 とはいえ、地球の裏側だ。正義のハートが1万度無い限り、易々と行ける距離ではない。
「そういえば、亜光速を出せる勇者が……」
「彼らが行くと、今回の話が成り立たなくなるから事情があって出動できないのです。」
 同じくナビゲータのシャルロットの提案を、艦長の後ろに控えていた小鳥遊(たかなし)が諸処の事情で却下する。
「となると…… やはりドリルですか?!」
 同じく艦長の後ろに控えている副官の神楽(かぐら)が興奮したような驚いたような声を上げる。とはいえ、ドリルも決め手に欠ける。特にビームとの相性は良くない(謎)
 と、いきなりブリッジが闇に包まれる。しかし、コンソールやスクリーンの光までは消えていないので真っ暗というわけではない。何となく理由に思い当たって、律子は見えないようにため息をついた。
「ここは私におまかせ下さい!」
 闇の中に少女の声が響いた。

 照明が回復すると、いつの間にかにブリッジに中央に一人の少女が立っていた。
 いつの間に運んだのか、二つ並んだ座席付のコンソールがその後ろに鎮座している。
 むーむー!
 少女は着ている白衣を翻し、伊達眼鏡をキラリと光らせた。
「お呼びじゃなくてもピンチの時にはいつでも登場。一家に一つ、その名も……」
 むーむー!
 ダラララララララ……
 どこからともなくドラムロールが聞こえる。
 ジャン!
「艦内の平和を守る正義の美少女科学者、マッディ・リオリオなのです!」
 むーむーむー!
 無い胸(最近需要増加中)を張ると、(一応)空山(そらやま)リオーネが普段は決して見せないような笑みを口元に浮かべる。
「このたび私が開発したトランスポーターを使えば、地球の裏側までアッという間なのです!」
 むーむーむーむー!
「……どうしても気になるから、聞いていいかしら?」
「何ですか艦長?」
「え〜と、その、そこで簀巻きに猿轡(さるぐつわ)までされている西山(にしやま)君は何?」
 律子が設置されたコンソールの片方の座席でさっきからうめき声を上げている、見事に手も足も出ない西山音彦(おとひこ)を微妙な表情で指さす。
「無論、彼がこの戦いの勝利の鍵なのです!」
 リンゴを軽く圧壊できる拳を握りしめ、視線を上に向ける(自称)マッディ・リオリオ。
「さぁ、神楽さん、この指示書通りにお願いします。」
「えぇ?! 僕が?!」
「はい。」
 有無を言わせない迫力をベタフラッシュで表現しながら、それでも笑顔のマッディ・リオリオ。
「出来るだけ“濃く”お願いします。」
「え〜と…… 分かったよ。」
 有事ではあるし、残念ながら彼女の“発明”は基本的に役立っているので、多少の理不尽には目をつぶって簀巻きの隣の座席に着く。コンソールの上に妙にゴテゴテしたヘルメットがあるので、これをかぶるのも決定事項なんだろう。
 これでもう少し理不尽に対して戦う力(謎)があれば断れたのかもしれないが、人のいい神楽副長のこと、どうも為すがままに、キュウリがパパに状態になってしまう。
「…………えぇ?!」
 マッディ・リオリオに渡された“指示書”に素っ頓狂な悲鳴を上げる神楽。
「何か?」
 ごごごごごごごごごご……
 オラオラ直前のオーラが見えて、慌てて読むのに集中する振りをする。
「トリニティによる市街への被害が発生しています! 現地の防衛軍が出ていますが、有効な打撃を与えていない模様です。」
「急いで、神楽君。」
 むーむーむー!
 なんか聞こえるけど無視。
「よしっ、」
 ヘルメットについてるマイクを口元に下ろして、顔を引き締める。
「ファ○タスボンバー、」
 ググッ、とカメラ(謎)が迫って神楽の顔がアップになる。
ホップッ!
 むーっ!!
 いきなり音彦の置かれている座席が後ろに倒れると、そのまま後ろへと運ばれていく。いつの間に用意されたのか分からないが、気づくと運搬用のレールがブリッジの外まで続いている。
 そのレールで運ばれている途中に、謎のオレンジ色のスーツを強制的に装着される。拘束から解き放たれ、やっと声も出せるようになったのだが、どこぞと分からない四角いパイプ状の通路を移動させられて悲鳴も空しく響くだけ。

 場所は戻ってブリッジの中。
ファイ○スボンバー、
 また神楽にググッ、とカメラが近づいて、さっきよりも濃さが50%増くらいのアップになる。
ステップッ!
 これまたいつの間に設(しつら)えていたのか、「ラストガーディアン」の甲板にある構造物がいきなり展開し始める。四角い細長いパーツに傾斜がついて持ち上がる。更に内側から四角い筒状のパーツが伸び、まるで何かを打ち出す射出装置のようになる。
 ……という光景が何故かメインスクリーンの隅に映し出される。
「え〜と、マッディ・リオリオさん?」
「はい?」
 可愛く小首を傾げながら艦長に振り返るマッディ・リオリオ。
「こういうことは聞きたくないんだけど……」
「いえ、おそらく艦長の予想通りですよ。」
 にっこり。
「…………ま、死ぬことはないでしょ。」
 今までのケ・イ・ケ・ン(謎)から死ヌほど酷い目に遭うことはあるが、それ以上になることは無いのと、実際にトリニティが現れていることは間違いじゃない。
「任せたわよ、西山君。」
 耳を澄ませば彼の魂の叫びが聞こえてくるかもしれない。そう思うことにした。
ファイタス○ンバー、
 くわっ、と今までの中で一番濃い顔をする。

ジャンプ!

 最後の言葉と共に、甲板にあった四角い大砲から何かオレンジ色の人間大の何かが撃ち出されたのが見えた。悲鳴は……たぶん聞こえなかった、と思う。

「ところで、戦力として音彦さんだけでは足りないようですが……」
 トリニティのロボは一つ一つは小さいが、結構な数がいる。音彦――つまりはソニックガイアンだけで対処するには最終回ばりの頑張りが必要そうである。
「え?」
 そのことはすでに想定内だったのだろう。音彦を戦場に送り出した座席が戻ってくるところにはすでに新しい簀巻きが用意されていた。確かそれは剣持誠也(けんもち せいや)と呼ばれているはずである。更にブリッジの入り口付近では、女子プロのような格好をした仮面の少女に組み伏せられて嬉し恥ずかしな感じの某騎士とか、無数の矢で壁に縫い止められた某忍者とかが次の「砲弾」として控えていた。
「……大丈夫そうね。」
 と、思うことにした律子の平和な(?)昼下がりであった。
(そういえば、)
 ふと思う。
(帰りはどうするのかしら?)
 行くだけでもこれだけの大騒ぎだったが、帰りはこれを使えないことになる。迎えに行くのも大変だし……
(ま、どうにかなるでしょ。)
 たぶん。

 その後、4人で地球の反対側のトリニティを片づけるが、サポートマシンが一通り損傷を受けたため飛んで帰れないことに。まぁ、元々飛んで帰ろうにも、長距離飛行に向いてるロボばかりじゃないわけであるが。
 それで陸づたいに音彦のソニックバイクで猿岩石ばりのドキュメンタリーに。
 でもメキシコあたりで力尽きて、たまたまその辺に買い出しに出ていた購買のマッコイ姉さんに拾われて帰還できたのはまた別の話。

「……で、どうだった?」
「もうワイ、ジェットコースターなんてナンボも怖くないわ。」