オリジナルブレイブサーガSS
「ロードチームのちょっとした一日」
(イラスト:ネモ氏
            サイレント・S氏)

 

(うにゅ〜)
(すや〜)
(く〜)

 

 子猫が身を寄せ合ってるように6人の女の子が固まって寝ていた。


 ツナギの作業着や消防服や看護婦の白衣、そしてスクール水着を着た子と、寝ているのにランドセルを背負っていたり、ヘルメット姿でスコップを大事そうに抱えたりとどこか様子が普通ではない。でも無防備に寝る姿はなんとも微笑ましい。ランドセルの女の子に乗っかられて、微妙に看護婦姿の女の子がうなされているとしてもだ。
 ぴぴぴぴぴ……
 どこか柔らかな電子音がなる。どうやら朝の到来のようだ。
 格好だけとはいえ、消防士姿の女の子――ファイヤーたんがハッと身を起こす。キョロキョロと周囲を見回して朝が来たことに気づく。
(う〜)
(すー)
 看護婦姿――レスキューたんの上に乗っかったランドセルの子――アタッカーたんを引き剥がすと、レスキューたんをゆさゆさと起こす。
(うにゅ?)
 一瞬惚けたような寝ぼけ顔を見せるが、ナースキャップを直して“ん〜”と背伸びをすると、ベッドから降りてトントンと靴を直す。そのころになると、もそもそとツナギ姿のドリルたんが起きて、毎朝の習慣なのかすぐそばに置いた工具箱とドリルのチェックを始める。
 続いてシャベルを持った子――ショベルたんがムクリと起きて、少し大きめのヘルメットを真っ直ぐにすると、ぐしぐし柔軟運動を始める。
(すや〜)
(く〜)
 未だ寝ているスクール水着のダイバーたんとアタッカーたんを4人で囲む。
 どうする? どうする? とお互い顔を見合わせるが、結構な時間になってきたので3人の目がファイヤーたんに向くと、そのファイヤーたんは困ったように視線をそらして頬を掻いてから、服の中から銃のような物を取り出す。
 ぴゅー
 銃から出た水が顔にかかると、ダイバーたんがガバッと飛び起きる。
 元々が水空両用潜水艇なので水に強いのだが、そんなこと起こされることには一切関係ない。長めの髪をぶんぶん振ると水しぶきが飛ぶ。
(ふぇ〜)
 こうやって起こされるのも何度もあったのかガッカリしながらもトン、とベッドから飛び降りる。
 まだ寝ているアタッカーたんをショベルたんが無言で肩に乗せると、6人揃って(?)部屋を出た。

 ロボ達の擬人化が起きて、艦内の人口が一気に増えた。
 それと正反対に一気に格納庫がガラガラになった。
 空き部屋には多少余裕があったものの、全員を収納するには不足気味ということで、何故か購買に大量に仕入れられていたテントやログハウス用の丸太、プレハブ小屋が飛ぶように放出され、空いた格納庫内に次々に仮住居が建てられた。中には段ボールハウスに挑戦する強者もいる。
 そんな中、女性に姿を変えてしまった者たちはさすがに格納庫で雑魚寝、って訳にいかなかったが、たまたまパートナーが女性ばかりなので、一緒の部屋にいることにより事なきを得た。
 問題は幼女になってしまったロードチームだった。パートナーというか保護者が田島謙治(たじま けんじ)なので同室というわけにはいかず、また人数が多いために別室をあてがわれることになった。
 外見年齢は低いが、人の言うこと(基本的に英語)はよく聞くいい子たちなので特に問題はない、と判断されたのだ。
 6人(まだひとり寝ている)揃って外の共用の洗面台に。
 起きてる5人でわしゃわしゃ歯を磨いて洗顔。早めに済ませたレスキューたんが、まだ夢うつつでふらふら揺れてるアタッカーたんの歯を磨く。タオルで顔を拭いたあたりでやっと眼を覚ましたのか、5人の仲間を見合わしてにぱっ、と笑う。このアタッカーたんには手を焼かされるところもあるが、この笑顔があるから許せてしまう。
 こうしてロードチームの一日が始まるのだ。

(元々の)ロードチームはまだAIが成長途中な為、経験を積ませるためにそれぞれの能力を生かせる場所でお手伝いをしている。擬人化した後も多少差異はあるものの、手伝いはそのまま行われていた。
 レスキューたんは船医の氷室耕作(ひむろ こうさく)がいる医務室に。アタッカーたんとショベルたんは購買に。ファイヤーたんとドリルたんは人が立ち入れない高温のジェネレータとエンジン区画の点検に、と出て行った。

――Lord Diver
(ん〜)
 ダイバーたんは部屋でお留守番というわけじゃないのだが、何故かいつも手伝いに行ってる羽丘(はねおか)リリィに「今日は部屋で待ってて」と言われたのだ。
(はっ! しょぼ〜ん……)
 がっかり肩を落とすダイバーたん。ロボの時は大柄なので肩に乗せたりビークルモードの背に乗せたりとしていたが、今の姿では難しい。まずビークルには変形できないし、ショルダーアーマーもないこのなで肩では人ひとり乗せられない。肩車をするパワーは十分あるが、それはリリィが恥ずかしいだろう。
 それから考えると、きっと自分は廃棄処分で解体されて魚礁(←潜水艇の考え方か?)にされてしまうのだろう。儚かった人生(ロボ生?)にガッカリ地面に手をついていると、ドアが開いてリリィが入ってくる。

 

「Morning.Well,wear this.」

 自分の予備の白衣を持ってきたのか、通常じゃなかなか見かけない子供サイズのをダイバーたんの肩にかける。
「まったく、謙治お兄さんも麗華(れいか)お姉さんもこういうとこ抜けてるのよね。」
 ブツブツ呟きながらダイバーたんの手を引く。
(え〜と?)
 手を引かれながらも首を傾げる。自分は廃棄処分で(以下略)じゃないのか?
「まぁ艦内がこんな状況ならできることも限られるか。
 Let's suitably spend today.(今日は適当に過ごしましょう)
 ね? とにっこり微笑みかけられ、ダイバーたんの顔がぱぁ〜っと明るくなる。
 うんうん、とスキップをしそうなくらいの喜びように、リリィは妹が出来たようで楽しくなっていた。
 今日はそんな日。

――Lord Rescue
(うんしょ、うんしょ)
 擬人化したロボ達を一通り検診して出来たカルテの山を氷室と一緒に整理しているレスキューたん。ロボの属性として見かけ以上の腕力はあるのだが、なにせ身体が小さいのでなかなかバランスが取れないし、視界も通りづらい。
 ふら、ふら……
(ひゃぁっ)
 整理の途中に落としたボールペンを踏んでしまって思いっきりバランスを崩す。後ろに倒れそうになって……
(はや?)
 がっしりした手に支えられる。手のカルテの束はそのままで上を見上げてみる。
「Beruhigen Sie ein kleines.(少しは落ち着け)
 Zurechtkommend bestimmt ist fur unsere Arbeit wichtig.(俺たちの仕事は確実にこなすことが大切だ)
 どこか渋い顔の氷室がレスキューたんの背中を支えていた。
(はい、ごめんなさい)
 カルテの束を机に一度置いて、声は出せないものの、そんな表情で頭を下げる幼女に、氷室はもっと渋い顔で頭を掻く。なかなか頭を上げない幼女をしばらく見ていながらも、思い立ってナースキャップ越しながら頭を撫でる。その動作に驚いたように顔を上げるものの、すぐに嬉しそうな笑顔に変わった。
「あ〜 なんかあいつの気持ちが分かったような分からないような。」
 同窓会で久々にあった友人がすっかり親バカになっていたのを思い出す。困ったような、それでいてなんか嬉しいような氷室であった。
 そうこうして、どうにかカルテの整理が終わる。
「……もう昼か。」
 何か食ってくるかな、という氷室の白衣の裾をくいくいと引く者がいる。
「どうした?
 ん? チョップか? 違う…… え〜と『えい』?
 そんで、次は…… 『YO!』か? そんで『ガクー』ときて、『尾』?」
 何かを訴えようとレスキューたんがじたばた手を振り回す。
「次はトイレ? 違うのか。え〜と『便器』? また『YO!』? 『舌』?
 瓶? 違うか。あ、『空』か。名札、じゃなくて『名』?
 笑顔? ニコリ? あ〜 ちょっとそれは難しいなぁ。そうか『ニカッ』か。そして『突く』と。」
(えーと、えーと、)
 次の言葉を探そうとワタワタするレスキューたん。
「あ〜 大体言いたいことは分かった。栄養学を勉強したから何か作る、って言いたいんだな。
 ……いや待て、今お前、思いっきり日本語理解してなかったか?」
(え?)
 首を傾げながらもくいくい白衣を引っ張るレスキューたんに、どこか諦めの混じったため息をつきながらも引っ張られるがままに氷室は大食堂へと向かった。

――Lord Fire & Lord Drill
 万能戦艦「ラストガーディアン」内エンジンルーム。
 室温数百度。当然ながら耐熱服を着て作業しなければならない区画である。
 が、そんな中を二人の女の子が歩いていた。一人は一応消防服なのだが、もう一人は普通の作業着である。無論、ファイヤーたんとドリルたんだ。
 幼女の姿をしているとはいえ、ロボットとしての属性はそのままなので、呼吸もしなければ高温でも平気なのである。特にこの二人は熱に強くできている。
 そんなわけでロボの時から高温になる区画の点検をしているので、この姿になってる今でもその仕事は変わらない。
(どうかな?)
(こっちはだいじょうぶ)
 無言で一つずつ計器や室内に損傷が無いかを確かめる。
(あ、ここ)
(みせて)
 ファイヤーたんが指さしたところにボルトの緩みを見つける。ドリルたんが締めようとスパナを手にするが、ちょっと高いところにあって届かない。ゴソゴソとファイヤーたんがハシゴを取り出すと、床に置いて下を支える。
(はい)
(ん)
 ひょいひょいとハシゴを登り、キュッキュッと締めて、ストンと着地。
(しめた)
(うん)
 また一通り見て回って、入ってから1時間くらい。そろそろ心配されてしまうので、外に出て一度顔を出しておくことにする。
「お、戻ってきたな。」
 いつの間にかに昼になっていたのか、エンジニアたちは食事に出て行ってほとんど人がいなかった。
「お前達もメシ行っていいぞ。」
 と茶碗をかっ込む動作をする。言ってる言葉は分からなくても、ある意味何処でも通じるジェスチャーにお互い頷きあうと、テレビで見た敬礼と挨拶が混じったような手の動きで、了承の意を伝える。
(いこうか)
(そだね)
 冷風を浴びて身体を冷ましてから、ふたりで大食堂へと向かった。

――Lord Attacker & Lord Shovel
(これとこれと……)
 艦内構造を考えると、どう考えても天井が高すぎる倉庫内をアタッカーたんが飛んでいる。購買の主であるマッコイ姉さんの指示書通りに荷物を下ろしている。それをショベルたんがまとめて店頭に運ぶのだ。
(あったあった)
 棚の奥にあった箱を引きずり出そうとすると、他の箱も付いてくる。
(ちがうちがう)
 空中で色々試行錯誤して目的の箱だけを取り出そうとするけど、すでに片手が荷物でふさがっているため、なかなかうまくいかない。
(えっとえっと)
 一度手に持った荷物を棚に置けば良いのだが、そこまで頭が回らずに苦戦。ロボットの時ならもっと飛行が安定しているのだが、幼女になってから微妙にフラフラとしてるのが苦労に拍車をかける。
(わ、わ、わわわわわわ……)
 元々持っていた荷物を落としかけてそれを直そうとしながら、更に棚の箱にチャレンジしていたので見事に体勢を崩してしまう。手の荷物を落とすと同時に、棚から滑り落ちた箱が頭を直撃。大した重さでは無かったが、バランスを失って墜落するには十分であった。
 ひゅ〜
 落とした荷物をショベルたんがキャッチして、棚から落ちた箱は背中のショベルを素早く抜いて差し出すと、その上に収まる。
 ひゅ〜
(うわーうわー)
 もう一度飛び直すことも忘れて空中でバタバタ騒ぐアタッカーたん。
 すぽ。
「Take careっすよ。」
 いつの間に現れたのか、マッコイ姉さんがその小さな身体を受け止めていた。
 ショベルたんの確保した荷物を簡単にチェックすると、それを一時置きの棚にしまう。
「ショベルちゃんもサンクスっす。
 え〜と、Let's go to eat lunchっす。」
 ふたりの手を引くと、半ば強引に倉庫から出て行く。
「んじゃ、店番頼むっすよ。」
「はぁ……」
 人の姿になってもこき使われている老執事を置いて、購買の主はふたりを連れ去っていった。

――Lord Team
「おや、これは氷室先生じゃないっすか。」
「あ〜 マッコイ姉さんか。」
 名前を憶えない氷室がほぼ唯一憶えているのがマッコイ姉さんなのだが、本名かどうかすら怪しいので憶えていることになるのかどうかは微妙ではあるが。
 カウンターで頬杖をついている向かいでは、一生懸命背伸びしたエプロン姿のレスキューたんが一生懸命フライパンを動かしていた。ちなみに大食堂には病人食などを別に作るためにいくつか独立したキッチンがある。特にここのはカウンターの一つに面していることもあって「愛のエプロン」という名前が密やかに言われているとかいないとか。その後ろでは他の料理を作りながら、この大食堂の主であるハチミツおじさんこと八道楽(はちみち がく)が彼女のことをちらちら気にしている。その心配も杞憂だったのか、チキンライスを作って手早く卵でくるむと皿に盛りつける。
(はい)
「あら、美味しそうっすね。」
「……まぁな。でもこんなおっさんがオムライスか。」
 黄色い山の頂点に刺さった旗を抜いて横に置き、おそらく自分を描いたと思われるケチャップ絵を一瞬躊躇ってから崩す。端っこの方にスプーンを入れ、口に運ぶ。
 食べている氷室をハラハラしたように見つめるレスキューたん。
「うまいな。」
 言葉の意味は分からなかったが、氷室の表情で理解して、レスキューたんが満面の笑みを浮かべる。
「あ、他の子も来たっすね。ハチミツおじさん! お子様ランチ、6つお願いっす!」
「あいよ。」
 リリィがつれてきたダイバーたんと、ふたり揃ってやってきたファイヤーたんとドリルたんの姿を見かけてマッコイ姉さんがぶんぶん手を振る。
 蹴飛ばすようにテーブルを1つ丸まる空けると、6人を座らせる。やってきたカラフルなお子様ランチに目を輝かすチーム。無言ながらも6人揃って頭を下げると、一斉に食べ始めた。
「なんかいいっすね。」
「うん、なんか妹が出来たみたい。」
「……そうかもな。」
 そんな平和な昼下がりであった。
 氷室だけは「娘」って単語がよぎったのは秘密である。

 

 夕方。
(ふわ〜)
(へふ〜)
 今日の「お仕事」も終え、めいめいがベッドに横になっている。
 そんな中、ドリルたんとショベルたんは自分の道具の手入れを黙々とやっている。
 コンコン。
(はい?)
 すたすた、とレスキューたんがノックされたドアを開けると、ほのかとリオーネの空山(そらやま)姉妹が立っていた。
「Sorry,will you come by six,please?(すみませんけど、6人で来てくれませんか?)
 主要外国語なら会話に困らないほどなリオーネが言うと、ちょっと待って、とジェスチャーで説明したレスキューたんが部屋に戻る。
 そっと部屋の中を覗くと、ロードチームが頭を付け合わせて声を出さずに話し合っているようだ。
(おそらく)議事役のファイヤーたんが他の5人を見回すと、少し間があって5人が手を挙げる。
 最後にうんうんと頷きあうと、6人揃って空山姉妹の前にやってくる。
「Thanks.Let us go.」
(はーい)

 歩き出した空山姉妹の後をトテトテついて行く。
「連れてきたよー」
 ロードチームが連れてこられたのは大量に布がまき散らされた一室だった。
 神代沙希(かみしろ さき)や神崎花乃(かんざき はなの)が率先して服を縫っているようだが、よくよく見ると手伝いの御国守麗奈(みこくもり れいな)や神崎月乃(つきの)の方が丁寧に仕事をしている。
「はいはーい、じゃあこっち来て。」
「君たちはこっち〜」
 あれよあれよという間に部屋の引きずり込まれて、作りかけの服のサイズ合わせをされて困惑するロードチーム。
「あ、これ脱がせられないんだ。」
「じゃあ、少しサイズ大きくするか。あ、でもだぼだぼして可愛いかも?」
(あ〜れ〜)
 きゃいきゃいと騒ぐ少女達に、ロードチームは取り込まれていったのであった。

 こんな状況の中「ラストガーディアン」はハロウィンを迎えていた。
 待機任務のクルーは仕方がないが、やはり人数が増えたからか、リクリエーションルームはいつもに増してお祭りのにぎわいであった。
 おおよそ見える半分くらいは何らかの仮装をしているだろうか? 中にはゴミ袋をかぶったとか、段ボールで適当な装甲を作ったみたいなのもあったが、中には生き物のように動くトカゲのような尻尾を付けた……
「おや、私が何か?」
 ――失礼。本物でした。
 擬人化したロボ達の中には自分の「属性」に沿った外見になっているので、ちょっとした工夫で立派なコスプレに早変わりに。
「ですから、そのようにあたりを睨んでは周りの方が不快ですわよ。」
「ですが姫。このような騒ぎに乗じて、いかなる刺客が来るか分かりません。」
「(はぁ……)」
 お姫様っぽいドレスを身にまとった草薙沙耶香(くさなぎ さやか)が、甲冑を着てランスを持ったエリオスに見えないようにため息をつく。
「いやはや、困りましたな。」
 執事の長瀬倉之助(ながせ くらのすけ)がいつものスーツ姿で、そんなに困ってない口調で言うのに沙耶香は少しだけ遠い目をした。

「うわぁ〜いっ!」
 シーツをかぶった誰かが走り回っている。
「おいおい、待て待て。」
 ゴツいフランケンシュタイン(の怪物)がシーツを掴むと、その下から邪気のない笑顔の青年が現れる。
「だって楽しいじゃないですか。」
 少年どころか子供のような笑顔の青年――擬人化したラシュネス――がためらいも無く答える。
「……俺は走るだけで何が楽しいのか気になるがな。」
「まぁまぁ、ラシュネスさんですから。」
 ほうきの魔女――グレイス――がフランケンシュタイン――BD――をなだめる。
「ん〜 なになにぃ〜?」
 魔女はグレイスに取られたからか、今年は露出度の高いキャットウーマンのトーコが《テレポート》して3人の間に入ってくる。
「トーコさん! 女性はもっと慎ましやかに!」
 ボン・キュ・バンをいかんなく際だたせた、布地節約衣装にBDが困ったように目をそらす。
「こんな日になんですが、言わせて頂きます!」

 

「説教は勘弁〜」

 来たときと同じ唐突さでトーコが消える。きっと、誰か「犠牲者」を探しに行くのだろう。……とりあえず候補は二人かな?

 そんな中、青い上着に黄色いスカート――つまりは「白雪姫」――のドレスのフェアリスが誰かを探すように歩いていた。まぁ、この少女が探す相手なんてほとんどは彼女のナイトであるロードだろう。
(あ、いたいた)
(いた)
 ぶかぶかの服に付け髭・帽子を装着したファイヤーたんとドリルたんがくいくい、とフェアリスのドレスを引っ張る。
「あら。どうかなされました?」
(きてきて)
(こっちこっち)
 ツルハシを肩に乗せた2人について行ってると、不意に2人の衣装の正体が何かに気づいた。そういえば「こちら」に来たときに読ませてもらったことがある。
「もしそうなら……」
(はいほーはいほー)
 歌う出しそうな楽しげな雰囲気に、何か微妙に違和感を感じる。
「6人…… でしたっけ?」
 言っても言葉は届かないし、返事も無い。
(お〜い)
 向こうで固まっていた中からダイバーたんがぶんぶん手を振る。
 同じようなコスチュームのロードチームに混じって、頭ひとつどころかフェアリスよりも長身な同じ服装の人が混じっている。
「……ロード?」
「あ、ああ…… さっき捕まってな、無理矢理こんな格好に……」
 自分でも何の格好なのか分かっていないのだが、ロードチーム達と同じ衣装なのに何か意図があるのだろう、と色々考えているようだ。
「それよりフェアリス、なかなかに可憐だな。」
「あ、ありがとうロード……」
 普段の鋼の騎士ではなく、精悍な騎士に言われるといつもよりも頬が赤くなってしまう。
「お〜 そろったそろった。はぁい、みんなちゅうも〜く!!」
 青いドレス姿で髪を巻いたほのかが声を上げた。皆の視線がフェアリス達に向く。
「皆さんで作りました力作です。」
 何故か熊のような耳を付けて、ポニーテールにしたドレス姿のリオーネが注目されて照れくさそうに説明する。

「「白雪フェアリス姫と、7人のロード!」」
(はいほー)

「……は?」
 一斉にポーズをとるロードチームと対照にロードが惚けたような声を出す。
 そういえば、聞いたことがあったような気がして……
「なんですと?!」
 結局、このコスプレチーム(笑)が今年の「ハロウィンオブジイヤー」に決定して、賑やかな雰囲気の中、お祭り騒ぎが終わった。運良くトリニティの襲撃もなく「ラストガーディアン」は久々に休息の時を迎えていた。

 

(う〜にゅ)
 衣装もいつも通りになり、すでに眠ってしまったアタッカーたんを背負って自分たちの部屋に戻る。
(はい、おやすみなさい)
(おやすみなさい)
 ダイバーたんの号令で皆が一斉に頭を下げると、次々にベッドに横たわる。
 ぱちん、と誰かが電気を消すと、すぐに安らかな寝息が聞こえてきた。
 いつまでこの擬人化が続くか分からないが、こんな夢のような日々がもう少し続けばいいな、と願うロードチームであった。